相談の広場
団体の職員をしています。私はこの団体に雇われたものですが、役員は某企業の社員が、その社を休職し、こちらに出向してきている状況です。
今回相談したいことは
① 私の勤務先には「規約・規程集」なるものはあるが、就業規則というものはない。名称が就業規則でなくとも、内容が就業規則同様ならば構わないものなのか?
②「規約・規程集」の中に、『・・・については労働協約を準用する』とある。この協約とは、役員が在籍している企業とその労働者代表が締結したもので、私達職員の代表が採用者である団体役員と締結した協約ではない、言ってみれば“よその会社の協約”であり、その協約の効力が私達にも及ぶのか?
の2点です。
前任の労働保険担当からは、「職安等で就業規則を持ってきてといわれても、適当にごまかしておけば大丈夫だから。どうしても必要と言われたら規約・規程集の該当しそうな項目のコピーを持っていって、規約・規程集そのものは持っていかないでね。労働協約はなおさら持って行ってはダメよ」と引き継ぎましたので、どこか後ろ暗い思いは担当として持っていたようです。
今の職場に採用されてからずっと、就業規則がないことに疑問を抱いていました。今回、総務部門への異動となったものですから、これを機にアドバイスをいただき、直すべき所は直すよう、上司に話をしてみようと思っています。
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> ① 私の勤務先には「規約・規程集」なるものはある
>が、就業規則というものはない。名称が就業規則でなくと
>も、内容が就業規則同様ならば構わないものなのか?
・・・内容が労働基準法第89条第1項第1号~10号に規定される事項を記載してあれば、就業規則といえるでしょう。
> ②「規約・規程集」の中に、『・・・については労働協約
>を準用する』とある。この協約とは、役員が在籍している
>企業とその労働者代表が締結したもので、私達職員の代表
>が採用者である団体役員と締結した協約ではない、言って
>みれば“よその会社の協約”であり、その協約の効力が私
>達にも及ぶのか?
・・・労働協約と重複する規定は省略してもかまわないが、
就業規則の中に引用すべき労働協約の各条文番号を列挙し、かつ就業規則の別紙として労働協約を添付する必要がある。
(昭24基発1296号、平11基発168号)
また、労働協約は有効期間満了や組合側の解約通知により失効することがあるので、その際の規定を明確にしておかないと空白の中身のない就業規則になります。
上記の通達は、同じ事業場で締結されている労働協約の
準用について認めたものです。
他の会社や事業場で締結された労働協約を準用してよいのかということについて考えると、これはさすがに認められないと思います。
なぜなら、「就業規則を作成する」ということは、「形式を整える」というのではなく、その事業場で働く従業員に適用される労働条件などを事業主がちゃんと考えて決定していくという本質的な目的があるハズです。他社の協約を流用(準用)しているということは、この本質から逸脱しているからです。
結局、そういう事業主はなにも考えず決めず他社(他人)まかせという、いわば事業主の義務を放棄していることになると考えます。
①については先のご回答のご見解に同じ。ただし、法89条の要件として労働者が10名以上いる場合に、事業主に就業規則の作成及び行政官庁への届出義務が生じる一方で、10名未満の事業場については、就業規則に準じたものの作成・周知が要請されるに留まります。よって、この団体に10名未満の労働者しかいない場合、現状は望ましくないが法89に係る法律違反を構成しません。
②について、効力発生要件のとらえ方は2点あると考えます。まず、この準用するとされる労働協約について、協定当事者である使用者&労働者代表が、この団体の使用者またはその法人等組織の上位者にあたり、かつ労働者代表がこの団体の労働者の過半数の総意を代表する場合には、この協定は有効となりえます。しかし、この設問では団体の労働者(=ご質問者)と役員の在籍する企業の労働者代表の関係がないと思われる以上、協定当事者の妥当性がなく、当該協定の効力は及ばないものと考えます。
