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【レジュメ編】 行政法(その14〔個人情報保護法〔1〕)

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-36 ★★★
           【レジュメ編】 行政法(その14〔個人情報保護法〔1〕)

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■■■ 個人情報保護法 ■■■

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■■■ 個人情報保護法 ■■■
■■■ 第一章 総則
■ 目的
第一条 この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大して
いることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方
針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公
共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務
等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護するこ
とを目的とする。

(1)「個人情報の有用性」:公益(犯罪捜査、汚職の報道等)及び当該個人情報の本
   人にとっての有用性を含む。
(2)「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護する」:個人の権利利
   益の保護のみを唯一絶対の目的とするのではなく、個人情報の有用性も考慮する
   ことを意味しているが、両者を対等に比較衡量するのではなく、個人の権利利益
   の保護が最重要の目的であることも表現している。

■ 定義
第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当
該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することがで
きるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別するこ
とができることとなるものを含む。)をいう。
2 この法律において「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集合物
であって、次に掲げるものをいう。
一 特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成し
たもの
二 前号に掲げるもののほか、特定の個人情報を容易に検索することができるように体
系的に構成したものとして政令で定めるもの
3 この法律において「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の
用に供している者をいう。ただし、次に掲げる者を除く。
一 国の機関
二 地方公共団体
三 独立行政法人等(独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律 (平成
十五年法律第五十九号)第二条第一項 に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)
四 地方独立行政法人(地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第二条第
一項 に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)
五  その取り扱う個人情報の量及び利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれ
が少ないものとして政令で定める者
4  この法律において「個人データ」とは、個人情報データベース等を構成する個人
情報をいう。
5 この法律において「保有個人データ」とは、個人情報取扱事業者が、開示、内容の
訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる
権限を有する個人データであって、その存否が明らかになることにより公益その他の利
益が害されるものとして政令で定めるもの又は一年以内の政令で定める期間以内に消去
することとなるもの以外のものをいう。
6 この法律において個人情報について「本人」とは、個人情報によって識別される特
定の個人をいう。

【1】個人情報
(1)本条一項の個人情報の定義は、行政機関個人情報保護法2条2項、独立行政法人
   等個人情報保護法2条2項の定義とほぼ同じである。

(2)「生存する個人に関する情報」
(ア)死者の個人情報を対象としなかったのは、開示請求権等を行使しうるのは生存者
   であり、死者に関する個人情報が同時に遺族等の個人情報とも言える場合には、
   死者の個人情報を本法の対象としなくても、遺族等の個人情報として保護すれば
   足りること、判例も一般に死者の名誉毀損を認めていないこと等による。
(イ)法人その他の団体の情報は、個人情報には含まれず、本法の保護は受けない。
(ウ)個人に関する情報には、個人の属性・行動、個人に対する評価、個人が創作した
   表現等、当該個人と関係するすべての情報が含まれ、それが公知の情報であるか
   否かやその存在形式(文字情報、音声、指紋、画像等)は問わない。
(エ)個人には、外国人、公人、公務員等も含まれる。
★ 情報公開法の「個人に関する情報」(5条1号)には、死者に関する情報も含まれ
  ます。

(3)「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別す
   ることができるもの」
(ア)センシティブ情報のみを対象とするものではなく、個人情報識別情報を広く対象
   としている。
(イ)その他の記述:会員番号、電話番号や、映像、声、指紋、筆跡等によって本人を
   識別しうる場合を含む。
★ 防犯ビデオの映像、コールセンターの録音テープ、特徴のある筆跡の書状も、「そ
  れにより特定の個人を識別することができる」場合には、個人情報に該当します。

(4)「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別すること
   ができることとなるものを含む」
(ア)例えば、他の事業者に通常の業務では行っていない特別な照会をし、当該他の事
   業者において、相当な調査をしてはじめて回答が可能になるような場合、内部組
   織間でもシステムの差異のため技術的に照合が困難な場合、照合のため特別のソ
   フトを購入してインストールする必要がある場合には、「容易に」の要件を満た
   すとはいえない。

【2】個人情報データベース等(2項)
(1)「個人情報を含む情報の集合物」:個人情報データベース等は、個人情報の部分
   集合であり、データベースの装置、記録媒体というハードのシステムに体系的に
   記録されている個人情報の総体を意味する。

(2)「特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構
   成したもの」
(ア)データベースを念頭においている。
(イ)インターネットの検索エンジン、電子掲示板(文字列を手がかりとした検索機能
   を有するのみの場合)は、個人情報データベース等には含まれない。
(ウ)通信販売業者の使用に係るデータベースであって販売した商品別に整理されてい
   るものであっても、特定の個人に関する情報も抽出可能なシステムになっていれ
   ば、個人情報データベース等に該当する。

(3)「前号に掲げるもののほか、特定の個人情報を容易に検索することができるよう
   に体系的に構成したものとして政令で定めるもの」
(ア)政令で定めるマニュアル処理情報(カルテや指導要録)を対象としている。

