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行政資源取得行政における主要な法的仕組 ほか

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-20 ★★
           【レジュメ編】 行政法(その3〔1〕)

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■■■ 行政資源取得行政における主要な法的仕組
■■■ 誘導行政における主要な法的枠組
■■■ 行政情報の収集

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■■■ 行政資源取得行政における主要な法的仕組
■■ 金銭の取得
■ 租税
【1】国税
憲法30条 国民の納税の義務
憲法84条 租税法律主義→国民に納税義務を負わせるには法律の根拠が必要。
(1)納税義務の成立義務-国税通則法15条2項、3項
所得税:暦年終了時
・源泉徴収による所得税:利子、配当、給与、報酬、料金その他源泉徴収をすべきもの
 とされている所得の支払いの時
法人税:事業年度の終了の時
相続税相続または遺贈による財産の取得の時
(2)税額確定手続
納税義務が成立してもその具体的内容が確定しないため、内容確定の手続が必要。(自
動車重量税印紙税・登録免許税等は納税義務の成立と同時にその内容が確定するた
め、内容確定手続は不要)
(ア)申告納税方式:納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則と
   し、その申告がない場合またはその申告にかかる税額の計算が国税に関する法律
   の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長または税関長の調査し
   たところと異なる場合に限り、税務署長または税関長の処分により確定する方式
   (国税通則法16条1項1号)

・課税標準:税額を算定するために表示された課税物件の金額等

国税通則法第二十四条  税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、その
納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従
つていなかつたとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なる
ときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。

第二十五条  税務署長は、納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申
告書を提出しなかつた場合には、その調査により、当該申告書に係る課税標準等及び税
額等を決定する。ただし、決定により納付すべき税額及び還付金の額に相当する税額が
生じないときは、この限りでない。

(イ)賦課課税方式:納付すべき税額が専ら税務署長または税関長の処分により確定す
   る方式(国税通則法16条1項2号)

同第三十二条  税務署長は、賦課課税方式による国税については、その調査により、
課税標準申告書を提出すべき期限(課税標準申告書の提出を要しない国税については、
その納税義務の成立の時)後に、次の各号の区分に応じ、当該各号に掲げる事項を決定
する。
 一  課税標準申告書の提出があつた場合において、当該申告書に記載された課税標
準が税務署長の調査したところと同じであるとき。 納付すべき税額
 二  課税標準申告書を提出すべきものとされている国税につき当該申告書の提出が
ないとき、又は当該申告書の提出があつた場合において、当該申告書に記載された課税
標準が税務署長の調査したところと異なるとき。 課税標準及び納付すべき税額
 三  課税標準申告書の提出を要しないとき。 課税標準(第六十九条(加算税の税
目)に規定する加算税及び過怠税については、その計算の基礎となる税額。以下この
条において同じ。)及び納付すべき税額

同第三十六条  税務署長は、国税に関する法律の規定により次に掲げる国税(その滞
納処分費を除く。以下次条において同じ。)を徴収しようとするときは、納税の告知
をしなければならない。
 一  賦課課税方式による国税(過少申告加算税無申告加算税及び前条第三項に規
定する重加算税を除く。)
 二  源泉徴収による国税でその法定納期限までに納付されなかつたもの
 三  自動車重量税でその法定納期限までに納付されなかつたもの
 四  登録免許税でその法定納期限までに納付されなかつたもの

・課税処分(税額確定処分):更正・決定処分と賦課処分との総称

(3)滞納

国税通則法37条 督促
同40条 繰上請求
→ 滞納処分は、行政権による自力執行であり、裁判所の判断を介在させずに自ら強制
  執行が可能。滞納処分の手続については、国税徴収法に定められている。
★ 詳しくは、Vol. ’06-20「行政法(その3〔2〕)」の「■■■行政上の義務履行
  強制」中「■行政上の強制徴収」を参照のこと。

■ 租税以外の金銭の取得
【1】負担金:公益上必要な特定の事業の用に供するために、私人に強制的に課される
   経済的負担(人的公用負担)。
(1)原因者負担金:当該事業を必要とさせる原因となる行為を行った者に科される負
   担金 
例:道路法58条 道路管理者は、他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関
  する工事又は道路の維持の費用については、その必要を生じた限度において、他の
  工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一部を負担させるものと
  する。
→ 名あて人の同意がなくても一方的に原因負担金納付義務を負わせることができ、ま
  た、不法行為に基づく損害賠償請求の場合と異なり、加害者の故意過失も要しな
  い。名あて人が任意で支払わない場合には、国税滞納処分の例により強制徴収をす
  ることができる。

(2)受益者負担金:当該事業により特別の利益を受ける者に課される負担金
例:海岸法33条 海岸管理者は、その管理する海岸保全施設に関する工事によつて著
  しく利益を受ける者がある場合においては、その利益を受ける限度において、当該
  工事に要する費用の一部を負担させることができる。

【2】地方公共団体の歳入確保
地方自治法231条の3第3項 普通地方公共団体の長は、分担金、加入金、過料又は
法律で定める使用料その他の普通地方公共団体の歳入につき第一項の規定による督促を
受けた者が同項の規定により指定された期限までにその納付すべき金額を納付しないと
きは、当該歳入並びに当該歳入に係る前項の手数料及び延滞金について、地方税の滞納
処分の例により処分することができる。この場合におけるこれらの徴収金の先取特権
順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

