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【レジュメ編】 行政法(その4〔2〕)

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-22 ★★
           【レジュメ編】 行政法(その4〔2〕)

****************************************

■■■ 行政行為(2)
■■■ 行政契約
■■■ 行政書士不法行為責任
■■■ お願い
■■■ 編集後記

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■■■ 行政行為(2)
■■ 行政行為と取消訴訟の排他的管轄
■ 意義
行政行為に瑕疵があり違法であるとして争う場合、行政事件訴訟法は、原則として、取
消訴訟のルートで争うべきとしている。
→ 行政行為に公定力がある(行政行為は、権限ある行政庁が職権で取り消すか、行政
  行為によって自己の権利利益を害された者が取り消し訴訟を提起して取り消すか、
  行政上の不服申立によって取り消さない限り、有効なものとして取り扱われること
  になる。)。

■■ 取消訴訟の排他的管轄の範囲ないし限界
■ 取消訴訟の排他的管轄の範囲
(1)権限と無関係な許認可→ 取消訴訟の排他的管轄に属さない。
(2)申請拒否処分と再申請

●● 最高裁判例「賃借権設定裁決処分取消請求」(民集8巻5号937頁)
【要旨】昭和二二年法律第二四〇号農地調整法改正法附則第三条第三項による裁定申請
    をして棄却された後、再び同一の裁定申請をすることは許されない。
【理由】通常の行政処分に関しては、ひとたび申請が斥けられても、再び申請をするこ
    とは必ずしも許されないわけではなく、ことに、その後の事情の変更によっ
    て、再び同じ処分を申請することが許されなければならないのは当然である
    が、前記附則三条三項による裁定の申請は、昭和二〇年一一月二三日現在の賃
    借権を根拠とするものであるから、申請事由の有無について、通常、その後の
    事情の変更は考えられず、本件の場合も、かかる事情の変更を理由として再申
    請をしたものでないことは原判決の確定するところである。

■ 取消訴訟の排他的管轄の限界
【1】無効の瑕疵ある行政行為と取消訴訟の排他的管轄
(1)違法の瑕疵ある行政行為
・取り消しうべき瑕疵ある行政行為→ 取消訴訟の排他的管轄に服する。
・無効の瑕疵ある行政行為→ 取消訴訟の排他的管轄には服さない。
(2)行政行為に無効の瑕疵がある場合
(ア)行政行為の無効確認訴訟を提起できる(行政事件訴訟法3条4項)。
(イ)行政行為の無効を前提として現在の法律関係に関する訴えを提起できる場合(同
   法4条・45条)もある。
(3)取消訴訟と無効確認訴訟の相違
両方とも直接に行政行為を攻撃する点では同じであるが、取消訴訟の場合、出訴期間の
制限(処分又は裁決があったことを知った日から6ヶ月)(行政事件訴訟法14条1項)
があり、出訴期間を徒過すると行政行為の効力を争うことができなくなるのに対して
(→不可争力が生じる。)、無効確認訴訟の場合にはこの出訴期間の制限がない。
(4)無効の瑕疵の要件
●● 最高裁判例「国税賦課処分無効請求」(民集15巻3号381頁)
【要旨】行政処分の瑕疵が明白であるということは、処分要件の存在を肯定する処分庁
    の認定の誤認であることが、処分成立の当初から、外形上、客観的に明白であ
    ることをさすものと解すべきである。
【理由】行政処分が当然無効であるというためには、処分に重大かつ明白な瑕疵がなけ
    ればならず、ここに重大かつ明白な瑕疵というのは、「処分の要件の存在を肯
    定する処分庁の認定に重大・明白な瑕疵がある場合」を指すものと解すべきこ
    とは、当裁判所の判例である。
★ 無効の瑕疵の要件は、重大明白説(=外見上一見明白説)が有力である。