【3】「個人情報取扱業者」(3項)
(1)個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。
(2)個人情報取扱業者には、非営利事業を行う者や、外部から個人情報の処理の委託
   を受けて個人情報データベース等を作成し委託業者に個人データを提供する情報
   処理業者、外部に情報提供する目的で個人情報データベース等を作成・管理して
   いるデータベース事業者等、自己の営む事業の顧客情報や従業者情報を管理する
   目的で個人情報データベース等を作成・管理している者も含まれる。
(3)輸送業者、倉庫業者、書店のように、内容に関知することなく、単に輸送、保
   管、販売のみを行う者は、「事業の用に供している」といえないため、個人情報
   取扱事業者には含まれない。
(4)本法の規律の対象となるのは、日本国内における個人情報の取扱いのみである。
   日本企業の海外の子会社の個人情報データベース等が海外でのみ利用されている
   場合は、当該子会社は本法の「個人情報取扱事業者」には該当しないが、当該個
   人情報データベース等に含まれる個人データが国内の本社で利用される場合、ま
   た外国企業の日本法人が日本における事業活動に必要な個人情報データベース
   を作成・管理している場合は、「個人情報取扱事業者」に該当する。
(5)「個人情報の量」:個人データによって識別される本人の数であり、小規模の個
   人データベース等のみを取扱い事業者の負担を考え、本法の対象外としている。
   その事業の用に供する個人情報データベース等を構成する個人情報によって識別
   される特定の個人の数が過去6ヶ月以内のいずれの日においても5000を超え
   ないものは個人情報取扱業者に含まれない。
★ ただし、他人が作成した個人情報データベース等で個人情報として氏名または住所
  若しくは居所若しくは電話番号のみが含まれる場合であって、これを編集・加工す
  ることなくその事業の用に供するときは、これを構成する個人情報によって識別さ
  れる特定の個人の数は算入されない(施行令2条)ため、市販のカーナビや電子住
  宅地図、CD-ROMの電話帳等に手を加えずにそのまま事業の用に供した場合は、これ
  らによって識別される個人の数は算入されないことになる。
(6)事業者が複数のデータベースを事業の用に供している場合、その全体を構成する
   個人データによって識別される特定の個人の数により計算する。同一の個人が複
   数識別される場合には、重複して計算せず一人として数える。

【4】個人データ(4項)
(1)個人情報データベース等を構成する個人情報をいう。
(2)個人情報取扱事業者の義務等において、個人データを対象としているのは、19
   条から23条および50条3項。
(3)個人情報データベース等を構成する個人情報であれば、個人データの要件を満た
   すので、現に個人情報データベース等を構成していなくてよい。(例:電子計算
   機から出力されたハードコピー、マニュアル処理の個人情報データベース等のデ
   ータのコピー等が個人情報データに該当)

【5】保有個人データ(5項)
(1)「保有個人データ」は「個人データ」の部分集合である。保有個人データを、個
   人データよりも更に限定したのは、個人情報取扱事業者の過度の負担を避け、現
   実的に実現可能な制度とするとともに、公益等への支障に配慮したものである。
(2)「開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停
   止を行うことのできる権限を有する」:そのうちのいずれかの権限を有すれば足
   りるのではなく、これらの全ての権限を有することが必要である。
(3)同一の個人データを複数の個人情報取扱事業者が共有し、かつ、そのいずれの個
   人情報取扱事業者も開示、訂正等、利用停止等の権限を有している場合、当該個
   人データは、その複数の個人情報取扱事業者の保有個人データになる。
(4)本法の個人情報取扱事業者の義務等において、保有個人データを対象としている
   のは、24条から27条。
(5)「その存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるもの」:本法
   では、存否自体を明らかにしないグローマー拒否を認める規定がないため、開示
   等の求めの対象となる保有個人データには、存否を明らかにすべきでないものを
   含まないこととする必要がある。
(6)「1年以内の政令で定める期間以内に消去することとなるもの」:政令では6ヶ
   月以内とされた(施行令4条)。

■ 基本理念
第三条 個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものである
ことにかんがみ、その適正な取扱いが図られなければならない。

(1)本条は、公的部門、民間部者の双方に共通に妥当する基本理念について定めてい
   る。
(2)本条は基本理念を定めるにとどまるので、個人情報がこの理念に反する取扱いを
   されたということのみで、行政的、刑事的に制裁を加えることは予定されていな
   い。


■■■ 第二章 国及び地方公共団体の責務等
■ 国の責務
第四条 国は、この法律の趣旨にのっとり、個人情報の適正な取扱いを確保するために
必要な施策を総合的に策定し、及びこれを実施する責務を有する。

(1)国の責務:6条から10条に規定。

■ 地方公共団体の責務
第五条 地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その地方公共団体の区域の特性
に応じて、個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な施策を策定し、及びこれを
実施する責務を有する。

(1)地方公共団体の責務:11条から13条の努力義務。
(2)「この法律の趣旨にのっとり」:必要な施策が策定される必要があるため、本法
   が与える個人情報保護の水準を下回らないようにする必要がある。

■ 法制上の措置等
第六条 政府は、個人情報の性質及び利用方法にかんがみ、個人の権利利益の一層の保
護を図るため特にその適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報につい
て、保護のための格別の措置が講じられるよう必要な法制上の措置その他の措置を講ず
るものとする。