■ 公営競技等
特殊法人や地方公共団体等の公営競技実施は、関連産業の振興等のための財源確保が目的。

■ 当せん金付証票(宝くじ)
地方財政法32条→ 当せん金付証票法4条1項 都道府県並びに地方自治法第
二百五十二条の十九第一項の指定都市及び地方財政法第三十二条の規定により戦災によ
る財政上の特別の必要を勘案して総務大臣が指定する市(以下これらの市を特定市とい
う。)は、同条に規定する公共事業その他公益の増進を目的とする事業で地方行政の運
営上緊急に推進する必要があるものとして総務省令で定める事業の費用の財源に充てる
ため必要があると認めたときは、都道府県及び特定市の議会が議決した金額の範囲内に
おいて、この法律の定めるところに従い、総務大臣の許可を受けて、当せん金付証票を
発売することができる。

■ 財政専売
国が財政収入を得ることを目的として特定の物品の販売を独占すること。かつての製造
たばこの専売等。

■■ 土地の取得
■ 公用収用
【1】収用適格事業
土地収用法3条 土地を収用し、又は使用することができる公共の利益となる事業は、
次の各号のいずれかに該当するものに関する事業でなければならない。
 一  道路法 (昭和二十七年法律第百八十号)による道路、道路運送法 (昭和
二十六年法律第百八十三号)による一般自動車道若しくは専用自動車道(同法 による
一般旅客自動車運送事業又は貨物自動車運送事業法 (平成元年法律第八十三号)によ
る一般貨物自動車運送事業の用に供するものに限る。)又は駐車場法 (昭和三十二年
法律第百六号)による路外駐車場
 二  河川法 (昭和三十九年法律第百六十七号)が適用され、若しくは準用される河
川その他公共の利害に関係のある河川又はこれらの河川に治水若しくは利水の目的をも
つて設置する堤防、護岸、ダム、水路、貯水池その他の施設(以下略)

【2】公用収用の方法
(1)起業者(公益事業を行う者)が事業の認定を受ける。
土地収用法16条 起業者は、当該事業又は当該事業の施行により必要を生じた第三条
各号の一に該当するものに関する事業のために土地を収用し、又は使用しようとすると
きは、この節の定めるところに従い、事業の認定を受けなければならない。
(2)収用裁決(土地所有権を所有者から起業者に移転するための手続)
(※)公益収用制度は、国、地方公共団体のみならず、公益事業を行う民間団体にも認
   められている例がある。

■ 公用使用
一定期間、公共用地を使用したい場合で、土地所有者から使用権について同意が得られ
ない場合に、強制的に当該土地を使用することが認められること。土地収用法が一般法
であり、公用使用適格事業は、収用適格事業と同じである(土地収用法3条)。

■ 先買い
市街地開発事業のように広域にわたって行われる開発事業において、事業予定区域内の
土地等が有償で譲渡されようとする際に、当該事業の施行者が相手方の同意がなくても
譲渡予定価額と同額の対価で先に買い取ることが認められている制度。

(例)都市計画法52条の3
2 前項の規定による公告の日の翌日から起算して十日を経過した後に市街地開発事業
等予定区域の区域内の土地建物等を有償で譲り渡そうとする者は、当該土地建物等、そ
の予定対価の額(予定対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金
銭に見積もつた額。以下この条において同じ。)及び当該土地建物等を譲り渡そうとす
る相手方その他国土交通省令で定める事項を書面で施行予定者に届け出なければならな
い。ただし、当該土地建物等の全部又は一部が文化財保護法第四十六条(同法第八十三
条 において準用する場合を含む。)の規定の適用を受けるものであるときは、この限
りでない。
3 前項の規定による届出があつた後三十日以内に施行予定者が届出をした者に対し届
出に係る土地建物等を買い取るべき旨の通知をしたときは、当該土地建物等について、
施行予定者と届出をした者との間に届出書に記載された予定対価の額に相当する代金
で、売買が成立したものとみなす。
4 第二項の規定による届出をした者は、前項の期間(その期間内に施行予定者が届出
に係る土地建物等を買い取らない旨の通知をしたときは、その時までの期間)内は、当
該土地建物等を譲り渡してはならない。

■ 公共減歩
土地区画整備事業(都市計画区域内の土地について、公共施設の設備改善および宅地の
利用の増進を図るため、土地の区画形質の変更および公共施設の新設または変更を行う
事業)において、公共施設用地の確保のために、換地分の面積を減少させること。減歩
によって整備される公共施設は、道路、公園、広場、河川、運河、船だまり、水路、堤
防、護岸、公共物現場、緑地に限定される(土地区画整理法2条5項、同施行令67
条)。

■ 権利変換
市街地再開発事業:市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図る
ため、都市計画法および都市再開発法で定めるところに従って行われる建築物および建
築敷地の整備ならびにこれに附帯する事業(都市再開発法2条1項)

(1)第1種市街地再開発事業・・・権利変換方式
都市再開発法82条 権利変換計画においては、第一種市街地再開発事業により従前の
公共施設に代えて設置される新たな公共施設の用に供する土地は、従前の公共施設の用
に供される土地の所有者が国であるときは国に、地方公共団体であるときは当該地方公
共団体に帰属し、その他の新たな公共施設の用に供する土地は、当該公共施設を管理す
べき者(その者が地方自治法第二条第九項第一号 に規定する第一号 法定受託事務(以
下単に「第一号法定受託事務」という。)として当該公共施設を管理する地方公共団体
であるときは、国)に帰属するように定めなければならない。
(2)第2種市街地再開発事業・・・全面買収方式

