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★★★ 新・
行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-17 ★★
【レジュメ編】
民法(その10〔2〕)
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■■■ 共同
相続(その2)
■■■
遺言
■■■ 行政法の参考資料
■■■ お願い
■■■ 編集後記
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■■■ 共同
相続(その2)
■ 共同
相続財産の管理
(1)
相続開始後承認や放棄をするまでの間
第九百十八条
相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、
相続財産を
管理しなければならない。ただし、
相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
2
家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、
相続財産の保存
に必要な処分を命ずることができる。
3 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により
家庭裁判所が
相続財産
の管理人を選任した場合について準用する。
(2)
相続を放棄した後
第九百四十条
相続の放棄をした者は、その放棄によって
相続人となった者が
相続財産
の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その
財産の管理を継続しなければならない。
2 第六百四十五条 、第六百四十六条 、第六百五十条第一項 及び第二項 並びに第
九百十八条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。
(3)
限定承認をした場合
第九百二十六条
限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相
続財産の管理を継続しなければならない。
2 第六百四十五条 、第六百四十六条 、第六百五十条第一項 及び第二項 並びに第
九百十八条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。
(3)単純承認の場合
物権法の共有の規定を適用する。
(ア) 管理行為:持分価格の多数決で決める(252条)。
(イ) 保存行為:各共有者が単独でできる(252条但書)。
(ウ) 変更行為:全員の同意が必要(251条)
●● 最高裁判例「土地
所有権確認等請求および反訴請求」(民集20巻5号947頁)
【要旨】共有物の持分の価格が過半数をこえる者は、共有物を単独で占有する他の共有
者に対し、当然には、その占有する共有物の明渡を請求することができない。
【理由】共同
相続に基づく共有者の一人であって、その持分の価格が共有物の価格の過
半数に満たない者は、他の共有者の協議を経ないで当然に共有物(本件建物)
を単独で占有する権原を有するものでないことは、原判決の説示するとおりで
あるが、他方、他のすべての
相続人らがその共有持分を合計すると、その価格
が共有物の価格の過半数をこえるからといつて、共有物を現に占有する前記少
数持分権者に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない。け
だし、このような場合、右の少数持分権者は自己の持分によって、共有物を使
用
収益する権原を有し、これに基づいて共有物を占有するものと認められるか
らである。
●● 最高裁判例「土地建物共有物分割等」(民集50巻10号2778頁)
【要旨】共同
相続人の一人が
相続開始前から被
相続人の許諾を得て遺産である建物にお
いて被
相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被
相続人と右の
相続人との間において、右建物について、
相続開始時を始期とし、
遺産分割時
を終期とする
使用貸借契約が成立していたものと推認される。
【理由】被
相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも
遺産分割終了までの間は、
被
相続人の地位を承継した他の
相続人等が貸主となり、右同居の
相続人を借主
とする右建物の
使用貸借契約関係が存続することになるものというべきであ
る。けだし、建物が右同居の
相続人の居住の場であり、同人の居住が被
相続人
の許諾に基づくものであったことからすると、
遺産分割までは同居の
相続人に
建物全部の使用権原を与えて
相続開始前と同一の態様における無償による使用
を認めることが、被
相続人及び同居の
相続人の通常の意思に合致するといえる
からである。
(4) 管理
費用
第八百八十五条
相続財産に関する
費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相
続人の過失によるものは、この限りでない。
2 前項の
費用は、
遺留分権利者が贈与の減殺によって得た財産をもって支弁するこ
とを要しない。
■■
遺産分割
■
遺産分割の理念
(1)
相続人間の公平
(遺産の分割の基準)
第九百六条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各
相続人の年
齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
(2)
相続人の自由な意思の尊重
(3) 分割の安定性
(
相続の開始後に
認知された者の価額の支払請求権)
第九百十条
相続の開始後
認知によって
相続人となった者が遺産の分割を請求しようと
する場合において、他の共同
相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額の
みによる支払の請求権を有する。
■
遺産分割の手続
【1】 分割の手続
(1)協議分割
(遺産の分割の協議又は審判等)
第九百七条 共同
相続人は、次条の規定により被
相続人が
遺言で禁じた場合を除き、い
つでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
(2)審判分割
第九百七条2 遺産の分割について、共同
相続人間に協議が調わないとき、又は協議をす
ることができないときは、各共同
相続人は、その分割を
家庭裁判所に請求することができ
る。
3 前項の場合において特別の事由があるときは、
家庭裁判所は、期間を定めて、遺産
の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
(3)
調停分割:審判前の
調停による分割
【2】分割方法の指定
第九百八条 被
相続人は、
遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めるこ
とを第三者に委託し、又は
