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★★★ 新・
行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-19 ★★
【レジュメ編】 行政法(その1)
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■■■ 行政法の特色
■■■
行政法の法源
■■■ 行政法の効力
■■■ 法律による行政の原理
■■■ 行政法の一般原則
■■■ 行政法と民事法
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■■■ 行政法の特色
■■ 行政法の三類型
■ 行政作用法:行政と私人の法関係に関する法律(建築基準法、食品衛生法等)
■ 行政組織法:行政の組織に関する法律(内閣法、国家行政組織法等)
■ 行政救済法:行政作用により私人の権利利益が侵害されたとき、またはされそうに
なったときに私人の救済を図る法律(
行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償
法等)
■ 行政主体
(1)行政機関:国の省、
委員会、庁のような行政組織上の事務配分の単位
(2)行政庁:国または公共団体の意思を決定し、外部に表示する権限を有する行政機
関(各省の大臣、
委員会の委員長、地方公共団体の長等)
(3)
補助機関:行政庁の意思決定を
補助する機関(国:各省の次官・局長・事務官等
の職員、
委員会事務局の職員等、地方公共団体:副知事・助役、出納長・収入
役、事務吏員等)
(4)諮問機関:行政庁からの諮問に応じて、審査・調査等を行い、答申・意見等を述
べる機関(行政機関の附属機関として設置される。)
→ 法律上、諮問機関への諮問が義務付けられている場合があり、行政庁には答申・意
見等を尊重すべき義務が課せられることが多いが、法的には、その内容に拘束され
ない。
●● 最高裁判例「一般乗合旅客自動車運送事業の免許申請却下処分取消請求」(民集
第29巻5号662頁)
【要旨】諮問の経由を必要とする行政処分が諮問を経てされた場合においても、当該諮
問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどによりそ
の決定(答申)自体に法が右諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨
に反すると認められるような
瑕疵があるときは、右行政処分は、違法として取
消を免れない。
(5)参与機関:行政庁の意思決定に参与する権限を有する合議制の機関(電波監理審
議会、検察官適格審査会等)
→ 行政庁が行う意思決定の要件として、参与機関の議決が必要であるため、行政庁
は、法的に、その内容に拘束される。
●● 最高裁判例「
約束手形金請求」(民集第14巻9号1615頁)
【要旨】予算外のあらたな義務を負担する行為につき地方自治法第九六条第一項所定の
議決を欠くときは、右行為は無効であつて、その行為が手形行為であるからと
いつて別異に解すべきではない。
★ 地方自治法96条に定める議決事項について、地方議会は参与機関である。
(6)執行機関:行政庁の意思決定機関による決定を実施する機関。具体的には、行政
上の
強制執行や即時執行を職務として遂行するもの(警察官、海上保安官、徴税
職員等)。
■■■
行政法の法源
■■ 成分法源
■ 憲法
行政法は憲法の具体化法→ 憲法理念を指針として制定される。
憲法17条 何人も、
公務員の
不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めると
こりにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
●● 最高裁判例「
損害賠償請求事件」(民集56巻7号1439頁)
【要旨】
(ア)郵便法68条及び73条の規定のうち、書留郵便物について、郵便の業務に従事
する者の故意又は重大な過失によって損害が生じた場合に、
不法行為に基づく国
の
損害賠償責任を免除し、又は制限している部分は、憲法17条に違反する。
(イ)郵便法68条及び73条の規定のうち、
特別送達郵便物について、郵便の業務に
従事する者の故意又は過失によって損害が生じた場合に、
国家賠償法に基づく国
の
損害賠償責任を免除し、又は制限している部分は、憲法17条に違反する。
■ 条約
【1】条約の種類
(1)自動執行条約:国内における立法措置なしに国内法としての効力を持つ条約
(2)国内法による立法措置によって国内法としての効力が生ずる条約
【2】自動執行条約と憲法・法律との優劣
(1)憲法との優劣
憲法優位説が通説。理由:条約締結の方式が憲法改正手続よりも簡易であることから、
条約によって憲法改正と同じ効果を生じさせるべきではない。
●● 最高裁判例「本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定
に伴う刑事特別法違反」(刑集13巻13号3225頁)
【理由】日米安全保障条約は、主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係
