平成20年7月15日 第58号
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人事のブレーン
社会保険労務士レポート
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
目次
1.
労働基準法の「事業」の概念に関する考察
===================================
ブログもよろしくお願い致します。
「
人事のブレーン
社会保険労務士日記」です。
http://norifumi.cocolog-nifty.com/blog/
是非見てみて下さい!
***********************************
1.
労働基準法の「事業」の概念に関する考察
***********************************
<1> はじめに
今回は
労働基準法の「事業」に関する考察をテーマとした。
理由は前々回のメルマガで執筆した日本マクドナルド事件の裁判例の中で、労
働基準法で直近上位に含められる様な小規模の
事業場は何かという質問に答え
る為である。
まず
労働基準法の事業とは何かを明らかにし、小規模事業所について考察して
みたい。
<2>
労働基準法が適用される事業とは
(1)事業とは
労働基準法でいう事業の概念は9条に規定されている。
労働者の定義であるが、
労働者に定義の中で「事業又は事務所に使用されるも
の」とあり、この事業又は事務所の定義を明らかにしないと
労働者の定義を明
らかに出来ないからである。
事業とは業として継続的に行っている活動である。
この「業として」は
収益事業だけではなく、社会福祉事業や宗教団体の事務も
含まれる。
この宗教団体では、修行として宗教上の儀式や団体に奉仕をする場合には原則
として
労働者ではないが、一般的な事務を行う職員については
労働者とされる。
宗教団体についてはその特殊性から誰が
労働者であるかは昭27.2.5基発
49号を参照されたい。
しかし選挙事務所は含まれないが、政党支部や政治家の個
人事務所は含まれる。
以前政党支部の
雇用保険の新規適用をお手伝いしたことがある。
結論としてはほぼ全ての事業が
労働基準法の
適用事業となる。
(2)違法な事業活動について
法に反する事業活動に従事している
労働者はどの様に考えるのであろう。
結論は、共同正犯や従犯と認められない限り
労働者として考えられる。
違法な「事業」について
労働基準法の
適用除外とした場合には、不当な労働の
助長に繋がり法の主旨に反する。
よって
労働基準法にいうところの「事業」とは違法な行為を行っている事業も
含まれると考えられる。
<3>
労働基準法が適用される事業の単位
(1)場所的観念の検討 総則
労働基準法が適用される事業の単位とは主として場所的概念による。
通達では「個々の事業に対して
労働基準法を適用するに際しては、当該事業の
名称又は経営主体等にかかわることなく、相関連して一体をなす労働の様態に
よって事業としての適用を定めること」とされており、
法人を単位とするので
はなく、運営上一体とみなされる事業を一つの
適用事業とみなすとしている。
具体的には「1つの事業であるか否かは主として場所的観念によって決定すべ
きもので、同一場所にあるものは原則として分割することなく一個の事業とし、
場所的に分散しているものは原則として別個の事業とする」としている。
一つの場所で行われている事業は原則として一つの事業とみなすとされている。
次に例外を検討する。
(2)同一場所で著しく様態を異にする事業の取扱
同一の場所で事業を行っていても、著しく様態を異にする事業がある。
「その部門が主たる部門との関連において従事
労働者、
労務管理等が明確に区
分され、かつ、主たる部門と切り離して適用を定めることによって
労働基準法
がより適切に運用出来る場合には、その部門を一つの事業とすること。」とある。
工場内の診療所や食道などを例に挙げている。
通達では新聞社の編集部門と印刷部門、清酒製造業の醸造部門と壜詰部門につ
いて述べている。
趣旨は別々の事業として考えることが法を適用する場合にふさわしいとされる
場合である。
企業の営業部門と
製造部門なども同様で、
労働基準法の事業の概念は他の法律
の適用に際しても同様に取り扱われる。
例えば
労働安全衛生法である。
企業の営業部門と
製造部門が同一の場所にあるが、別個の事業として取り扱う
ことが一般
労働条件に関する事項や安全衛生に関する事項がより適切に行える
場合がこれにあたる。
(3)場所的観念の例外
同一の場所で事業を行っている場合、前記例外を除き一つの事業として取り扱
われる。
しかし、一つの場所で事業を行っているとはいえない小規模
事業場については、
それを一つの事業とはせずに、直近上位の事業として包括して取り扱うとされ
ている。
通常であれば営業所単位で事業として取り扱われるが、「場所的に分散してい
るのであっても出張所、支所等で規模が小さく組織的関連ないし事務能力を勘
案して一の事業という程度の独立性のないもの」についてはひとつの事業とし
て取り扱わずに直近上位の事業に包括して取り扱うとされている。
ここまでの参考
通達
昭22.9.13発基17号、昭23.3.21基発511号、昭33.2.
