• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

1年単位の変形労働時間制の留意点

平成19年4月15日 第41号
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
人事のブレーン社会保険労務士レポート
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
目次

1. 1年単位の変形労働時間制の留意点

===================================

今日は私の33歳の誕生日です。
15日発行なので、毎年4月の発行日は私の誕生日なのですね。
メルマガを発行してから、4回目の誕生日を迎えました。
早いものですね。
これからも宜しくお願い致します。

ブログもよろしくお願い致します。
人事のブレーン社会保険労務士日記」です。
http://norifumi.cocolog-nifty.com/blog/
是非見てみて下さい!

***********************************

1.特定社会保険労務士付記申請完了についてのご挨拶

********************************

本年4月1日に施行された改正社会保険労務士法により、個別紛争解決につい
て一定の制限のもと本来弁護士の独占業務であった、紛争解決機関に対する代
理人業務、和解交渉が行えるようになる特定社会保険労務士になりましたので
ご報告させて頂きます。
63時間の研修を経た後、紛争解決手続代理業務試験に合格しなければなりま
せんが、私の事務所から私と塩澤が受験をしまして、2人とも合格致しました。
さらなるリーガルサービスの向上を目指して参りますので、今後とも宜しくお
願い致します。

***********************************

2.1年単位の変形労働時間制の留意点

***********************************

<1> はじめに

先月号で1ヶ月単位の変形労働時間制について、特に休日労働時間について
を掘り下げてお話しした。
今回は1年単位の変形労働時間制について同様にお話ししたい。

変形労働時間制をを導入しなければいけない理由については先月号にて述べた
ので、そちらをご覧頂きたい。
http://blog.mag2.com/m/log/0000121960/108347420.html
(前回メルマガ「1ヶ月単位の変形労働時間制の法定時間外労働と所定労働時
間外労働の取扱の留意点」)

<2>1年単位の変形労働時間制所定労働時間の考え方

(1)1年単位の変形労働時間制の概要

 1年単位の変形労働時間制の考え方は、1年を通じて週40時間を達成する
というものである。
 1ヶ月単位の変形労働時間制が1ヶ月を通じて週40時間制を達成すること
を目的としているのに対して、1年という長期にわたって週40時間の達成を
目指すものであるから、特定の期間に於いて労働者に負荷がかかる恐れがあり、
それを防止する為に1ヶ月単位の変形労働時間制にはない規制が設けられてい
る。
 この規制について、所定労働時間の考え方を説明した後に述べたいと思う。

 1年単位の変形労働時間制の変形期間について、必ずしも1年である必要は
なく、1ヶ月を超え1年以内の期間で変形期間を設けることで制度の適用を受
けることが出来る。
 3ヶ月でも6ヶ月でも変形期間は良いわけであり、いずれの場合に於いても、
変形期間の起算日と変形労働の適用を受ける対象者を明らかにしなければなら
ない。

(2)2つ以上の変形労働時間制の適用は可能か

 例えば6ヶ月単位の変形労働時間制の適用をし、年の後半については1ヶ月
単位の変形労働時間制の適用をするということである。
 これについては、則12条の2において、それぞれの変形労働時間制の起算
日を明らかにしなさいと定められており、この起算日を明確にしておけば、他
変形労働時間制の適用を受けていない期間については変形労働時間制を設定
してはならないという規定は存在しておらず、適用できるという結論に導くこ
とが出来る。

 であるから、上記例のように取り扱うことは可能である。

(3)所定労働時間の設定

 1年単位の変形労働時間制における所定労働時間の算出方法は以下の通りと
なる。
 なお、1年の起算日については1ヶ月単位の変形労働時間制における考え方
同様任意の日付でよい。

1年間の歴日数である365日(閏年の場合には366日)を7で除すと1年
間の週の数が出てくる。
365日/7日=52.142・・・週である。
次に1週40時間の法定労働時間であるから、この週数に40を乗じると年間
所定労働時間が導き出せる。
52.142×40=2085.68時間になる。

この2085時間を各月各日にどの様に振り分けて年間を通して40時間を達
成していくかが1年単位の変形労働時間制の実務である。

(4)変形期間が1年より短い場合の所定労働時間

 変形期間が1年より短い場合には、365日を当該期間に置き換えて計算す
ればよいのである。

(5)所定労働日数

変形期間が1年とした場合、年間の総労働時間は2085時間である。
1日8時間の所定労働時間の場合、2085時間/8時間の算式により260
日が上限の所定労働日数である。
しかし、1日7時間の所定労働時間の場合、297日が上限の所定労働日数
なる。