(1)医療、情報通信、金融の分野でそれぞれガイドラインが制定され、そのいずれに
   おいても、その事業の用に供する個人情報データベース等を構成する個人情報
   よって識別される特定の個人の数の合計が過去6ヶ月以内のいずれの日において
   も5000を超えないものも、ガイドラインの対象とされている。


■■■ 第三章 個人情報の保護に関する施策等
■■ 第一節 個人情報の保護に関する基本方針
■ 個人情報の保護に関する基本方針
第七条 政府は、個人情報の保護に関する施策の総合的かつ一体的な推進を図るため、
個人情報の保護に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならな
い。
2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 個人情報の保護に関する施策の推進に関する基本的な方向
二 国が講ずべき個人情報の保護のための措置に関する事項
三 地方公共団体が講ずべき個人情報の保護のための措置に関する基本的な事項
四 独立行政法人等が講ずべき個人情報の保護のための措置に関する基本的な事項
五 地方独立行政法人が講ずべき個人情報の保護のための措置に関する基本的な事項
個人情報取扱事業者及び第四十条第一項に規定する認定個人情報保護団体が講ずべ
個人情報の保護のための措置に関する基本的な事項
七 個人情報の取扱いに関する苦情の円滑な処理に関する事項
八 その他個人情報の保護に関する施策の推進に関する重要事項
3 内閣総理大臣は、国民生活審議会の意見を聴いて、基本方針の案を作成し、閣議の
決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方
針を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。

(1)「総合的かつ一体的な推進を図るため」:本法は、個人情報取扱事業者の監督に
   ついて主務大臣制をとり、所管分野における個人情報の取扱いの実情に通暁した
   主務大臣が分担管理することとしている。

■■ 第二節 国の施策
■ 地方公共団体等への支援
第八条 国は、地方公共団体が策定し、又は実施する個人情報の保護に関する施策及び
国民又は事業者等が個人情報の適正な取扱いの確保に関して行う活動を支援するため、
情報の提供、事業者等が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針の策定そ
の他の必要な措置を講ずるものとする。

(1)本条は、7条が定める基本方針に則り、国が地方公共団体、国民、事業者に対し
   て行う支援について定めている。
(2)「事業者等」:2条3項で定義されている個人情報取扱事業者に限らず、地方独
   立行政法人、小規模個人情報取扱事業者等も含まれる。
(3)「個人情報の適正な取扱いの確保に関して行う活動」:事業者が行う活動として
   は、プライバシー・ポリシーの作成、セキュリティ対策、従業者に対する研修等
   が、認定個人情報保護団体等の苦情処理団体が行う活動としては、認定個人情報
   保護団体による個人情報保護指針の作成や国民生活センター等による広報・啓蒙
   活動がある。

■ 苦情処理のための措置
第九条 国は、個人情報の取扱いに関し事業者と本人との間に生じた苦情の適切かつ迅
速な処理を図るために必要な措置を講ずるものとする。

(1)本条は、「事業者と本人との間に生じた苦情」を対象としており、国・地方公共
   団体と本人の間に生じた苦情は対象外である。また、事業者による個人情報の取
   扱いに関連して本人との間に生じた苦情であっても、事業者による個人情報の適
   正な取扱いを確保するための法律・条例等のあり方をめぐる制度的苦情は、本条
   の苦情には含まない。
(2)本条は「事業者」についての支援を規定しているため、個人情報取扱事業者以外
   の事業者についても、国は、その苦情処理が適切かつ迅速に行われるように支援
   等を行うことになる。

■ 個人情報の適正な取扱いを確保するための措置
第十条 国は、地方公共団体との適切な役割分担を通じ、次章に規定する個人情報取扱
事業者による個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な措置を講ずるものとす
る。

■■ 第三節 地方公共団体の施策
■ 地方公共団体等が保有する個人情報の保護
第十一条 地方公共団体は、その保有する個人情報の性質、当該個人情報を保有する目
的等を勘案し、その保有する個人情報の適正な取扱いが確保されるよう必要な措置を講
ずることに努めなければならない。
2 地方公共団体は、その設立に係る地方独立行政法人について、その性格及び業務内
容に応じ、その保有する個人情報の適正な取扱いが確保されるよう必要な措置を講ずる
ことに努めなければならない。

(1)「地方公共団体」:普通地方公共団体と特別地方公共団体の双方を含む(地方自
   治法1条の3)。
(2)「努めなければならない」:8条及び9条が「講ずるものとする」と規定してい
   るのに対して、11条から13条までは、地方自治を尊重するために努力義務に
   とどめられている。

★ 平成18年4月1日現在の個人情報の保護に関する条例の制定状況が総務省から公表さ
  れています。それによると、平成17年度末までにすべての団体が条例を制定し、制
  定率は100%に達したとのことです。詳しくは、つぎのURLをご覧ください。
 http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060629_1.html

■ 区域内の事業者等への支援
第十二条 地方公共団体は、個人情報の適正な取扱いを確保するため、その区域内の事
業者及び住民に対する支援に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(1)「住民」:その区域内に住所または居所を有する者に限らず、その区域内に通
   勤・通学する者を含む。
(2)「支援に必要な措置」:本法や個人情報保護条例等の周知を図るためのパンフレ
   ットの配付、事業者に対するガイドラインの作成と講習、認定個人情報保護団体
   に関する情報提供等が念頭に置かれている。