13基発90号、昭63.3.14基発150号、平11.3.31基発16
8号
(4)直近上位に包括される事業とは
通達では新聞社の地方通信機関を例に挙げている(昭23.5.20基発79
9号)。
新聞社の地方通信機関は本社の指揮命令の下、取材をし、記事を書き、それを
本社に送る拠点に過ぎず、その機関の長は
人事権もなく、事務も取り扱わず、
したがってそれらの機関は組織的関連ないし事務能力の点より一つの事業とい
う程度の独立性を持たないものは本社に一括して一つの事業として取り扱うこ
ととしている。
この
通達によれば、本社からの直接指揮命令により
労働者が業務に従事し、そ
の組織の長が
人事権をもたず、その組織に事務処理機能もない場合には直近上
位の機構と包括されて事業と考えられるという事になる。
新聞社という特殊な労働形態であるからこの様に考えることが出来るが、通常
は
サテライトオフィスの様なものに限られると筆者は考える。
<4>許認可の届出等
労働基準法による許認可や届出等はこの事業単位で行うこととされている。
就業規則や
36協定等である。
また解雇予告手当除外申請等も同様である。
労災法や
労働安全衛生法も
労働基準法と事業の概念は同様であるから、保険関
係成立届や
産業医をはじめとする各種選任届、
安全衛生委員会の開催、健康診
断結果報告等も同様に取り扱われる。
<5>
労働基準法41条第2号の
管理監督者との関係
都市銀行等以外の金融機関の場合の
管理監督者について定めた
通達(昭52.
2.28基発105号)によると、
管理監督者ではない出先機関の長は労働基
準法の適用単位ではない小規模の出先機関の長に限られるとなっている。
この
通達通り解釈すれば新聞社の地方通信機関の長や
サテライトオフィスの長
は
管理監督者ではないが、
人事権があり、事務処理能力を有する事業を行う事
務所の長は
管理監督者であると解釈される。
日本マクドナルド事件については前々回の56号で紹介したが、他にも同様の
裁判例がある。
しかしながらこの様な
通達を精査すれば店長などが
管理監督者ではないと判断
することが出来ない。
むしろ
通達を鵜呑みにすれば
管理監督者であると解釈出来る。
管理監督者については企業の責任を問う声が多いが、この様に
通達を精査すれ
ば違法とまで言い切れない。
法律違反ではないのである。
<6>まとめ
この様に
労働基準法の「事業」の概念は様々な法律の適用に影響する。
事業の概念についてはしっかりと考察していないのではないか。
一度しっかりと考察して、法律の適用に応用して考えて頂きたい。
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<1> はじめに
今回は労働基準法の「事業」に関する考察をテーマとした。
理由は前々回のメルマガで執筆した日本マクドナルド事件の裁判例の中で、労
働基準法で直近上位に含められる様な小規模の事業場は何かという質問に答え
る為である。
まず労働基準法の事業とは何かを明らかにし、小規模事業所について考察して
みたい。
<2>労働基準法が適用される事業とは
(1)事業とは
労働基準法でいう事業の概念は9条に規定されている。
労働者の定義であるが、労働者に定義の中で「事業又は事務所に使用されるも
の」とあり、この事業又は事務所の定義を明らかにしないと労働者の定義を明
らかに出来ないからである。
事業とは業として継続的に行っている活動である。
この「業として」は収益事業だけではなく、社会福祉事業や宗教団体の事務も
含まれる。
この宗教団体では、修行として宗教上の儀式や団体に奉仕をする場合には原則
として労働者ではないが、一般的な事務を行う職員については労働者とされる。
宗教団体についてはその特殊性から誰が労働者であるかは昭27.2.5基発
49号を参照されたい。
しかし選挙事務所は含まれないが、政党支部や政治家の個人事務所は含まれる。
以前政党支部の雇用保険の新規適用をお手伝いしたことがある。
結論としてはほぼ全ての事業が労働基準法の適用事業となる。
(2)違法な事業活動について
法に反する事業活動に従事している労働者はどの様に考えるのであろう。
結論は、共同正犯や従犯と認められない限り労働者として考えられる。
違法な「事業」について労働基準法の適用除外とした場合には、不当な労働の
助長に繋がり法の主旨に反する。
よって労働基準法にいうところの「事業」とは違法な行為を行っている事業も
含まれると考えられる。
<3> 労働基準法が適用される事業の単位
(1)場所的観念の検討 総則
労働基準法が適用される事業の単位とは主として場所的概念による。
通達では「個々の事業に対して労働基準法を適用するに際しては、当該事業の
名称又は経営主体等にかかわることなく、相関連して一体をなす労働の様態に
よって事業としての適用を定めること」とされており、法人を単位とするので