■■ 物品の取得
行政活動を行うために必要な物品の取得は、通常、売買契約によって行われる。
・非常災害時:災害対策基本法78条1項 災害が発生した場合において、第五十条第
 一項第四号から第九号までに掲げる事項について応急措置を実施するため特に必要が
 あると認めるときは、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、防災業務計画
 の定めるところにより、当該応急措置の実施に必要な物資の生産、集荷、販売、配
 給、保管若しくは輸送を業とする者に対し、その取り扱う物資の保管を命じ、又は当
 該応急措置の実施に必要な物資を収用することができる。

同81条1項 第七十一条又は第七十八条第一項の規定による処分については、都道府
県知事若しくは市町村長又は指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長は、それ
ぞれ公用令書を交付して行なわなければならない。

■■ 公務員の任用
・任用:公務員採用、昇任、降任、転任、配置換
採用公務員でなかった者をある官職に任命すること。一般職の職員の採用は、競争
 試験によることを原則とする(国家公務員法36条1項、地方公務員法17条3項)。
・昇任:公務員を上級の職に任用すること。競争試験によることを原則とする(国家公
 務員法37条1項、地方公務員法17条3項)。
・降任:公務員を現職よりも下位の職につけること
・転任:公務員を同一の職級に属する官職に異動させること
・配置換:(人事院規則8-12第5条4号)分類官職に任用されている職員をその官
 職と同一の職級に属する他の分類官職で任命権者を同じくするものに任命すること、
 又は非分類官職に任用されている職員を任命権者を同じくする他の非分類官職に昇任
 若しくは降任以外の方法により任命すること。
・その他の欠員補充方法として、臨時的任用、併任がある。


■■■ 誘導行政における主要な法的枠組
■■ 金銭的インセンティブ
■ 補助
公害防止の目的のために企業に一定の行動をとらせようとする場合、直接的な規制をす
るのではなく、環境にとって望ましい製品の生産や消費に対して補助金を支給すること
によって、企業や消費者の行動を誘導する場合がある。

■ 金融上の措置・債務保証
低利融資や利子補給金の支給、国または地方公共団体による債務保証

■ 租税優遇措置・青色申告制度
低公害車の自動車取得税の軽減等

■ 雇用調整金・報奨金・報償金
(例)障害者の雇用の促進等に関する法律50条 独立行政法人高齢・障害者雇用支援
   機構は、政令で定めるところにより、各年度(四月一日から翌年三月三十一日ま
   でをいう。以下同じ。)ごとに、第五十四条第二項に規定する調整基礎額に当該
   年度に属する各月(当該年度の中途に事業を開始し、又は廃止した事業主にあつ
   ては、当該事業を開始した日の属する月の翌月以後の各月又は当該事業を廃止し
   た日の属する月の前月以前の各月に限る。以下同じ。)ごとの初日におけるその
   雇用する身体障害者又は知的障害者である労働者の数の合計数を乗じて得た額が
   同条第一項の規定により算定した額を超える事業主に対して、その差額に相当す
   る額を当該調整基礎額で除して得た数を単位調整額に乗じて得た額に相当する金
   額を、当該年度分の障害者雇用調整金(以下「調整金」という。)として支給す
   る。

(例)出入国管理および難民認定法66条  第六十二条第一項の規定による通報をし
   た者がある場合において、その通報に基づいて退去強制令書が発付されたとき
   は、法務大臣は、法務省令で定めるところにより、その通報者に対し、五万円以
   下の金額を報償金として交付することができる。但し、通報が国又は地方公共団
   体の職員がその職務の遂行に伴い知り得た事実に基づくものであるときは、この
   限りでない。

■ メリット制
労働保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項参照。

■■ 金銭的ディスインセンティブ
公共的見地から見て望ましくない活動を抑止するために、それを禁止するという規制行
政によるのではなく、金銭的負担を課すことによって間接的に当該活動を減少させる仕
組み
・手法:税負担、課徴金等

■ 国民生活安定緊急措置法
指定物資についての指示、自国のみでは価格の安定を図ることが困難な場合、特定物資
を指定し、特定物資のうち取引事情から見て価格の安定を確保すべき品目(特定品目)
について特定標準価格を定める。
11条1項 主務大臣は、特定品目の物資の販売をした者のその販売価格が当該販売を
した物資に係る特定標準価格を超えていると認められるときは、その者に対し、当該販
売価格と当該特定標準価格との差額に当該販売をした物資の数量を乗じて得た額に相当
する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。

■ 障害者雇用納付金
障害者の雇用の促進等に関する法律:法定雇用率を達成していない事業主に未達成分に
応じた納付金の負担が課せられる。

■■ 情報によるインセンティブ
(1)エコマーク
環境省の指導を受けて、財団法人日本環境協会が運用。環境保全意識の高い消費者に環
境親和的製品の購入を促し、ひいては企業に環境親和的製品の製造を促す効果を狙う。
(2)JISマーク等
・JIS(日本工業規格):工業標準化法19条:JIS表示のある商品の品質を公証
 する機能
・JAS(日本農林規格):農林物資の企画課及び品質表示の適正化に関する法律15
 条
・PSCマーク:消費生活用製品安全法→ 基準適合性検査に合格しない製品の販売は禁
 止。
(3)品質等表示義務
・品質等の情報の表示を義務付け、消費者行動を誘導することを通じて、事業者にインセ
 ンティブを与えようとする仕組み。
・エネルギーの使用の合理化に関する法律20条に基づく特定機器のエネルギー消費公立
 の表示→ その表示の義務付けによって事業者にエネルギー消費効率を向上させるイン
 センティブを付与している。