●● 最高裁判例「買収処分無効確認請求」(民集16巻7号1437頁)
【要旨】行政処分の瑕疵が客観的に明白であるということは、処分関係人の知、不知と
    は無関係に、また、権限ある国家機関の判定をまつまでもなく、何人の判断に
    よってもほぼ同一の結論に到達しうる程度に明らかであることを指すものと解
    すべきである。

●● 最高裁判例「所得税賦課処分無効確認等請求」(民集27巻3号629頁)
【理由】課税処分が課税庁と被課税者との間にのみ存するもので、処分の存在を信頼す
    る第三者の保護を考慮する必要のないこと等を勘案すれば、当該処分における
    内容上の過誤が課税要件の根幹についてのそれであって、徴税行政の安定とそ
    の円滑な運営の要請を斟酌してもなお、不服申立期間の徒過による不可争的効
    果の発生を理由として被課税者に右処分による不利益を甘受させることが、著
    しく不当と認められるような例外的な事情のある場合には、前記の過誤による
    瑕疵は、当該処分を当然無効ならしめるものと解するのが相当である。
★ 常に明白性を要件とする必要はなく、行政行為が有効であることを信頼した第三者
  を保護する必要がある場合にのみ明白性を要件とし、一般的には重大性のみで足り
  る。

【2】国家賠償請求訴訟と取消訴訟の排他的管轄
●● 最高裁判例「宅地買収不服、所有権確認請求」(民集15巻4号850頁)
【理由】行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あ
    らかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないもの
    ではないから、本訴が被上告委員会不法行為による国家賠償を求める目的
    に出たものであるということだけでは、本件買収計画の取消後においても、な
    おその無効確認を求めるにつき法律上の利益を有するということの理由とする
    に足りない。

★★ 金銭を納付させたり支給したりすることを直接の目的とする行政行為の場合、取
   消訴訟の排他的管轄が及ばず、直ちに国家賠償請求が可能とすると、取消訴訟の
   排他的管轄を認めた趣旨が潜脱されないか?
   この点について最高裁判決はないが、下級審判決の中には、このような処分であ
   っても取消訴訟を提起することなく、損害賠償請求訴訟を提起することを認めた
   ものがある。

【3】刑事訴訟と取消訴訟の排他的管轄
刑事訴訟との関連では、取消訴訟の排他的管轄は当然には及ばない(通説)。

〔理由〕違法な行政行為に違反したことは、実質的に考えると刑罰を科すに値するよう
    な公益侵害とはいえないこと、取消訴訟で勝訴の見込みが定かでない場合にま
    で起訴された場合のことを考えて出訴することは私人に酷であること、行政行
    為違反で有罪とされたのち当該行政行為が取り消されたことが再審事由とされ
    ていないこと(刑事訴訟法45条)、
    罪刑法定主義等に基づく。
→ 行政行為が取り消されていなくても、刑事訴訟では当該行為は違法であるので、行
  政行為違反を理由とする犯罪は成立しないという抗弁を認める説を違法抗弁説とい
  う。

●● 最高裁判例「風俗営業等取締法違反」(刑集32巻4号605頁)
【要旨】個室付浴場業(いわゆるトルコぶろ営業)の規制を主たる動機、目的とする知
    事の本件児童遊園設置認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり、個
    室付浴場業を規制しうる効力を有しない。
★ 違法抗弁説により無罪判決が下された。

●● 最高裁判例「道路交通法違反」(刑集42巻8号1239頁)
【要旨】免許停止処分の理由となった軽傷交通事故につきその後の刑事裁判で傷害の事
    実の証明がないとして無罪となった場合においても、右処分が無効となるもの
    ではなく、右処分歴に基づき反則者に当たらないとしてなされた速度違反事件
    の公訴の提起は、適法である。
【理由】免許停止処分の当時、処分行政庁は、相当な根拠のある関係資料に基づき、被
    害者らが傷害を負ったと認めたのであるから、その後刑事裁判において傷害の
    事実の証明がないとして、被告人が無罪とされたからといって、右処分が無効
    となるものではない。そうすると、本件免許停止処分は、無効ではなく、か
    つ、権限のある行政庁又は裁判所により取り消されてもいないから、被告人
    反則者に当たらないと認めてなされた本件公訴の提起は、適法である。