をもつ高度の政治性を有するものというべきであつて、その内容が違憲なりや
否やの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度
の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。それ故、右違
憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査
には、原則としてなじまない性質のものであり、従つて、一見極めて明白に違
憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであ
つて、それは第一次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して
承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治
的批判に委ねらるべきものであると解するを相当とする。
(2)法律との優劣
条約優位説が通説。理由:条約がその誠実な遵守を求めていること、条約の締結には国
会の承認を必要とすること。
■ 法律
「行政法」という名称の法典は存在しない。通則的法律として、国家組織法、独立行政
法人通則法、地方自治法、国家
公務員法、地方
公務員法、
行政手続法、行政機関情報公
開法、行政機関
個人情報保護法、行政代執行法、
行政不服審査法、行政事件訴訟法、国
家賠償法等がある。
■ 命令
行政機関が定立する法
(1)内閣が制定する政令(通常は○○法施行令と称される。国家
公務員倫理規程のよ
うに施行令という名称が用いられないものもある。)
憲法73条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令に
は、特にその法律の
委任がある場合を除いては、
罰則を設けることができない
(2)内閣総理大臣が制定する内閣府令
内閣府設置法7条3項 内閣総理大臣は、内閣府に係る主任の行政事務について、法律
若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の
委任に基づいて、内閣府
の命令として内閣府令を発することができる。
(3)各省大臣が制定する省令、規則
国家行政組織法12条1項 各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令
を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の
委任に基づいて、それぞれその機関の
命令として省令を発することができる。
■ 告示
公の機関が意思決定または事実を一般に公に知らせる形式
内閣設置法7条5項 内閣総理大臣は、内閣府の所掌事務について、公示を必要とする
場合においては、告示を発することができる。
同58条6号 各
委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必
要とする場合においては、告示を発することができる。
国家行政組織法14条1項 各省大臣、各
委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事
務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
★★ 告示の形式で定められるものの中にも、命令の性質を持つと解されているものが
ある(文部科学大臣が告示する学習指導要領、
総務大臣が告示する
固定資産評価
基準等)。
→
行政手続法が、法令の中に告示を含めているのは、告示一般を対象とする趣旨では
なく、法令の
委任に基づく命令であって告示形式をとるものを念頭に置いている。
行政手続法2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定め
るところによる。
一 法令 法律、法律に基づく命令(告示を含む。)、条例及び地方公共団体の執行
機関の規則(規程を含む。以下同じ。)をいう。
■ 条例・規則
【1】条例
条例の中には、法律の
委任に基づく条例(
委任条例)とその他の条例がある。
憲法94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する
権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
地方自治法14条1項 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第
二項の事務に関し、条例を制定することができる。
(1)条例の包括的
委任
地方自治法14条3項 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほ
か、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以
下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設け
ることができる。
★★ このような包括
委任は罪刑法定主義に反するのではないか?