■■ 情報によるディスインセンティブ
■ 危険地域の情報の公表
急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律6条

■ 不適正事業情報の公表
地方公共団体の消費者保護条例では、利用者に危害を及ぼすおそれのある製品の危害情報
詐欺商法等の不適正事業情報を公表→ 消費者に当該製品の購入を控えるよう促した
り、当該不正取引の被害に遭わないように注意を喚起している。

■ 国土利用計画法・国民生活安定緊急措置法上の公表
【1】国土利用計画法
土地の売買契約のうち一定のものについては、契約締結前に売却予定価格、利用目的等を
市町村長経由で都道府県知事に届け出ることを義務付け(23条、27条の4)、届出さ
れた価格が高すぎる場合や利用目的が土地利用に関する計画に適合しない等の場合には、
都道府県知事が売買契約の締結の中止・利用目的の変更等を勧告することができ(24条
1項、27条の5第1項)、相手方が勧告に従わない場合はその勧告の内容を公表するこ
とができる(26条、27条の5第4項)。
→ 売買価格の引き下げ等の勧告は行政指導に過ぎず、指導価格よりも高い価格で販売す
  ることが違法となるわけではない
→ 行政指導に従わないからといって制裁を科すことはできない(行政手続法32条2
  項)。

【2】国民生活安定緊急措置法
急激なインフレ等の緊急事態が生じた場合に価格の安定を図る必要がある物質を政令で指
定し、指定物質について主務大臣が標準価格を定め、指定物質の販売業者が標準価格を超
える価格で指定物質を販売しているときは、主務大臣は標準価格以下で販売することを指
示することができるが、正当な理由なくその指示に従わなかったときは、主務大臣はその
旨を公表することができる(3条、4条、7条1項・2項)。

【3】標章貼付義務
(例)風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律31条1項 公安委員会は、前
   条第一項の規定により店舗型性風俗特殊営業の停止を命じたときは、国家公安委員
   会規則で定めるところにより、当該命令に係る施設の出入口の見やすい場所に、内
   閣府令で定める様式の標章をはり付けるものとする。

■■ 規制緩和によるインセンティブ
(例)都市計画法12条の5第4項 再開発等促進区を定める地区計画においては、第二
   項各号に掲げるもののほか、当該再開発等促進区に関し必要な次に掲げる事項を都
   市計画に定めるものとする。
 一  土地利用に関する基本方針
 二  道路、公園その他の政令で定める施設(都市計画施設及び地区施設を除く。)の
配置及び規模
5 再開発等促進区を都市計画に定める際、当該再開発等促進区について、当面建築物又
はその敷地の整備と併せて整備されるべき公共施設の整備に関する事業が行われる見込み
がないときその他前項第二号に規定する施設の配置及び規模を定めることができない特別
の事情があるときは、当該再開発等促進区について同号に規定する施設の配置及び規模を
定めることを要しない。

■■ 市場介入
(例)主要食糧の需要及び価格の安定に関する法律59条 第五十二条第一項の規定によ
   る報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨
   げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。

61条  第四十条第一項の規定に基づく政令には、その政令若しくはこれに基づく命令
の規定又はこれらに基づく処分に違反した者を五年以下の懲役若しくは五百万円以下の
罰金に処し、又はこれを併科する旨の規定及び法人の代表者又は法人若しくは人の代理
人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、当該違反行為をしたとき
は、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する旨の規定
を設けることができる。


■■■ 行政情報の収集
■■ 申請
法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する
処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされ
ているもの(行政手続法2条3号)

行政手続法7条 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の
審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必
要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであるこ
とその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やか
に、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補
正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。
(※)虚偽の申請に対しては一般に罰則を設けている。

■■ 届出
行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、
法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の
効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)(行政手
続法2条7号) 

■ 目的
当該分野における監督等を行うために必要な情報を行政機関が収集すること

■ 形式的要件
届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていること
その他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令
により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべ
き手続上の義務が履行されたものとする(行政手続法37条)。

■ 罰則
届出義務違反に対しては、通常、罰則規定が設けられている。
→ この罰則の威嚇により、届出者から必要な情報が提供されることを担保している。

■ 届出義務と黙秘権
★★ 届出義務を課してその違反に罰則を適用することは、憲法38条1項が保障する
   黙秘権の侵害にならないか。

●● 最高裁判例「所得税法違反(川崎民商事件)」(刑集26巻9号554頁)
【要旨】
(ア)憲法三八条一項による保障は、純然たる刑事手続以外においても、実質上、刑事
   責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には
   ひとしく及ぶものである。
(イ)所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)六三条、七〇条一〇
   号、一二号に規定する質問、検査は、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な
   供述」の「強要」にあたらない。