【4】行政上の義務の民事執行と取消訴訟の排他的管轄
行政上の義務について、行政上の強制執行の方法が認められていない場合、国または地
方公共団体が民事訴訟、民事執行の方法によって義務の履行確保を図ることができる
か。
→ 最高裁は否定的に解する判決を出しているが、学説は肯定している。
→ 行政主体が民事訴訟、民事執行の方法によって義務の履行確保を図ることができる
  ことを前提とした場合、裁判所は当該行政行為の適法性を審査しうる。

●● 最高裁判例「建築工事続行禁止請求事件」(民集第56巻6号1134頁)
【要旨】
(ア)国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行
   を求める訴訟は,不適法である。
(イ)宝塚市が,宝塚市パチンコ店等,ゲームセンター及びラブホテルの建築等の規制
   に関する条例に基づき同市長が発した建築工事の中止命令の名あて人に対し,同
   工事を続行してはならない旨の裁判を求める訴えは,不適法である。

【5】先行する行政行為の違法と取消訴訟の排他的管轄
段階的決定が行われる場合に、先行する行政行為が無効であれば、それを前提に行われ
る行政行為も瑕疵を帯びることになり、後続する行政行為の違法事由として先行する行
政行為の瑕疵を主張できることに争いはない。
★★ 先行する行政行為に取消うべき瑕疵があることにとどまる場合、先行する行政行
   為に対する取消訴訟を提起せず出訴期間が徒過したにもかかわらず、後続する行
   政行為に対する取消訴訟において、先行する行政行為に瑕疵があるから、先行す
   る行政行為を前提とする後続の行政行為も違法であると主張することができるか
   については議論がある。
(例)土地収用法の事業認定の違法性の承継の問題

【6】立法政策による取消訴訟の排他的管轄の除外
形式的当事者訴訟:当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴
訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの(行政事件訴訟法
4条)
(例)土地収用法133条

■■ 取消訴訟の出訴期間
行政事件訴訟法14条1項 取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から六
箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、
この限りでない。
(*)平成16年の改正前は「3ヶ月」であった。

●● 最高裁判例「農地委員会の裁決取消請求」(民集3巻6号199頁)
【理由】刑罰法規については憲法第三九条によって事後法の制定は禁止されているけれ
    ども、民事法規については憲法は法律がその効果を遡及せしめることを禁じて
    はいないのである。したがって民事訴訟上の救済方法の如き公共の福祉が要請
    する限り従前の例によらず遡及して之を変更することができると解すべきであ
    る。出訴期間も民事訴訟上の救済方法に関するものであるから、新法を以て遡
    及して短縮しうるものと解すべきであって、改正前の法律による出訴期間が既
    得権として当事者の権利となるものではない。そして新法を以て遡及して出訴
    期間を短縮することができる以上は、その期間が著しく不合理で実質上裁判の
    拒否と認められるような場合でない限り憲法第三二条に違反するということは
    できない。
★ 憲法32条で保障された裁判を受ける権利を侵害するような出訴期間は違憲となる。

・取消訴訟を提起する前に行政上の不服申し立てを前置しなければならない場合には、
 不服申立て期間(行政不服審査法14条)を徒過して不服申立てができなくなると、取
 消訴訟も提起できない。

■■ 瑕疵ある行政行為の効力
■ 例外的に違法な行政行為の効力を維持する理論
【1】瑕疵の治癒の理論
行政行為が行われた時点においては、適法要件が欠けていたが、事後に当該要件が充足
された場合に、当初の瑕疵が治癒されたとして行政行為の効力を維持する理論