相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を
禁ずることができる。
●● 最高裁判例「土地
所有権移転
登記手続」(民集45巻4号477頁)
【要旨】
(ア)特定の遺産を特定の
相続人に「
相続させる」趣旨の
遺言は、
遺言書の記載から、
その趣旨が
遺贈であることが明らかであるか又は
遺贈と解すべき特段の事情のな
い限り、当該遺産を当該
相続人をして単独で
相続させる
遺産分割の方法が指定さ
れたものと解すべきである。
(イ)特定の遺産を特定の
相続人に「
相続させる」趣旨の
遺言があった場合には、当該
遺言において
相続による承継を当該
相続人の
意思表示にかからせたなどの特段の
事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被
相続人の死亡の時に
直ちに
相続により承継される。
【理由】右の「
相続させる」趣旨の
遺言は、正に908条にいう遺産の分割の方法を定め
た
遺言であり、他の共同
相続人も右の
遺言に拘束され、これと異なる
遺産分割
の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような
遺言にあって
は、
遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相
続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生
ぜしめるものであり、当該
遺言において
相続による承継を当該
相続人の受諾の
意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずし
て、被
相続人の死亡の時(
遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相
続人に
相続により承継されるものと解すべきである。
【3】当事者
相続人、
包括受遺者(900条)、
相続分譲受人(905条参照)、
遺言執行者(1012条)
【4】分割対象財産
★★
相続開始から
遺産分割までの間に遺産について生じた変化(処分や果実等)につ
義務を承継する。ただし、被
相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
→ 果実の発生原因・種類・
算定の難易等により、審判の対象とすべきものと訴訟で分
割すべきものとに分けて処理する(例:
預金の
利息は分割の対象とされるが、賃料
や自己使用利益等については裁判例の結論が分かれている。)。
【5】
遺産分割の方法
(1) 現物分割
(2) 共有
(3) 換価分割
(4) 代償分割
(5) 用益権の設定
協議分割に関しては当事者が合意すればどの方法でも構わない。
【6】分割の禁止
被
相続人は
遺言により(908条)、共同
相続人は協議・
調停により(256条)、家
庭裁判所は審判により(907条3項)、一定期間分割を禁止できる(
遺言・協議・調
停の場合は5年を超える禁止はできない。)。
■ 協議による分割
協議が成立する限り、どのような分割がなされてもよい。
【1】分割協議に
瑕疵があった場合
(1) 参加すべき
相続人を除外した
遺産分割は無効→ 後でやり直し
(
相続の開始後に
認知された者の価額の支払請求権)
第九百十条
相続の開始後
認知によって
相続人となった者が遺産の分割を請求しよう
とする場合において、他の共同
相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額
のみによる支払の請求権を有する。
(2)分割協議における
錯誤・
詐欺・
強迫・虚偽表示・心理留保については、原則と
して
民法総則の規定が適用される。
【2】
遺産分割が
相続人の
債権者を害するとき、
債権者は取消請求できるか。
●● 最高裁判例「貸金及び詐害行為取消請求事件」(民集53巻5号898頁)
【要旨】共同
相続人の間で成立した
遺産分割協議は、
詐害行為取消権行使の対象となる。
【理由】
遺産分割協議は、
相続の開始によって共同
相続人の共有となった
相続財産につ
いて、その全部又は一部を、各
相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に
移行させることによって、
相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質
上、財産権を目的とする
法律行為であるということができるからである。
★
債権者代位権は認められない(後掲「■■■
遺言」、「■■
遺贈又は贈与の減殺請
求」の最高裁判例「第三者異議事件」(民集第55巻6号1033頁)参照のこ
と)。
【3】
遺産分割協議の解除の可否
●● 最高裁判例「更正
登記手続等」(民集43巻2号1頁)
【要旨】共同
相続人間において
遺産分割協議が成立した場合に、
相続人の一人が右協議
において負担した
債務を
履行しないときであっても、その
債権を有する
相続人
は、
民法五四一条によって右協議を解除することができない。
【理由】
遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、その後は右協議において右
債務を負担した
相続人とその
債権を取得した
相続人間の
債権債務関係が残るだ
けと解すべきであり、しかも、このように解さなければ
民法九〇九条本文によ
り遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害される
ことになるからである。
●● 最高裁判例「土地
所有権移転
登記抹消
登記手続」(民集44巻6号995頁)
【要旨】共同
相続人は、既に成立している
遺産分割協議につき、その全部又は一部を全
員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる。
■ 審判による分割
審判による分割においては、「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各
相続人の年
齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して」分割がなされる
(906条)。
■
遺産分割の効力
第九百九条 遺産の分割は、
相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、
第三者の権利を害することはできない。
【1】
遺産分割の遡及効および
遺産分割と
登記
●● 最高裁判例「持分更正
登記手続承諾請求」(民集25巻1号90頁)
【要旨】
相続財産中の不動産につき、
遺産分割により権利を取得した
相続人は、
登記を
経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相
続分をこえる権利の取得を対抗することができない。
【理由】遺産の分割は、
相続開始の時に遡ってその効力を生ずるものではあるが、第三
者に対する関係においては、
相続人が
相続によりいつたん取得した権利につき
分割時に新たな変更を生ずるのと実質上異ならないものであるから、不動産に
