━━☆━━━━━━━━━━━━━━研修
費用の返還━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏ C O N T E N T S┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏
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┏┏ ◇
従業員の足止め策としての研修
┏┏ ◇ 考え方(研修
費用の場合)
┏┏ ◇ 研修の性格を検討する
┏┏ ◇ インターンの講習手数料
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従業員の足止め策としての研修
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
●
労働契約不
履行に対する
違約金の定めは違法
労基法16条は、「
使用者は、
労働契約の不
履行について、
違約金を定め、または
損害賠償額を
予定する
契約をしてはならない」としています。
ちなみに労基法16条違反は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です(労基法119条)。
労基法16条が
使用者に対して
労働契約について
違約金を定め、又は
損害賠償を予定する
契約を
行うことを禁止している趣旨は、このような
契約を許せば、
労働者は
違約金又は
損害賠償予定
額を支払わされることをおそれ、自由意思に反して労働関係を強制されることになりかねない
ので、このような
契約を禁止し、そうした事態が生ずることをあらかじめ防止することにあり
ます。
終身
雇用という安定的な
雇用関係は、高度成長期には有効に機能しましたが、低成長の現在で
は余剰人員や、実力以上に高級な社員を抱え込む結果を招いてしまいます。このことは社員に
対しても、「」仕事の結果に責任を負う』という基本的な意識を失わせてしまうことにも繋が
りかねません。すなわち緊張感が無く、だらだら残業を助長したり、本来は高い能力を持つ人
材であっても高い
労働生産性を上げられない、という結果に結びつくわけです。
かつては芸娼妓
契約、徒弟
契約等の身分拘束を伴う
雇用制度があり、問題となっていました。
今日では、かっての前近代的な
違約金契約は影を潜めていますが、新しい形態の微妙な
契約の
効力が
賠償予定の禁止に照らして問題になっています。
●研修
費用の
労働者負担
その一つが、
従業員の足止め策として行われる研修終了後一定期間就労を義務づけ、その期間
内に
退職した場合には研修
費用を返還するという誓約書を取るもので、この誓約書の提出が退
職の自由を不当に奪うものではないかが問題となります。
専門的な技術や能力を有する人材を
採用するのではなく、
採用後に研修によって技術や能力を
育成していく日本的
雇用慣行の下では、研修期間は長く
費用もかかります。
手間隙をかけて育成した人材が簡単に転職したり引き抜かれては、会社としてたまったもので
はないからです。
留学
費用等の援助が純然たる
金銭貸借契約として定められた場合、すなわち、その返還が労働
契約の
履行・不
履行と無関係に定められ、帰国後自社で労働した場合(勤務継続したとき)は
返還義務を免除するということが定められているにすぎないと認められる場合は、労基法16条
には抵触しないと解されています。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
考え方(研修
費用の場合)
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
●足止め策か返還義務免除か
労働関係を不当に強要する研修
費用返還の約束は、労基法16条違反となります。
研修が以下の条件を満たす場合については、労基法16条には違反しないということになります。
(1)
消費貸借契約で、
(2)返済方法が研修後の勤務の有無に関係なく一般的に定められ、
(3)一定期間勤務したことにより単に返還義務が免除されるようになるだけのもの
●チェックポイント
こうした
契約が労基法16条に違反するかどうかについては、
契約の内容およびその実情、使用
者の意図、右
契約が
労働者の心理に及ぼす影響、基本となる
労働契約の内容およびこれとの関
連性などから総合的に検討する必要があるとされています。
【藤野金属事件 大阪高裁 s43.2.28】
技能検定のための研修
費用を社費で負担し、その代わり今後1年間
退職しないこと、もし
退職
したらその
費用として3万円支払う旨を誓約させることは、労基法16条に違反しないとされ
た。
その理由は、
1.研修が、溶接技量資格検定試験受験準備のための社内技能者訓練という
従業員に対する優遇
措置として行われたものであること、
2.
