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累進歩合制度についての考察

平成21年12月15日 第75号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
───────────────────────────────────
目次

1. 累進歩合制度についての考察
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ブログもよろしくお願い致します。
人事のブレーン社会保険労務士日記」です。
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1.累進歩合制度についての考察

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<1> はじめに

 運送業を取り巻く環境は非常に厳しいものがあり、賃金形態についても歩合制
を取り入れている会社が多い。
 特に旅客運送業のなかでもタクシー運転手の賃金については完全歩合制の会社
が非常に多い。
 この歩合制については、自動車運転者について2つの規制がある。
累進歩合制の禁止と最低保障である。
これは過激な賃金制度により、交通事故を誘発するようなことがあってはならな
いという事が主旨である。
 今回のテーマは累進歩合制とはどの様なものかを考えてみたい。

<2> 累進歩合制度とは

(1)概要

売り上げに応じて賃金を決める制度が歩合制度であり、累進歩合制度とは、一定
の売り上げ基準を超えた場合、歩合率を高めることにより、労働者がより多くの
売上げを上げる動機付けにしようという制度である。

例えば以下の通りである。

月の売上げ          歩合率
 30万円未満        35%
 30万円以上50万円未満  40%
 50万円以上60万円未満  45%
 60万円以上        50%

上記のように歩合率が一定の売上げを超えた場合に、歩合率を引き上げる制度で
ある。
歩合率のカーブが非連続的になる。

自動車運転者については、この様な歩合制度は交通事故防止の観点から禁止され
ている。

(2)いわゆる足切額について

累進歩合制度を導入していない場合でも、売上げが一定金額に達しない場合には
歩合率を下げる事は許されるのであろうか。

例えば以下のような事例である。
月の売上げ          歩合率
 30万円未満の場合1円から 35%
 30万円以上の場合1円から 40%

30万円以上の売上げについては累進歩合制度ではない。
しかし30万円を基準として歩合率が変わってくる。

30万円の売上げを達成しなければ歩合率が引き下げられるので、これも累進歩
合ではないかという意見がある。
制度としては、結果として累進歩合になっているが、労働調査会刊「タクシー事
業の労務管理マニュアル」で、著者の山田孝一氏は「会社の損益分岐点を下回る
ような低営収者に対する賃金のあり方について事業者は苦慮している」とし「営
業収入が標準営収額(足切額)以下の場合には、「標準歩率」より1ランク下げ
た率を設定している例がでてきています。これに対して、一部の乗務員側は、こ
れは2段設定になるので逆の意味での累進歩合制ではないかと指摘し、問題視し
ている向きもあります。この指摘は、これが累進歩合制になるからといって、2
.9通達で交通事故防止を目的として示した累進歩合制廃止の趣旨とは全く次元
の異なる捉え方ではないでしょうか。」(p184(4))とし、強行法規とし
て禁止されている累進歩合ではなく、労働条件向上を目指して労使間で協議する
事項であるとしている。

足切額が妥当であれば、この様な歩合制でも問題はないとの解釈である。
また同氏は、同頁にて累進歩合でもその差がわずかな場合には2.9通達の趣旨
に反しないのではないかと述べられている。

因みに2.9通達とは昭和42年2月9日付け基発139号のことであり、(3)
ロで「いわゆる累進歩合制度のうち、極端に労働者を刺激する制度を廃止するこ
ととし、歩合給の歩率は水揚高等の多寡にかかわらず、一定率にするよう逐次改
善に努めること。」という内容である。

一方で同じく労働調査会刊の自動車運転者労務改善基準の解説では足切額の設定
は固定給(最低保障給)から連続して上昇することを前提として解説しており、
足切額について非連続的な運用が可能との記載がない。
そして累進歩合の定義が「運賃収入等をその高低に応じて数段階に区分し、段階
区分の上昇に応じて逓増する歩率を運賃収入等に乗じて歩合給を算定する方式で
ある。」とすれば、非連続的なラインとなる歩合率の設定は、累進歩合そのもの
である。
足切額のラインのみに例外的に許されるという解釈があるとすれば、次に述べる
トップ賞や奨励加給との関係をみなければならない。

(4)達成賞的な賃金制度
 
 歩合率は累進的なものではないが、一定の売上金額を達成した場合に「トップ
賞」や「達成賞」を出すような賃金制度も、結果として非連続的なラインの歩合
率になるために、広義の累進歩合とされ禁止されている。

 いわゆる93号通達とよばれている「自動車運転者の労働時間等の改善のため
の基準について(平成元年3月1日基発第93号)」では、「累進歩合制度には、
水揚高、運搬量等に応じて歩合給が定められている場合にその歩合給の額が非連
続的に増減するいわゆる「累進歩合給」、水揚高等の最も高い者又はごく一部の
労働者しか達成し得ない高い水揚げ高等を達成した者のみに支給するいわゆる
「トップ賞」、その水揚高の区分の額に達するごとに一定額の加算を行ういわゆ
る「奨励加給」が該当するものであること。」とされている。

よって足切額に達しない労働者の歩合率を低く設定する場合には「奨励加給」に
該当すると考えることが出来る。

足切額に達しない労働者の歩合率を他より低く設定することが合法であるという、
法的根拠が見当たらない。

よって筆者は足切額に達しない労働者に対して、定額の歩合率を適用することは、
結果的に奨励加給となり、よって累進歩合制度に該当すると解釈することが妥当
であると考える。


<3>積算歩合について

積算歩合とは以下の通りである。

以下の歩合率で売上げ区分ごとに計算する。
月の売上げ          歩合率
 30万円以下       35%
 30万円超え50万円以下  40%
 50万円超え60万円以下  45%
 60万円超え        50%

売上げが65万円と仮定した場合の計算式は以下の通りになる。
30万円×35%
+(50万円-30万円)×40%
+(60万円-50万円)×45%
+(65万円-60万円)×50%
=105,000円+80,000円+45,000円+25,000円
=255,000円

売上げ区分ごとに歩合率を変えているが、全体の売上高に該当する区分を乗じる
のではなく、売上げ区分ごとに定められた歩合率を乗じ、その合計を支給する制
度であり、これは禁止されていない。

<4>まとめ

足切額に達しない労働者に対して、歩合率を引き下げることが合法なのかを検討
するにあたり、まとまった資料がなかったために、筆者がまとめようとして今回
のテーマとした。
筆者自身良い勉強になった。
論文にまとめることの重要性を痛感した。
読者の方の参考になれば幸いである。

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