対する
相続人の共有持分の
遺産分割による得喪変更については、
民法一七七条
の適用があり、分割により
相続分と異なる権利を取得した
相続人は、その旨の
登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、
自己の権利の取得を対抗することができないものと解するのが相当である。
【2】共同
相続人の
担保責任
第九百十一条 各共同
相続人は、他の共同
相続人に対して、売主と同じく、その
相続分
に応じて
担保の責任を負う。
(1)
債権の
担保
(遺産の分割によって受けた
債権についての
担保責任)
第九百十二条 各共同
相続人は、その
相続分に応じ、他の共同
相続人が遺産の分割に
よって受けた
債権について、その分割の時における
債務者の資力を
担保する。
2
弁済期に至らない
債権及び
停止条件付きの
債権については、各共同
相続人は、弁
済をすべき時における
債務者の資力を
担保する。
(2)資力のない共同
相続人がある場合の
担保責任の分担
第九百十三条
担保の責任を負う共同
相続人中に償還をする資力のない者があるとき
は、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれそ
の
相続分に応じて分担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の共同
相続人に対
して分担を請求することができない。
(3)
遺言があるとき
第九百十四条 前三条の規定は、被
相続人が
遺言で別段の意思を表示したときは、適
用しない。
■■
相続回復請求権
第八百八十四条
相続回復の請求権は、
相続人又はその
法定代理人が
相続権を侵害され
た事実を知った時から五年間行使しないときは、
時効によって消滅する。
相続開始の時
から二十年を経過したときも、同様とする。
・5年間は
消滅時効、20年間は除斥期間(ただし、判例は
時効)
●● 最高裁判例「
登記手続等」(民集第32巻9号1674頁)
【理由】
(ア)共同
相続人のうちの一人又は数人が、
相続財産のうち自己の本来の
相続持分をこ
える部分について、当該部分の表見
相続人として当該部分の真正共同
相続人の相
続権を否定し、その部分もまた自己の
相続持分であると主張してこれを占有管理
し、真正共同
相続人の
相続権を侵害している場合には、
民法八八四条の規定の適
用をとくに否定すべき理由はない。
(イ)自ら
相続人でないことを知りながら
相続人であると称し、叉はその者に
相続権が
あると信ぜられるべき合理的な事由があるわけではないにもかかわらず自ら
相続
人であると称し、
相続財産を占有管理することによりこれを侵害している者は、
本来、
相続回復請求制度が対象として考えている者にはあたらない。
(ウ)共同
相続人のうちの一人若しくは数人が、他に共同
相続人がいること、ひいて相
続財産のうちその一人若しくは数人の本来の持分をこえる部分が他の共同
相続人
の持分に属するものであることを知りながらその部分もまた自己の持分に属する
ものであると称し、又はその部分についてもその者に
相続による持分があるもの
と信ぜられるべき合理的な事由(たとえば、戸籍上はその者が唯一の
相続人であ
り、かつ、他人の戸籍に記載された共同
相続人のいることが分明でないことな
ど)があるわけではないにもかかわらずその部分もまた自己の持分に属するもの
であると称し、これを占有管理している場合は、もともと
相続回復請求制度の適
用が予定されている場合にはあたらず、したがつて、その一人又は数人は右のよ
うに
相続権を侵害されている他の共同
相続人からの侵害の排除の請求に対し
相続
回復請求権の
時効を援用してこれを拒むことができるものではない。
★
相続権がないことについて善意で、かつそのように信じるべき合理的な事由がある
場合にのみ、884条の規定が適用される。
→ 単独
相続人であっても、共同
相続人であっても、自己に
相続権が帰属しないことに
ついて善意・無過失の表見
相続人のみが884条に定められた
消滅時効・除斥期間を
援用できる。
●● 最高裁判例「
不当利得金請求事件」(民集第53巻6号1138頁)
【要旨】共同
相続人相互の間で一部の者が他の者を共同
相続人でないものとしてその相
続権を侵害している場合において、
相続回復請求権の
消滅時効を援用しようと
する者は、真正共同
相続人の
相続権を侵害している共同
相続人が、当該
相続権
侵害の開始時点において、他に共同
相続人がいることを知らず、かつ、これを
知らなかったことに合理的な事由があったことを立証すべきである。
★ 「善意・合理的な事由」の有無は、「
相続権侵害の開始時点」で判断される。ま
た、表見
相続人(
消滅時効、除斥期間を援用する者)が「善意・合理的な事由」の
存在したことを立証しなければならない。
→
表見代理人からの第三取得者が
時効を援用できるのは、
表見代理人自身が
消滅時効
を有効に援用できる場合に限られる。
●● 最高裁判例「土地
所有権移転
登記手続請求」(民集第26巻7号1348頁)
【要旨】共同
相続人の一人が、単独に
相続したものと信じて疑わず、
相続開始とともに
相続財産を現実に占有し、その管理、使用を専行してその
収益を独占し、公租
公課も自己の名でその負担において納付してきており、これについて他の
相続
人がなんら関心をもたず、異議も述べなかった等原判示の事情のもとにおいて
は、前記
相続人はその
相続のときから
相続財産につき単独所有者としての自主
占有を取得したものというべきである。
★ このような場合には自主占有となり、
時効取得が認められる(本来は、共同
相続で
あることから共有となり、当該部分いついては他主占有となるべきであるが、
相続
財産全体について自主占有が認められた。)。
■ 起算点
(1)5年の
消滅時効:
相続人、その
法定代理人が
相続権を侵害された事実を知った時
(2)20年の除斥期間(判例は
時効):
相続開始の時
(3)
相続人が被
相続人の
相続回復請求権を行使する場合
(ア)5年の
消滅時効:
相続人が侵害の事実を知った時(ただし、被
相続人の段階で時
効により消滅している場合には不可)
(イ)20年の除斥期間(判例は
時効):被
相続人の
相続開始の時(上記(2)と同じ)
■■
相続人の不存在
■
相続財産法人の成立
第九百五十一条
相続人のあることが明らかでないときは、
相続財産は、
法人とする。
●● 最高裁判例「貸付信託金請求及び同当事者参加」(民集第51巻8号3887頁)
【要旨】
遺言者に
相続人は存在しないが、
相続財産全部の
包括受遺者が存在する場合
は、
民法九五一条にいう「
相続人のあることが明かでないとき」に当たらない。
★
相続人はいるが、所在が不明という場合は、
相続人の不存在の問題ではなく、不在
者の財産管理の問題になる(25条以下参照)。
■
特別縁故者に対する
相続財産の分与
第九百五十八条の三 前条の場合において、相当と認めるときは、
家庭裁判所は、被
相続人と生計を同じくしていた者、被
相続人の療養看護に努めた者その他被
相続人と特
別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき
相続財産の全部
又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。
(1)特徴
(ア)
相続人が不存在の場合にのみ可能
(イ)
特別縁故者からの請求があって初めて分与が可能
(ウ)
家庭裁判所が「相当」と認めた場合にのみ分与
(2)
特別縁故者
→
自然人に限られない(
法人等でも可)。
●● 最高裁判例「不動産
登記申請却下決定取消」(民集第43巻10号1220頁)
【要旨】共有者の一人が死亡し、
相続人の不存在が確定し、
相続債権者や受遺者に対す
る清算手続が終了したときは、その持分は、
民法九五八条の三に基づく特別縁
故者に対する
財産分与の対象となり、右
財産分与がされないときに、同法
二五五条により他の共有者に帰属する。
★
民法255条(持分の放棄及び共有者の死亡)ではなく、第958条の3の規定が優先し
て適用される。
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して
相続人がな
いときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
■ 残余財産の国庫への帰属
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった
相続財産は、国庫に帰属する。こ
の場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
■■■
遺言
■■
遺言
■
遺言の内容
(1)
相続の法定原則の修正:
相続人の廃除・廃除の取消(*)、
相続分の指定、遺産
分割の禁止、
特別受益の持戻し免除等
(2)
相続以外の財産処分:
遺贈(*)等
(3)身分関係:
認知(*)、
未成年後見人の指定
(4)
遺言執行:
遺言執行者の指定
(注)(*)は生前にも可能な行為
■
遺言の方式
第九百六十条
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
★
代理による
遺言はできない。
■
遺言能力
第九百六十一条 十五歳に達した者は、
遺言をすることができる。
★ 行為能力の規定は適用されないが(962条)、
意思能力は必要。
★ 満15歳未満の者の
遺言は無効
■
遺言の効力の発生時期
第九百八十五条
遺言は、
遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2
遺言に
停止条件を付した場合において、その条件が
遺言者の死亡後に成就したと
きは、
遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
★ 死亡するまで何ら法律関係は発生しない。また、
期待権もない。
→
遺言者の生存中は、
遺贈を原因とする
仮登記をすることもできない。
●● 最高裁判例「
遺言無効確認、建物
所有権移転
登記抹消請求」(民集第10巻10
号1229頁)
【要旨】
遺言者の生前の
遺言無効確認の訴は不適法である。
【理由】一旦
遺贈がなされたとしても、
遺言者の生存中は受遺者においては何等の権利
をも取得しない。すなわちこの場合受遺者は将来
遺贈の目的物たる権利を取得
することの
期待権すら持つてはいないのである。それ故本件確認の訴は現在の
法律関係の存否をその対象とするものではなく、将来被
上告人が死亡した場合
において発生するか否かが問題となり得る本件
遺贈に基づく法律関係の不存在
の確定を求めるに帰着する。しかし、現在においていまだ発生していない法律
関係のある将来時における不成立ないし不存在の確認を求めるというような訴
えは、訴訟法上許されない。
■
遺言の撤回
(ア)いつでも、
遺言の方式に従って、その
遺言の全部又は一部を撤回できる(1022
条)。
(イ)故意に
遺言書を破棄したときや
遺贈の目的物を破棄したときは、その破棄した部
分については、
遺言を撤回したものとみなされる(1023条)。
●● 最高裁判例「
遺言執行者不存在確認等請求」(民集第22巻13号3270頁)
【要旨】
遺言による寄附行為に基づく財団の設立行為がされたあとで、
遺言者の
遺言後
にされた生前処分の寄附行為に基づく財団設立行為がされて両者が競合する形
式になった場合において、右生前処分が
遺言と抵触してその
遺言が取り消され
たとみなされるためには、少なくとも、右生前処分の寄附行為に基づく財団設
立行為が、主務官庁の許可によってその財団が設立され、その効果の生じたこ
とを必要とする。
●● 最高裁判例「
所有権移転
登記」(民集第35巻8号1251頁)
【要旨】終生
扶養を受けることを前提として
養子縁組をしたうえその所有する不動産の
大半を
養子に
遺贈する旨の
遺言をした者が、その後
養子に対する不信の念を深
くして協議離縁をし、法律上も事実上も
扶養を受けないことにした場合には、
右
遺言は、その後にされた協議離縁と抵触するものとして、
民法一〇二三条二
項の規定により取り消されたものとみなすべきである。
【理由】Aは、
上告人らから終生
扶養を受けることを前提として
上告人らと
養子縁組し
たうえその所有する不動産の大半を
上告人らに
遺贈する旨の本件
遺言をした
が、その後
上告人らに対し不信の念を深くして
上告人らとの間で協議離縁し、
法律上も事実上も
上告人らから
扶養を受けないことにしたというのであるか
ら、右協議離縁は前に本件
遺言によりされた
遺贈と両立せしめない趣旨のもと
にされたものというべきであり、したがつて、本件
遺贈は後の協議離縁と抵触
するものとして前示
民法の規定により取り消されたものとみなさざるをえない
筋合いである。
(ウ)
遺言を撤回する権利を放棄することはできない(1026条)。
(エ)撤回された
遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じ
なくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない(1025条)。
●● 最高裁判例「
遺言無効確認等」(民集第51巻10号4144頁)
【要旨】
(ア)
遺言者が
遺言を撤回する
遺言を更に別の
遺言をもって撤回した場合において、遺
言書の記載に照らし、
遺言者の意思が当初の
遺言の復活を希望するものであるこ
とが明らかなときは、当初の
遺言の効力が復活する。
(イ)
遺言者が、甲
遺言を乙
遺言をもって撤回した後更に乙
遺言を無効とし甲
遺言を有
効とする内容の丙
遺言をしたときは、甲
遺言の効力が復活する。
■
遺言の方式
【1】
自筆証書遺言
第九百六十八条 自筆証書によって
遺言をするには、
遺言者が、その全文、日付及び
氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、
遺言者が、その場所を指示し、これを変更した
旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力
を生じない。
●● 最高裁判例「
遺言無効確認」(民集第33巻4号445頁)
【要旨】自筆
