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派遣契約中途解除の「止むを得ない事由」とは ━━━━━━━━━
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労働契約法17条1項
┏┏ ◇ 中途解除条項の法的有効性
┏┏ ◇
派遣先の主張する止むを得ない事由は
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労働契約法17条1項
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労働契約法17条1項には『止むを得ない事由』がなければ期間満了前に
解雇はできない旨、
定めている。
これは
労働契約が
派遣契約であっても期間の定めのある
契約に変わりは無い。
一般に、期間の定めのある
労働契約をその期間満了前に、
労働者の意思に基づかないで解消
することはできない。
「社団
法人キャリアセンター中国事件 広島地判 平成21年11月20日」(下記)は、派遣労
働
契約の
中途解約の有効性の判断に、
派遣元会社と
派遣先会社を一体とした「
使用者側」と
みて「止むを得ない事由」の有無を検討すべきとされたのが特徴的な判例である。
その上で、派遣
労働契約をあえて期間満了前に解消しなければならないようなやむを得ない
事由を認めることはできないと判断された。
◆概要
Y は職業紹介事業および派遣事業を行っている社団
法人で
ある。A 社とY はY がその雇用する
労働者を派遣する旨の基
本
契約を締結し、別途個々の派遣ごとに個別に
契約を締結し
ていた。X はY に派遣
労働者として登録、A 社に派遣されて
いたところ、A 社からY へ業務量の縮小を理由としてX に関
する個別
契約を解約する旨の通知があった。これを受けてY
がX に対し、
労働契約の
中途解約を通知したため、X は労働
契約期間満了までの
賃金の支払い、および本
解約通知は
債務
不
履行ないし
不法行為に当たるとして
慰謝料の支払いを求め
て提訴。◆
従来の判例では派遣
労働者の
解雇の有効性を判断する際は専ら「
派遣元」を基準にしてきた。
しかしこのキャリアセンター中国事件判決は、解約が認められる「止むを得ない事由」未満
であっても、しかるべき
中途解約事由が合意されていれば、それによって派遣
労働契約の中
途解約が可能であることいっているように思う。
「本件
中途解約条項については
労働契約締結にあたって明示されておらず、これを前提とし
た合意が当事者間に成立していたとは認められないから、止むを得ない事由と評価すること
は相当でない」
としているからだ。
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中途解除条項の法的有効性
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また後半の判旨では、
派遣契約が中途解除された場合の
派遣元が
賃金負担を継続するリス
クに触れつつ、このようなリスクは派遣
労働者との
契約締結時に、
派遣先との
派遣契約の解
除が派遣
労働契約そのものの終了事由であることを明示し、その合意をしておくという方策
によって充分に回避が可能、としている。
労働契約法施行前の判例には
民法628条に「止むを得ない事由」をめぐり、上述のような事前
合意の有無が有効か否かで見解が分かれていたと記憶している。
しかし平成19年制定された
労働契約法17条1項では止むを得ない事由が無ければ有期
契約の途
中で
労働者を
解雇することはできないとし、
民法628条の止むを得ない事由が強行的規範であ
ることを明らかにしたはずである。
ゆえに、現行法の下では明示の合意があっても
労働契約法17条1項の適用を排除することはで
きないという認識である私には、当判旨に違和感がある。
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派遣先の主張する止むを得ない事由は
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
ご存知のように
派遣契約は
派遣元と
派遣先との会社間の取引
契約である。一方、派遣労働
者と
派遣元との間に締結される
契約は個別
労働契約といえる。
前者と後者が別個の
契約である以上、
派遣契約の解除は派遣
労働契約に直ちにリンクするも
のではないはずだ。
だから、派遣
労働者の
解雇はあくまで
派遣元による
解雇の有効性を問われるべきである。本
判旨に感じる二つ目の違和感である。
直接の
使用者である
派遣先Yにとって、止むを得ない事由として
解雇が認められるとすれば、
Xの立場は非常に不安定なものとなろう。
そもそも、
契約の中途解除を
派遣先Yが止むを得ない事由として挙げ得るのか。
期間の定めの無い
労働契約における
解雇に必要とされる「客観的な合理性、社会通念上の相
当性」は
有期雇用契約のおいてはより厳格に適用されるべきであることを考えると、止むを