次に就業規則に、労働協約を準用すると規定した場合。
就業規則の効力発生要件は労働者への周知です。よって、就業規則の規定文として協約で締結された内容を具体的に明記・列挙して、この団体の労働者に周知したなら、他企業で締結された労働協約から引用した規定であっても、当該事業場の就業規則の内容として、効力を発生します。
しかしおそらく、「準用する」旨の規定・周知程度であって、具体的内容の周知はされていないように感じています。この場合、当然、判例等で示されているように、労働協約に定められた各規定は周知されていない規定であり、その効力発生は認められないものと考えます。
> 就業規則の効力発生要件は労働者への周知です。よって、就業規則の規定文として協約で締結された内容を具体的に明記・列挙して、この団体の労働者に周知したなら、他企業で締結された労働協約から引用した規定であっても、当該事業場の就業規則の内容として、効力を発生します。
>
・・・・上記の記述は正しいと思います。なぜなら、具体的に規定を明示・列挙してしまえば、「~で定める協定を準用する」という文言(準用規定)さえ不要になり、外形的には使用者が自ら考え、決定した文言となんらかわらない規定の形式を備えるからです。
しかしながら、就業規則がもし他の事業場の労働条件(労働協約)と常にリンクしているという実態があるのなら、つまり、常態として労働協約の内容が変更されるたびに就業規則の内容が変更されるのなら、その就業規則は結果としてその事業場の使用者が定めたものとは言えず、効力の無効を争われる可能性があると思うのです。
わたくしは、いつも外形ではなく実質はどうなのかということを念頭に考えます。
この場合も、使用者がたまたま、他の事業場の労働協約の内容に賛同し、それを就業規則に取り込んだというのであれば問題は全くありません。
しかし、準用するということは「他社で決めた内容を当社にも適用します。内容が変更になったときもそれを適用します」と言っていることに他ならないですから、これは使用者が就業規則を作成するという義務を果たしていないと思うのです。
たとえ、就業規則に労働協約が添付されていて、準用の内容が明確にされていてもです。
少なくとも納得できない私などは、効力を裁判で争うでしょう。
山口先生、レスありがとうございます。
一般に親会社とその組合間で締結された労働協約と同旨の協約を、子会社とその組合間で確認し、締結する例はあっても、親の協約を子の就業規則の規定とするのは私も無謀だと思うんです(笑)。ただ、現実的にこの場合の就業規則の効力はどうなるのかを考えるという興味深い設問として、ある程度深慮し、法律論としてコメントした次第です。
ただ一点思うのは、就業規則の効力は、その規定を定めた主体や経緯がどうであっても、使用者が規定として具体的内容を定め、関係労働者に周知するという構成要件を満たせば、例え外形的であるという謗りはあっても効力発生するように思うんです。
そして訴訟等でその効力の無効確認を争った場合、不利益扱等、個別案件ごとの事情による争点はあっても、その規定自体は効力発生要件を満たせば、規定全体を無効とは言えないように考えます。
ご指摘にありますように、この設問の労使関係や使用者の意識は決して健全とは言えず、望ましい状況ではありませんが…
> 一般に親会社とその組合間で締結された労働協約と同旨の協約を、子会社とその組合間で確認し、締結する例はあっても、親の協約を子の就業規則の規定とするのは私も無謀だと思うんです(笑)。
> ご指摘にありますように、この設問の労使関係や使用者の意識は決して健全とは言えず、望ましい状況ではありませんが…
まゆちさんのおっしゃるとおりのことを私もずっと、悶々と考えていました。そこでこちらのサイトの事を知り投稿したわけですが、山口先生だけでなく、まゆちさんからも為になるお話を頂き、ありがとうございました。
ご指摘のとおり、私の勤務先の労使関係はちょっと独特というか、決して健全な関係ではありません。そのため一気に解決とはいきませんが、まずは根気よく上司の理解を得て、少しずつでも直していければと思います。ありがとうございました。
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