遺言証書の日付として「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された証書は、民
法九六八条一項にいう日付の記載を欠くものとして無効である。
●● 最高裁判例「
遺言不存在確認」(民集第41巻7号1471頁)
【要旨】運筆について他人の添え手による
補助を受けてされた
自筆証書遺言が
民法
九六八条一項にいう「自書」の要件を充たすためには、
遺言者が証書作成時に
自書能力を有し、かつ、右
補助が
遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとど
まるか、
遺言者の手の動きが
遺言者の望みにまかされていて単に筆記を容易に
するための支えを借りたにとどまるなど添え手をした他人の意思が運筆に介入
した形跡のないことが筆跡のうえで判定できることを要する。
●● 最高裁判例「
遺言無効確認」(民集第43巻2号45頁)
【理由】自筆証書によって
遺言をするには、
遺言者が
遺言の全文、日附及び氏名を自書
した上、押印することを要するが、右にいう押印としては、
遺言者が印章に代
えて拇指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺することをもつて足りるもの
と解するのが相当である。
【2】
公正証書遺言
第九百六十九条
公正証書によって
遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければ
ならない。
一 証人二人以上の立会いがあること
二
遺言者が
遺言の趣旨を公証人に口授すること
三 公証人が、
遺言者の口述を筆記し、これを
遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧
させること
四
遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押す
こと。ただし、
遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記
して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記し
て、これに署名し、印を押すこと
●● 最高裁判例「持分移転
登記、共有物分割等請求」(民集第22巻13号3017
頁)
【要旨】公証人が、あらかじめ他人から聴取した
遺言の内容を筆記し、
公正証書用紙に
清書したうえ、その内容を
遺言者に読み聞かせたところ、
遺言者が右
遺言の内
容と同趣旨を口授(くじゅ)し、これを承認して右書面にみずから署名押印し
たときは、
公正証書による
遺言の方式に違反しない。
【理由】右
遺言の方式は、
民法九六九条二号の口授と同条三号の筆記および読み聞かせ
ることとが前後したに止まるのであつて、
遺言者の真意を確保し、その正確を
期するため
遺言の方式を定めた法意に反するものではないから、同条に定める
公正証書による
遺言の方式に違反するものではないといわなければならない。
【3】
秘密証書遺言
第九百七十条 秘密証書によって
遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければな
らない。
一
遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと
二
遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること
三
遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の
遺言書であ
る旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること
四 公証人が、その証書を提出した日付及び
遺言者の申述を封紙に記載した後、
遺言者
及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと
2 第九百六十八条第二項の規定は、秘密証書による
遺言について準用する
(方式に欠ける
秘密証書遺言の効力)
第九百七十一条 秘密証書による
遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあって
も、第九百六十八条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による
遺言としてそ
の効力を有する。
→ これを「無効行為の転換」という。
■ 共同
遺言の禁止
第九百七十五条
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
●● 最高裁判例「
遺言無効確認」(民集第35巻6号1013頁)
【要旨】同一の証書に二人の
遺言が記載されている場合は、そのうちの一方につき氏名
を自書しない方式の違背があるときでも、右
遺言は、
民法九七五条により禁止
された共同
遺言にあたる。
■
遺言書の
検認
第千四条
遺言書の保管者は、
相続の開始を知った後、遅滞なく、これを
家庭裁判所に
提出して、その
検認を請求しなければならない。
遺言書の保管者がない場合において、
相続人が
遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、
公正証書による
遺言については、適用しない。
3 封印のある
遺言書は、
家庭裁判所において
相続人又はその
代理人の立会いがなけれ
ば、開封することができない。
■
遺言執行者
(
遺言執行者の指定)
第千六条
遺言者は、
遺言で、一人又は数人の
遺言執行者を指定し、又はその指定を第
三者に委託することができる。
★
遺言執行者を置かなければならない場合
(ア)子の
認知(781条2項、戸籍法64条)→ 戸籍法の定める届出が必要
(イ)
相続人の廃除・廃除の取消(893条、894条)→
家庭裁判所に審判を請求するこ
とが必要
(
遺言執行者の任務の開始)
第千七条
遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならな
い。
(
遺言執行者の欠格事由)
第千九条
未成年者及び破産者は、
遺言執行者となることができない。
(
遺言執行者の権利義務)
第千十二条
遺言執行者は、
相続財産の管理その他
遺言の執行に必要な一切の行為をす
る権利義務を有する。
●● 最高裁判例「共有持分権確認」(民集第10巻9号1160頁)
【要旨】
相続人は、被
相続人の
遺言執行者を被告となし、
遺言の無効を主張して、
相続
財産につき持分を有することの確認を求めることができる。
【理由】
遺言につき
遺言執行者がある場合には、
遺言に関係ある財産については
相続人
は処分の権能を失い(
民法一〇一三条)、独り
遺言執行者のみが
遺言に必要な
一切の行為をする権利義務を有するのであつて(同一〇一二条)、
遺言執行者
はその資格において自己の名を以て他人のため訴訟の当事者となりうるものと
云わなければならない。
●● 最高裁判例「
株券引渡等請求」(民集第23巻7号1175頁)
【要旨】
遺言執行者が、
遺言による寄附行為に基づく寄附財産として管理する
相続財産
の株式を、判示のように設立中の財団
法人に帰属させ、その代表機関名義に名
義を書き換える行為は、
遺言の執行に必要な行為にあたり、これにより、
相続
人は株式についての権利を喪失する。
●● 最高裁判例「
所有権移転
仮登記抹消
登記手続本訴等請求」(民集第30巻7号706
頁)
【理由】
遺贈の目的不動産につき
遺言の執行としてすでに受遺者宛に
遺贈による
所有権
移転
登記あるいは
所有権移転
仮登記がされているときに
相続人が右
登記の抹消
登記手続を求める場合においては、
相続人は、
遺言執行者ではなく、受遺者を
被告として訴を提起すべきである。
(
遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条
遺言執行者がある場合には、
相続人は、
相続財産の処分その他
遺言の執
行を妨げるべき行為をすることができない。
●● 最高裁判例「第三者異議」(民集第41巻3号474頁)
【要旨】
遺言執行者として指定された者が就職を承諾する前であっても、
民法一〇一三
条にいう「
遺言執行者がある場合」に当たる。
【理由】
相続人が、
民法一〇一三条の規定に違反して、
遺贈の目的不動産を第三者に譲
渡し又はこれに第三者のため
抵当権を設定してその
登記をしたとしても、
相続
人の右処分行為は無効であり、受遺者は、
遺贈による目的不動産の
所有権取得
を
登記なくして右処分行為の相手方たる第三者に対抗することができるものと
解するのが相当である。
★
遺言執行者が指定されただけで、受遺者は
遺贈を
登記なくして第三者に対抗するこ
とができる。
●● 最高裁判例「
所有権移転
登記手続請求」(民集第22巻5号1137頁)
【要旨】
遺言執行者がある場合においては、特定不動産の受遺者から
遺言の執行として
目的不動産の
所有権移転
登記手続を求める訴の被告適格を有する者は、
遺言執
行者にかぎられ、
相続人はその適格を有しない。
■■
遺贈
■■ 包括
遺贈及び
特定遺贈
第九百六十四条
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分す
ることができる。ただし、
遺留分に関する規定に違反することができない。
■
死因贈与との関係
●● 最高裁判例「贈与
契約不存在確認請求」(民集第26巻4号805頁)
【要旨】
死因贈与の取消については、
民法一〇二二条がその方式に関する部分を除いて
準用されると解すべきである。
★
死因贈与の取消しの方式は定められていないが、
遺言の全部または一部の撤回の規
定が準用される。
■
遺贈の性質
(1)
遺贈の自由:ただし、
遺留分の制約はあり。
(2)公序良俗による制限にも服する。
●● 最高裁判例「
遺言無効確認等」(民集第40巻7号1167頁)
【要旨】妻子のある男性がいわば半
同棲の関係にある女性に対し遺産の三分の一を包括
遺贈した場合であっても、右
遺贈が、妻との
婚姻の実体をある程度失った状態
のもとで右の関係が約六年間継続したのちに、不倫な関係の維持継続を目的と
せず、専ら同女の生活を保全するためにされたものであり、当該
遺言において
相続人である妻子も遺産の各三分の一を取得するものとされていて、右
遺贈に
より
相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなど判示の事情がある
ときは、右
遺贈は公序良俗に反するものとはいえない。
(3)
遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない(994条1項)。
→ 贈与
契約では、受遺者が死亡すれば目的物引渡請求権は
相続されるが、
死因贈与に
ついては、
契約ではあるが、
遺贈の規定が適用されるため(554条)。
(4)
遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、
受遺者が受けるべきであったものは、
相続人に帰属する。ただし、
遺言者がその
遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。(995条1項)。
(5)
負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を
履行しないときは、
相続人は、相当
の期間を定めてその
履行の
催告をすることができる(1027条)。
●● 最高裁判例「
遺言無効確認」(民集第36巻4号763頁)
【理由】負担の
履行期が贈与者の生前と定められた負担付
死因贈与契約に基づいて受贈
者が約旨に従い負担の全部又はそれに類する程度の
履行をした場合において
は、贈与者の最終意思を尊重するの余り受贈者の利益を犠牲にすることは相当
でないから、右贈与
契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関
係、右
契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らし、右負担
の
履行状況にもかかわらず負担付
死因贈与契約の全部又は一部の取消をするこ
とがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、
遺言の取消に関する民
法一〇二二条(
遺言の撤回)、一〇二三条(前の
遺言と後の
遺言の抵触等)の
各規定を準用するのは相当でないと解すべきである。
★
死因贈与であれば、
遺贈の規定が適用され(554条)、その後にされた
遺言との関
係では、
遺言が優先することになる。しかしながら、それでは、負担付
死因贈与契
約の場合、当該
死因贈与契約に基づき、既に負担を
履行した受贈者の利益が損なわ
れる。したがって、
「全部又はそれに類する程度の
履行をした場合」には、「特段の事情がない限り」
遺言の取消に関する
民法一〇二二条、一〇二三条の規定は準用されない。
■
特定遺贈
【1】特定物
遺贈
遺贈の目的物が特定物の場合、
所有権は、
遺贈の効力が生じると同時に移転する(
物権
的効力説)。
●● 最高裁判例「第三者異議」(民集第18巻3号437頁)
【要旨】甲からその所有不動産の
遺贈を受けた乙がその旨の
所有権移転
登記をしない間
に、甲の
相続人の一人である丙に対する
債権者丁が、丙に代位して同人のため
に前記不動産につき
相続による持分取得の
登記をなし、ついでこれに対し強制
競売の申立をなし、該申立が
登記簿に記入された場合においては、丁は、
民法
第一七七条にいう第三者に該当する。
★ 被
相続人からの受贈者と
相続人からの譲受人は対抗関係に立つ。→
登記が必要。
●● 最高裁判例「遺産確認等請求」(民集第25巻8号1182頁)
【要旨】被
相続人が、生前、不動産をある
相続人に贈与するとともに、他の
相続人にも
これを
遺贈したのち、
相続の開始があつた場合、右贈与および
遺贈による
物権
変動の優劣は、対抗要件たる
登記の具備の有無をもつて決すると解するのが相
当である。
■■
遺留分減殺請求権
■
遺留分の帰属及びその割合
第千二十八条 兄弟姉妹以外の
相続人は、
遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じ
てそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一
直系尊属のみが
相続人である場合 被
相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被
相続人の財産の二分の一
■
遺留分の
算定
第千二十九条
遺留分は、被
相続人が
相続開始の時において有した財産の価額にその贈
与した財産の価額を加えた額から
債務の全額を控除して、これを
算定する。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、
家庭裁判所が選任した鑑定人の評
価に従って、その価格を定める。
(*)
遺留分=被
相続人が
相続開始の時において有した財産の価額+贈与した財産の価
額-
債務の全額
●● 最高裁判例「
遺留分減殺請求」(民集第30巻2号111頁)
【理由】被
相続人が
相続人に対しその生計の
資本として贈与した財産の価額をいわゆる
特別受益として
遺留分算定の基礎となる財産に加える場合に、右贈与財産が金
銭であるときは、その贈与の時の金額を
相続開始の時の貨幣価値に換算した価
額をもつて評価すべきものと解するのが、相当である。
●● 最高裁判例「
遺留分減殺請求に基づく持分権確認並びに持分権移転
登記手続」
(民集第50巻10号2747頁)
【要旨】被
相続人が
相続開始時に
債務を有していた場合における
遺留分の侵害額は、被
相続人が
相続開始時に有していた財産の価額にその贈与した財産の価額を加
え、その中から
債務の全額を控除して
遺留分算定の基礎となる財産額を確定
し、それに法定の
遺留分の割合を乗じるなどして
算定した
遺留分の額から遺留
分権利者が
相続によって得た財産の額を控除し、同人が負担すべき
相続債務の
額を加算して
算定する。
・贈与は、
相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入す
る(1030条)。
・1年以上前の贈与でも、
特別受益の場合には加算する(1044条による903条の準用)。
●● 最高裁判例「
遺留分減殺請求本訴、
損害賠償請求反訴第」(民集52巻2号433
頁)
【要旨】
民法九〇三条一項の定める
相続人に対する贈与は、右贈与が
相続開始よりも相
当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や
相続人
など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右
相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、同法一〇三〇条の定める要件
を満たさないものであっても、
遺留分減殺の対象となる。
■
遺贈又は贈与の減殺請求
第千三十一条
遺留分権利者及びその承継人は、
遺留分を保全するのに必要な限度で、
遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。
●● 最高裁判例「
遺留分減殺、土地建物
所有権確認」(民集第52巻4号1034頁)
【要旨】被
相続人の全財産が
相続人の一部の者に
遺贈された場合において、
遺留分減殺
請求権を有する
相続人が、
遺贈の効力を争うことなく、
遺産分割協議の申入れ
をしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには
遺留分減殺の
意思表示
が含まれていると解すべきである。
【理由】被
相続人の全財産が
相続人の一部の者に
遺贈された場合には、
遺贈を受けなか
った
相続人が遺産の配分を求めるためには法律上、
遺留分殺によるほかないの
であるから、
遺留分減殺請求権を有する
相続人が、
遺贈の効力を争うことな
く、
遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れ
には
遺留分減殺の
意思表示が含まれていると解するのが相当である。
●● 最高裁判例「
遺留分減殺請求事件」(民集第53巻5号918頁)
【要旨】
遺留分減殺の対象としての要件を満たす贈与を受けた者が、右贈与に基づいて
目的物の占有を取得し、
民法一六二条所定の期間、平穏かつ公然にこれを継続
し、
取得時効を援用したとしても、右贈与に対する減殺請求による
遺留分権利
者への右目的物についての権利の帰属は妨げられない。
【理由】
民法は、
遺留分減殺によって法的安定が害されることに対し一定の配慮をしな
がら(一〇三〇条前段、一〇三五条、一〇四二条等)、
遺留分減殺の対象とし
ての要件を満たす贈与については、それが減殺請求の何年前にされたものであ
るかを問わず、減殺の対象となるものとしている。このような占有を継続した
受贈者が贈与の目的物を
時効取得し、減殺請求によっても受贈者が取得した権
利が
遺留分権利者に帰属することがないとするならば、
遺留分を侵害する贈与
がされてから被
相続人が死亡するまでに
時効期間が経過した場合には、
遺留分
権利者は、
取得時効を中断する法的手段のないまま、
遺留分に相当する権利を
取得できない結果となる。
★
遺留分減殺請求権は
取得時効を破る。
●● 最高裁判例「第三者異議事件」(民集第55巻6号1033頁)
【要旨】
遺留分減殺請求権は,
遺留分権利者が,これを第三者に譲渡するなど,権利行
使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある
場合を除き,
債権者代位の目的とすることができない。
★
債権者(詐害行為)取消権は認められる(前掲「■■■共同
相続(その2)」、
「■■
遺産分割」、「協議による分割」の【2】最高裁判例「貸金及び詐害行為取
消請求事件」(民集53巻5号898頁)参照のこと)。
■ 法的性質
●● 最高裁判例「
所有権移転
登記手続請求」(民集第20巻6号1183頁)
【理由】
遺留分権利者が
民法一〇三一条に基づいて行う減殺請求権は形成権であって、
その権利の行使は受贈者または受遺者に対する
意思表示によってなせば足り、
必ずしも裁判上の請求による要はなく、また一たん、その
意思表示がなされた
以上、法律上当然に減殺の効力を生ずるものと解するのを相当とする。
■ 受贈者が贈与の目的を譲渡した場合等
第千四十条 減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、
遺留分
権利者にその価額を弁償しなければならない。ただし、譲受人が譲渡の時において遺留
分権利者に損害を加えることを知っていたときは、
遺留分権利者は、これに対しても減
殺を請求することができる。
●● 最高裁判例「土地建物
所有権移転
登記等請求」(民集第14巻9号1779頁)
【要旨】
(ア)受贈者に対し減殺請求をしたときは、その後に受贈者から贈与の目的物を譲り受
けた者に対してさらに減殺の請求をすることはできない。
(イ)受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対する減殺請求権の一年の
消滅時効の
