こんにちは。特定社会保険労務士の田中です。
就業規則の規定ひとつで、会社が損害を受けることもあります。
この「就業規則の勘所」では、
良く見られる「就業規則の落とし穴」をご紹介します。
ぜひ、自社の就業規則をご確認ください
【 トラブル発生! 】
ソフト開発A社の契約社員Xは、1年の雇用契約を3回更新して、4年目の勤務をしています。
なお、雇用契約書には「退職金は無し」と明記されています。
Xは、エンジニアとしてのスキルは高く経験も豊富ですが、同僚を小馬鹿にするような態度を
取ったり、上司の指示を素直に聞かないなど、協調性に欠ける面が散見されました。
さて、昨今の不景気の折り、X社の業務も減少傾向にあり、人員削減をせざるを得なくなりました。
まずは、以前から問題視されていた契約社員Xの雇止めを決定し、直属上司のBリーダーから
本人に伝えました。
一方、X自身も、Bリーダーから何度か注意を受けたこともあり、自分自身の言動が問題視されている認識はあり、雇止めを受け入れました。
しかし、納得できない面もあり、ネットで労務関連の情報を収集した結果、
次のような結論に至りました。
『A社には契約社員用の就業規則が無い。
自分が入社時に渡されたのは正社員用の就業規則である。
この場合、自分には正社員の就業規則が適用される。
そして、その就業規則には3年以上勤務した者には退職金が支給されると明記してある。
たしかに、雇用契約書には退職金が支給されない旨が明記されているが、
就業規則より不利な条件の雇用契約は無効とされる。
したがって、自分には退職金を受ける権利がある。」
そして、「勤続3年として正社員と同様の退職金を支給して欲しい」
という主張を、内容証明郵便でA社の代表取締役あてに送付しました…
【ポイント】
会社では正社員以外にも「パートタイマー」や「契約社員」をはじめ、
「嘱託社員」、「準社員」などの雇用形態があります。
ところが、正社員には就業規則があるのに、それ以外の従業員に
適用される規則が無いことが散見されます。
もし、パートタイマーや契約社員などに就業規則が無い場合は、
正社員の就業規則が適用されることになります。
例えば、パートタイマーや契約社員には、退職金・賞与・休職・慶弔見舞金・
特別休暇・福利厚生などを適用しない方針でも、これらが全て適用されることになります。
【アクション】
会社の就業規則が次のいずれかとなっているか、ご確認ください。
1 就業規則に、「第○条、第○条、第○条はパートタイマーには適用しない」として、
適用除外の条文が設定してある。
2 就業規則に、「パートタイマーには別途、定めるパートタイマー就業規則を適用する」
と規定して、他の規則を作ってある。
【 補足 】
1 パートタイマー用の就業規則を作成するには、正社員用の就業規則から適用除外とすべき条文を
削除する形で作成すると、効率的ですし、就業規則と整合性が取れない表現や規定の発生を
防げます。
2 パートタイマー用に別規則を定める、と規定しながら、パートタイマー用の規則を
作成していない場合は、就業規則作成義務違反となりますので、早めに作成してください。
☆☆☆☆☆ 『就業規則の勘所』 ☆☆☆☆☆
その1 『パートタイマーや契約社員用の就業規則も作りましょう』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-153786/
その2 『身元保証には期限が有ります。必要に応じて更新しましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-154137/
その3 『試用期間について、免除・短縮・延長の規定を検討しましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-154342/
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一果腐りて万果損ず
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社会保険労務士 田中事務所 田中理文
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