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経歴詐称社員の懲戒解雇は有効か?

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 経営・労務管理ビジネス用語の
   あれっ! これ、どうだった?!

  第42回 経歴詐称社員の懲戒解雇は有効か? 
 
<第57号>      平成23年4月11日(月)
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発行人のプロフィル⇒ http://www.ho-wiki06.com
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こんにちは! 
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。

1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。

すでに御承知のように、先週の7日夜、宮城県を中心に
震度6強の「余震」が勃発しました。

被災地ではやっと復興へ向けて徐々に立ち上がってきたときに
これでもか、との追い打ちの地震に
どこまで、自然の猛威が苦しめるのか、と恨めしくもなります。

しかし、東日本大震災に関して、海外メディアの多くは、
避難所暮らしを強いられている被災者たちの規律正しさや
忍耐強さに、賞讃の眼で注目しています。

例えば、AP通信では「ほかの被災国でしばしば噴出する怒りや
いらだちはほとんどない」と報道し、

また、タイのインターネットのブログには、
「ほかの国の大災害では殺し合いや略奪が起きるのに、
日本人は避難所や商店で順番待ちの列を作っている」とあったとのこと。

とにかく善意の義援金、ボランティアの方々の献身的な支援活動等、
日本は本当に素晴らしいと思います。(編集後記にも記載)

さて、本論ですが6か月前に中途採用した社員の学歴と職歴に虚偽記載
あったことが判明したが、この社員を懲戒解雇できるか、との
相談がありました。

今回は、この点について考えてみます。

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◆◆ 経歴詐称懲戒処分の一般的な捉え方 ◆◆

○ 労働契約の締結に当たり、使用者が経歴の申告を求めた場合、
労働者は誠実にこれに応ずべき義務を負っています。

経歴を詐称することは、使用者労働者の適正配置を誤らせ
信頼関係を基礎とする継続的な雇用関係においては
信義誠実に反する為、一般に懲戒処分事由になると解されています。

○ 一般に「懲戒」とは、労働者が企業内の服務規律
違反した場合や、企業秩序を乱す行為をした場合に、

その労働者に対して企業が一定の制裁(不利益措置)を
加えることをいいます。

判例でも、労働者労働契約に付随して企業秩序を
遵守すべき義務を負うものとした上で、

使用者は、広く企業秩序を維持し、もっと企業の円滑な運営を
図るために、その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として

当該労働者に対し、一種の制裁罰である懲戒を課することができる。」
(「関西電力事件」昭58.9.8最高裁第一小法廷)

○ しかし、いかなる場合でも使用者に自由に懲戒処分権を
与えている訳ではありません。

労働契約法第15条に次のようにあります。
使用者労働者懲戒することができる場合において、
当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の

事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上
相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、
当該懲戒は、無効とする。」と。

つまり、懲戒処分が有効と認められるには、
(1)客観的に合理的な理由があること、(2)社会通念上相当と
認められることが必要とされています。

そして、懲戒処分の有効・無効を判断する具体的な要素として
その労働者の行為の性質・態様などから見て、

当該処分の重さが均衡のとれたものであるか(相当性の原則)、
併せて具体的な諸事情を総合的に勘案して、
その有効性が判断される裁判例が多いと言えます。

◆◆ 「炭研精工事件」平3.9.19最高裁第一小法廷 ◆◆

○ 代表的な裁判例で考えてみます。

この事案は、企業が中学校又は高等学校卒業者を募集対象者とした
求人募集に応募した労働者が、大学を除籍されて中退しており

履歴書最終学歴を高等学校卒業と記載して大学中退の事実は
記載せず、また「賞罰なし」として採用されたが、

その後、経歴詐称が判明し、
企業が就業規則上の懲戒解雇事由に該当するとして
懲戒解雇したもので、最高裁は次のように判示しました。

労働者が2回にわたり懲役刑を受けたこと及び
雇い入れられる際に学歴を偽ったことが会社就業規則所定の

懲戒解雇事由に該当し、原審(筆者注:控訴審、高裁判決)の
判断は正当として是認できる。」として
懲戒解雇を有効としたものです。

○ つまり、労働者が真実を告知したならば
採用しなかったであろう「重大な経歴詐称」に当たる場合に、
懲戒解雇が有効とされる場合が多いと解されています。

従って、多くの企業では就業規則懲戒解雇事由の一つに
「重大な経歴詐称が判明した時」等と規定している場合が
多いといえます。

◆◆ 経歴詐称の具体的内容 ◆◆

○ 一般に経歴詐称で多いのは、
1.学歴、2.職歴、3.犯罪歴とされています。

1.学歴について:
□ 学歴に関しては、労働力の適正な配置を誤らせるなどの
 理由により、これに基づく懲戒解雇を有効とする裁判例が
 多いとされています。具体的には、