■ 苦情の処理のあっせん等
第十三条 地方公共団体は、個人情報の取扱いに関し事業者と本人との間に生じた苦情
が適切かつ迅速に処理されるようにするため、苦情の処理のあっせんその他必要な措置
を講ずるよう努めなければならない。

(1)「事業者と本人との間に生じた苦情」:9条の場合と同様に、地方公共団体の個
   人情報保護施策に対する苦情は含まない。
(2)「苦情処理のあっせん」:住民等から地方公共団体に寄せられた苦情を関連事業
   者、認定個人情報保護団体、国民生活センター、主務大臣等に提供し、その処理
   を促すことをいう。

■■ 第四節 国及び地方公共団体の協力
■ 国及び地方公共団体の協力
第十四条 国及び地方公共団体は、個人情報の保護に関する施策を講ずるにつき、相協
力するものとする。


■■■ 第四章 個人情報取扱事業者の義務等
■■ 第一節 個人情報取扱事業者の義務
■ 利用目的の特定
第十五条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的
(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
2 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の
関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

(1)「個人情報を取り扱うに当たっては」:「個人データ」ではなく、「個人情報
   全体について、利用目的の特定義務が及ぶ。
(2)「その利用の目的」:個人情報の個別の処理ごとの利用目的ではなく、究極的な
   利用目的を意味するため、個人情報取扱事業者ごとに利用目的が定まることにな
   る。
(3)「できる限り特定しなければならない」:どの程度まで具体的に特定すべきか
   は、個人情報の種類・性質、個人情報取扱事業者事業の種類・性質等により異
   なる。
(4)「利用目的を変更する場合」:変更前の利用目的と相当の関連性を有する範囲に
   限って、目的変更は認められている。社会通念に照らして客観的に合理的と認め
   られる範囲を超えた利用は、目的変更とは認められず、目的外の利用となるた
   め、原則として本人の同意を得る必要がある。

■ 利用目的による制限
第十六条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定によ
り特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならな
い。
2 個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業
を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで
、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報
を取り扱ってはならない。
3 前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得
ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であっ
て、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行
することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該
事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

【1】1項
(1)「あらかじめ本人の同意を得ないで」:あらかじめ本人の同意を得た場合は、利
   用目的による制限の例外は認められる。
(2)本人の同意とは、具体的に利用目的を示した上での明示的合意でなければなら
   ず、包括的事前同意は認められない。
(3)同意を得る方式に制限はないため、口頭による同意も可能。
(4)同意を得るために本人との連絡にあたって当該個人情報を利用すること、個人情
   報を匿名化するために当該個人情報を加工することは、本人の同意がなくても認
   められる。

【2】2項
(1)「他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した
   場合は、(略)当該個人情報を取り扱ってはならない」:合併等により事業を承
   継した個人情報取扱事業者は、資産として承継した個人情報に関して、承継前に
   おける当該個人情報の利用目的の範囲内でのみ利用することができる。本項が適
   用されるのは、事業を承継させる者と承継する者のいずれもが個人情報取扱事業
   者である場合に限る。

【3】3項:利用目的制限の例外
(1)「法令に基づく場合」:法律および法律に基づく命令、条例に具体的根拠がある
   場合を指す。例:所得税法(225条1項)が定める税務署長に対する支払調書
   の提出
(2)「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって」:「人」に
   は、自然人だけでなく法人その他の団体および本人の場合も含む。本号が適用さ
   れるためには、人の生命、身体又は財産を侵害する恐れがあることのみならず、
   個人情報の利用によって当該法益を保護しうることも合理的に認められなければ
   ならない。
(3)「本人の同意を得ることが困難であるとき」:(ア)本人の同意を得ることが物
   理的に不可能または困難な場合、(イ)本人に同意を求めたが同意を拒否された
   場合、(ウ)本人に同意を求めることによって違法または不当な行為を助長する
   恐れがある場合、のいずれをも含む。
(4)「公衆衛生の向上」:疾病の予防、治療のための研究等
(5)「児童の健全な育成の推進」:児童虐待を防止することや、非行の防止

■ 適正な取得
第十七条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得しては
ならない。

(1)「偽り・・・の手段」:第三者に個人情報を転売するという利用目的を隠して、
   統計調査のためというような虚偽の目的を告げて個人情報を取得すること。
(2)「その他不正の手段」:私的な行為の写真を隠し撮りすること、判断能力の乏し
   い子どもを通じて、親の同意なしに親に関する個人情報を取得すること等。
(3)偽りその他不正の手段により取得された個人情報であることを明確に認識しなが
   ら二次的に取得することも本条に違反する。
★ いわゆる名簿業者から名簿を購入すること自体は、個人情報保護法は禁止していな
  いが、名簿業者が偽りその他不正の手段により個人情報を取得している場合には、
  本条に抵触することになる。

