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自分で選択する退職にも違いがある

━━☆━━━━━━━━━━ 自分で選択する退職にも違いがある ━━━━━━━━━━━━
         
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┏┏    ◇ 早期退職優遇制度とは
┏┏    ◇ 希望退職とは 
┏┏    ◇ どちらも優遇措置はある
┏┏    ◇ 制度間の退職金差額請求 N社事件(東京地裁判決21.8.24)   
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               早期退職優遇制度とは
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定年前に自らの意思で退職する者を退職金支給等の面で優遇する人事制度です。
退職時を本人の選択にゆだねるという意味で「選択定年制」と呼ばれることもあります。

利用する従業員側にとっては、早期にセカンドライフプランを構築できる、希望する職種や業
界に転職できるといったメリットがあります。
一方で、早期退職後のキャリアプランを明確にしなければ、制度の利用自体が無意味となるリ
スクもあります。

導入する企業側にとっては、給与の高い高年齢社員の自発的な早期退職を促し、職場の活性化
と人件費の削減が見込めるメリットがある一方、割増退職金の支払いなど、一時的な収益悪化
が生じたり、優秀な人材が一斉に退職するという懸念もあります。
     ………………………………………………………………………………
退職金の優遇方法例
次のような方法があります。
(1)会社都合退職の場合の支給率を使用して退職金を算出する。
(2)65歳まで勤続した場合に適用される支給率を使用して退職金を算出する。
(例:50歳で退職する場合であっても、その社員が65歳まで勤続したものとみなし、65歳退職に相当する支給率を用いて退職金を算出)
(3)退職金の一定パーセントに相当する額を上積み支給する。
(例:退職金の30%相当額を上積み支給)
(4)退職時の年齢区分に応じて、退職金お一定パーセントに相当する額を上積み支給する
(例:退職時の年齢50~52歳=退職金の30%相当額、53~55歳=20%相当額、56~58歳=10%相当額を上積み支給)
(5)一定額を特別加算する
(例:全員に300万円を特別加算)
(6)退職時の年齢区分に応じて、一定額を特別加算する。
(例:職時の年齢50~52歳=300万円、53~55歳=200万円、56~58歳=100万円を加算)

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                  希望退職とは 
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多くの場合、人員整理の手段として整理解雇に先だって、募集期間を決めて行われます。
労働者の自発的な意思による退職の申し出を誘引することです。この際、通常の退職条件より
も有利な条件を提示して退職を誘引するのが一般的です。
あくまで労働者の自由意思に委ねられますので、使用者が応募することを強く迫ったり、脅迫
まがいの行為をすると、解雇とみなされたり、退職意思表示の取消が可能となったりします。
そのまま会社に留まりたいと思うのなら、応じる必要のないことは言うまでもありません。

法的解釈としては、労働契約の合意解約に向けて使用者労働者に対して申込みの誘引をなし
たものであり、労働者が希望退職を申し出ればこれが合意解約の申込みであり、使用者の承諾
で合意解約が成立すると考えるべきでしょう。

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                どちらも優遇措置はある
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早期退職、希望退職ともに厳密な定義があるわけではありません。混在した使われ方をしてい
る場合もあります。
しかし優遇措置があるのは共通です。
ところがこの両方の制度間では優遇措置に違い(例えば退職金の上乗せ額)が起こります。
これは募集の背景がそもそも違うので当然のことなのですが、近接した時季に両方の募集を
行った為に、制度間における退職金差額を不利益として訴えた事件があります。

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              制度間の退職金差額請求 N社事件
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【事件の概要】
N社の元従業員であるXが、既存の早期退職制度(「ネクストライフサポート制度」)によっ
退職したXについて、新設された早期退職制度の適用を排除したことは公序良俗に反する等
として、同社に対し、債務履行または不法行為にもとづく損害賠償請求として、ネクストラ
イフサポート制度により支給された退職金と早期退職者優遇措置により支給されるべき退職金
との差額相当額(約5100万円)等の支払いを求めたもの。

