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労働時間の範囲~マンションの住み込み管理人の残業代訴訟

労働時間の範囲をめぐって~マンションの住み込み管理人の残業代訴訟

このような労働者は御社にはいらっしゃらないかもしれません。
仮にいたとしても、ごく少数でしょう。

ただ、問題は労働者の種類ではなく、どこからどこまでが労働時間なのかということです。
この点は、これまでも裁判を含めて、繰り返し争われてきました。

◆裁判のあらましは?

夫婦でマンションの住み込み管理人をしていた女性(67)が雇用主で大林組子会社の「大林ファシリティーズ」を相手に、残業代など約 4,000万円の支払いを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(津野修裁判長)は10月19日、「所定労働時間外にも、住民らに対応できるよう待機せざるを得ない状態に置かれていた」と述べ、残業代は支払われると判断しました。

その上で、通院や犬の散歩に使った時間は「管理人の業務とは関係ない私的行為」とし、実際の残業時間算定のため、審理を二審東京高裁に差し戻しました。

①平日の労働時間について
同小法廷は、夫婦は平日午前 9時 ~ 午後 6時の所定時間以外にごみ置き場の扉の開閉や、空調設備の運転切り替えなどの仕事をしていたとして、平日の労働時間を午前 7時~午後 10時と認定。 2人分の残業代が支払われるべきだとしています。

②土曜日について
土曜日における午前7時から午後10時までの時間は、すべて時間外労働時間に当たるとしています。ただし、業務内容、当初からの会社の指示内容から、時間外労働になるのは1人分だけとしました。

③日曜、祝日について
管理員室の照明の点消灯、ごみ置場の扉の開閉その他会社が指示した業務に現実に従事した時間に限り休日労働又は時間外労働としています。

④通院、犬の散歩について
これらの行為は、管理員の業務とは関係のない私的な行為であり、労働時間にはならないとしています。


①平日について
判決はまず、以下の通り労働時間の判断基準を確認しています。

労働基準法32条労働時間とは、労働者使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない時間(不活動時間)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである(最高裁平成12年3月9日第一小法廷判決)。
そして、不活動時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。
したがって、不活動時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。

その上で、平日の労働時間について、次の通り認定しました。

会社は、管理人夫婦に対し、所定労働時間外においても、管理員室の照明の点消灯、ごみ置場の扉の開閉、テナント部分の冷暖房装置の運転の開始及び停止等の断続的な業務に従事すべき旨を指示し、管理人夫婦は、上記指示に従い、各指示業務に従事していた。

会社は、管理人夫婦に対し、午前7時から午後10時まで管理員室の照明を点灯しておくよう指示していた。また、採用当初に手渡されたマニュアルには、管理人夫婦は、所定労働時間外においても、住民や外来者から宅配物の受渡し等の要望が出される都度、これに随時対応すべき旨が記載されていた。

したがって、午前7時から午後10時までの時間は、住民等が管理員による対応を期待し、管理人夫婦としても、住民等からの要望に随時対応できるようにするため、事実上待機せざるを得ない状態に置かれていたものというべきである。
さらに会社は、管理人夫婦から管理日報等の提出を受けるなどして定期的に業務の報告を受け、適宜業務についての指示をしていたのであるから、管理人夫婦が所定労働時間外においても住民等からの要望に対応していた事実を認識していたものといわざるを得ず、このことをも併せ考慮すると、住民等からの要望への対応について会社による黙示の指示があったものというべきである。

そうすると、平日の午前7時から午後10時までの時間については、管理人夫婦は、管理員室の隣の居室における不活動時間も含めて、本件会社の指揮命令下に置かれていたものであり、上記時間は、労基法上の労働時間に当たるというべきである。

したがって、被上告人らが平日は午前7時から午前9時まで及び午後6時から午後10時まで時間外労働に従事した旨の原審の判断は、正当として是認することができる。

また、平日においては、後述する土曜日の場合とは異なり、1人体制で執務するようにとの本件会社からの指示はなく、実際にも、管理人夫婦は、所定労働時間外も含め、2人で指示業務に従事していた。
そうすると、管理人夫婦が2人で時間外労働に従事した旨の原審の判断についても是認することができる。

②土曜日について

これについては、次の通り判示しています。

土曜日は管理人夫婦のいずれか1人が業務を行い、業務を行った者については、翌週の平日のうち1日を振替休日とすることについて、管理人夫婦の承認を得ていたというのであるが、他方で、管理人夫婦は、現実には、翌週の平日に代休を取得することはなかったというのである。

そうである以上、土曜日における午前7時から午後10時までの時間は、すべて時間外労働時間に当たるというべきである。

しかしながら、上記のとおり、会社は、土曜日は管理人夫婦のいずれか1人が業務を行い、業務を行った者については、翌週の平日のうち1日を振替休日とすることについて、管理人夫婦の承認を得ていたというのであり、また会社は、管理人夫婦に対し、土曜日の勤務は1人で行うため、巡回等で管理員室を空ける場合に他方が待機する必要はないことなどを指示していた。

さらに、そもそも管理員の業務は、実作業に従事しない時間が多く、軽易であるから、基本的には1人で遂行することが可能であった。

会社は、管理人夫婦に対し、土曜日は1人体制で執務するよう明確に指示し、管理人夫婦もこれを承認していた。土曜日の業務量が1人では処理できないようなものであったともいえないのであるから、土曜日については、上記の指示内容、業務実態、業務量等の事情を勘案して、被上告人らのうち1名のみが業務に従事したものとして労働時間算定するのが相当である。

③日曜、祝日について

次の通り判示しています。

会社は、日曜日及び祝日については、本件雇用契約において休日とされていたことから、管理員室の照明の点消灯、ごみ置場の扉の開閉以外には、被上告人らに対して業務を行うべきことを指示していなかったというのであり、また、日曜日及び祝日は、本件管理委託契約においても休日とされていたというのである。

そうすると、管理人夫婦は、日曜日及び祝日については、管理員室の照明の点消灯及びごみ置場の扉の開閉以外には労務の提供が義務付けられておらず、労働からの解放が保障されていたということができ、午前7時から午後10時までの時間につき、待機することが命ぜられた状態と同視することもできない。

したがって、上記時間のすべてが労基法上の労働時間に当たるということはできず管理人夫婦は、日曜日及び祝日については、管理員室の照明の点消灯、ごみ置場の扉の開閉その他本件会社が明示又は黙示に指示したと認められる業務に現実に従事した時間に限り、休日労働又は時間外労働をしたものというべきである。


④通院、犬の散歩について

管理人夫婦が病院に通院したり、犬を運動させたりしたことがあったとすれば、それらの行為は、管理員の業務とは関係のない私的な行為であり、管理人夫婦の業務形態が住み込みによるものであったことを考慮しても、管理員の業務の遂行に当然に伴う行為であるということはできない。

病院への通院や犬の運動に要した時間において、被上告人らが本件会社の指揮命令下にあったということはできない。



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