■ 取得に際しての利用目的の通知等
第十八条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目
的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表し
なければならない。
2 個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結するこ
とに伴って契約書その他の書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認
識することができない方式で作られる記録を含む。以下この項において同じ。)に記載
された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本
人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなけ
ればならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合
は、この限りでない。
3 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的につい
て、本人に通知し、又は公表しなければならない。
4 前三項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
一 利用目的を本人に通知し、又は公表することにより本人又は第三者の生命、身体、
財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
二 利用目的を本人に通知し、又は公表することにより当該個人情報取扱事業者の権利
又は正当な利益を害するおそれがある場合
三 国の機関又は地方公共団体が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必
要がある場合であって、利用目的を本人に通知し、又は公表することにより当該事務の
遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
四 取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合

【1】1項
(1)「個人情報を取得した場合は」:本条は「個人情報」全般について、利用目的を
   通知または公表する義務を課している。
(2)「その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない」:通知の方法
   は、書面による方法に限らず、電子メールやファクシミリ、口頭による方法も認
   められる。公表の方法も、官報・公報・新聞等への掲載に限らず、インターネッ
   ト上での公表、パンフレットの配付、事業所の窓口等への書面の掲示・備付けを
   含む。

【2】2項
(1)商品やサービスの申込書、アンケート調査票、懸賞の応募ハガキ等に個人情報
   記載を求める場合

【3】4項
(1)1号:本人または第三者の権利利益の侵害のおそれがある場合に認められる例外
   を定めている。「おそれ」の有無の判断に際しては、個人情報取扱事業者の単な
   る主観的な可能性では足りず、客観的な蓋然性がなければならない。
(2)2号:個人情報取扱事業者の権利または正当な利益の侵害の恐れがある場合に認
   められる例外を定めている。正当といえない利益は保護されない。
(3)3号:行政主体の事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるときに認められる例外
   を定めている。
(4)4号:通知等によりもたらされる利益がないこと、それにもかかわらず通知等を
   義務づけることは個人情報取扱事業者にとって過度な負担となるため。

■ データ内容の正確性の確保
第十九条 個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人デー
タを正確かつ最新の内容に保つよう努めなければならない。

(1)利用目的に照らして最新の状態に更新し続けることが必要である場合等に限られ
   る。
★ 常に「正確かつ最新の内容に保つ」べき義務まではない。
(2)正確かつ最新の内容:利用目的に照らして最新の事実と一致することをいう。
   「事実」のみが対象となり、「評価」は本条の対象外である。

■ 安全管理措置
第二十条 個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損
防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならな
い。

(1)滅失:個人データが失われること
(2)き損:個人データの内容が意図しないかたちで変わってしまったり、内容は不変
   であっても利用できない状態になること
(3)安全管理のために必要な措置:管理責任者を定めたり、個人情報にアクセスする
   ことが認められる者の範囲を限定したり、セキュリティ監査の体制を整備した
   り、保管場所に施錠したり、個人情報保護の職員研修を行ったり、委託契約にお
   ける安全管理の条項を整備したりする等の組織的な対応と、アクセス記録のログ
   が保存されるようなソフトウェアを利用したり、情報を暗号化したり、ファイア
   ーウォールを設置したりする等の技術的対応がある。
(4)19条の正確性の確保(努力義務)とは異なり、義務規定になっている。

■ 従業者の監督
第二十一条 個人情報取扱事業者は、その従業者に個人データを取り扱わせるに当たっ
ては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な
監督を行わなければならない。

(1)従業者:個人情報取扱事業者の組織内において、事業者の指揮命令系統に属し、
   事業者の業務に従事している者であれば足り、事業者雇用関係にあることは要
   件ではない。よって、派遣労働者であっても、個人情報保護法うえでは派遣先
   「従業者」に該当する。
(2)20条の規定に基づく安全管理措置を従業者が遵守することを確保するために、
   個人情報取扱事業者は、従業者に対する監督責任を負い、監督責任を懈怠したた
   めに、従業者が安全管理措置を懈怠することを防止できなかった場合には、事業
   者も本条違反の責任を問われることになる。

■ 委託先の監督
第二十二条 個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場
合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者
に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

(1)「個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合」:個人データの入力・編
   集・出力等の情報処理を行うことを内容とする契約を締結して、当該処理を行わ
   せることをいう。
(2)「個人データの安全管理が図られるよう」:本条は20条の安全管理措置の中
   で、委託先の監督を特に明記したもの。受託者自身が個人情報取扱事業者である
   場合には、受託者自ら20条に基づく安全管理措置を講ずる義務を負うと同時
   に、本条に基づき委託者である個人情報取扱事業者の監督にも服することにな
   る。
(3)「必要かつ適切な監督」:委託契約の中に、20条に基づく安全管理措置を講ず
   る受託者の義務を盛り込むのみでは、必要かつ適切な監督を行ったことにはなら
   ず、当該契約内容が遵守されているかを監督しなければならない。

■ 第三者提供の制限
第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同
意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得
ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であっ
て、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行
することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該
事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
2 個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データについて、本人の求めに応
じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合
であって、次に掲げる事項について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知
り得る状態に置いているときは、前項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に
提供することができる。
一 第三者への提供を利用目的とすること。
二 第三者に提供される個人データの項目
三 第三者への提供の手段又は方法
四 本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止する
こと。
3 個人情報取扱事業者は、前項第二号又は第三号に掲げる事項を変更する場合は、変
更する内容について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置
かなければならない。
4 次に掲げる場合において、当該個人データの提供を受ける者は、前三項の規定の適
用については、第三者に該当しないものとする。
一 個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱い
の全部又は一部を委託する場合
二 合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合
三 個人データを特定の者との間で共同して利用する場合であって、その旨並びに共同
して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的
及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称について、あらかじ
め、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。
5 個人情報取扱事業者は、前項第三号に規定する利用する者の利用目的又は個人デー
タの管理について責任を有する者の氏名若しくは名称を変更する場合は、変更する内容
について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置かなければ
ならない。