従業員のなかから希望者を募ったものであること、
3.研修
費用が合理的な実費の範囲内であって相当であることから、
費用の性質は、会社が講習を希望する
従業員に対する訓練
費用の立替金であるとされ、
4.立替金を返済するときは何時でも
退職することができることが説明されていること
5.その期間も短期間であることなどを総合的に判断して、
という実情から、
労働者に対して労働関係の継続を不当に強要するものとは考えられないの
で、上記誓約書は
労働契約の不
履行について
違約金を定め、または
損害賠償額を予定する
契約
をしたものとはいえない。
●労基法16条違反のケース
こうした
契約が労基法16条に違反するかどうかについては、
契約の内容およびその実情、使用
者の意図、
契約が
労働者の心理に及ぼす影響、基本となる
労働契約の内容およびこれとの関連
性などから、総合的に検討する必要があるとされています。
【新日本証券事件 東京地裁 h10.9.25】
社費で約1年半米国に留学しMBA(経営学修士号)を取得した社員が、帰国後約4年で
退職し
た。会社は留学
費用の返還を求めた。
留学終了後5年以内に自己都合により
退職したときは原則として留学に要した
費用を全額返還
させる旨の規程は海外留学後の会社への勤務を確保することを目的とし、留学終了後5年以内
に自己都合により
退職する者に対する制裁の実質を有するから、
労働基準法16条に違反し、無
効である、とされた。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 研修の性格を検討する
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
行政
通達によると、次の4つの場合は、
採用前研修と名が付いていても
労働時間とするとされ
ています(s23.10.23 基収3141号)
(1)研修内容が
労働契約の目的達成に直接必要のある事項である場合(それをしなければ、仕
事が円滑にできないこと等)
(2)研修内容が従来は入社後に行われていたような内容のものであるとき
(3)研修内容そのものは、労働力の質を高めるものに過ぎず、あるいは指揮命令の円滑遂行等
に必要のないものであっても、組織の一員としての職場適応性を身に付けさせるような場合
(4)
労働契約の目的達成と直接的な関係のない内容の研修であっても、その参加が強制され、
あるいは参加しないことによって何らかの不利益が予想される場合
したがって、第一に、入社内定後に行われた研修の性格が、
使用者が当然に行うべき研修なの
か、それとも希望者に対する優遇措置として行われたものなのか)を検討します。
使用者が行うべき研修であれば、研修
費用は当然
使用者が負担すべきものですから、研修
費用
を返還する必要はありません。この場合、誓約書は労基法16条に違反することになります。
希望者に対する優遇措置として研修が行われたときは、研修
費用は
使用者の立替金であるかど
うかが問題になります。
費用が研修実費の範囲内であれば、研修
費用の立替金と考えられますので、返還しなければなりません。
この場合、
費用を返還することを約して
退職することになります。
もし、請求
費用が研修
費用の範囲を超えていたという場合には、実費の範囲内で返還すれば問
題はないでしょう。
額が実費を大幅に超過し、研修後の就労約束違反に対する
違約金的要素がある場合には、返還
するまで
退職を認めないとしていることと合わせ、誓約 させることは労基法16条に違反する
可能性が生じると考えられます。
●
賃金を支払う場合の
賃金額は
労働時間と認められたとしても、研修を受けるということは実際の仕事をしているのとは異な
りますから、
最低賃金以上であればよく、通常業務と同様の
賃金を支払う必要はないといえま
す。
ただし、その旨を、あらかじめ明示しておくことが必要であり、それがない場合は、通常業務
と同じ
賃金を支払う民事上の義務が生じます。
●いかなる場合も「返還しなければ
退職できない」は違法
研修
費用を返還しないかぎり
退職は認めないとすることはもちろん違法で、こうした約束には
拘束されず、研修
費用を返還する約束をして
退職することができます。
労基法16条違反が成立し
契約が無効となる=即ち返還義務がなくなるのは、労働関係を不当に
強要する場合に限られます。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= インターンの講習手数料
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
『新入社員教育は
使用者が当然行わなければならない性質のものであるから、指導
の実態が一般の新入社員教育とあまり変わらないようなものの場合には、指導料を
使用者が要求する合理性はない。』
●労基法16条と講習手数料支払い
契約
賠償予定の禁止に関連してしばしば問題となるパターンの一つが、美容室と
従業員(美容師の
インターン)の間などに締結されている講習手数料の支払いの
契約です。
通常一定の期間内に
従業員が
退職した場合、
従業員が
採用時に遡って講習指導料を支払う旨の
誓約書が提出されているもので、この誓約書の提出が
退職の自由を不当に奪うものではないか
が問題とされます。
●考え方
インターンとして入社した者に対してなされる研修は、インターンが1人前の美容師になるた
めに一般的に行われる研修以上のものではないと考えられます。
また、インターンは仕事をしながら美容師の仕事を覚えていくので、インターンの
