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年金記録紛失の根本的問題点

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平成19年6月15日 第44号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1.年金記録紛失の根本的問題点

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ブログもよろしくお願い致します。
人事のブレーン社会保険労務士日記」です。
http://norifumi.cocolog-nifty.com/blog/
是非見てみて下さい!

先月末から今月にかけてニュース23やイブニング5というニュース番組に年
金記録紛失についてコメントをした。

しかし、編集の都合上正確な意図が伝わっておらず、また、本質的報道がなさ
れていないという点において、人事担当者が何を気を付けて実務を行うべきな
のかが明らかにされていないので、今回のテーマとした。

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1.年金記録紛失の根本的問題点

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1.年金記録紛失の根本的問題点
年金記録紛失の根本的な問題点として以下の2点があげられる。
まず第一に、一人一番号の運用がなされていなかったこと。
第二に、住民基本台帳とのリンクがなされていなかったこと。

以下で詳細を解説する。

2.一人一番号の運用がなされていなかったこと

(1)基礎年金番号導入前の状況

平成9年1月1日より基礎年金番号が導入をされた。
これにより一人に対して一つの番号で年金納付記録を管理することとなった。
しかし、従前は厚生年金番号と国民年金番号があり、一人に対して複数の年金
番号が発行されており、番号の発行者については厚生年金の番号は社会保険
務所が発行し、国民年金の番号は社会保険事務所の委託を受けて市役所が発行
していた。
市役所は委託を受けて番号を発行していたということになっていたが、実際問
題はこの番号からこの番号までを市の責任で発行してくださいというレベルで
ある。
番号の発行に際して、複数の番号が発行されている可能性があるかという調査
社会保険事務所に於いても市役所に於いても充分な確認は行われていない。

ここでの問題点として、年金番号について発行した後の管理体制が十分ではな
かったことが大きな問題であった。

(2)番号管理の基本的考え方

番号は、被保険者本人が自分でしっかりと管理するものであるという考え方が
根本にあり、上記理由により複数の番号が付与されていても、年金の裁定請求
時や資格取得時に統合すれば問題はないであろうという考えであった。

それ故に国民年金厚生年金の番号が各々発行され、その番号自体が行政サイ
ドとして一人一番号として厳格に運用されていたわけではない。

この様に、番号管理についての管理体制が曖昧である故に、転職時に新たに厚
生年金番号が付与されてしまうケースが多く、転職の都度「厚生年金番号」が
増えていってしまうケースが多かった。
これは、入社時に年金手帳を持ってこなかったり、複数持っていながら一つし
か持ってこなかったりということで、一人に対する番号の数が増えていったわ
けである。

(3)基礎年金番号導入時の政府の調査

基礎年金番号が、平成19年1月1日に導入されたが、その数ヶ月前から社会
保険庁は、国民年金被保険者は本人に直接、厚生年金被保険者は事業所経
由で「あなたの基礎年金番号はこれですよ」「この基礎年金番号以外に番号を
持っている方は同封の葉書で全ての番号を教えてください」という通知を出し
ていた。

現在と違って年金に対する意識が高くなかった当時、この通知の重要性が認識
されておらず、通知を出さなかったり、全ての番号を記載して返信する方が少
なかったという事実がある。

この点は、社会保険庁の広報不足の感は否定できない。
しかし、社会保険庁としては、年金の裁定請求の時に全ての年金手帳を持って
来るであろうとの推測があった様に思われる。

(4)基礎年金番号発行の問題点

国民年金番号や厚生年金番号が基礎年金番号になったからといって、番号自体
を自分で管理するという考え方は変わっておらず、転職時の社会保険の取得の
際、基礎年金番号を記載せずに社会保険の取得を行う場合も多く、基礎年金
号が同一人物に対して複数発行されるシステムは何ら改善されていなかった。

3.住民基本台帳とリンクがなされていない

(1)年金で重要な個人情報とは

年金について個人の情報とは、「氏名」「生年月日」「住所」「性別」「標準
報酬」である。
問題は、「氏名」「生年月日」「住所」である。
この3点の情報管理が問題であり、それが番号を名寄せする際の障害になって
いる。

(2)氏名についての問題点

被保険者の身元確認について誰が行うかといえば事業主である。
被保険者取得届に本人の住民票を添付するわけではない。
氏名や生年月日が違っていても社会保険は取得できるのである。
例えば氏名は、我が国では名前に使用して良い漢字が決まっている。

しかし社会保険庁のコンピューターでは市町村の戸籍管理と同様の漢字が使え
ずに、難しい漢字であると省略された漢字やカタカナで表記されることがある。
これが氏名に関する第一の問題点。

次に、名称の表記の問題。
また、漢字も様々なものがあり、例えば「沢田」と「澤田」を使い分ける方も
いる。
「國」と「国」など例を挙げてはきりがない。
これも被保険者の自己申告であり、住民票等で確認していない。
自分の保有する全ての年金番号を資格取得時に持っていけば問題はないが、こ
の点についても別人と判断されるケースがある。