【1】1項
(1)「第三者」:個人情報取扱事業者であるか否かを問わず、また、当該個人情報
   扱事業者のグループ会社や連結会社であっても原則として第三者に該当する。
(2)「法令に基づく場合」(1項1号):「法令」には、法律、法律に基づく命令、
   条例を含むが、訓令・通達等の行政規制は含まない。
(3)「本人の同意を得ることが困難であるとき」(1項2号):物理的に同意を得難
   い場合に限られず、悪質なクレーマーであることの情報のように本人が同意する
   ことが社会通念上期待しがたい場合等も含む。
(4)「法令の定める事務」(1項3号):国の機関や地方公共団体の所掌する事務で
   あることが法令で定められていること(組織規範が存在する事務であること)を
   意味し、個別の作用についての根拠規範まで存在することを要しない。
(5)「当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき」(1項3号):同意を得よ
   うとすることにより調査の密行性が失われ、証拠湮滅が行われるおそれがあった
   り、同意を得るべき者がきわめて多数にのぼり、同意を義務づけると、実際上、
   協力が困難になる場合等である。

【2】2項
(1)住宅地図業者、データベース業者等の個人情報取扱事業者が、第三者に提供する
   こと自体を利用目的として取得した個人データについて、本人の求めに応じて当
   該本人が識別される個人データの第三者への提供と停止すること(オプトアウ
   ト)としている場合である。
(2)「本人が容易に知りうる状態に置いているときは」:一時的な公表では足りず、
   官報、公報、新聞等に掲載する場合には、継続的に掲載することが求められる。
   その他、個人情報取扱事業者の事務所に掲示したり、ホームページに掲載したり
   する方法も認められる。

【3】3項
(1)本人がオプトアウトの権利を行使すべきかを判断する際の重要な考慮要素である
   「第三者に提供される個人データの項目」(前項2号)及び「第三者への提供の
   手段または方法」(前項3号)を変更する場合は、事前に本人に通知し、または
   本人が容易に知りうる状態に置かなければならない。

■ 保有個人データに関する事項の公表等
第二十四条 個人情報取扱事業者は、保有個人データに関し、次に掲げる事項につい
て、本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む。)に置か
なければならない。
一 当該個人情報取扱事業者の氏名又は名称
二 すべての保有個人データの利用目的(第十八条第四項第一号から第三号までに該当
する場合を除く。)
三 次項、次条第一項、第二十六条第一項又は第二十七条第一項若しくは第二項の規定
による求めに応じる手続(第三十条第二項の規定により手数料の額を定めたときは、そ
の手数料の額を含む。)
四 前三号に掲げるもののほか、保有個人データの適正な取扱いの確保に関し必要な事
項として政令で定めるもの
2 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの利用目
的の通知を求められたときは、本人に対し、遅滞なく、これを通知しなければならな
い。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 前項の規定により当該本人が識別される保有個人データの利用目的が明らかな場合
二 第十八条第四項第一号から第三号までに該当する場合
3 個人情報取扱事業者は、前項の規定に基づき求められた保有個人データの利用目的
を通知しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければ
ならない。

【1】1項
(1)本人が開示等の求めをする上での前提となる情報へのアクセスを可能にすること
   によって、開示等の求めの実効性を確保するとともに、個人情報取扱事業者によ
   る保有個人データの取扱いに係る基礎的情報を公開することによって、保有個人
   データの取扱いの公平性を確保することを目的としている。
(2)「本人の知りうる状態」:官報、新聞、テレビ等で一度知らせれば足りるという
   ものではなく、継続的・恒常的にアクセス可能にしておかなければならない。
(3)「すべての保有個人データの利用目的」:単一のデータベースにおいて、異なる
   利用目的の保有個人データが管理されている場合、「利用目的」は個々の個人情
   報データベース等ごとに示す必要はなく、保有個人データ全体の利用目的を示せ
   ば足りる。
(4)「第十八条第四項第一号から第三号までに該当する場合」:いずれも、利用目的
   を本人に知らせることによる支障にかんがみ、利用目的の通知を要しないとされ
   ている場合であり、本条1項に基づき本人の知りうる状態に置くことも同様の理
   由で避けるべきであるため、義務を免除している。他方、18条4項4号の場合
   は、「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」であるが、
   「取得の状況」からみて利用目的が明らかであったとしても、保有している状況
   の下で利用目的が当然に明らかであるとはいえないため、この場合には利用目的
   を本人の知りうる状態に置く義務を課すこととしている。
(5)3号:利用目的の通知、開示、訂正等、利用停止等、第三者提供の停止の場合で
   ある。
(6)4号:当該個人情報取扱事業者が行う保有個人データの取扱いに関する苦情の申
   出先、当該個人情報取扱事業者が認定個人情報保護団体の対象事業者である場合
   にあっては、当該認定個人情報保護団体の名称および苦情の解決の申出先である
   (施行令5条)。

