札幌市豊平区の
税理士 溝江 諭(みぞえさとし) です。
中小
会計要領の各論のうち主なものについて、
法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
今回は最終回で、
引当金 です。
(1) 以下に該当するものを
引当金として、当期の負担に属する金額を当期の
費用又は損失として計上し、当該
引当金の残高を
貸借対照表の
負債の部又は
資産の部に記載する。・将来の特定の
費用又は損失であること・発生が当期以前の事象に起因すること・発生の可能性が高いこと・金額を合理的に見積ることができること
(2)
賞与引当金については、翌期に
従業員に対して支給する
賞与の見積額のうち、当期の負担に属する部分の金額を計上する。
(3)
退職給付引当金については、
退職金規程や
退職金等の支払いに関する合意があり、
退職一時金制度を
採用している場合において、当期末における
退職給付に係る自己都合要支給額を基に計上する。
(4) 中小企業
退職金共済、特定
退職金共済、
確定拠出年金等、将来の
退職給付について拠出以後に追加的な負担が生じない制度を
採用している場合においては、毎期の掛金を
費用処理する。
【解説】
引当金は、
未払金等の確定した
債務ではないものの、(1)の4つの要件を満たす場合には、財政状態を適正に表示するために、
負債の計上(又は、
資産からの控除)が必要であると考えられ、合理的に見積って計上することとなります。
具体的には
貸倒引当金(前掲「4.
貸倒損失、
貸倒引当金」参照)、
賞与引当金、
退職給付引当金、
返品調整引当金等の
引当金があります。
なお、金額的に重要性が乏しいものについては、計上する必要はありません。
<
賞与引当金>
賞与引当金については、翌期に
従業員に対して支給する
賞与の支給額を見積り、当期の負担と考えられる金額を
引当金として
費用計上します。具体的には、
決算日後に支払われる
賞与の金額を見積り、当期に属する分を月割りで計算して計上する方法が考えられます。
<
退職給付引当金>
従業員との間に
退職金規程や
退職金等の支払いに関する合意がある場合、企業は
従業員に対して
退職金に係る
債務を負っているため、当期の負担と考えられる金額を
退職給付引当金として計上します。
(3)にあるように、「
退職一時金制度」を
採用している場合には、
決算日時点で、
従業員全員が自己都合によって
退職した場合に必要となる
退職金の総額を基礎として、例えば、その一定割合を
退職給付引当金として計上する方法が考えられます。
また、(4)にあるように、外部の機関に掛金を拠出し、将来に追加的な
退職給付に係る負担が見込まれない制度を
採用している場合には、毎期の掛金を
費用として処理し、
退職給付引当金は計上されません。
(以上、中小
会計要領)
引当金の意義については中小
会計要領にある通りです。また、範囲については「
貸倒引当金、
賞与引当金、
退職給付引当金、
返品調整引当金等」とされていますので、この4種類の他にも
引当金の意義に該当するものがあれば、それは
引当金として計上すべきものとなります。これには、例えば製品保証等
引当金、
売上割戻引当金、
修繕引当金、
損害補償損失引当金、
役員退職慰労
引当金などが考えられます。
以上に対し、
法人税法では原則として
引当金の計上を認めていません。
法人税法第22条第3項において、償却費以外の
費用で期末までに
債務の確定しないものは当期の
損金の額に算入できないと定められているためです。
では、
引当金の計上を一切認めていないのかというとそうではなく、別段の定めにおいて、
貸倒引当金と
返品調整引当金の2種類だけは認めています(法52、法53)。この場合の
損金算入額は、
損金経理した繰入額のうち
損金算入限度額に達するまでの金額となります。
なお、
貸倒引当金については、平成23年12月の税制改正において、適用
法人が次の
法人に限定されています(法55)。
(1) 中小
法人等
(2) 銀行、保険会社その他これらに準ずる
法人
(3) 売買があったものとされる
リース資産の対価の額に係る金銭
債権を有する
法人等(上記(1)又は(2)に該当する
法人を除く。)
また、
貸倒引当金が縮減される
法人については、
経過措置が設けられました(税制構築法附13)。平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間に開始する事業年度については改正前の規定による繰入限度額の4分の3、平成25年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度については改正前の規定による繰入限度額の4分の2、平成26年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度については改正前の規定による繰入限度額の4分の1までの繰入れができる等の
経過措置です。
法人税法でも認めている上記2種類の
引当金については、
企業会計においても
法人税法の繰入限度額を計上することにより、中小
会計要領との整合性を保つことができますが、
法人がこれ以外の
引当金を計上した場合には、その繰入額はすべて
損金不算入となるとともに、その
戻入額はすべて
益金不算入となるので、別表4で加算、減算する必要があります。
法人税法では、上記2種類の
引当金以外にも、過去においては、
賞与引当金、
退職給付引当金、製品保証等
引当金、特別
修繕引当金の各
引当金については
企業会計との整合上その計上を認めていました。しかし、1998年度以後の税制改正における
法人税率の引下げに伴う税収の減少を抑制するために、課税ベースの拡大策としてこれらの
引当金の縮減、廃止を行なって来ました。
このような
引当金の縮減、廃止は、本来
損金算入すべきものが
損金として認められていないことを意味し、これには疑問を感じます。
法人税法においても
引当金の意義に該当するものは
引当金として認めるべきだと思いますが、みなさんはどう考えますか。
引当金については以上です。
中小
会計要領には、これまでにお伝えしたもの以外にも、
繰延資産、
リース取引、
外貨建取引、純
資産、注記などについて定められています。これらについては今回触れませんでしたが、ぜひ本文をご覧下さい。
以上で、中小
会計要領の主な内容についての連載を終わります。これまでお読みいただいた皆様、有難うございます。
なお、この連載の最初の記事は以下のものになります。
≪中小
会計要領の主な内容 その1
実現主義と
発生主義≫
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法人税の税務調査って、当たる確率はどの程度なのかな?
