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帰宅途中の通勤で交通事故。会社に責任はある?







2017年11月9日号 (no. 1005)
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http://www.soumunomori.com/profile/uid-20903/





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---3分労働ぷちコラム---
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本日のテーマ【帰宅途中の通勤で交通事故。会社に責任はある?】
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マイカー通勤承認「会社に責任」 滋賀、事故被害者の両親訴え
http://kyoto-np.co.jp/politics/article/20170627000150

( - 引用開始 - )
 2015年2月に滋賀県米原市内で車にはねられて死亡した男子高校生=当時(16)=の両親らが27日、運転していた男性の勤務先の旧三菱樹脂(現三菱ケミカル)に対して1億9千万円の損害賠償を求めて大津地裁に提訴した。男性は同社の承認を受け、ガソリン代を支給されてマイカー通勤していたことから、両親らは同社にも責任があるとしている。

 訴状によると2月27日午後6時50分ごろ、当時高校2年生だった大槻祐仁さんは信号のない交差点の横断歩道を歩行中、滋賀県長浜市内の勤務先から帰宅する男性が運転する速度超過の乗用車にはねられ、その時のけがが原因で5月21日に死亡した。
( - 引用終了 - )
 


社員がマイカーで通勤しており、帰宅途中に事故を起こし、相手を死亡させた。この場合に会社は責任を負うのかどうか。ここが問題の焦点です。


事故が起こったのは、午後6時50分で、時期は2月の27日。2月の午後7時頃となると、もう辺りは真っ暗です。5時頃には薄暗くなり、6時にはもう夜が始まる感じで、自転車やクルマはライトを点灯しないといけないぐらいの暗さです。さらに、6時50分だともう完全に夜です。夏の6月だと午後7時でもまだ明るいんですけどね。

そういう暗い時間帯に、信号のない交差点を渡っていた高校生が自動車にはねられて死亡した。


普通の交通事故ならば、運転者の責任で後処理が行われて、他に考えるべき点はないのですけれども、帰宅中の会社員が事故を起こしたものですから、ちょっと考えるところがあります。

勤務先から帰宅している途中での交通事故なので、単に運転している人の責任だけでなく、使用者側である会社にも責任があるのではないかが問題となります。


確かに、民法の715条には使用者の責任について記述があります。


民法715条(以下、715条)
 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。


交通事故は事故を起こした本人の責任ですが、今回は715条を根拠に、使用者である企業にも連帯して責任を負わせられるかどうかが焦点になります。


事業を執行する際に、第三者、今回の場合だと高校生ですが、その方に被用者(雇われている社員)が損害を与えると、使用者は責任を負うわけです。

例えば、勤務時間中に営業車に乗って移動している際、横断歩道で高校生と接触し、死亡させたとなれば、まさに715条が当てはまるケースです。


しかし、今回の事例は、仕事が終わって、社員自身が所有する自動車に乗って帰宅する過程で起こった事故です。つまり、勤務時間中の事故ではないのが考えどころです。

乗っていたのは会社の車ではないし、勤務時間中の事故でもない。にもかかわらず、使用者である会社に責任を求められるかどうか。


「もう仕事は終わった後の出来事なのだから、会社の責任ではなく本人だけが責任を負うべき」と考えるのか。それとも、「帰宅途中であっても通勤中だし、通勤中の事故は労災保険の対象になるのだから、使用者にもある程度の責任はあるんじゃないか」と考えるのか。


なかなか悩ましい問題です。



マイカー通勤を承認して、燃料費を支給していたというだけで会社に責任があるという理屈はなかなか通しにくいでしょう。


業務中で、会社が管理権を行使できる範囲内ならば、使用者の責任も問いやすいのですけれども、退社して帰宅している途中の出来事となると、もう会社は管理できない範囲になります。


通勤している時間というのは事業の執行中なのかどうか。ここも物議を醸すところでしょう。通勤そのものは業務ではないですから、その通勤中に事故が起こっても715条は適用されないのではないか。

しかし、通勤は事業の付随行為であると考えて事業に含む解釈もあり得ます。通勤しなければ仕事もできないという両者の密接な関係を考えれば、通勤も事業に含まれると解釈される可能性はあります。



この715条の使用者責任は、随分と使用者が不利になるように解釈される傾向があります。

「ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」という部分を読むと、相当の注意をした場合は使用者は責任を負わないと解釈できます。