【2】2項
(1)1項2号で経常的に本人の知りうる状態に置かれるのは保有個人データ全体とし
   ての利用目的であるため、利用目的が複数ある場合、本人の保有個人データの利
   用目的がその中のどれであるかが明らかでない場合が生じる。本項は、このよう
   な場合に、1項2号に基づく措置を補完するために設けられた規定である。
(2)本人以外の第三者(代理人の場合を除く。)からの利用目的の通知の求めは認め
   られない。

■ 開示
第二十五条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データ
の開示(当該本人が識別される保有個人データが存在しないときにその旨を知らせるこ
とを含む。以下同じ。)を求められたときは、本人に対し、政令で定める方法により、
遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない。ただし、開示することによ
り次の各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができ
る。
一 本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
二 当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場

三 他の法令に違反することとなる場合
2 個人情報取扱事業者は、前項の規定に基づき求められた保有個人データの全部又は
一部について開示しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知
しなければならない。
3 他の法令の規定により、本人に対し第一項本文に規定する方法に相当する方法によ
り当該本人が識別される保有個人データの全部又は一部を開示することとされている場
合には、当該全部又は一部の保有個人データについては、同項の規定は、適用しない。

【1】1項
(1)但書:本条1項1号から3号に該当する部分が一部にとどまる場合には、全部を
   不開示にするのではなく、開示可能な部分は開示すべきことを示している。

【2】2項
(1)通知の方法は限定されていないので、口頭による通知も違法ではない。

【3】3項
(1)他の法令の規定による開示の例としては、自動車安全運転センターが申請者に対
   して行う運転経歴証明、交通事故証明等(自動車安全運転センター法)、組合員
   名簿を組合員および組合の債権者の閲覧に供する場合(消費生活協同組合法)等
   がある。

■ 訂正等
第二十六条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データ
の内容が事実でないという理由によって当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削
除(以下この条において「訂正等」という。)を求められた場合には、その内容の訂正
等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の
達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保
有個人データの内容の訂正等を行わなければならない。
2 個人情報取扱事業者は、前項の規定に基づき求められた保有個人データの内容の全
部若しくは一部について訂正等を行ったとき、又は訂正等を行わない旨の決定をしたと
きは、本人に対し、遅滞なく、その旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む。)を
通知しなければならない。

(1)「内容が事実でないという理由によって」:訂正等の求めの対象となるのは「事
   実」であるから、「評価」は対象外であるが、「評価」の部分に誤記があるよう
   な場合にも本条に基づく訂正等の求めの対象とすることが許される。
(2)「利用目的の達成に必要な範囲内において」:利用目的の達成に必要ではない場
   合には訂正義務は生じない。また、利用目的の達成に必要な時点までに訂正を行
   えばよい。
(3)「その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならな
   い」:事実でないことが判明した場合を意味しており、事実か否か不明の場合に
   は訂正等と行う義務は生じない。また、訂正等の求めの対象となるのは「保有個
   人データの内容」であり、誤った内容の保有個人データに基づき意思決定がなさ
   れていたとしても、その是正は本条の射程外の問題となる。
(4)2項:開示の場合と異なり、訂正等の場合には、訂正等が行われたか否かを本人
   に通知しなければ、本人はその事実を認識し得ないため、訂正等を行った場合
   も、行わなかった場合も本人への通知を義務づけている。

■ 利用停止等
第二十七条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データ
が第十六条の規定に違反して取り扱われているという理由又は第十七条の規定に違反し
て取得されたものであるという理由によって、当該保有個人データの利用の停止又は消
去(以下この条において「利用停止等」という。)を求められた場合であって、その求
めに理由があることが判明したときは、違反を是正するために必要な限度で、遅滞な
く、当該保有個人データの利用停止等を行わなければならない。ただし、当該保有個人
データの利用停止等に多額の費用を要する場合その他の利用停止等を行うことが困難な
場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるとき
は、この限りでない。
2 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データが第二十
三条第一項の規定に違反して第三者に提供されているという理由によって、当該保有個
人データの第三者への提供の停止を求められた場合であって、その求めに理由があるこ
とが判明したときは、遅滞なく、当該保有個人データの第三者への提供を停止しなけれ
ばならない。ただし、当該保有個人データの第三者への提供の停止に多額の費用を要す
る場合その他の第三者への提供を停止することが困難な場合であって、本人の権利利益
を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
3 個人情報取扱事業者は、第一項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若
しくは一部について利用停止等を行ったとき若しくは利用停止等を行わない旨の決定を
したとき、又は前項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若しくは一部につ
いて第三者への提供を停止したとき若しくは第三者への提供を停止しない旨の決定をし
たときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

【1】1項
(1)「第十六条の規定に違反して取り扱われているという理由又は第十七条の規定に
   違反して取得されたものであるという理由によって」:16条は利用目的による
   制限について規定しており、17条は適正な取得について規定している。
(2)「当該保有個人データの利用停止等に多額の費用を要する場合」:目的外利用の
   制限に違反した個人データが一部含まれている名簿が既に市販されており、その
   刷り直しに多額の費用を要するような場合である。
(3)「本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置」:増刷時におけ
   る修正、損害賠償等である。ただしこの免責規定は、民事上、刑事上の免責まで
   意味するものではない。