賃金も一人
前の美容師の
賃金より通常は低く設定されています。
とすれば、こうした研修に対して
使用者が講習料をとるような合理性はないといわなければな
りません。
お礼奉公しない限り月5万円の講習手数料を支払わなければならないとする
契約は、インター
ンの自由を束縛して
退職の自由を奪うことになります。
したがって、この
契約は労基法16条に違反し無効となります。他の店に移ってもなんら問題は
ありません。
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┏┏ ◇ 従業員の足止め策としての研修
┏┏ ◇ 考え方(研修費用の場合)
┏┏ ◇ 研修の性格を検討する
┏┏ ◇ インターンの講習手数料
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従業員の足止め策としての研修
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●労働契約不履行に対する違約金の定めは違法
労基法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について、違約金を定め、または損害賠償額を
予定する契約をしてはならない」としています。
ちなみに労基法16条違反は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です(労基法119条)。
労基法16条が使用者に対して労働契約について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約を
行うことを禁止している趣旨は、このような契約を許せば、労働者は違約金又は損害賠償予定
額を支払わされることをおそれ、自由意思に反して労働関係を強制されることになりかねない
ので、このような契約を禁止し、そうした事態が生ずることをあらかじめ防止することにあり
ます。
終身雇用という安定的な雇用関係は、高度成長期には有効に機能しましたが、低成長の現在で
は余剰人員や、実力以上に高級な社員を抱え込む結果を招いてしまいます。このことは社員に
対しても、「」仕事の結果に責任を負う』という基本的な意識を失わせてしまうことにも繋が
りかねません。すなわち緊張感が無く、だらだら残業を助長したり、本来は高い能力を持つ人
材であっても高い労働生産性を上げられない、という結果に結びつくわけです。
かつては芸娼妓契約、徒弟契約等の身分拘束を伴う雇用制度があり、問題となっていました。
今日では、かっての前近代的な違約金契約は影を潜めていますが、新しい形態の微妙な契約の
効力が賠償予定の禁止に照らして問題になっています。
●研修費用の労働者負担
その一つが、従業員の足止め策として行われる研修終了後一定期間就労を義務づけ、その期間
内に退職した場合には研修費用を返還するという誓約書を取るもので、この誓約書の提出が退
職の自由を不当に奪うものではないかが問題となります。
専門的な技術や能力を有する人材を採用するのではなく、採用後に研修によって技術や能力を
育成していく日本的雇用慣行の下では、研修期間は長く費用もかかります。
手間隙をかけて育成した人材が簡単に転職したり引き抜かれては、会社としてたまったもので
はないからです。
留学費用等の援助が純然たる金銭貸借契約として定められた場合、すなわち、その返還が労働
契約の履行・不履行と無関係に定められ、帰国後自社で労働した場合(勤務継続したとき)は
返還義務を免除するということが定められているにすぎないと認められる場合は、労基法16条
には抵触しないと解されています。
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考え方(研修費用の場合)
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
●足止め策か返還義務免除か
労働関係を不当に強要する研修費用返還の約束は、労基法16条違反となります。
研修が以下の条件を満たす場合については、労基法16条には違反しないということになります。
(1)消費貸借契約で、
(2)返済方法が研修後の勤務の有無に関係なく一般的に定められ、
(3)一定期間勤務したことにより単に返還義務が免除されるようになるだけのもの
●チェックポイント
こうした契約が労基法16条に違反するかどうかについては、契約の内容およびその実情、使用
者の意図、右契約が労働者の心理に及ぼす影響、基本となる労働契約の内容およびこれとの関
連性などから総合的に検討する必要があるとされています。
【藤野金属事件 大阪高裁 s43.2.28】
技能検定のための研修費用を社費で負担し、その代わり今後1年間退職しないこと、もし退職
したらその費用として3万円支払う旨を誓約させることは、労基法16条に違反しないとされ
た。
その理由は、
1.研修が、溶接技量資格検定試験受験準備のための社内技能者訓練という従業員に対する優遇
措置として行われたものであること、
2.従業員のなかから希望者を募ったものであること、
3.研修費用が合理的な実費の範囲内であって相当であることから、
費用の性質は、会社が講習を希望する従業員に対する訓練費用の立替金であるとされ、
4.立替金を返済するときは何時でも退職することができることが説明されていること
5.その期間も短期間であることなどを総合的に判断して、
という実情から、労働者に対して労働関係の継続を不当に強要するものとは考えられないの