●● 最高裁判例「麻薬取締法違反」(刑集8巻7号1151頁)
【要旨】原判決は、正規の手続を経ていない麻薬の取扱に関する事実を帳簿に記入する
    ことは、その違反行為の発覚の端諸となるものであつて、麻薬取扱者といえど
    もこれを期待することが不可能であるから、かかる事実を帳簿に記入しなくて
    も、当該義務違反の罪の構成しない旨判示する。しかし麻薬取扱者たることを
    自ら申請して免許された者は、そのことによつて当然麻薬取扱法規による厳重
    な監査を受け、その命ずる一切の制限または義務に服することを受諾している
    ものというべきである。されば、麻薬取扱者として麻薬を処理した以上、たと
    えその麻薬が取締法規に触れるものであつても、これを記帳せしめられること
    を避けることはできないのみならず、取締上の要請からいつても、かかる場合
    記帳の義務がないと解すべき理由は認められない。また麻薬取締者はかかる場
    合、別に麻薬処理の点につき取締法規違反により処罰されるからといつて、そ
    の記帳義務違反の罪の成立を認める妨げとなるものではないことはいうまでも
    ない。

●● 最高裁判例「重過失致死、道路交通取締法違反」(刑集16巻5号495頁)
【要旨】
(ア)道路交通取締法施行令第六七条第二項にいう「事故の内容」とは、その発生した
   日時、場所、死傷者の数及び負傷の程度並に物の損壊及びその程度等交通事故の
   態様に関する事項を指すものと解すべきである。
(イ)同条項中事故の内容の報告義務を定めた部分は、憲法第三八条第一項に違反しな
   い。

●● 最高裁判例「覚せい剤取締法違反、関税法違反 」(刑集33巻4号275頁)
【要旨】許可を受けないで覚せい剤を輸入した者に対し関税法一一一条の罪の成立を認
    めても、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な供述」を強要したことにはな
    らない。
【理由】本邦に入国する者がその入国の際に貨物を携帯して輸入しようとする場合に
    は、関税法六七条により、当該貨物の品名、数量、価格等を税関長に申告し、
    その許可を受けなければならないが、右の申告は、関税の公平確実な賦課徴収
    及び税関事務の適正円滑な処理を目的とする手続であつて、刑事責任の追及を
    目的とする手続でないことはもとより、そのための資料の取得収集に直接結び
    つく作用を一般的に有するものでもない。また、この輸入申告は、本邦に入国
    するすべての者に対し、携帯して輸入しようとする貨物につきその品目のいか
    んを問わず義務づけられているものであり、前記の目的を達成するために必要
    かつ合理的な制度ということができる。
    このような輸入申告の性質に照らすと、通関のため当然に申告義務の伴うこと
    となる貨物の携帯輸入を企てたものである以上、当該貨物がたまたま覚せい剤
    取締法により本邦への持込を禁止されている覚せい剤であるからといつて、通
    関のため欠くことのできない申告・許可の手続を経ないでこれを輸入し又は輸
    入しようとした場合に、関税法一一一条の罪の成立を認めても、憲法三八条一
    項にいう「自己に不利益な供述」を強要したことにならないことは、当裁判所
    大法廷判例の趣旨に徴し明らかであるといわなければならない。

●● 最高裁判例「外国人登録法違反」(刑集36巻3号478頁)
【要旨】
(ア)本邦に不法に入つた外国人に対し外国人登録法三条一項、一八条一項の適用を認
   めても、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な供述」を強要したことにならな
   い。
(イ)不法入国外国人の登録申請を受理するにあたり、旅券に代わるべき書面として提
   出を求める陳述書及び理由書に、不法入国に関する具体的事実の記載を示唆する
   取扱いをしていた場合であつても、右陳述書等に不法入国に関する具体的事実の
   記載をするのでなければ外国人登録の申請を適法なものとはしないという取扱い
   をしていたとまでは認められないときは、かかる取扱いのもとにおいて、法定の
   期間内に登録申請手続をしなかつた不法入国外国人に対し外国人登録法三条一項
   違反の罪の成立を認めることは、憲法三八条一項に違反しない。

●● 最高裁判例「医師法違反、虚偽有印公文書作成、同行使被告事件」(刑集58巻
   4号247頁)
【要旨】死体を検案して異状を認めた医師は、自己がその死因等につき診療行為におけ
    る業務上過失致死等の罪責を問われるおそれがある場合にも、医師法21条の
    届出義務を負うとすることは、憲法38条1項に違反しない。
【理由】本件届出義務は、警察官が犯罪捜査の端緒を得ることを容易にするほか、場合
    によっては、警察官が緊急に被害の拡大防止措置を講ずるなどして社会防衛を
    図ることを可能にするという役割をも担った行政手続上の義務と解される。そ
    して、異状死体は、人の死亡を伴う重い犯罪にかかわる可能性があるものであ
    るから、上記のいずれの役割においても本件届出義務の公益上の必要性は高い
    というべきである。他方、憲法38条1項の法意は、何人も自己が刑事上の責
    任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したも
    のと解されるところ、本件届出義務は、医師が、死体を検案して死因等に異状
    があると認めたときは、そのことを警察署に届け出るものであって、これによ
    り、届出人と死体とのかかわり等、犯罪行為を構成する事項の供述までも強制
    されるものではない。また、医師免許は、人の生命を直接左右する診療行為を
    行う資格を付与するとともに、それに伴う社会的責務を課するものである。
    このような本件届出義務の性質、内容・程度及び医師という資格の特質と、本
    件届出義務に関する前記のような公益上の高度の必要性に照らすと、医師が、
    同義務の履行により、捜査機関に対し自己の犯罪が発覚する端緒を与えること
    にもなり得るなどの点で、一定の不利益を負う可能性があっても、それは、医
    師免許に付随する合理的根拠のある負担として許容されるものというべきであ
    る。

■■ 行政調査
■ 手法
本人からの報告の徴収・臨検・試験用の無償収去、質問、出頭命令・資料提出命令、官
公署への調査の委託・本人以外の者からの報告の徴収、常時監視等がある。
→ 行政調査に関する明文の規定がない場合であっても、行政機関は、個別擬態の事案
  を処理するために必要な調査を行う義務がある。

■ 種類
【1】法的拘束力を欠いており、相手方が調査に応ずるか否かを任意に決定できる純粋
   な任意調査
(例)水道法17条1項 水道事業者は、日出後日没前に限り、その職員をして、当該
   水道によつて水の供給を受ける者の土地又は建物に立ち入り、給水装置を検査さ
   せることができる。ただし、人の看守し、若しくは人の住居に使用する建物又は
   閉鎖された門内に立ち入るときは、その看守者、居住者又はこれらに代るべき者
   の同意を得なければならない。

【2】相手方に調査に応ずる義務があることは法定されているが、直接的にも間接的に
   もそれを強制する仕組みがないため、任意調査に近い調査
(例)警察官職務執行法6条2項 興行場、旅館、料理屋、駅その他多数の客の来集す
   る場所の管理者又はこれに準ずる者は、その公開時間中において、警察官が犯罪
   の予防又は人の生命、身体若しくは財産に対する危害予防のため、その場所に立
   ち入ることを要求した場合においては、正当の理由なくして、これを拒むことが
   できない。

【3】調査を拒否すると給付が拒否される仕組みがとられている調査
(例)生活保護法28条1項 保護の実施機関は、保護の決定又は実施のため必要があ
   るときは、要保護者の資産状況、健康状態その他の事項を調査するために、要保
   護者について、当該吏員に、その居住の場所に立ち入り、これらの事項を調査さ
   せ、又は当該要保護者に対して、保護の実施機関の指定する医師若しくは歯科医
   師の検診を受けるべき旨を命ずることができる。

【4】行政機関による私人間の紛争解決という特殊な場面において、当事者の申出によ
   り行政機関が行う立入検査を相手方が正当な理由なく拒んだときは、当該事実関
   係に関する申立人の主張を真実と認めることができる調査(建設業法25条の
   18)

【5】調査拒否に対して罰則を設けて罰則の威嚇により間接的に調査受諾を強制する調
   査(準強制調査または間接強制調査)
(例)所得税法242条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は
   二十万円以下の罰金に処する。ただし、第三号の規定に該当する者が同号に規定
   する所得税について第二百四十条(源泉徴収に係る所得税を納付しない罪)の規
   定に該当するに至つたときは、同条の例による。
 八 第二百三十四条第一項(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に
対して答弁せず若しくは偽りの答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ若し
くは忌避した者
★ 234条1項の質問検査は、相手方の意思に反して立ち入り調査をすることはでき
  ないので、同意なき立ち入りは不法行為になり、賠償責任が生じ得る。

【6】実力を行使して相手方の抵抗を排し、調査を行うことが認められている調査
(例)関税法121条 税関職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、その
   所属官署の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発
   する許可状により、臨検、捜索又は差押をすることができる。

■■ 任意調査の限界
★★ 任意調査は相手の同意を得て行われるものであるが、職務質問に付随して行われ
   る所持品検査、自動車の一斉検問のように、任意調査の限界内にとどまっている
   かが問題とされる事例がある。

●● 最高裁判例「爆発物取締罰則違反、殺人未遂、強盗」(刑集32巻4号670頁)
【要旨】
(ア)職務質問に附随して行う所持品検査は、所持人の承諾を得て、その限度において
   これを行うのが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない
   限り、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて侵害される個人の法益と保護
   されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認めら
   れる限度で許容される場合がある。
(イ)警察官が、猟銃及び登山用のナイフを使用しての銀行強盗の容疑が濃厚な者を深
   夜に検問の現場から警察署に同行して職務質問中、その者が職務質問に対し黙秘
   し再三にわたる所持品の開披要求を拒否するなどの不審な挙動をとり続けたた
   め、容疑を確かめる緊急の必要上、承諾がないままその者の所持品であるバツグ
   の施錠されていないチヤツクを開披し内部を一べつしたにすぎない行為は、職務
   質問に附随して行う所持品検査において許容される限度内の行為である。

●● 最高裁判例「覚せい剤取締法違反、有印公文書偽造、同行使、道路交通法違反」
   (刑集32巻6号1672頁)
【要旨】
(ア)職務質問に附随して行う所持品検査は所持人の承諾を得てその限度でこれを行う
   のが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たと
   え所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて侵害さ
   れる個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況
   のもとで相当と認められる限度において許容される場合がある。
(イ)警察官が、覚せい剤の使用ないし所持の容疑がかなり濃厚に認められる者に対し
   て職務質問中、その者の承諾がないのに、その上衣左側内ポケツトに手を差し入
   れて所持品を取り出したうえ検査した行為は、職務質問に附随する所持品検査に
   おいて許容される限度を超えた行為である

