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短時間労働者の社会保険の加入基準である「4分の3」について…

平成27年3月15日 第138号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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短時間労働者社会保険の加入基準である「4分の3」についての考察

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1.はじめに

パートタイマーやアルバイトなどの所謂「短時間労働者」についての社会保険
の適用はどうなのか。

週の所定労働時間が30時間未満であれば加入しなくてもいいのかといったご
相談を受けます。

年金事務所ごとに対応が違ったりもします。
「月に120時間以上働いている人は、全員2年間遡り加入させて下さい」と
いう年金事務所の職員もいました。当然、争いこちらの主張が通りましたが乱暴
な話です。
年金事務所ごとや担当者ごとに取り扱いが違う社会保険の適用。
しっかりと皆様にお伝えしなければ、真面目にやっていても、担当者が違えば
「2年間遡り加入」という理不尽な思いをされる経営者の方が増えると思い今
回のテーマとしました。

経営者の方が、短時間労働者社会保険の適用について正しい知識を持ってい
なければ、本来加入させなくてもいい労働者を加入させてしまうことになりま
す。
法律的には「加入できない」労働者を加入させるわけですから、加入させなく
てはいけない基準を下回る労働者を加入させることは、加入すべき人を加入さ
せないことと同様に法律違反になるのです。
今回はこの点を掘り下げてみたいと思います。

2.短時間労働者社会保険加入の法律的な根拠

(1) 内簡とは何か
 どのくらい働けば社会保険に加入させなければいけないのか。
この基準について、実は明確な基準は設けられていません。
 法律や通達といったものはないのです。
ではなぜ週30時間を基準として加入が判断されるのか。
役人から役人への内部文書である「内簡」という文書でこの基準が出されまし
た。
内簡とは、行政機関において、必要な事項を伝達するために、国から地方自治
体に対して送付される文書のことであり、「拝啓」などではじまる文書です。
以下、Wikipediaより引用してご説明をします。

法令や通達として規定するに馴染まない事項を伝達するために用いられる。
例として、法令で抽象的に示された規定について、規定を具体的に認定する際
の一定の基準や、内容が仔細にわたるため法令で規定するには馴染まない事項
などを参考として示すために用いられる例がある。
通達と異なり、内簡は下級行政庁を拘束しない。その具体的な違いは通達に反
する行政行為を下級行政庁がおこなえば通達違反で職務命令違反となるが、内
簡違反の行政行為をおこなっても職務命令違反にならない。実質的に内翰は行
政庁内の規定と考えてよい。
内翰に類似する行政庁内の規定として、通知、事務連絡が存在する。行政庁内
での拘束力の強さの序列は、強い順に、「通知」、「事務連絡」、「内簡」となる。

以上、引用終わり。

この様な拘束力の弱い文書で、短時間労働者社会保険への加入の基準が示さ
れているのです。

ではこの文書にはどの様な事が書かれているのでしょうか。

(2) 内簡の内容
内簡の文章をそのまま記載します。

拝啓 時下益々御清祥のこととお慶び申し上げます。
 健康保険及び厚生年金保険の事業運営に当たっては平素から格段のご尽力を
いただき厚く御礼申し上げます。
 さて、短時間就労者(いわゆるパートタイマー)にかかる健康保険及び厚生
年金保険被保険者資格の取り扱いについては、各都道府県、各社会保険事務
所において、当該地方の実情等を勘案し、各個別に取り扱い基準を定めるなど
によりその運用が行われているところです。
 もとより、健康保険及び厚生年金保険が適用されるべきな否かは、健康保険
法及び厚生年金保険法の趣旨から当該就労者が当該事業場と常用的使用関係に
あるかどうかにより判断すべきものですが、短時間就労者が当該事業場と常用
的使用関係にあるかどうかについては、今後の適用に当たり次の点に留意すべ
きであると考えます。
1 常用的使用関係にあるか否かは、当該就労者の労働日数、労働時間、就労
形態、職務内容等を総合的に勘案して認定すべきものであること。
2 その場合、1日又は1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が当該事
業場において同種の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間及び所定労働
日数のおおむね4分の3以上である就労者については、原則として健康保険
厚生年金保険被保険者として取り扱うべきものであること。
3 2に該当する者以外の者であっても1の趣旨に従い、被保険者として取り
扱うことが適当な場合があると考えられるので、その認定に当たっては、当該
就労者の就労の形態等個々具体的事例に即して判断すべきものであること。
なお、貴管下健康保険組合に対する周知方につきましても、あわせてご配慮願
います。
以上、要用のみご連絡申し上げます。
                               敬具
昭和55年6月6日
厚生省保険局保険課長
社会保険庁医療保険部健康保険課長
社会保険年金保険厚生年金保険課長