期間は、
遺留分権利者が
相続の開始と贈与のあつたことを知った時から起算すべ
きである。
●● 最高裁判例「共有持分売却代金」(民集第52巻2号319頁)
【要旨】遺留物減殺請求を受けるよりも前に
遺贈の目的を譲渡した受遺者が
遺留分権利
者に対して価額弁償すべき額は、譲渡の価額がその当時において客観的に相当
と認められるべきものであったときは、右価額を基準として
算定すべきである。
■
遺贈の減殺の割合
第千三十四条
遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、
遺言者がそ
の
遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
●● 最高裁判例「
遺留分減殺」(第52巻1号274頁民集)
【要旨】
相続人に対する
遺贈が
遺留分減殺の対象となる場合においては、右
遺贈の目的
の価額のうち受遺者の
遺留分額を超える部分のみが、
民法一〇三四条にいう目
的の価額に当たる。
■
遺留分権利者に対する価額による弁償
第千四十一条 受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は
遺贈の
目的の価額を
遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる
●● 最高裁判例「
遺言無効確認」(民集第33巻5号562頁)
【要旨】特定物の
遺贈につき
履行がされた場合に、
民法一〇四一条の規定により受遺者
が
遺贈の目的の返還義務を免れるためには、価額の弁償を現実に
履行するか又
はその
履行の提供をしなければならず、価額の弁償をすべき旨の
意思表示をし
ただけでは足りない。
●● 最高裁判例「土地建物共有物分割等請求事件」(民集第54巻6号1886頁)
【要旨】受贈者又は受遺者は、
遺留分減殺の対象とされた贈与又は
遺贈の目的である各
個の財産について、
民法一〇四一条一項に基づく価額弁償をすることができる。
【理由】
遺留分権利者のする返還請求は権利の対象たる各財産について観念されるので
あるから、その返還義務を免れるための価額の弁償も返還請求に係る各個の財
産についてなし得るものというべきであり、また、
遺留分は
遺留分算定の基礎
となる財産の一定割合を示すものであり、
遺留分権利者が特定の財産を取得す
ることが保障されているものではなく(
民法一〇二八条ないし一〇三五条参
照)、受贈者又は受遺者は、当該財産の価額の弁償を現実に
履行するか又はそ
の
履行の提供をしなければ、
遺留分権利者からの返還請求を拒み得ない。
■ 減殺請求権の期間の制限
第千四十二条 減殺の請求権は、
遺留分権利者が、
相続の開始及び減殺すべき贈与又
は
遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、
時効によって消滅する。
相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
●● 最高裁判例「
所有権移転
登記等抹消
登記手続」(民集第36巻11号2193
頁)
【要旨】
民法一〇四二条にいう減殺すべき贈与があつたことを知った時とは、贈与の事
実及びこれが減殺できるものであることを知った時をいう。
→
時効にかかるのは形成権だけであり、形成権の行使により発生する返還請求権は
1042条の
時効にはかからない。
■
遺留分の放棄
第千四十三条
相続の開始前における
遺留分の放棄は、
家庭裁判所の許可を受けたとき
に限り、その効力を生ずる。
2 共同
相続人の一人のした
遺留分の放棄は、他の各共同
相続人の
遺留分に影響を及ぼ
さない。
→
相続開始後の
遺留分の放棄は自由にできる。
■■■ 行政法の参考資料
行政書士試験における行政法では、
行政手続法と
行政不服審査法が中心を占めていま
す。今回で
民法が終わり、来週からは行政法を取上げる予定ですが、その前に、この行
政手続法と
行政不服審査法の概要を把握しておいてください。
主務官庁である
総務省のつぎのホームページから入手できます。
(1)
行政手続法とは?
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/tetuduki_f.html
(2)
行政手続法Q&A
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/tetuduki_f.html
(3)
行政手続法普及啓発用ブックレット
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/tetuduki_f.html
(4)
行政不服審査法とは?
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/tetuduki_f.html
(5)
行政不服審査法Q&A
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/tetuduki_f.html
■■■ お願い
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと
e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。
質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。
■■■ 編集後記
今回で
民法が終了します。計10回にわたり続きましたが(当初計画では8回の予定)、
概ね順調に進んだのではないかと思います。そして、これで大きな山は超えたといって
も過言ではないと思います。
来週からは行政法です。こちらは、量的には
民法の約半分ですが、回数は10回を予定し
ています。これは、
民法と異なり、「行政」書士試験であることもあり、また、比較的
点数を獲得しやすい科目であるため、しっかり時間を掛けて勉強する必要があるため
です。
繰り返しになりますが、
民法は、憲法や行政法等とは異なって、満点あるいは90%以上
の得点を目指すべき科目でもありません。しかしながら、この親族・
相続編に関して
は、
行政書士業務の将来を勘案し、必ず得点できるという得意分野にしてください。充
分な時間をかけてチャレンジすれば、間違いなく得点源にできる分野です。時間はまだ
十分にあります。
なお、過日ご案内した新・
会社法と
個人情報保護法のメルマガが再開されました。ご関
心のある方は、次からどうぞ。
○
会社法
http://www.mag2.com/m/0000177387.html
○
個人情報保護法
http://www.mag2.com/m/0000161245.html
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行政書士試験 一発合格!
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行政書士 太田誠 東京都
行政書士会所属(府中支部)
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