■Vol.89 2006-10-25 毎週水曜日配信
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□□■ いまさら聞けない!お金と人と組織のこと
■■■ ― 経営者、起業準備の方必見です!―
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■■■ 「社員に対する資格取得援助
費用の返還請求は可能か?」
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雨が降ったせいもあり、急激に秋も深まってきました。
今年の風邪は、熱は大したことがないようですが、長引きます。風邪気味
の方は早めに治された方が良いようです。
雇用関係を含め、人間関係の冷え込みも、早めに治した方が良いようです。
こじらせると後が大変です。
今回は、こじれた労使関係の事例に詳しい
社労士の森先生から、「社員に
対する資格取得援助
費用の返還請求は可能か?」というお話です。
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「社員に対する資格取得援助
費用の返還請求は可能か?」
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◆規定で定めることはできるか?
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業務に必要なパソコンや宅建などの資格取得のため、社員に講習の受講費
用などの援助を行っている会社は多いでしょう。
しかし、当該社員が資格取得後すぐに
退職を申し出た場合などに、受講費
用の返還をめぐって会社との間でトラブルになるケースは少なくありません。
当該社員が資格取得後すぐに
退職することを防止するために、
就業規則に
「資格取得後1年以内に自己都合で
退職する場合には、援助
費用を全額返還
させる」などといった規定を設けることは、違法にはならないのでしょうか?
====================================================================
◆労基法16条違反に該当するか?
====================================================================
労基法16条では、「
使用者は、
労働契約の不
履行について
違約金を定め、
又は
損害賠償額を予定する
契約をしてはならない。」と定めています。
よって、各種資格取得のための受講
費用の返還義務が
労働契約上
労働者の
債務の不
履行に対する
違約金の定めに当たる場合には、同条違反となります。
====================================================================
◆「支給」か?「
貸与」か?
====================================================================
労基法16条違反となるかどうかを判断するにあたって、会社が
費用を「支
給」したものなのか、「
貸与」したものなのかが問題となります。
「支給」したとする場合は、支給要件を満たして支給したものを、自己都合
退職などを理由に返還させることになるため、同条で定める
違約金の定めに
該当し、許されないと考えられます。
「
貸与」したとする場合は、一定期間の勤務やその状況により
費用の返済を
免除するという
特約付きの金銭
消費貸借契約を締結して会社が
費用を立て替
えるものであるため、原則として同条違反とはなりません。
つまり、この場合には会社は
費用を貸し付けただけなので、社員には原則
として貸付金の返済義務があり、それを一定の条件を満たした場合には、返
済しなくてよいとするものだからです。
ただし、金銭
消費貸借契約を締結している場合も、当該合意によって労働
者の自由意思を不当に拘束し労働関係の継続を強要する場合には、同条違反
になると考えられます。
====================================================================
◆労働関係の継続を不当に拘束するか
====================================================================
以上をまとめると、資格取得
費用などの返還規定は、
1)資格取得が
業務命令によらない、
2)
費用が事業の必要
経費とみなされない
3)
費用は会社が立替え払いしたものである
4)返済方法を定めている
5)
費用が合理的な実費であるか
を検討し、労働関係の継続を不当に拘束しないと認められる場合に限り、同
条違反とはならないことになります。
社労士 森
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しかし、当該社員が資格取得後すぐに退職を申し出た場合などに、受講費
用の返還をめぐって会社との間でトラブルになるケースは少なくありません。
当該社員が資格取得後すぐに退職することを防止するために、就業規則に
「資格取得後1年以内に自己都合で退職する場合には、援助費用を全額返還
させる」などといった規定を設けることは、違法にはならないのでしょうか?
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◆労基法16条違反に該当するか?
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労基法16条では、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、
又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定めています。
よって、各種資格取得のための受講費用の返還義務が労働契約上労働者の
債務の不履行に対する違約金の定めに当たる場合には、同条違反となります。
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◆「支給」か?「貸与」か?
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労基法16条違反となるかどうかを判断するにあたって、会社が費用を「支
給」したものなのか、「貸与」したものなのかが問題となります。
「支給」したとする場合は、支給要件を満たして支給したものを、自己都合
退職などを理由に返還させることになるため、同条で定める違約金の定めに
該当し、許されないと考えられます。
「貸与」したとする場合は、一定期間の勤務やその状況により費用の返済を
免除するという特約付きの金銭消費貸借契約を締結して会社が費用を立て替
えるものであるため、原則として同条違反とはなりません。
つまり、この場合には会社は費用を貸し付けただけなので、社員には原則
として貸付金の返済義務があり、それを一定の条件を満たした場合には、返
済しなくてよいとするものだからです。
ただし、金銭消費貸借契約を締結している場合も、当該合意によって労働
者の自由意思を不当に拘束し労働関係の継続を強要する場合には、同条違反
になると考えられます。
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◆労働関係の継続を不当に拘束するか
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以上をまとめると、資格取得費用などの返還規定は、
1)資格取得が業務命令によらない、
2)費用が事業の必要経費とみなされない
3)費用は会社が立替え払いしたものである
4)返済方法を定めている
5)費用が合理的な実費であるか
を検討し、労働関係の継続を不当に拘束しないと認められる場合に限り、同
条違反とはならないことになります。
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