得ない事由は「
契約期間の終了を待つことなく
解雇しなければならないほどの予想外、かつ
止むを得ない」事由の発生が必要となろう。
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┏┏ ◇ 中途解除条項の法的有効性
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労働契約法17条1項
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労働契約法17条1項には『止むを得ない事由』がなければ期間満了前に解雇はできない旨、
定めている。
これは労働契約が派遣契約であっても期間の定めのある契約に変わりは無い。
一般に、期間の定めのある労働契約をその期間満了前に、労働者の意思に基づかないで解消
することはできない。
「社団法人キャリアセンター中国事件 広島地判 平成21年11月20日」(下記)は、派遣労
働契約の中途解約の有効性の判断に、派遣元会社と派遣先会社を一体とした「使用者側」と
みて「止むを得ない事由」の有無を検討すべきとされたのが特徴的な判例である。
その上で、派遣労働契約をあえて期間満了前に解消しなければならないようなやむを得ない
事由を認めることはできないと判断された。
◆概要
Y は職業紹介事業および派遣事業を行っている社団法人で
ある。A 社とY はY がその雇用する労働者を派遣する旨の基
本契約を締結し、別途個々の派遣ごとに個別に契約を締結し
ていた。X はY に派遣労働者として登録、A 社に派遣されて
いたところ、A 社からY へ業務量の縮小を理由としてX に関
する個別契約を解約する旨の通知があった。これを受けてY
がX に対し、労働契約の中途解約を通知したため、X は労働
契約期間満了までの賃金の支払い、および本解約通知は債務
不履行ないし不法行為に当たるとして慰謝料の支払いを求め
て提訴。◆
従来の判例では派遣労働者の解雇の有効性を判断する際は専ら「派遣元」を基準にしてきた。
しかしこのキャリアセンター中国事件判決は、解約が認められる「止むを得ない事由」未満
であっても、しかるべき中途解約事由が合意されていれば、それによって派遣労働契約の中
途解約が可能であることいっているように思う。
「本件中途解約条項については労働契約締結にあたって明示されておらず、これを前提とし
た合意が当事者間に成立していたとは認められないから、止むを得ない事由と評価すること
は相当でない」
としているからだ。
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中途解除条項の法的有効性
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
また後半の判旨では、派遣契約が中途解除された場合の派遣元が賃金負担を継続するリス
クに触れつつ、このようなリスクは派遣労働者との契約締結時に、派遣先との派遣契約の解
除が派遣労働契約そのものの終了事由であることを明示し、その合意をしておくという方策
によって充分に回避が可能、としている。
労働契約法施行前の判例には民法628条に「止むを得ない事由」をめぐり、上述のような事前
合意の有無が有効か否かで見解が分かれていたと記憶している。
しかし平成19年制定された労働契約法17条1項では止むを得ない事由が無ければ有期契約の途
中で労働者を解雇することはできないとし、民法628条の止むを得ない事由が強行的規範であ
ることを明らかにしたはずである。
ゆえに、現行法の下では明示の合意があっても労働契約法17条1項の適用を排除することはで
きないという認識である私には、当判旨に違和感がある。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
派遣先の主張する止むを得ない事由は
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
ご存知のように派遣契約は派遣元と派遣先との会社間の取引契約である。一方、派遣労働
者と派遣元との間に締結される契約は個別労働契約といえる。
前者と後者が別個の契約である以上、派遣契約の解除は派遣労働契約に直ちにリンクするも
のではないはずだ。
だから、派遣労働者の解雇はあくまで派遣元による解雇の有効性を問われるべきである。本
判旨に感じる二つ目の違和感である。
直接の使用者である派遣先Yにとって、止むを得ない事由として解雇が認められるとすれば、
Xの立場は非常に不安定なものとなろう。
そもそも、契約の中途解除を派遣先Yが止むを得ない事由として挙げ得るのか。
期間の定めの無い労働契約における解雇に必要とされる「客観的な合理性、社会通念上の相
当性」は有期雇用契約のおいてはより厳格に適用されるべきであることを考えると、止むを
得ない事由は「契約期間の終了を待つことなく解雇しなければならないほどの予想外、かつ
止むを得ない」事由の発生が必要となろう。
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