●● 最高裁判例「道路交通法違反」(刑集34巻5号272頁)
【要旨】
(ア)警察法二条一項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることに照らす
   と、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は、任意手段によ
   る限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利、自由の干渉
   にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといつて無
   制限に許されるべきものでないことも同条二項及び警察官職務執行法一条などの
   趣旨にかんがみ明らかである。
(イ)警察官が、交通取締の一環として、交通違反の多発する地域等の適当な場所にお
   いて、交通違反の予防、検挙のため、同所を通過する自動車に対して走行の外観
   上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必
   要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める
   形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様
   で行われる限り、適法である。

■■ 行政調査手続
■ 一般的手続
報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目
的としてされる処分及び行政指導(行政手続法3条1項14号)

■ 身分証の携行・提示
(例)所得税法:国税庁国税局又は税務署の当該職員は、第二百三十四条(当該職員
   の質問検査権)の規定による質問又は検査をする場合には、その身分を示す証明
   書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
   (236条) 

■ 事前通知・意見書提出機会の付与
(例)銃砲刀剣類所持等取締法施行規則 法第十条の六第二項の規定による立入検査
   は、四十八時間以前にその旨を関係者に通告し、かつ、日出から日没までの時間
   内である場合に行うものとする。ただし、関係者の承諾を得た場合又は猟銃の保
   管に関する危害予防上特に必要がある場合は、この限りでない。(12条の3)

●● 最高裁判例「所得税法違反」(刑集27巻7号1205頁)
【要旨】所得税法二三四条一項の質問検査において、その理由および必要性を相手方に
    告知することは、法律上の要件ではない。

■ 裁判所または裁判官の事前許可
★★ 憲法35条は、行政手続にも適用があるか。

・憲法35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受
けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せら
れ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

・出入国管理および難民認定法31条1項 入国警備官は、違反調査をするため必要が
あるときは、その所属官署の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官の許
可を得て、臨検、捜索又は押収をすることができる。
→ 裁判所または裁判官の事前チェックを行政手続きにも義務付けた規定は少ない。
●● 最高裁判例「所得税法違反(川崎民商事件)」(刑集26巻9号554頁)
【要旨】
(ア)当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続にお
   ける一切の強制が、憲法三五条一項による保障の枠外にあることにはならない。
(イ)所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)六三条、七〇条一〇号
   に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件
   としないからといつて、憲法三五条の法意に反するものではない。
【理由】法三五条一項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制につ
    いて、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保障した趣旨
    であるが、当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、
    その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断す
    ることは相当ではない。しかしながら、前に述べた諸点を総合して判断すれ
    ば、旧所得税法七〇条一〇号、六三条に規定する検査は、あらかじめ裁判官の
    発する令状によることをその一般的要件としないからといつて、これを憲法三
    五条の法意に反するものとすることはできず、前記規定を違憲であるとする所
    論は、理由がない。
★ 一般論として、憲法35条1項に定める保障が行政手続にも及ぶ場合がある。

●● 最高裁判例「工作物等使用禁止命令取消等」(民集46巻5号437頁)
【理由】道路交通法三条三項は、運輸大臣は、同条一項の禁止命令をした場合において
    必要があると認めるときは、その職員をして当該工作物に立ち入らせ、又は関
    係者に質問させることができる旨を規定し、その際に裁判官の令状を要する旨
    を規定していない。しかし、右立入り等は、同条一項に基づく使用禁止命令が
    既に発せられている工作物についてその命令の履行を確保するために必要な限
    度においてのみ認められるものであり、その立入りの必要性は高いこと、右立
    入りには職員の身分証明書の携帯及び提示が要求されていること(同条四
    項)、右立入り等の権限は犯罪捜査のために認められたものと解釈してはなら
    ないと規定され(同条五項)、刑事責任追及のための資料収集に直接結び付く
    ものではないこと、強制の程度、態様が直接的物理的なものではないこと(九
    条二項)を総合判断すれば、本法三条一、三項は、憲法三五条の法意に反する
    ものとはいえない。
→ 刑事責任追及のための資料の収集に直接結びつくものと認められる場合や、直接的
  物理的な強制と同視できる程度にまで達している場合には、行政調査であっても、
  憲法の令状主義の要請が及ぶ。

●● 最高裁判例「所得税法違反」(刑集第38巻5号2037頁)
【理由】国税犯則取締法は、収税官吏に対し、犯則事件の調査のため、犯則嫌疑者等に
    対する質問のほか、検査、領置、臨検、捜索又は差押等をすること(以下「調
    査手続」という。)を認めている。しかして、右調査手続は、国税の公平確実
    な賦課徴収という行政目的を実現するためのものであり、その性質は、一種の
    行政手続であつて、刑事手続ではないと解される。

●● 最高裁判例「酒税法違反幇助」(刑集第9巻5号924頁)
【理由】憲法三三条は現行犯の場合にあつては同条所定の令状なくして逮捕されてもい
    わゆる不逮捕の保障には係りなきことを規定しているのであるから、同三五条
    の保障も亦現行犯の場合には及ばないものといわざるを得ない。それ故少なく
    とも現行犯の場合に関する限り、法律が司法官憲によらずまた司法官憲の発し
    た令状によらずその犯行の現場において捜索、押収等をなし得べきことを規定
    したからとて、立法政策上の当否の問題に過ぎないのであり、憲法三五条違反
    の問題を生ずる余地は存しないのである。