●● 最高裁判例「農業用施設買収無効確認請求」(民集15巻7号1814頁)
【要旨】農地買収計画の異議棄却決定に対する訴願の提起があるにかかわらず、その裁
    決を経ないで、県農地委員会が訴願棄却の裁決があることを停止条件として右
    買収計画を承認し、県知事が土地所有者に買収令書を発行したという瑕疵は、
    爾後、訴願棄却の裁決があったことによって治癒されたと認むべきである。

→ 瑕疵の治癒を容易に認めることは、行政過程の適正さを軽視することにつながるお
  それがあるため、最高裁は、理由の追完(行政行為を行うのと同時に理由を提示す
  ることが義務付けられている場合に、理由が提示されなかったり、提示された理由
  が不十分であるときに、事後に理由を補完することによって瑕疵を治癒させるこ
  と)に対しては厳格な立場をとっている。

●● 最高裁判例「法人税課税処分取消請求」(民集26巻10号1795頁)
【要旨】青色申告についてした更正処分における理由附記の不備の缺疵は、同処分に対
    する審査裁決において処分理由が明らかにされた場合であっても、治癒されな
    いと解すべきである。
【理由】更正に理由附記を命じた規定の趣旨が前示のとおりであることに徴して考える
    ならば、処分庁と異なる機関の行為により附記理由不備の瑕疵が治癒されると
    することは、処分そのものの慎重、合理性を確保する目的に沿わないばかりで
    なく、処分の相手方としても、審査裁決によってはじめて具体的な処分根拠を
    知らされたのでは、それ以前の審査手続において十分な不服理由を主張するこ
    とができないという不利益を免れない。そして、更正が附記理由不備のゆえに
    訴訟で取り消されるときは、更正期間の制限によりあらたな更正をする余地の
    ないことがあるなど処分の相手方の利害に影響を及ぼすのであるから、審査裁
    決に理由が附記されたからといって、更正を取り消すことが所論のように無意
    味かつ不必要なこととなるものではない。

【2】違法行為の転換
当初Aとしてなされた行政行為が、Aとして必要な要件を欠いているためにAとしては
違法であるが、Bの行政行為の要件は充足している場合、これをBとして存続させるこ


●● 最高裁判例「土地買収不当処分取消請求」(民集8巻7号1387頁)
【要旨】自作農創設特別措置法施行令(昭和二三年二月政令第三六号による改正前)第
    四三条によって定めた農地買収計画を、右計画に関する訴願裁決で同令第四五
    条により買収を相当とし維持することは違法ではない。
★ 違法行為の転換を認めた。
→ 単に行政効率の観点からのみ容易に違法行為の転換を認めるべきではなく、行政効
  率の要請と名あて人の権利利益の保護の要請を慎重に比較衡量する必要がある。

【3】不可変更力
行政上の不服申立てに対する決定、裁決のような紛争を裁断する行政行為については、
裁判所がいったん下した判決を自ら取り消すことが原則として許されないのと同様、職
権取り消しが認められないとするもの(実定法上の根拠はない。)。

●● 最高裁判例「行政処分取消等請求」(民集8巻1号102頁)
【要旨】裁決が行政処分であることは言うまでもないが、実質的に見ればその本質は法
    律上の争訟を裁判するものである。憲法七六条二項後段によれば、「行政機関
    は、終審として裁判を行うことができない」のであって、終審としては、裁判
    所が裁判を行うが、行政機関をして前審として裁判を行わしめることは、何等
    差支えないのである。本件裁決のごときは、行政機関である上告人が実質的に
    は裁判を行っているのであるが、行政機関がするのであるから行政処分に属す
    るわけである。かかる性質を有する裁決は、他の一般行政処分とは異なり、特
    別の規定がない限り、原判決のいうように裁決庁自らにおいて取消すことはで
    きないと解するを相当とする。

