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雇止め法理の検討

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平成18年12月15日 第38号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1. 雇止め法理の検討

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ブログもよろしくお願い致します。
人事のブレーン社会保険労務士日記」です。
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1. 雇止め法理の検討

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<1> はじめに

現在厚生労働省労働政策審議会や与党内において短時間労働者の正社員化の推
進をどの様にしていくのかが検討されている。
これは、賃金格差の是正も含まれており、年功序列、終身雇用といった雇用
行を背景とした正社員に有形無形の責任があるとの考えから同一価値労働同一
賃金の原則が確立していない我が国の雇用慣行の転換を図り、政府が立法政策
によって同一価値労働同一賃金の原則を確立していこうということである。

本稿では、雇い止めの法理を通じて期間の定めのない社員と有期雇用社員を考
えていきたいと思う。

<2> 解雇権濫用の法理

(1)概要

まず、雇い止めの法理を検討する前に解雇権濫用法理の検討が必要である。
解雇権濫用法理とは、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理
由を欠き社会通念上相当として是認することが出来ない場合には、権利の濫用
として無効になる(日本食塩事件 最二小昭50.4.25民集29巻4号5
6頁)」というものであり、その後の高知放送事件(最二小判 昭52.1.
31労判268号17頁)においてもこの判決を踏襲した判決が出ており、我
が国の雇用契約終了にあたり解雇権濫用法理が確立した。

しかし、判例は確立したものの法律に於いて解雇に関する規定は労働基準法
20条に規定する解雇予告手当に関してのみであり、解雇予告手当を払えば解
雇は自由であると法律上は解釈できるのである。
その後、平成16年1月1日改正施行された労働基準法第18条の2において、
この日本食塩事件と同様の主旨の「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社
会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無
効になる」という文言が付け加えられ、法律上も解雇権濫用法理が明確にされ
たことになる。

参考までに、前述高知放送事件の判旨について記載をしておきたい。
普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、
当該具体的事情の基に於いて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会
通念上相当なものとして是認することが出来ないときには、当該解雇の意思表
示は、解雇権の濫用として無効となる」

(2)客観的に合理的な理由とは

基本的には個別ケースの判断になる。
しかし、高知放送事件の判旨にあるとおり、就業規則に解雇事由として記載を
していても、その事由が労働者の行った行為と比較して、解雇にすることが非
常に酷であり、解雇という使用者が行う最終手段である権利を行使するまでの
事由では無いと社会通念上考えられる場合には解雇権の濫用となるという事で
ある。

我が国の労働慣行は、終身雇用制度があり、当該慣行が崩壊しつつあるといっ
ても労働市場の整備は進んでおらず、解雇された労働者が路頭に迷うことは非
常に酷であるという思想が背景にある。

今後、当該慣行の崩壊や労働市場の整備が整えば判例の変更も考えられるであ
ろうが、現在はこの様な事情を背景に解雇権濫用法理が厳格に運用されている。

<3>雇止めの法理

(1)判例の分類

雇止めに関する代表的な裁判例は、東芝柳町工場事件(最一小判昭49.7.
22民集28巻5号927頁)と日立メディコ事件(最一小判昭61.12.
4労判486号6頁)である。

東芝柳町工場事件は、有期雇用社員が期間の定めのない労働契約に転嫁したと
された事件であり、日立メディコ事件は期間の定めのない労働契約に転嫁した
とまでは言えないが、更新を期待する労働者期待権は法的に保護される権利
に値するという判断がなされた事件である。

よって、まず雇止めを考える場合には当該有期雇用契約が期間の定めの無い労
契約に転嫁しているのかどうか。
転嫁していれば、解雇権濫用法理の類推適用があり、転嫁していない場合に於
いては労働者期待権は権利として発生しているのかが争点になる。
発生していれば、解雇権濫用法理の類推適用がなされるし、発生していなけれ
ば雇止めは解雇権濫用法理を検討せずに有効となる。

(2)期間の定めのない労働契約に転嫁しているとされる場合

判例としては東芝柳町工場事件であるが、以下のような要素で期間の定めが無
労働契約と判断された。

1 期間の定めの無い労働者と従事している業務に差がなかった
2 更新手続きが形式的であり厳格に行われていなかった
3 雇い止めの前例が無く、正社員に登用試験に不合格となった場合でも相当
契約の更新がなされていた
4 採用時に使用者側から長期雇用や正社員に登用されることを期待させる言
動があった(具体的には「2ヶ月の期間が満了しても真面目に働いていれば解
雇される事はない。安心して長く働いて欲しい」)

といった要素である。

冒頭で述べた同一価値労働同一賃金の原則は、この雇止めに関する検討に於い
ても重要であり、正社員と同様の業務に従事している場合については、同一水
準の賃金だけではなく雇い止めに関しても制約を受けることとなる。

整理解雇に於いて、正社員に先立ち有期雇用社員を雇い止めするケースでも、
長期雇用を前提とした正社員の希望退職募集前に雇い止めをする事は有効であ
るとの判例があるが(前述日立メディコ事件、旭硝子事件 東京高判昭58.
9.20労民34巻5=6号799頁)、正規従業員に比べて遜色ない業務に
従事し、基幹労働力化している労働者については雇い止めのハードルが厳しく
吟味される(ヘルスケアセンター事件 横浜地判平11.9.30労判779
号91頁)裁判例もあり、正規職員との業務の差を具体的にどの様に付けてい
くのかが課題である。

(3) 期待権益が保護される場合

代表的な裁判例は日立メディコ事件である。
労働者の期待利益に合理性がある場合の判断ポイントとして以下の7点が考え
られる。

1 労働契約の内容
2 労働条件が正社員と有期雇用社員で差があるか
3 時間外、休日労働について正社員と有期雇用社員で差があるか
4 景気変動にかかわらず有期雇用社員が増加しているか
5 更新回数
6 他に雇い止めになったものがいるか
7 採用時及び更新時に労働契約書を交わしているか

以上を総合的に判断して、有期雇用社員が更新について期待利益に合理性があ
るかどうか判断されることとなる。

(4)契約更新の回数

契約更新の回数が少ないからといって解雇権濫用法理の類推適用がなされるリ
スクが少ないというものでもない。

初回の更新拒否でも、他のものが全員雇い止めされず更新しているのに、その
ものだけが更新されなかったケースで、当該雇い止めは無効と判断した裁判例
もある。(龍神タクシー事件 大阪高判平3.1.16労判581号36頁)

また、初回の契約試用期間とみなした裁判例もある。

初回の更新を雇い止めする場合には、恣意的な人選により雇い止めをされたと
いう事情があれば無効とされると考えられる。

<4> まとめ

雇い止めの法理は基本的に、「更新に関しての厳格な管理」「雇用継続を期待
させる言動や制度の排除」「正社員と期間雇用者の仕事の差」の3点をしっか
りと抑えることが大切である。

特に、同一価値労働同一賃金の原則が立法政策として取り上げられている現状
では、雇い止め対策だけではなく、賃金政策に於いても「仕事の差」は重要で
あり、従前のように正社員には有形無形の職責があるとの主張は通じないと考
えるべきであろう。

一方で、終身雇用の崩壊や労働市場の整備を通じて解雇権濫用法理の運用が緩
和されることも今後予想される。
しかし、現状に於いては未知数であり、現状の解雇権濫用法理を前提に対策を
進めていかざるを得ない。

有期雇用社員の取扱について以上のようにご注意頂きたい。

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編集責任者 社会保険労務士 山本 法史
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