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札幌市豊平区の 税理士 溝江 諭(みぞえさとし) です。
中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
今回は最終回で、 引当金 です。
(1) 以下に該当するものを引当金として、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として計上し、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載する。・将来の特定の費用又は損失であること・発生が当期以前の事象に起因すること・発生の可能性が高いこと・金額を合理的に見積ることができること
(2) 賞与引当金については、翌期に従業員に対して支給する賞与の見積額のうち、当期の負担に属する部分の金額を計上する。
(3) 退職給付引当金については、退職金規程や退職金等の支払いに関する合意があり、退職一時金制度を採用している場合において、当期末における退職給付に係る自己都合要支給額を基に計上する。
(4) 中小企業退職金共済、特定退職金共済、確定拠出年金等、将来の退職給付について拠出以後に追加的な負担が生じない制度を採用している場合においては、毎期の掛金を費用処理する。
【解説】
引当金は、未払金等の確定した債務ではないものの、(1)の4つの要件を満たす場合には、財政状態を適正に表示するために、負債の計上(又は、資産からの控除)が必要であると考えられ、合理的に見積って計上することとなります。
具体的には貸倒引当金(前掲「4.貸倒損失、貸倒引当金」参照)、賞与引当金、退職給付引当金、返品調整引当金等の引当金があります。
なお、金額的に重要性が乏しいものについては、計上する必要はありません。
<賞与引当金>
賞与引当金については、翌期に従業員に対して支給する賞与の支給額を見積り、当期の負担と考えられる金額を引当金として費用計上します。具体的には、決算日後に支払われる賞与の金額を見積り、当期に属する分を月割りで計算して計上する方法が考えられます。
<退職給付引当金>
従業員との間に退職金規程や退職金等の支払いに関する合意がある場合、企業は従業員に対して退職金に係る債務を負っているため、当期の負担と考えられる金額を退職給付引当金として計上します。
(3)にあるように、「退職一時金制度」を採用している場合には、決算日時点で、従業員全員が自己都合によって退職した場合に必要となる退職金の総額を基礎として、例えば、その一定割合を退職給付引当金として計上する方法が考えられます。
また、(4)にあるように、外部の機関に掛金を拠出し、将来に追加的な退職給付に係る負担が見込まれない制度を採用している場合には、毎期の掛金を費用として処理し、退職給付引当金は計上されません。
(以上、中小会計要領)
引当金の意義については中小会計要領にある通りです。また、範囲については「貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金、返品調整引当金等」とされていますので、この4種類の他にも引当金の意義に該当するものがあれば、それは引当金として計上すべきものとなります。これには、例えば製品保証等引当金、売上割戻引当金、修繕引当金、損害補償損失引当金、役員退職慰労引当金などが考えられます。
以上に対し、法人税法では原則として引当金の計上を認めていません。法人税法第22条第3項において、償却費以外の費用で期末までに債務の確定しないものは当期の損金の額に算入できないと定められているためです。
では、引当金の計上を一切認めていないのかというとそうではなく、別段の定めにおいて、貸倒引当金と返品調整引当金の2種類だけは認めています(法52、法53)。この場合の損金算入額は、損金経理した繰入額のうち損金算入限度額に達するまでの金額となります。
なお、貸倒引当金については、平成23年12月の税制改正において、適用法人が次の法人に限定されています(法55)。
(1) 中小法人等
(2) 銀行、保険会社その他これらに準ずる法人
(3) 売買があったものとされるリース資産の対価の額に係る金銭債権を有する法人等(上記(1)又は(2)に該当する法人を除く。)
また、貸倒引当金が縮減される法人については、経過措置が設けられました(税制構築法附13)。平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間に開始する事業年度については改正前の規定による繰入限度額の4分の3、平成25年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度については改正前の規定による繰入限度額の4分の2、平成26年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度については改正前の規定による繰入限度額の4分の1までの繰入れができる等の経過措置です。
法人税法でも認めている上記2種類の引当金については、企業会計においても法人税法の繰入限度額を計上することにより、中小会計要領との整合性を保つことができますが、法人がこれ以外の引当金を計上した場合には、その繰入額はすべて損金不算入となるとともに、その戻入額はすべて益金不算入となるので、別表4で加算、減算する必要があります。
法人税法では、上記2種類の引当金以外にも、過去においては、賞与引当金、退職給付引当金、製品保証等引当金、特別修繕引当金の各引当金については企業会計との整合上その計上を認めていました。しかし、1998年度以後の税制改正における法人税率の引下げに伴う税収の減少を抑制するために、課税ベースの拡大策としてこれらの引当金の縮減、廃止を行なって来ました。
このような引当金の縮減、廃止は、本来損金算入すべきものが損金として認められていないことを意味し、これには疑問を感じます。法人税法においても引当金の意義に該当するものは引当金として認めるべきだと思いますが、みなさんはどう考えますか。
引当金については以上です。
中小会計要領には、これまでにお伝えしたもの以外にも、繰延資産、リース取引、外貨建取引、純資産、注記などについて定められています。これらについては今回触れませんでしたが、ぜひ本文をご覧下さい。
以上で、中小会計要領の主な内容についての連載を終わります。これまでお読みいただいた皆様、有難うございます。
なお、この連載の最初の記事は以下のものになります。
≪中小会計要領の主な内容 その1 実現主義と発生主義≫
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=155
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税理士・社会保険労務士・行政書士 溝江 諭 KSC会計事務所
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