【4】理由の追加・差替え
同一の行政行為であることを前提としつつ、理由を追加・変更することを認めるもの
●● 最高裁判例「法人税更正処分取消」(民集35巻5号901頁)
【要旨】青色申告書による法人税の申告について不動産の取得価額が申告額より低額で
    あることを更正の理由としてした更正処分の取消訴訟において、課税庁は、当
    該処分の適否に関する攻撃防禦方法として、当該不動産の販売価額が申告額よ
    り多額であることを主張することができる。
【理由】被上告人に本件追加主張の提出を許しても、右更正処分を争うにつき被処分者
    たる上告人に格別の不利益を与えるものではないから、一般的に青色申告書に
    よる申告についてした更正処分の取消訴訟において更正の理由とは異なるいか
    なる事実をも主張することができると解すべきかどうかはともかく、被上告
    が本件追加主張を提出することは妨げないとした原審の判断は、結論において
    正当として是認することができる。

●● 最高裁判例「公文書一部公開拒否処分取消請求事件」(民集53巻8号1862
   頁)
【理由】(理由附記制度の)そのような目的は非公開の理由を具体的に記載して通知さ
    せること(実際には、非公開決定の通知書にその理由を付記する形で行われ
    る。)自体をもってひとまず実現されるところ、本件条例の規定をみても、右
    の理由通知の定めが、右の趣旨を超えて、一たび通知書に理由を付記した以
    上、実施機関が当該理由以外の理由を非公開決定処分の取消訴訟において主張
    することを許さないものとする趣旨をも含むと解すべき根拠はないとみるのが
    相当である。
★ 理由の追加を認めた。

【5】事情裁決・事情決定・事情判決
(1)事情判決
行政事件訴訟法31条1項:取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、こ
れを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損
害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、
処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請
求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が
違法であることを宣言しなければならない。

(2)事情裁決
行政不服審査法40条6項:処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し又は撤廃
することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害
の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処
分を取り消し又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁は、
裁決で、当該審査請求を棄却することができる。この場合には、審査庁は、裁決で、当
該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。

(3)事情決定
行政不服審査法第四十八条:前節(第十四条第一項本文、第十五条第三項、第十七条、
第十八条、第二十条、第二十二条、第二十三条、第三十三条、第三十四条第三項、第
四十条第一項から第五項まで、第四十一条第二項及び第四十三条を除く。)の規定は、
処分についての異議申立てに準用する。

■■ 行政行為の成立、発効、失効
■ 行政行為の成立
●● 最高裁判例「仮処分決定取消」(民集8巻9号1779頁)
【要旨】表示行為として行為機関の内部的意思決定と相違する書面が作成された場合に
    おいても、右表示行為が正当の権限ある者によってなされた以上、当該書面に
    表示されているとおりの行政行為があったものと認めるべきである。
【理由】行政行為は表示行為によって成立するものであって、行政機関の内部で確定し
    たものであっても外部に表示しない間は意思表示ではあり得ない。そうして当
    該行政行為が要式行為であると否とを問わず書面によって表示されたときは書
    面の作成によって行政行為は成立し、その書面の到達によって行政行為の効力
    を生ずるものである。この場合表示行為が当該行政機関の内部的意思決定と相
    達していても表示行為が正当の権限ある者によってなされたものである限り、
    当該書面に表示されているとおりの行政行為があったものと認めなければなら
    ない。

●● 最高裁判例「不作為違法確認」(民集36巻6号1146頁)
【要旨】行政処分が行政処分として有効に成立したといえるためには、行政庁の内部に
    おいて単なる意思決定の事実があるかあるいは右意思決定の内容を記載した書
    面が作成・用意されているのみでは足りず、右意思決定が何らかの形式で外部
    に表示されることが必要であり、名宛人である相手方の受領を要する行政処分
    の場合は、さらに右処分が相手方に告知され又は相手方に到達することすなわ
    ち相手方の了知しうべき状態におかれることによってはじめてその相手方に対
    する効力を生ずるものというべきである。

※ 一事不再議の法理:合議体において意思決定がなされ決定書が作成された場合、こ
  れが行政行為の名あて人に発送される前であっても、審議の再開は認められないと
  いう法理