(1)学歴により別個の職位を設定している場合
   (「三菱金属鉱業事件」)
(2)学歴を確定的な採用条件としている場合。
   (「スーパーバック事件」)
(3)学歴が適格性判断の上で重大な要素の場合。
   (「正興産業事件」)

2.職歴について:
□ 職歴については例えば、経験者であるとの虚偽の申告により
 使用者労働条件決定を誤らせた場合の解雇を
 有効としています(「環境サービス事件」)。

3.犯罪歴について:
□ 例えば、起訴され公判中であることは賞罰の「罰」には
 含まれないとされています(「大森精工機事件」)。

 また、履歴書の賞罰欄に起訴猶予事案等の犯罪歴(いわゆる
 「前歴」)までは、「前科」(確定した有罪判決)と異なり
 記載すべき義務はないこと(「マルヤタクシー事件」)、

 さらに、少年時代の非行に関しても申告義務はないと
されています(「西日本警備保障事件」)。

○ 結局、経歴詐称については労働契約締結に当っての
経歴詐称自体をとらえて信義則違反として、

直ちに懲戒権の発動の対象となし得るものでなく、
実際の懲戒権の行使は、それが重大な経歴詐称であり、

その詐称行為により企業の賃金、職種、地位その他
労働条件の体系を著しく乱し、企業の健全な運営を
阻害するなど、

企業秩序に対し具体的な損害ないし侵害を及ぼした場合に
はじめて、その程度に応じて許されるとするのが
ほぼ定説となっています。

◆◆ 労基法の解雇予告規定の「但書」との関連 ◆◆

○ 労基法第20条(解雇の予告)の条文中の「但書」に
次の規定が置かれています。

労働者責に帰すべき事由に基いて解雇する場合に
おいては、この限りでない。」と。

これは労働者を解雇する場合に、その解雇事由が
明らかに労働者側に存在するとき、

行政官庁(所轄労基署長)の認定を受けた場合には、
解雇の予告も予告手当の支払いも必要なく、
即時解雇できるとの規定です。

この場合の認定基準について解釈例規には次のように
示されています。

「『労働者責に帰すべき事由』とは、労働者の故意又は
これと同視すべき事由であるが、判定に当っては、

労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況等を考慮の上、
総合的に判断すべきであり、『労働者責に帰すべき事由』が

法第20条の保護を与える必要のない程度に重大又は
悪質なもの」であるとして、
具体的にその認定すべき事例の中で次のように示しています。

「雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合
及び雇入れの際、使用者の行う調査に対し、

採用の原因となるような経歴を詐称した場合」が
挙げられています。(昭23.11.11基発第1637号、昭31.3.1
基発第111号)

○ 以上から本件の場合も、当該労働者経歴詐称
内容・程度、職務内容、勤務年限等を総合的に勘案し

懲戒解雇が可能かどうか判断すべきものと考えます。

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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。

フランス紙ル・モンドの3月22日付けの論説記事で
「日本人は国家に寄りかかろうとは夢にも思っていない。

各地から駆けつけたボランティアや医師、看護師らの支援を
受け、組織的に行動した」と絶賛し、これを模範にしようと
訴えていました。

また、アメリカのニューヨーク・タイムズでも、
原発事故の現場で、放射線被曝の危険にさらされながら

任務にあたる者を「名もなき英雄たち」と報道し、
世界に感動を与えたとしています。

震災直後に岩手県大船渡市で救助活動に携わった中国の
国際救援隊のある医務官が帰国後、「日本の人々は、

たとえ親族が亡くなったとしても泣き叫んだりしない。
我々が世界各地の被災地で見てきたものとは違う光景だった。」

と語り、他者に配慮して自制的に振る舞う被災者の姿を
称えていたといいます。

避難所にいる方々は、両親、祖父母、兄弟、孫、親戚、友人等
関係性の強い誰かがお亡くなりになっているのでは
ないでしょうか。

その方の心情を思うにつけ語るべき言葉が見つかりません。
一日も早く未来に向かって希望の前進をと願うばかりです。

では、また次号でお会いしましょう。
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