【2】2項
(1)「第三者への提供の停止」:第三者に提供された個人データの回収までは含まれ
   ない。

■ 理由の説明
第二十八条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第三項、第二十五条第二項、第二十六
条第二項又は前条第三項の規定により、本人から求められた措置の全部又は一部につい
て、その措置をとらない旨を通知する場合又はその措置と異なる措置をとる旨を通知す
る場合は、本人に対し、その理由を説明するよう努めなければならない。

(1)説明の方法は限定されていないので、口頭による説明も違法ではない。理由は、
   不開示とする根拠条項および当該根拠条項に該当する事実を可能な範囲で示すこ
   とになる。

■ 開示等の求めに応じる手続
第二十九条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第二項、第二十五条第一項、第二十六
条第一項又は第二十七条第一項若しくは第二項の規定による求め(以下この条において
「開示等の求め」という。)に関し、政令で定めるところにより、その求めを受け付け
る方法を定めることができる。この場合において、本人は、当該方法に従って、開示等
の求めを行わなければならない。
2 個人情報取扱事業者は、本人に対し、開示等の求めに関し、その対象となる保有個
人データを特定するに足りる事項の提示を求めることができる。この場合において、個
人情報取扱事業者は、本人が容易かつ的確に開示等の求めをすることができるよう、当
該保有個人データの特定に資する情報の提供その他本人の利便を考慮した適切な措置を
とらなければならない。
3 開示等の求めは、政令で定めるところにより、代理人によってすることができる。
4 個人情報取扱事業者は、前三項の規定に基づき開示等の求めに応じる手続を定める
に当たっては、本人に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなければならな
い。

【1】1項
(1)開示等の求めの申出先、開示等の求めに際して提出すべき書面の様式その他の開
   示等の求めの方式、開示等の求めをする者が本人または代理人であることの確認
   の方法、手数料の徴収方法が政令で定められている(施行令7条)。開示等を求
   める理由を述べることは義務づけられていない。

【2】2項
(1)個人情報取扱事業者が、複数の営業所ごとまたは事業部門ごとに個人データを保
   有している場合、年度別に個人データを保有している場合等において、本人が開
   示等を求めているのがその中のどれであるかを特定するに足りる事項の提示を本
   人に求めることを認めている。

【3】3項
(1)政令では、未成年者または成年被後見人法定代理人、開示等の求めをすること
   につき本人が委任した代理人が認められている(施行令8条)。

【4】4項
(1)例えば、申請書に不必要に詳細な記載を求めたり不要な書類の添付を求めたりす
   ること、受付窓口を故意に不便な場所に設けること、郵送、ファクシミリ、電子
   メール等による求めを認めず、直接に書面を持参する方法のみ認めること、窓口
   の受付時間を極端に短くすること等が、「本人に過重な負担を課する」措置に該
   当する。

■ 手数料
第三十条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第二項の規定による利用目的の通知又は
第二十五条第一項の規定による開示を求められたときは、当該措置の実施に関し、手数
料を徴収することができる。
2 個人情報取扱事業者は、前項の規定により手数料を徴収する場合は、実費を勘案し
て合理的であると認められる範囲内において、その手数料の額を定めなければならな
い。

(1)個人情報取扱事業者が手数料を徴収しうるのは、利用目的の通知の求めと開示の
   求めの場合に限られる。
(2)結果として利用目的を通知しなかったり、開示しなかった場合にも、手数料を徴
   収することができることになる。
(3)「実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において」:手数料により利
   潤を得ることを認めるものではない。

■ 個人情報取扱事業者による苦情の処理
第三十一条 個人情報取扱事業者は、個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な
処理に努めなければならない。
2 個人情報取扱事業者は、前項の目的を達成するために必要な体制の整備に努めなけ
ればならない。

(1)個人データでなく、個人情報の取扱いに係るもの全てが対象となる。また、本人
   からの苦情に限定されていないので、何人からの苦情であってもよい。

■ 報告の徴収
第三十二条 主務大臣は、この節の規定の施行に必要な限度において、個人情報取扱事
業者に対し、個人情報の取扱いに関し報告をさせることができる。

(1)本条の報告徴収権は罰則(57条)により担保されているが、立入検査権は規定
   されていない。報告をさせる権限の行使は、報告義務を課す行為であり、行政不
   服審査法や行政事件訴訟法の抗告訴訟の対象となる処分であるが、行政手続法
   条1項14号により、不利益処分の手続規定は適用されない。

■ 助言
第三十三条 主務大臣は、この節の規定の施行に必要な限度において、個人情報取扱事
業者に対し、個人情報の取扱いに関し必要な助言をすることができる。

(1)助言の法的性格は行政指導(行政手続法2条6号)であり、行政指導は法律の留
   保に服さないと一般的に解されているから、本条は確認規定ということになる。
(2)助言は口頭で行ってもよいが。その趣旨・内容・責任者を明確にする必要がある
   (行政手続法35条1項)。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
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