ならば、例えば、マイカー通勤する社員が自賠責保険に加入しているか、任意保険にも加入しているか、免許証はチャンと持っているか、有効期限は切れていないか。マイカー通勤者への講習、注意喚起をしていたか。運転時に注意が散漫になるほどの仕事による負荷が生じていなかったかなど。このような「相当の注意」をしたならば、使用者は責任を負わないとも思えますが、そうならないのが法律です。


事業を遂行することで使用者は利益を得ているので、その過程で発生した損害も使用者が引き受けなければいけない、という理屈が法律の世界にはあります。そのため、715条に基づく使用者の責任は随分と認められやすくなっているのです。


通勤は本人がコントロールしている範囲ですし、運転も本人の運転技能、注意力などに依存します。つまり、会社がコントロールできないことなのに、責任を負わされる。ちょっと酷な感じはします。


交通事故でしたら、運転者の任意保険で賠償できる範囲です。自賠責には補償に上限がありますが、任意保険は対人賠償が無制限に設定されているものが主流ですので、仮に賠償金が1億9千万円であっても支払えます。

任意保険で賠償できるならば、使用者責任まで追求しなくてもという感もあります。ただ、個人間の賠償よりも、使用者を巻き込んだほうが賠償額が多くなるという目論見もあって、今回は会社の責任もあるのではないかという論点を持ち込んだとも思えます。


まだ裁判は始まったばかりですから結論は分かりませんが、やはり仕事が終わって帰宅する途中での事故ですので、使用者である会社の責任はゼロではないものの、その程度は少ないものになると思います。

 

 




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合格率0.07%を通り抜けた大学生。


今、私はこうやって社労士という職業で仕事をしているわけですが、子供の頃からなりたかった職業というわけではなくて、大学生の頃に遭遇したきっかけが始まりです。

子供の頃になりたい職業というと、男の子ならば、警察官やスポーツ選手、パイロットというのが良くあるもの。女の子だと、スチュワーデス(今はキャビンアテンダント)、花屋さん、ケーキ屋さん、保育園の先生とか。そういう社会的に広く認知されたものが選ばれるので、小学生や中学生が社労士になりたいなんてことはゼロではないのでしょうが、極めて稀でしょう。

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。だって、簡単そうなイメージがするでしょ、社労士なんて。チョチョッと勉強すれば、スルッと合格できるだろう。そう思っている人も少なくないはず。

「よく知られている資格 = 難しい」、「あまり知られていない資格 = 難しくない」。こういう判断基準があって、社労士は後者に該当するため、難しくないだろうと思われてしまうわけです。

私もそうやってナメていたクチですから、不合格になったんです。

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どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

とはいえ、学生の人が社労士に興味を持つというのはやはりレアで、何らかのきっかけが無ければ出会えないでしょうね。ただ、珍しいといっても、毎年、1割弱ほどは学生の受験者がいるので、受験者の総数を5万人と仮定すると、その1割弱なら3,000人から4,000人ぐらいは学生がいます。

そういう方の役に立つならば、私の経験も使っていただきたいですね。


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大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡




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残業で悩んでいませんか?

「長時間の残業が続いている」
残業代の支払いが多い」
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こういう悩み、よくありますよね。

ニュースでも未払い残業代の話題がチラホラと出てくるぐらい、残業に対する関心は高くなっています。

法律では、1日に8時間まで、1週間では40時間までしか仕事ができません。その水準を超えてしまうと、残業となり、割増賃金が必要になります。

とはいえ、1日で8時間と固定されていると不便だと感じませんか? 1週間で40時間と固定されていると不便だと感じませんか?


毎日8時間の時間制限があると、柔軟に勤務時間を配分できませんよね。

例えば、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。

でも、実は、「月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務なので、残業は無し」こんなことができる仕組みがあるんです。

「えっ!? そんな仕組みがあるの?」と思った方は、ぜひ『残業管理のアメと罠』を読んでみてください。


『残業管理のアメと罠』
http://www.growthwk.com/entry/2012/05/22/162343?utm_source=soumu&utm_medium=cm&utm_campaign=soumu_cm_common_20171109_3





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決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。


一例として、

Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
Q:残業しないほど、残業代が増える?
Q:喫煙時間は休憩なの?
Q:代休振替休日はいつまでに取ればいいの?


このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

▽    ▽   『仕事のハテナ 17のギモン』    ▽    ▽
http://www.growthwk.com/entry/2017/05/23/132023?utm_source=soumu&utm_medium=cm&utm_campaign=soumu_cm_clockperiod_common_20171109_4



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