【Xが退職に至った経緯】
18年8月、NEA社の建材事業部門がニチアス社に営業譲渡され、NEA社は防音・音響工事
等の音関係の事業に注力することとなった。同社に残ったXは、音関連業務のマネジメントと
自らの専門性とにズレが生じてきたと感じるようになり、転職することを考えるようになった。
     ………………………………………………………………………………
N社は19年11月、ネクストライフサポート制度に基づく同年度12月期の退職希望者を募集した
(募集期間は同年12月3日から同月28日までであった)。
     ………………………………………………………………………………
Xは上記募集に応じることとし、N社に対し、ネクストライフサポート制度の適用を受けるこ
とを理由とし、退職日を20年3月31日とする19年12月25日付退職届を提出した。
     ………………………………………………………………………………
N社は20年2月28日、プレスリリースにて管理職を対象に早期退職者優遇措置を実施すること
を公式に発表し、同措置の詳細については、同年3月以降に同社の担当者から同措置の適用対
象者に対して制度説明資料および個人別加算金額の試算額を通知することとした。
なお、XはN社により、本件除外条項に基づき、早期退職者優遇措置に関する上記通知を受け
なかった。
 ★この早期退職者優遇措置の目的
 P社買収を契機に世界一のガラスメーカーとなるため、財務基盤を固める必要があり、とり
 わけ利益率が低い日本での収益力改善に優先的にり組む必要があり、グローバル組織として
 の改革についていく自信のない管理職の他社への転進を促すこと。
 【募集期間】20年3月6日から同年4月18日

     ………………………………………………………………………………
XはN社に対し、同年3月以降、数回にわたり、本件退職届による退職意思表示を撤回し、
改めて早期退職者優遇措置の適用を受けるための制度内容の詳細をXに回答するよう求めた。
しかし、N社はXの退職意思表示撤回の申入れを拒否し、同月31日付で本件退職届による退職
合意の効力が発生したとして、Xを退職扱いとし、Xに対し、退職金をX名義の口座に送金す
る方法で支払った。

【Xの言い分】
1)本件退職届による退職意思表示の撤回は有効だ
2)N社の告知義務違反でXは早期退職者優遇措置適用の機会を奪われた
3)N社には均衡待遇の取扱義務違反がある

【判決の要旨】
XがN社に対してした本件退職届による意思表示の撤回は、雇用契約の合意解約が成立してい
る以上、効力を有しない。
     ………………………………………………………………………………
ネクストライフサポート制度による割増分よりも早期退職者優遇措置による割増分が大きいこ
とによる支給額の差をもって、直ちに違法な差別ということはできず、また、ネクストライフ
サポート制度に応募した者および同措置退職日よりも早期に退職をすることが予定されている
者を同措置の対象から除外している条項は、公序良俗に違反するとはいえない。
     ………………………………………………………………………………
N社が雇用契約上ないしは信義則上の両者の信頼関係にもとづき、Xのネクストライフサポー
ト制度による退職申入れ時に早期退職者優遇措置を実施予定であることを告知する義務がある
ということはできず、また、退職(予定)日までの間にそのような告知義務があるとしてもこ
れに違反するとはいえないし、Xがネクストライフサポート制度の適用を選択して早期退職
優遇措置の適用を受ける機会がなかったとしても、それがN社の不十分な制度周知に原因があ
るともいえない。
     ………………………………………………………………………………
ネクストライフサポート制度が他社での活躍を求めて自らの意思で退職を決意した者に対し、
転職のための支援金によるサポートを行うことを目的とする定期的・定例的な制度である一方、
早期退職者優遇措置がN社における日本事業の経営状況を改善するべく、余剰人員を削減する
ために自ら退職の意思がない人に対しても対象を求める代償として一回のみ実施された措置で
あって、両者とも所定の退職金額よりも加算された額が支給されるとしても、前提条件(制度
目的)が異なるのであるから、その支給金額に差があることをもって「均等待遇」をしていな
いとはいえないこと等から、N社がXに早期退職者優遇措置の適用を認めなかったとしても、
均等待遇の取扱義務に反し裁量権を逸脱または濫用したとはいえない。


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名無し

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