(3)生年月日についての問題点

生年月日についても自己申告であり、例えば募集年齢の上限が35歳の場合、
38歳の求職者が3歳年齢を詐称してしまった場合には、偽った年齢で履歴書
を記載し応募する。
この求職者が採用となった場合には当然正しい生年月日で資格取得されず、別
人の扱いになる。

逆に最低年齢に於いても、労働基準法では、15歳に達した日以後最初の3月
31日までの子を児童と定義し、原則として労働者として使用してはならない
とされている。
例外として13歳以上の児童は就学時間外に健康福祉に有害ではなく軽易なも
のについて労働基準監督署長の許可を得て労働させることが出来る。
この場合、当然親の同意が必要であり、同意書の他に、監督署長の許可証、就
学に差し障りのない旨の学校長の証明書、児童の年齢が分かる戸籍証明書が必
要になる。
次に18歳未満を年少者と定義し、年少者の年齢が分かる戸籍証明書が必要と
されている。
児童については、就学時間を通算して1日7時間労働、1週40時間労働とい
う制限があり、深夜業は禁止されており、年少者については、変形労働時間制
の適用に際して制限があり、1週間のうち1日の労働時間の長さが4時間以内
に短縮すれば、他の日を10時間まで延長できる。週については、1日8時間
を超えない範囲内に於いて48時間まで労働させることが出来ときていされてい
て、この場合に於いても深夜業に従事させることが出来ない。
その他有害業務の制限等があり、この規定は大変細かいので労働基準法第62
条を参照されたい。
以上が労働基準法の規定であり、強行法規である労働基準法については年少者
までを規制の対象としており、18歳以上については何ら規定はない。

18歳以上については労働基準法上の制限はなく、民法5条第1項により、「
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
(以下略)」。
そして第2項により「前項に反する法律行為は、取り消すことが出来る。」と
いうことになっている。
18歳以上の未成年者は労働基準法の規制は受けませんが、民法上の規制を受
けるにとどまり、成年同様の働き方が出来る。
稼ぎたい年少者は、年齢を詐称して18歳と偽り深夜業に従事することがある。
ここでも誤った生年月日にて被保険者資格取得届が提出されることとなる。

年齢詐称で会社に入った場合の行政解釈ですが、昭27.2.14基収51号、
昭63.3.14基発150号により以下の通り取り扱われています。使用者
に年齢確認義務があり、年齢詐称であっても違反になる。しかし、この確認義
務は、一般に必要とされる程度の注意義務を尽くせば足り、その年齢を必ず公
文書によって確認する必要はないと解せられるので、その容姿、体格、能力、
知能その他より判断して何人が観察しても年少者ではないかという疑念を全く
挟む余地の全くないものについては、その労働者の口頭又は自筆あるいは代書
により作成提出した身分書類による申告を基準として判断して使用していても、
使用者労働者の年齢を確認すべき義務を故意に怠ったものとはいえない。
とされており、事業主には公文書での年齢確認は義務づけられておらず、公正
採用の観点から戸籍等の記載されている文書の提出を強く求めることは出来
ない。

(3)住所について

社会保険の資格取得の際の住所は、住民票と一致する必要はない。
親元を離れて一人暮らしをする際であるとか、同棲や住宅ローンの関係で住民
票が別にあるという方も多い。
住所についても統一的な基準はなく、被保険者の申告した住所で資格取得届が
作成される訳で、住所のデータは正確なものではない事もある。

(4)これらの解決方法として

まず第一に、基礎年金番号のない取得届は受理しないという徹底をするという
方法。
第二に、住基ネット等の活用により住民基本台帳とリンク若しくは確認作業を
するということ。
これにより、「氏名」「生年月日」「住所」の相違や矛盾点を把握でき、いわ
ゆる宙に浮いた番号を発生させない仕組みづくりが出来る。

この住基ネットでの照合作業を行うことが私は大切であると考える。

基礎年金番号の複数発行や氏名や生年月日の問題は未だ解決されておらず、こ
の問題というものは、現在進行形で発生しているのである。

過去のデータの照合作業も大切であるが、今後この問題を防ぐ方法の議論がな
されていない点が問題であると考える。

住基ネットを反対している方もおり、年金の管理や納税の管理で統一的な番号
の必要性もある。

各政党が各々の対策を企画し、議論することが最も重要であると考える。
年金制度がはじまり、与党経験のない政党や政治家が存在しない政党は共産党
だけである。

責任の追及といっても意味がない。

本質的な議論を強く望む次第である。

4.人事担当者が気を付ける点

第一に、資格取得の際労働者が持っている年金手帳を全て持ってこさせるとい
うことである。
第二に、正しい姓や名の漢字を把握することである。
第三に、生年月日の確認をしっかりと行うことである。
戸籍部分を省略した住民票を提出させることも実務上可能であれば行っていき
たい。

ありきたりの対策であるが、基本をしっかりやっていくことが当面の人事担当
者の仕事である。

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編集責任者 特定社会保険労務士 山本 法史
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