■ 行政行為の発効
【1】到達主義
行政行為の効力が生ずるのは、原則として、行政行為が相手方に到達した時である。た
だし、附款で、始期が定められていたり、停止条件が付されている場合もある。

●● 最高裁判例「傷害、窃盗、詐欺」(刑集8巻8号1372頁)
【理由】特定の公務員の任免の如き行政庁の処分については、特別の規定のない限り、
    意思表示の一般的法理に従い、その意思表示が相手方に到達した時と解するの
    が相当である。

行政手続オンライン化法4条 行政機関等は、処分通知等のうち当該処分通知等に関
 する他の法令の規定により書面等により行うこととしているものについては、当該法
 令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、電子情報処理組織(行政機
 関等の使用に係る電子計算機と処分通知等を受ける者の使用に係る電子計算機とを電
 気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用して行うことができる。
3  第一項の規定により行われた処分通知等は、同項の処分通知等を受ける者の使用
に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に当該処分通知等を受ける
者に到達したものとみなす。

【2】個別法による送達主義の定め
(1)交付送達 例・国税通則法12条1項・4項
(2)郵便送達 例・国税通則法12条2項
(3)差置送達 例・国税通則法12条5項2号
(4)公示送達 例・国税通則法14条、旅券法19条の2
→ 公示送達について特別の規定がない場合には、民法98条、民事訴訟法110条・
  111条に基づく公示送達が可能と解すべきである。

■ 行政行為の失効
【1】行政行為の取消
(1)職権取消:行政行為を行ったのちに、当該行政行為が違法であったことを行政庁
   が認識し、職権で当該行政行為の効力を失わせる行為
(2)職権取消の効果
取り消しを認める明文の規定がなくても一般的には可能
→ 本来であれば行政行為の時点に遡って、当該行政行為がなかったものとして取扱わ
  れるべきであるが、遡及的に失効させることが適切ではない場合もあるので、場合
  に分けて考えるべきである。
(ア)違法に許認可等が与えられたことについて、申請者に責めに帰すべき事由がない
   場合
→ 遡及的失効は認めるべきではなく、取消しがなされて以後、許認可等の効力が失わ
  れるとするのが原則。
(イ)違法に許認可等が与えられたことについて、申請者に責めに帰すべき重大な事由
   がある場合
→ 職権取消の効果は、許認可等の時点に遡及すると解すべき。

【2】行政行為の撤回
(1)意義
適法になされた行政行為であっても、その後の情勢の変化に伴って、当該行政行為の効
力を失わせる必要が生じた場合に、その効力を失わせる行為(実定法上では、「取消
し」と表現されるのが通常)
(2)撤回の効果
当初は適法に許認可等が与えられたのであるから、撤回の効果は遡及せず、将来に向か
ってのみ効力を有する。
(3)撤回の可否
撤回の根拠が法律に定められていることが必要か否かについては、当該行政行為の性
質、有効期間が付されているか、付されている当該期間の意味は何か、撤回によりもた
らされる公益と撤回により相手方の受ける不利益、相手方に責めに帰すべき事由が存在
するか、第三者の信頼保護の必要性当の事情を考慮して、解釈することになる。
→ 許認可等の撤回は、適用除外とされていない限り、行政手続法の「不利益処分」に
  該当する。
(4)撤回権者
当該行政行為を行う権限のある行政庁
→ なお、上級行政庁は、下級行政庁に対して、指揮監督権に基づいて職権取消しを命
  ずることができるにとどまる。
(5)撤回と補償
撤回が認められる場合に、補償の必要があるか、必要がある場合に何を補償すべきかに
ついては、撤回される許認可等の事案に即した検討が必要となる。