はなく、運営上一体とみなされる事業を一つの適用事業とみなすとしている。
具体的には「1つの事業であるか否かは主として場所的観念によって決定すべ
きもので、同一場所にあるものは原則として分割することなく一個の事業とし、
場所的に分散しているものは原則として別個の事業とする」としている。
一つの場所で行われている事業は原則として一つの事業とみなすとされている。
次に例外を検討する。
(2)同一場所で著しく様態を異にする事業の取扱
同一の場所で事業を行っていても、著しく様態を異にする事業がある。
「その部門が主たる部門との関連において従事労働者、労務管理等が明確に区
分され、かつ、主たる部門と切り離して適用を定めることによって労働基準法
がより適切に運用出来る場合には、その部門を一つの事業とすること。」とある。
工場内の診療所や食道などを例に挙げている。
通達では新聞社の編集部門と印刷部門、清酒製造業の醸造部門と壜詰部門につ
いて述べている。
趣旨は別々の事業として考えることが法を適用する場合にふさわしいとされる
場合である。
企業の営業部門と製造部門なども同様で、労働基準法の事業の概念は他の法律
の適用に際しても同様に取り扱われる。
例えば労働安全衛生法である。
企業の営業部門と製造部門が同一の場所にあるが、別個の事業として取り扱う
ことが一般労働条件に関する事項や安全衛生に関する事項がより適切に行える
場合がこれにあたる。
(3)場所的観念の例外
同一の場所で事業を行っている場合、前記例外を除き一つの事業として取り扱
われる。
しかし、一つの場所で事業を行っているとはいえない小規模事業場については、
それを一つの事業とはせずに、直近上位の事業として包括して取り扱うとされ
ている。
通常であれば営業所単位で事業として取り扱われるが、「場所的に分散してい
るのであっても出張所、支所等で規模が小さく組織的関連ないし事務能力を勘
案して一の事業という程度の独立性のないもの」についてはひとつの事業とし
て取り扱わずに直近上位の事業に包括して取り扱うとされている。
ここまでの参考通達
昭22.9.13発基17号、昭23.3.21基発511号、昭33.2.
13基発90号、昭63.3.14基発150号、平11.3.31基発16
8号
(4)直近上位に包括される事業とは
通達では新聞社の地方通信機関を例に挙げている(昭23.5.20基発79
9号)。
新聞社の地方通信機関は本社の指揮命令の下、取材をし、記事を書き、それを
本社に送る拠点に過ぎず、その機関の長は人事権もなく、事務も取り扱わず、
したがってそれらの機関は組織的関連ないし事務能力の点より一つの事業とい
う程度の独立性を持たないものは本社に一括して一つの事業として取り扱うこ
ととしている。
この通達によれば、本社からの直接指揮命令により労働者が業務に従事し、そ
の組織の長が人事権をもたず、その組織に事務処理機能もない場合には直近上
位の機構と包括されて事業と考えられるという事になる。
新聞社という特殊な労働形態であるからこの様に考えることが出来るが、通常
はサテライトオフィスの様なものに限られると筆者は考える。
<4>許認可の届出等
労働基準法による許認可や届出等はこの事業単位で行うこととされている。
就業規則や36協定等である。
また解雇予告手当除外申請等も同様である。
労災法や労働安全衛生法も労働基準法と事業の概念は同様であるから、保険関
係成立届や産業医をはじめとする各種選任届、安全衛生委員会の開催、健康診
断結果報告等も同様に取り扱われる。
<5>労働基準法41条第2号の管理監督者との関係
都市銀行等以外の金融機関の場合の管理監督者について定めた通達(昭52.
2.28基発105号)によると、管理監督者ではない出先機関の長は労働基
準法の適用単位ではない小規模の出先機関の長に限られるとなっている。
この通達通り解釈すれば新聞社の地方通信機関の長やサテライトオフィスの長
は管理監督者ではないが、人事権があり、事務処理能力を有する事業を行う事
務所の長は管理監督者であると解釈される。
日本マクドナルド事件については前々回の56号で紹介したが、他にも同様の
裁判例がある。
しかしながらこの様な通達を精査すれば店長などが管理監督者ではないと判断
することが出来ない。
むしろ通達を鵜呑みにすれば管理監督者であると解釈出来る。
管理監督者については企業の責任を問う声が多いが、この様に通達を精査すれ
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法律違反ではないのである。
<6>まとめ
この様に労働基準法の「事業」の概念は様々な法律の適用に影響する。
事業の概念についてはしっかりと考察していないのではないか。
一度しっかりと考察して、法律の適用に応用して考えて頂きたい。
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