労働基準法では、週に1日休日を与えればよいという規定であるから、年間の
週数が53週とした場合、365日-53日=312日の所定労働日が設定で
きるようにも考えられる。

しかし労働基準法では、この所定労働日の上限を280日と定めており、1日
所定労働時間がどんなに短くても280日以上の労働日の設定をしてはなら
ない規定になっている。

ただしこの280日ルールは、変形期間が3ヶ月を超える場合に適用されるこ
とになっており、変形期間を3ヶ月以内に設定すればこのルールの適用はない。
3月単位の変形労働時間制を繰り返していけば良いわけである。

(6)対象期間の区分とカレンダー

 1年単位の変形労働時間制を導入する場合、労使協定により労働日と労働日
毎の所定労働時間の特定をしなければならない。
 実務上年間カレンダーを作成して労使協定に添付するが、法令上は1年の全
ての期間において必ずしも労働日の特定をする必要はない。
 どういう事かというと、はじめの区分については原則通り労働日と各日の労
働時間の特定をしなければならない。
 その次以降の区分については、区分の開始日前30日前に過半数労働者の代
表の同意を得て、労働日と各日の所定労働時間の特定をすれば、各月の労働日
数と総労働時間を定めておけばいい事になっている。
 例えば、4月1日から始まる1年単位の変形労働時間制の場合で区分を1ヶ
月とした場合、4月分については労働日の特定とその労働日の所定労働時間
明記しておかなければならないが、5月分以降であれば、各月の所定労働日数
総労働時間労使協定で明記しておけば、その月の始まる30日前までに過
半数労働者の同意を得て、予め定めた総労働時間の範囲内で当該労働日数を振
り分けたカレンダーを作成する事が出来るのである。

(7)1年単位の変形労働時間制を導入する場合の規制

規制としては3点ある。
まず第一に、1日の所定労働時間の上限は10時間である。
第二に、一週の所定労働時間の設定は52時間である。
第三に、連続させて労働できる日数は六日である。
これは、第1週の休日が最初の日であり、第2週の休日が最後の日であると、
12日連続労働が可能である。しかし1年単位の変形労働時間制ではこの様な
取扱は出来ず、連続労働について6日とされている。
1ヶ月単位の変形労働時間制フレックスタイム制には、この様な規制はなく
1日及び1週の所定労働時間の上限はいかようにでも設定できるのであるが、
1年単位の変形労働時間制についてはこの様な規制がある。

(8)連続6日労働の例外規定

1年単位の変形労働時間制には、「特定期間」という考え方があり、特定期間
については6日連続労働の規制が外れる。
具体的には連続12労働が可能になるわけである。
この特定期間については、変形期間の対象期間中特に業務が繁忙な期間として
労使協定で定めた期間であり、通達ではこの特定期間については具体的な長さ
の規定が無く、「対象期間の相当部分を特定期間として定める労使協定は法の
主旨に反する(平11.1.29基発45号)」により定められているのであ
るが、厚生労働省の見解としては3ヶ月から4ヶ月となっており、この特定期
間の恩恵を受けるのは連続6日労働の緩和のみであるから、仮に相当期間を特
定期間とした場合でも、前項で述べた規制や次項で述べる規制により制限がな
されるので、通達により特定期間の長さが明なになっていないことをもって、
自由に出来るというものではない。

(9)3ヶ月を超える変形期間を適用する場合の規制
 
前述した規制の他に3ヶ月を超える変形期間を定めた場合、以下の2点の規制
がある。
第一に、所定労働時間が48週を超える週は連続3週間以内。
第二に、対象期間を初日から3ヶ月毎に区分して、それぞれの期間で48時間
を超える週は3週間以内に抑えること。
となっておいる。

誤解が多い部分は、この48週を超える所定労働時間の設定をしている期間が
特定期間であると思われている方が多い。
しかし、法令上の特定期間とは連続6日労働の規制を緩和する期間であり、4
8時間を超える所定労働時間の設定とは関係がないのである。