で、上記誓約書は労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約
をしたものとはいえない。
●労基法16条違反のケース
こうした契約が労基法16条に違反するかどうかについては、契約の内容およびその実情、使用
者の意図、契約が労働者の心理に及ぼす影響、基本となる労働契約の内容およびこれとの関連
性などから、総合的に検討する必要があるとされています。
【新日本証券事件 東京地裁 h10.9.25】
社費で約1年半米国に留学しMBA(経営学修士号)を取得した社員が、帰国後約4年で退職し
た。会社は留学費用の返還を求めた。
留学終了後5年以内に自己都合により退職したときは原則として留学に要した費用を全額返還
させる旨の規程は海外留学後の会社への勤務を確保することを目的とし、留学終了後5年以内
に自己都合により退職する者に対する制裁の実質を有するから、労働基準法16条に違反し、無
効である、とされた。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 研修の性格を検討する
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
行政通達によると、次の4つの場合は、採用前研修と名が付いていても労働時間とするとされ
ています(s23.10.23 基収3141号)
(1)研修内容が労働契約の目的達成に直接必要のある事項である場合(それをしなければ、仕
事が円滑にできないこと等)
(2)研修内容が従来は入社後に行われていたような内容のものであるとき
(3)研修内容そのものは、労働力の質を高めるものに過ぎず、あるいは指揮命令の円滑遂行等
に必要のないものであっても、組織の一員としての職場適応性を身に付けさせるような場合
(4)労働契約の目的達成と直接的な関係のない内容の研修であっても、その参加が強制され、
あるいは参加しないことによって何らかの不利益が予想される場合
したがって、第一に、入社内定後に行われた研修の性格が、使用者が当然に行うべき研修なの
か、それとも希望者に対する優遇措置として行われたものなのか)を検討します。
使用者が行うべき研修であれば、研修費用は当然使用者が負担すべきものですから、研修費用
を返還する必要はありません。この場合、誓約書は労基法16条に違反することになります。
希望者に対する優遇措置として研修が行われたときは、研修費用は使用者の立替金であるかど
うかが問題になります。
費用が研修実費の範囲内であれば、研修費用の立替金と考えられますので、返還しなければなりません。
この場合、費用を返還することを約して退職することになります。
もし、請求費用が研修費用の範囲を超えていたという場合には、実費の範囲内で返還すれば問
題はないでしょう。
額が実費を大幅に超過し、研修後の就労約束違反に対する違約金的要素がある場合には、返還
するまで退職を認めないとしていることと合わせ、誓約 させることは労基法16条に違反する
可能性が生じると考えられます。
●賃金を支払う場合の賃金額は
労働時間と認められたとしても、研修を受けるということは実際の仕事をしているのとは異な
りますから、最低賃金以上であればよく、通常業務と同様の賃金を支払う必要はないといえま
す。
ただし、その旨を、あらかじめ明示しておくことが必要であり、それがない場合は、通常業務
と同じ賃金を支払う民事上の義務が生じます。
●いかなる場合も「返還しなければ退職できない」は違法
研修費用を返還しないかぎり退職は認めないとすることはもちろん違法で、こうした約束には
拘束されず、研修費用を返還する約束をして退職することができます。
労基法16条違反が成立し契約が無効となる=即ち返還義務がなくなるのは、労働関係を不当に
強要する場合に限られます。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= インターンの講習手数料
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
『新入社員教育は使用者が当然行わなければならない性質のものであるから、指導
の実態が一般の新入社員教育とあまり変わらないようなものの場合には、指導料を
使用者が要求する合理性はない。』
●労基法16条と講習手数料支払い契約
賠償予定の禁止に関連してしばしば問題となるパターンの一つが、美容室と従業員(美容師の
インターン)の間などに締結されている講習手数料の支払いの契約です。
通常一定の期間内に従業員が退職した場合、従業員が採用時に遡って講習指導料を支払う旨の
誓約書が提出されているもので、この誓約書の提出が退職の自由を不当に奪うものではないか
が問題とされます。
●考え方
インターンとして入社した者に対してなされる研修は、インターンが1人前の美容師になるた
めに一般的に行われる研修以上のものではないと考えられます。
また、インターンは仕事をしながら美容師の仕事を覚えていくので、インターンの賃金も一人
前の美容師の賃金より通常は低く設定されています。
とすれば、こうした研修に対して使用者が講習料をとるような合理性はないといわなければな
りません。
お礼奉公しない限り月5万円の講習手数料を支払わなければならないとする契約は、インター
ンの自由を束縛して退職の自由を奪うことになります。
したがって、この契約は労基法16条に違反し無効となります。他の店に移ってもなんら問題は
ありません。
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