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規定も何もない会社

★規定も何もない会社★

 基準法では、パートであろうが常用労働者が10人以上の事業所では就業規則
を制定、周知し、届け出る義務があるのはご存知と思います。一方、9人以下
の規模の事業所では何らの義務もないため、規定も何もない、作る気もないと
いう会社も多く存在します。社労士としても営業で脅しの手が使えず商売にな
りにくい。

 このような会社が従業員採用する際、雇用契約書雇入通知書を交付する
ということもほとんどないようです。「明日から来てね」、「わかりました」
のやりとりで終了。細かい労働条件を質問するようなうるさい志望者は採らな
いと公言する社長も。中には、雇ってから給料いくらにするか算段するなんて
ケースもあります。

 このような会社では、従業員も少なく同族的な手法で特に問題なく推移する
ことも多いのですが、一旦揉め出すと感情論が先に立ち、解決が難しくなりが
ちです。しかし、従業員の方も知識が少ないので、現実には社長が押し切り、
不満を抱えたまま身を引くケースがほとんどです。

 もちろん小さな会社でも規定を作成した方がいいのは当然ですが、コスト的
にコンサルに依頼もできず、市販の規定集は汎用的過ぎて使いづらいという声
も聞きます。別に今困ってるわけじゃないし、まっ、後で考えよう。というこ
とで何もない状態を引きずるのが通例。
 
 意外と多いのが、就業規則作成義務のない会社は、労働契約書や雇入通知書
も不要だろうと考えている社長さん。
 従業員雇用するにあたっては、労働条件を明示することになっていますが、
特に賃金労働時間等の主要な労働条件は書面にて明示しなければなりません。
10人未満云々は就業規則だけの話で、労働契約書または雇入通知書は全てのケ
ースが対象となります。

 もし、この勘違いをそのまま放っておいたらどうなるか。
 少なくとも口約束でも賃金労働時間は提示してるはずなので、基準法上の
問題はともかく労働契約自体は有効です。とりあえずはこれでもいいのですが、
後になって辞めてもらう時に面倒なことになりかねません。

 特に、パートのような契約期間がある場合、「今月で終わりね」と言っても
すんなり納得してもらえる保証はなく、相手に「そんなの聞いてない」と言わ
れたらどうにもなりません。

 じゃあ解雇するかといっても、就業規則自体がないとかなり困難になります。
よく、就業規則がないと懲戒解雇普通解雇もできないと言われていますが、
普通解雇の方は可能です。ただ、根拠となる就業規則がないため、合理性や正
当性が厳格に解釈されます。よくある「そろそろ暇になりそうだから」てな程
度では、まず不可能です。また、就業規則作成義務に違反している事情がある
ことから、揉めれば揉めるほど事業主に不利に働きます。

 解雇以外でも、根拠がない以上、定年とかの理由付けも困難です。従来から
口頭であれ何歳が定年と伝えてあり、実際、特定年齢で多くの従業員退職
ているという慣習があれば別ですが、揉めればやはり面倒です。結局は相手次
第ですが、脅し半分で自己都合として退職させている事例も多いです。

 これ以外でも、しっかりした根拠を作っておかないと従来の慣行が会社に不
利に働くことが考えられます。例えば、以前、ある人に思いつきで払った慶弔
金や退職金があると、同じ要求を断れる根拠がありません。その他にも、助成
金が受給できないとかの問題も生じます。

 同様に36協定も、時間外やらせる場合は会社規模に関係なく締結が必要です。
少なくとも私が営業した会社のうち、上記のような会社で協定があった事例は
皆無でした。なお、会社組織でなく個人商店でも全く同じですので念のため。

 全ての会社で就業規則を整備しろとは申しませんが、少なくとも雇用契約書
又は雇入通知書等は必ず書面で作成し、その中に最低限の事項を記載しておく
べきです。
 いわゆる絶対的記載事項はもちろんのこと、できれば遵守事項や懲戒項目、
今後の改定時の扱い等も入れておくとベターです。作成次第では結構な枚数に
なるでしょう。ヘタな会社の就業規則と同等の分量にもなり得ます。
 こう考えると、やはり就業規則作った方が早いのかも。

 小さな会社の規定作成の問題は、いわば法の空白かも知れません。規定が不
要ならヘタな足かせもないので社長にとってはやり易い。何でもありの、言わ
ば自分が法律ということです。大企業でこれやると、どこぞの会長と同じ憂き
目に。
 以前短期間在籍した洋菓子メーカーを思い出した。社長の口癖「ここはボク
の会社だよ」


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