しかし、この規制にも例外的に適用されない業種があり、以下の2つのもので
ある。

第一に、積雪地域の建設業の屋外作業労働者で、連続48時間の規制が無く、
1日10時間、1週52時間の範囲で所定労働時間を設定してよいとなってい
る。
第二に、隔日勤務のタクシー運転手である。
この場合、1勤務が2労働日となっており、1週52時間の所定労働時間の範
囲内で1日16時間を上限とした労働日の設定が出来る。
タクシー運転手に関しては、改善基準で拘束時間は21時間となっており、5
時間の休憩を前提に隔日勤務のタクシー運転業務に従事させることが出来る。

<3>1年単位の変形労働時間制における時間外労働の考え方

これについては、前回のメルマガの1ヶ月単位の変形労働時間制で述べたので、
本稿では省略する。
考え方は同様であり、1ヶ月の総労働時間を1年の総労働時間として見るだけ
である。
変形労働時間制における、変形期間に対する法定労働時間オーバーは当該変形
期間が終了して初めてわかるわけであり、1ヶ月単位の変形労働時間制は毎月、
1年単位の変形労働時間制は1年ということである。

<4>1年単位の変形労働時間制における休日振替の考え方

(1)法定労働時間を超えて所定労働時間を設定している場合

法定労働時間を超えた所定労働時間が設定されている日を休日と振り替えた場
合、休日法定労働時間を超えた所定労働時間の設定がなされていない日であ
り、この日に法定労働時間を超えた所定労働時間を設定している日を振り替え
た場合、8時間超過分は時間外労働となるというのが通達で出されている(平
9.3.28基発210号、平11.3.31基発168号)。この考え方は
1課月単位の変形労働時間制と同様である。

(2)休日の振替について

そもそも1年単位の変形労働時間制休日の振替が出来るのであろうか。
1年単位の変形労働時間制は、「貸し切り観光バス等のように、業務の性質上
1日8時間、週40時間を超えて労働させる日又は週の労働時間をあらかじ
め定めておくことが困難な業務又は労使協定で定めた時間が業務の都合により
変更されることが通常行われる業務については、1年単位の変形労働時間制
適用する余地はないものであること。(平6.1.4基発1号)」とされてい
る。
この通達休日の振替が禁止されている訳ではなく、通常の業務の繁忙を理由
休日を振り替えてはいけないという主旨であり、やむを得ない事情があれば、
1年単位の変形労働時間制の規制の範囲内に於いて休日の振替が出来る。 

(3)労働日の変更について

所定労働時間が1日8時間とされている労働日と所定労働時間が1日10時間
とされている労働日を変更することは可能かどうか。
通達(昭63.3.1基発150号、平6.3.31基発181号)により出
来ないとされているが、判例では認められているケースもある(平12.4.
27東京地裁判決JR東日本事件)。
労働日の変更に関して、各日の労働日が設定された後の変更であっても、労使
協定の定めにより、労働者代表の同意を得て当該月の区分枠の中での変更が行
われるのであれば、労使協定による労働日の特定の制度の運用として特定制の
要件は充足しているので適法と解されるとされており、安西弁護士の見解も同
様である(「労働時間休日・休暇の法律実務全訂5版」中央経済社)。
しかし、行政当局は未だ労働日の変更を認めていないのでご留意願いたい。

<5> まとめ

1年単位の変形労働時間制は規制が多く、導入をためらわれる方も多いが、し
っかりとしたポイントを押さえることにより導入は可能である。
36協定についても大臣告示の上限時間は短くなっているので注意が必要であ
る。

===================================
※ 掲載内容の無断転載は禁止させていただきます。ご一報下さい。
※ 本メルマガの内容につきましては万全を期しておりますが、万一損害が
  発生致しましても責任を負いかねます。
※ メルマガ相互紹介募集中です。

発行者 山本経営労務事務所 (URL http://www.yamamoto-roumu.co.jp/
編集責任者 特定社会保険労務士 山本 法史
ご意見ご感想はこちらまで(メルマガ相互紹介、転載等お問い合わせもこちらまで)
norifumi@yamamoto-roumu.co.jp

購読中止・変更 http://www.yamamoto-roumu.co.jp/
発行システム まぐまぐ http://www.mag2.com/   ID 0000121960
===================================
             ~我々は相談業である~
        ~我々の商品はお客様への安心感の提供である~
              山本経営労務事務所
 東京都八王子市天神町8番地  tel 042-624-0175(代)
特定社会保険労務士1名 特定社会保険有資格社会保険労務士1名
     社会保険労務士6名 有資格者2名 合計14名のスタッフで
皆様をサポート致します!!
           人事のことなら何でもお任せ下さい!
===================================

絞り込み検索!

現在22,378コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP