こんにちは。特定社会保険労務士の田中です。
就業規則の規定ひとつで、会社が損害を受けることもあります。
この「就業規則の勘所」では、良く見られる「就業規則の落とし穴」をご紹介します。
ぜひ、自社の就業規則をご確認ください。
【 トラブル発生! 】
X社の始業時刻は9:00であり、出社時はタイムカードを打刻している。
多くの従業員は、始業時刻までに出社しているが、まれに遅刻をする従業員もいる。
X社の時間管理は「15分単位」となっている。
例えば、9:05に出社して、5分の遅刻をした場合は、出社時刻を9:15としている。
つまり、15分の遅刻として取り扱い、給与も15分に相当する分を減額している。
先日も従業員Mが、4分の遅刻をしたので、15分に相当する分の遅刻減額をして、
給与を支払ったところ、本人から総務部に対して、次の様な主張がされた。
『 私は、4分の遅刻をしたが、出社してすぐに仕事を始めた。
しかし、15分の給与減額をされている。これは引き過ぎではないか? 』
総務部は、会社の慣習として長らく行われてきた事なので、問題はないと思っていたが、
改めて調べて、実は問題のあることが分かった。
【 ポイント 】
(1)遅刻や早退などの不就業時間がある場合は、その時間に相当する給与は支払わない、という
『ノーワークノーペイ』の原則があります。
したがって、この事例でも実際の遅刻時間である4分に相当する分を減額することは
問題ありません。しかし、それを超える11分に相当する分を減額したことに問題があります。
なお、11分に相当する部分をペナルティとして減額するならば、違法ではなくなります。
その際は、就業規則(給与規程)に後述の【 アクション 】にあるように定めてください。
(2)長年続いた職場のルールは「労使慣行」として、就業規則などに定めがなくても、
有効になる場合があります。なお、「労使慣行」の成立は法律を上回る処遇となっている
場合ですので、本件のように法律を下回るケースでは、労使慣行となりません。
【 アクション 】
(1)遅刻・早退の減額について
X社では、遅刻・早退の場合は、「ペナルティ減額」となるように、
就業規則の条文に第2項を追加することにしました。
なお、この規定では、「制裁扱い」としていますが、労働基準法 第91条では、
「制裁規定の制限」として、『減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、
総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。』
とされているので、お気を付け下さい。
( 規定例 )
第○条 (遅刻・早退の控除)
1 社員が、遅刻または早退した場合は次の金額を給与から控除する。
(賃金の時間額)×(遅刻または早退した時間数)
2 前項の時間数は15分単位として、15分に満たない遅刻または早退時間は切り上げて
15分単位とする。この場合、実際の遅刻または早退時間数を超える部分の
減額控除については制裁扱いとする。
(2)労使慣行について
長年続いた、職場独自のルールが多くの会社にあると思います。
会社も社員も疑問を持たないケースも多々あります。
しかし、その職場ルールが違法な場合は、会社としてのリスクにもなりますので、
一度、自社の独自ルールについてコンプライアンスの観点で、チェックすることをお勧めします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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社会保険労務士 田中事務所 田中理文
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☆☆☆☆☆ 『就業規則の勘所』シリーズ ☆☆☆☆☆
その1 『パートタイマーや契約社員用の就業規則も作りましょう』
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その2 『身元保証には期限が有ります。必要に応じて更新しましょう。』
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その3 『試用期間について、免除・短縮・延長の規定を検討しましょう。』
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