●● 最高裁判例「借地権確認土地引渡等請求」(民集28巻1号1頁)
【要旨】都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使
    用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向って取り
    消されたときは、使用権者は、特別の事情のないかぎり、右取消による土地使
    用権喪失についての補償を求めることはできない。
【理由】本件のような都有行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権
    は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目
    的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであ
    り、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されてい
    るものとみるのが相当である。

(6)比例原則
許認可等が適法に与えられたのちに、相手方の義務違反があった場合、比例原則に照ら
して、撤回が過酷にすぎる場合は、撤回よりも穏便な措置として、一定期間、許認可等
の効力の停止にとどめる場合もありうる。

【3】その他の失効原因
(1)附款として付された終期の到来や解除条件の成就によって失効する場合
(2)ある事実の発生により当然に失効する場合 例・国家公務員が禁錮以上の刑に処
   せられると、国家公務員法(38条2号、76条)により当然に失職する。
(3)ある施設を対象として与えた許可の場合、当該施設が地震・火災等によって消滅
   すれば、当該許可も撤回なしに失効するのが原則である。


■■■ 行政契約
■■ 行政契約の基本原理
行政庁が当事者となる行政契約については、法律の根拠を要しない。ただし、行政法上
の一般原則(平等原則、比例原則等)は適用される。
→ 行政上の義務履行は法律で定めなければならないので、行政契約で行政上の強制執
  行を認めることはできない。
→ 行政契約違反に対する罰則を行政契約中に定めることは、罪刑法定主義に反して認
  められない。

■■ 行政契約の統制
■ 行政法の一般原則
(1)契約自由の原則の修正
・法律に違反する契約は締結できない。
→ ただし、行政契約行政手続法の対象外。

(2)財政民主主義
・憲法第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づく
 ことを必要とする。
→ 予算が国会で議決されていなければならない。

・地方自治法第九十六条 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなけれ
 ばならない。
 五 その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結する
こと
 六 条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手
段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること
 七 財産を信託すること
 八 前二号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に
従い条例で定める財産の取得又は処分をすること
→ 地方公共団体でも、議会による予算の議決が必要であり、さらに、重要な契約につ
  いては、議会の議決も必要である。

(3)契約の統制
(ア)一般競争入札
会計法:契約担当官及び支出負担行為担当官は、売買、貸借、請負その他の契約を締
 結する場合においては、第三項及び第四項に規定する場合を除き、公告して申込みを
 させることにより競争に付さなければならない(29条の3第1項)。
(イ)指名競争入札
会計法:契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で第一項の競争に付す
 る必要がない場合及び同項の競争に付することが不利と認められる場合においては、
 政令の定めるところにより、指名競争に付するものとする(29条の3第3項)。
(ウ)随意契約
会計法:契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付する
 ことができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合においては、政令
 の定めるところにより、随意契約によるものとする(29条の3第4項)。

●● 最高裁判例「損害賠償」(民集第41巻2号189頁)
【要旨】普通地方公共団体が契約を締結するに当たり競争入札の方法によることが不
    可能又は著しく困難とはいえないとしても、当該契約の目的一内容に相応する
    資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定してその者との間で契約を締
    結するという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を達成する
    上でより妥当であり、ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながる
    場合には、右契約の締結は、地方自治法施行令(改正前)一六七条の二第一項
    一号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当
    する。
★ 競争入札によることが不可能または著しく困難とはいえない場合でも、随意契約
  よることもあり得る。

●● 最高裁判例「売却処分無効確認等」(民集第41巻4号687頁)
【要旨】普通地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約は、
    地方自治法施行令一六七条の二第一項の掲げる事由のいずれにも当たらないこ
    とが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法に
    よることが許されないことを知り又は知り得べかりし場合など当該契約を無効
    としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の趣旨を没却する結果となる
    特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効となる。
★ 随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約であっても、当然には無効に
  ならない。
→ したがって、普通地方公共団体は債務履行義務を負うため、住民訴訟で差止めを
  求めることはできない。

