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事業ブランド名を引き継いだ事業譲受人の責任

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第171号 2016-04-26

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法律相談ご案内
http://www.ishioroshi.com/btob/soudan_firstb.html

顧問弁護士契約顧問料)についての詳細
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_feeb.html
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前書き
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 本稿を執筆しております弁護士の石下(いしおろし)です。いつ
もご愛読ありがとうございます。

 弊所ではクライアント企業との信頼関係を維持し、継続的に支援
することを重要な業務の柱としております。その視点から、上場企
業から中小企業まで、多くのクライアントと顧問契約を締結しサー
ビスを提供しています。

 しかし少なからぬ企業の経営者は、「顧問税理士が必要なことは
分かる。でも、うちはトラブルもほとんどないから弁護士との付き
合いも少ないし、そもそも顧問弁護士って何をしてくれるのか分か
らない」とおっしゃいます。

 それで弊所では、この度、顧問弁護士がどんな場面でどんなサー
ビスを提供するのか、詳しい資料を準備しました。

 ご関心のある方はぜひ本稿末尾にあるご案内をご覧ください。

 では、本文にまいります。




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1 今回の判例  事業ブランド名を引き継いだ事業譲受人の責任
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東京地裁平成27年10月2日判決

 内装工事の設計・監理等を主たる業務とするA社は、ウェブサイ
ト等に社名の略称として「DWP」という記載をし、その名称を標
章として用いながら業務を行ってました。

 A社は業績不振に陥り、経営が厳しくなるにつれ、A社とは別の
法人を用いて事業を行うことを決め、知り合いの公認会計士B氏が
有する休眠会社C社を、A社の別法人として使うことにしました。

 そして、C社の商号を変更して、株式会社DWPとし、事業目的
もA社と同一のものにしました。また、代表取締役をA社の取締役
の中から選任し、本店所在地もA社と同じビルに変更しました。ま
たC社は、「DWP」の標章を名刺やホームページ、提案資料等に
使用していました。

 以上の事実のもと、A社の債権者たる銀行D社が、C社はA社か
ら事業譲渡を受けたとし、かつ、A社の標章である「DWP」を続
用したことから、C社はA社の債務弁済責任を負うべきであると
主張しました。




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2 裁判所の判断
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 裁判所は以下のように判断し、D社の請求を認めました。

● C社の設立の動機・経緯、設立者や取締役従業員の同一性、
事務所所在地の同一性、A社とC社との顧客紹介の関係などの点か
ら見れば、A社からC社には事業譲渡がなされたと認定できる。

● 「DWP」はA社がかねてより使用していた標章であり、A社
の営業主体を表すものとして業界で浸透し、ブランドカを有するに
至っている。

● C社は、「DWP」を従業員の名刺、ホームページ、提案資料
等に表示していたことから、A社という営業主体がそのまま存続し
ているとの外観を作出していた。

● それでC社は、営業譲渡後遅滞なく、自らがA社とは別の法人
であることを説明したなどの特段の事情がない限り、会社法22条
1項の類推適用により、A社の債務について弁済する義務を負う。




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3 解説
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(1)事業譲渡と商号の続用

 会社法22条1項は、事業譲渡において、譲受会社が譲渡会社の
商号(会社名)を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲
渡会社の事業によって生じた債務弁済する責任を負う、との原則
を定めています。

 それは、譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用すると、債権
者や第三者が、譲受会社と譲渡会社とを混同してしまうおそれがあ
り、このようなまぎらわしい外観を作り出したのが当該譲受会社で
あることから、その外観作出について責任を負うべき、という考え
によります。

 また本件では、会社名そのものを引き継いだものではなく、譲渡
会社が長年使っていた社名の略称であって譲渡会社の事業を表すブ
ランドとなっていたものを、譲受会社が使い続けたというケースで
すが、裁判所は、会社法22条1項を「類推適用」して、譲受会社
が、譲渡会社の債務について責任を負う旨判断しました。


(2)商号や略称の続用に関するリスク

 今回の事例は、譲渡会社と譲受会社が実質的に同一とも評価しう
る、いわゆる債務逃れ目的の詐害的な事例と評価しうるものです。
しかし本件の事例を離れ一般的な事業譲渡のことを考えても、商号
や、場合により事業ブランド名の続用にも、一定のリスクが伴うこ
とを考える必要があります。

 特に、一般に事業譲渡は、譲渡会社の債務を遮断するために採用
されるスキームであることを考えると、万一こうした「遮断」の効
果が生じないようなことになると、事業譲渡のスキームをとった意
味が半減してしまいますから、こうしたリスクは軽視できません。

 それで、譲受会社が会社法によって譲渡会社の債務を負う結果に
ならないか、事業譲渡の実行にあたり、専門家である弁護士のアド
バイスを求めることはたいへん重要であると思われます。


(3)詐害的な組織再編に関する会社法の改正規定

 最近、本件のような詐害的な組織再編に関わる訴訟が頻発してい
ることを受け、平成26年の会社法改正によってこの点を手当する
規定が定められました。

 具体的には、残存債権者を害することを知って譲渡会社が事業譲
渡した場合、残存債権者は、譲受会社に対し、承継した財産の価額
を限度として債務履行を請求することができる旨の規定です(会
社法23条の2第1項)。また、同様の詐害的行為がよく問題とな
会社分割にも、同様の趣旨の規定があります(会社法759条4
項等)。

 こうした規定は、債権者を害する詐害的な事業譲渡や会社分割
防止という点で、一定の役割を果たしていくものと思われます。




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4 弊所顧問弁護士契約~詳細な資料を用意しました
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 弊所では、顧問弁護士に関心があるものの、「顧問弁護士は結局
何をしてくれるの分からない」とお考えの方に、顧問弁護士につい
ての詳しい資料を準備しました。

 実は顧問弁護士の「使い道」は、経営・会社運営・ビジネス全般
に及び、きわめて多岐にわたります。

 「実はこんなにある、顧問弁護士のニーズ」を知ることのできる
資料は、次のページから、ご利用できます。会社名や個人情報を入
力する必要もありません。どうぞご覧ください。

 http://www.ishioroshi.com/biz/komon_siryou/




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本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。

ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
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【編集発行】
弁護士・弁理士 石下雅樹

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