都道府県民生主管部(局)保険課(部)長殿

以上が内簡です。
これが4分の3ルールの根拠です。
内簡という強制力の無い文書でありますが、これをもとに行政は短時間労働者
社会保険の加入について判断しています。
加入しなければならないと行政が判断した場合には、100万からの金額が動
社会保険料。そもそも租税法定主義に反するのではないかという疑問があり
ますが、このルールが周知されているわけですから、この内簡の果たす役割は
大きいわけです。

では何が問題なのでしょうか。

3.4分の3の評価方法
(1)4分の3についての正しい評価方法
 内簡の問題点は「4分の3」の評価方法が明記されていないことです。
この評価方法が年金事務所や担当者ごとに違うことが法的安定性を欠かせる要
因なのです。

 先日ある年金事務所の職員が「月120時間以上働いている場合は加入しな
ければならない」と言い切った事例がありました。
 この120時間の法的根拠は全くありません。
週40時間の4分の3が30時間ですから、それに4を掛けた数字を絶対的な
基準だと示した乱暴なやりかたです。

 4分の3の評価方法が明確になっていない場合には、どの様なやり方が法的
に正しいと考えられるのか。

 答えは単純です。

4分の3の評価方法は、その方法が合理的である限り、全て正しいということ
になります。
年金事務所や健康保険組合は、その評価方法が合理的である限り、それを間違
いであると結論づけることは出来ません。
内簡が曖昧である以上、それを行う事は租税法定主義に反します。

例えば、小売店のようにゴールデンウィークや年末年始も働くような企業の場
合、年平均の月間所定労働時間は173.8になります。
この173.8に4分の3を掛けると130.35時間になり、この企業での
4分の3ルールの基準は130.35時間とすることも間違いではありません。

1日6時間が所定労働時間労働者で、週4勤務の場合、週24時間労働して
います。

4.5時間の週4勤務でも27時間。
週30時間未満だからどれも社会保険に加入させないという判断は間違いでは
無いのです。

間違いであると行政が判断する明確な根拠が無いからです。

どの方法も正しいと判断せざるを得ないのです。

法律で明確に定めていないということは、この様に解釈をすることが正しいわ
けです。
内簡の基準を拡大解釈して、あたかも強制力があると勘違いさせて加入をさせ
ることは、本来加入できない労働者を加入させることであり、これは違法行為
なのです。
この点も誤解が多いところです。

(2)計算が正しくても問題があるとされる場合

 前述した計算方法が正しい場合でも、「おかしい」と指摘されることがあります。
それは評価方法に一貫性の無い場合です。

 Aさんにはこの方法、Bさんにはあの方法といったように、その都度評価方
法が変わる場合には、何をもって4分の3とするのか明確ではありませんから、
行政が指導する余地が出てきます。
 社会保険に加入させたい労働者の評価方法は、なるべく少ない労働時間数で
も加入できる様なやりかた、加入させたくない労働者の評価方法は、なるべく
多い労働時間数が4分の3となる計算方法を選ぶなどと、恣意的な運用がなさ
れていればアウトです。
 問題があると判断されてしまいます。

 合理的な計算方法であり、それが一貫している場合に限り企業として年金事
務所等の調査に対応できるのです。

4.まとめ
 黒を白と主張することは社会保険労務士としても職業倫理に反します。
一方で、グレーを黒と決めつけることも同様に職業倫理に反します。
グレーを黒と決めつけることについては、それがあたかも正義であると勘違い
している方々がいますが、それは依頼者の権利を踏みにじる行為です。
 グレーはグレーで有り、白でも黒でもありません。
裁判所しかその判断は出来ません。
 グレーの場合には、依頼者の意思をくみ取り、その実現へ向けて全力で尽く
すことが法律家としての職責であります。

社会保険の加入についても、グレーを黒としておけば無難であると考えている
方も多いのですが、これは本来加入できない労働者を加入させるという違法行
為になる可能性もあるのです。

しっかりとした判断基準をもって、一貫した対応をしていくことにより、年金
事務所や担当者により判断が違う場合に対応できるのです。

残念ながら短時間労働者社会保険の加入に関しての法的安定性は、自ら勝ち
取るしかありません。

是非とも参考にして下さい。

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