■ 黙秘権
★★ 憲法38条1項(黙秘権の保障)が行政手続きにも及ぶか。
→ 憲法38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

●● 最高裁判例「川崎民商事件」(刑集26巻9号554頁)
【要旨】
(ア)憲法三八条一項による保障は、純然たる刑事手続以外においても、実質上、刑事
   責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には
   ひとしく及ぶものである。
(イ)所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)六三条、七〇条一〇
   号、一二号に規定する質問、検査は、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な
   供述」の「強要」にあたらない。

●● 最高裁判例「所得税法違反」(刑集38巻5号2037頁)
【要旨】
(ア)憲法三八条一項の規定による供述拒否権の保障は、国税犯則取締法上の犯則嫌疑
   者に対する質問調査の手続にも及ぶ。
(イ)国税犯則取締法上の質問調査の手続につき、同法に供述拒否権告知の規定がな
   く、また、犯則嫌疑者に対しあらかじめ右の告知がされなかつたからといつて、
   その質問調査の手続が憲法三八条一項に違反するものとはいえない。

●● 最高裁判例「道路交通法違反」(刑集51巻1号335頁)
【要旨】道路交通法六七条二項の規定による警察官の呼気検査を拒んだ者を処罰する同
    法一二〇条一項一一号の規定は、憲法三八条一項に違反しない。
【理由】憲法三八条一項は、刑事上責任を問われるおそれのある事項について供述を強
    要されないことを保障したものと解すべきところ、右検査は、酒気を帯びて車
    両等を運転することの防止を目的として運転者らから呼気を採取してアルコー
    ル保有の程度を調査するものであって、その供述を得ようとするものではない
    から、右検査を拒んだ者を処罰する右道路交通法の規定は、憲法三八条一項に
    違反するものではない。
★ 呼気検査を強制することは、自己に不利益な供述を強要することにはならない。

■■ 収去検査と補償
検査のために、調査担当職員が私人の所有物を収去することが認められている場合に、
この際に、無償で収去できる旨の明文の規定が置かれている場合(食品衛生法17条1
項)と置かれていない場合(薬事法69条3項)があるが、置かれていない場合も収去
は財産権に内在する制約として保障を要しないと解すべきである。

■■ 行政調査と犯罪捜査
■ 犯罪捜査目的の行政調査の禁止
行政調査は、所定の行政目的達成のためにのみ認められるのであり、別の行政目的や犯
罪捜査のために行政調査を行うことは許されない。もし行政調査に藉口して犯罪捜査を
行い、そこで得られた証拠を刑事責任追求のために利用しようとしても、刑事訴訟にお
ける証拠能力は否定される。

所得税法234条2項 前項の規定による質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために
 認められたものと解してはならない。

●● 最高裁判例「法人税法違反被告事件」(刑集58巻1号26頁)
【要旨】法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)153条ないし155条
    に規定する質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が
    後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことに
    よって直ちに、上記質問又は検査の権限が同法156条に反して犯則事件の調
    査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない。

■ 守秘義務告発義務
★★ 行政調査の過程で偶然に犯罪の徴憑を発見した場合、行政機関は職務上の守秘義
   務と、告発義務(刑事訴訟法239条2項)のどちらを優先すべきか。
→ 学説は分かれている。
守秘義務優先説:犯罪捜査目的で行政調査を行ってはならないという趣旨を徹底させ
 るためには、偶然、行政調査の過程で犯罪の証拠を発見しても告発できないというこ
 とにせざるを得ない。
告発義務優先説:公務員が行政調査の過程で犯罪の証拠を発見した舌場合に告発する
 ことは、刑事訴訟法で義務付けられた正当行為であるから違法性が阻却される。

■ 行政調査・犯則調査間での資料の共用
告発自体は認めるとした上で、行政調査で得られた証拠資料等の捜査機関への引渡しに
ついては、一定の手続的制約を設けることが考えられる。

■■ 行政調査の場所的・時間的制限
(例)消防法4条1項 消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、
   関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防職員(消
   防本部を置かない市町村においては、当該市町村の消防事務に従事する職員又は
   常勤の消防団員。第五条の三第二項を除き、以下同じ。)にあらゆる仕事場、工
   場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入つて、消防対象
   物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問
   させることができる。ただし、個人の住居は、関係者の承諾を得た場合又は火災
   発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ、立
   ち入らせてはならない。

(例)行政書士法第13条の22 都道府県知事は、必要があると認めるときは、日没から
   日出までの時間を除き、当該吏員に行政書士又は行政書士法人の事務所に立ち入
   り、その業務に関する帳簿及び関係書類(これらの作成又は保存に代えて電磁的
   記録の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。)を検査
   させることができる。

■■ 行政調査の瑕疵の効果
★★ 行政調査に瑕疵があった場合、当該調査を基礎としてなされた行政作用の効果は
   どうなるか。

●● 昭和48年1月31日名古屋高裁判決「所得課税処分取消請求控訴事件」(行集
   24巻1=2号45頁)
【理由】更正処分をなすにあたり、税務署長等税務行政官庁において、全く調査をなす
    ことを怠つた場合には、該更正はこれをなし得べき前提要件を欠くこととなる
    ので、違法性を帯有するものと解すべき余地がある。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
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