(4)国の財産
・普通財産の貸付け等
国有財産法:普通財産は、第二十一条から第三十一条までの規定によりこれを貸し付
け、交換し、売り払い、譲与し、信託し、又はこれに私権を設定することができる
(20条)。
・行政財産の貸付け等
国有財産法:行政財産は、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、信託し、若し
くは出資の目的とし、又はこれに私権を設定することができない(18条1項)。

(*)国有財産の分類(国有財産法3条)
(ア)行政財産
(a)公用財産:国において国の事務、事業又はその職員の住居の用に供し、又は供す
   るものと決定したもの
(b)公共用財産:国において直接公共の用に供し、又は供するものと決定したもの
(c)皇室用財産:国において皇室の用に供し、又は供するものと決定したもの
(d)企業用財産:国において国の企業又はその企業に従事する職員の住居の用に供
   し、又は供するものと決定したもの
(イ)普通財産:行政財産以外の一切の国有財産


■■■ 行政書士不法行為責任
約1ヶ月前のことになりますが、4月15日号の法律雑誌『NBL』に、委任状を偽造し
たり、使用目的を偽って戸籍謄本を取得した行政書士不法行為責任の記事が掲載され
ていました。行政書士という職務上合法的に戸籍謄本等を取得できる者が、その制度を
悪用した事件です。

本件は、原告の配偶者の母親が、原告と(わが子である)配偶者を離婚させることを目
的として、調査会社に、原告等の出身等の調査を依頼し、この調査会社が行政書士に戸
籍謄本等の入手を依頼したところ、この行政書士が目的を偽って原告等の戸籍謄本を取
得し、さらに、委任状を偽造して除斥謄本を取得したという事案です。

東京地裁は、当該行政書士は、調査会社の依頼に基づき、原告等の戸籍謄本等を取得
し、調査会社はこれを母親に交付したのであるから、行政書士は、調査会社およびその
代表取締役ともに共同不法行為者として、これによって生じたプライバシー侵害に対す
る損害(慰謝料)について、連帯して賠償すべきであると判示しています。

なお、ご参考までに、戸籍法では、「何人でも、戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記
載した事項に関する証明書の交付の請求をすることができる」(10条1項)が、そ「の
請求は、法務省令で定める場合を除き、その事由を明らかにしてしなければならない」
(同2項)と規定されています。この「法務省令で定める場合」に、「弁護士、司法書
士、土地家屋調査士税理士社会保険労務士、弁理士、海事代理士又は行政書士が職
務上請求する場合」(戸籍法施行規則11条3号)があります。除籍謄本についても同様
です(法12条の2第2項、施行規則11条の3第1項第2号)。また、委任状の偽造は、
有印私文書偽造であり、刑法上の犯罪になります。

こうした行政書士の業務上必要な権利を悪用した行為は、大変に残念であり、行政書士
としてのコンプライアンス(法令遵守あるいは法令順守)が求められます。また、本件
は、たとえ法令には抵触しないとしても、行政書士の職業倫理から、当然に調査会社の
依頼を毅然として拒絶すべきであったと考えられます。

さらに詳しい内容を知りたい方は、法律雑誌『判例タイムズ』(2月1日号、No.1195、
183頁以下)をご参照ください。


■■■ お願い  
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。

質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。


■■■ 編集後記 
ゴールデンウィーク中の成果はいかがだったでしょうか。私は、近くにある大学の図書
館で、法律雑誌等から、面白そうな記事や判例のコピーを取りまくっていました。昨今
の新法令についてはご説明するまでもありませんが(会社法、公益通報者保護法、改正
高年齢者雇用法、改正独占禁止法、労働審判法等)、日々に実務上留意すべき判例も続
出しているとの印象を改めて深くしたところです。なお。本号で言及した「行政書士
不法行為責任」も、その一つです。

これから7月の海の日あるいは夏休みまでは、坦々とした日々が続きますが、この間
は、重要な得点源とすべき行政法が続きます。

引き続き、このメルマガをどうぞ宜しくお願いします。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
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