●● 最高裁判例「大阪市条例第六八号違反」(刑集16巻5号577頁)
【要旨】憲法三一条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければなら
ないとするものでなく、法律の授権によつてそれ以下の法令によつて定めるこ
ともできると解すべきで、このことは憲法七三条六号但書によつても明らかで
ある。
★ 公選の議員で組織される地方公共団体の議会の議決を経て制定される条例は、行政
府の制定する命令等とは異なり、むしろ法律に類することから、合憲である旨を判
示した。
【2】規則
地方自治法15条1項 普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、そ
の権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。
地方自治法138条の4第2項 普通地方公共団体の
委員会は、法律の定めるところに
より、法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、その
権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる。
→ 条例と規則が抵触する場合、いずれが優先するかについての明文の規定はないが、
条例が優先する(有力説)。
■■ 不文法源
■ 慣習法
行政権限の根拠に関する法ではなく、行政権限行使の対象となる私人の権利自由の根拠
に関しては、既存の法律に反しない限り、慣習法の成立の余地を認める見解が多数を占
めている。
■ 判例法
裁判所法4条(上級審の裁判の拘束力) 上級審の裁判所の裁判における判断は、そ
の事件について下級審の裁判所を拘束する。
→ 他の事件では、下級の裁判所でも先例である最高裁判決に従わないことは可能であ
るから、当然に法源とみることはできないが、実際上は先例として、下級審判決に
より尊重され、大きな影響力を持つことが多いため、不文法源としての機能を果た
していることが多い。
■■■ 行政法の効力
■■ 時間的限界
【1】法令の公布・施行
法例1条 法律ハ公布ノ日ヨリ起算シ満二十日ヲ経テ之ヲ施行ス但法律ヲ以テ之ニ異ナ
リタル施行時期ヲ定メタルトキハ此限ニ在ラス
(1)法令の公布
憲法改正、法律、政令、条約の公布は、天皇の国事行為であり(憲法7条1
号)、法律は奏上の日から30日以内に公布しなければならない。(国会法66
条)
(2)条例の公布
地方自治法16条2項 普通地方公共団体の長は、前項の規定により条例の送付
を受けた場合において、再議その他の措置を講ずる必要がないと認めるときは、
その日から二十日以内にこれを公布しなければならない。
(3)規則等の公布
地方自治法16条4項 当該普通地方公共団体の長の署名、施行期日の特例その
他条例の公布に関し必要な事項は、条例でこれを定めなければならない。
5項 前二項の規定は、普通地方公共団体の規則並びにその機関の定める規則及
びその他の規程で公表を要するものにこれを準用する。但し、法令又は条例に特
別の定があるときは、この限りでない。
(4)施行
法令の発効要件:公布がされていることおよび施行期日が到来していること
(5)条例・規則等の施行
地方自治法16条3項 条例は、条例に特別の定があるものを除く外、公布の日
から起算して十日を経過した日から、これを施行する。
【2】遡及立法
憲法39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為について
は、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問は
れない。
→ 法令が廃止された後に廃止前の違法行為に対して
罰則を適用することは遡及立法に
該当しない。
★★ 刑罰法規でなければ遡及立法は可能か?
●● 最高裁判例「農地
委員会の裁決取消請求」(民集3巻6号199頁)
【理由】刑罰法規については憲法第三九条によつて事後法の制定は禁止されているけれ
ども、民事法規については憲法は法律がその効果を遡及せしめることを禁じて
はいないのである。従って民事訴訟上の救済方法の如き公共の福祉が要請する
限り従前の例によらず遡及して之を変更することができると解すべきである。
●● 最高裁判例「国有財産買受申込拒否処分取消」(民集32巻5号946頁)
【理由】法律でいつたん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公
共の福祉に適合するようにされたものである限り、これをもつて違憲の立法と
いうことができないことは明らかである。そして、右の変更が公共の福祉に適
合するようにされたものであるかどうかは、いつたん定められた法律に基づく
財産権の性質、その内容を変更する程度、及びこれを変更することによつて保
護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合
理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによつて、判断すべきで
ある。
【3】経過規定
法令の制定・改廃があった場合に、旧規定と新規定のいずれかを適用するかや、旧規定
から新規定への以降のための経過的措置を定める規定
【4】限時法
一定の有効期間を付した法令
【5】見直し規定
一定期間経過後に見直すことを義務付ける規定
【6】臨時法
特定の事態に対応するために制定された暫定的立法であるが、法令自体に有効期限を定
めていないもの
■■ 地域的限界
■ 国
・属地主義:日本国内の領土、領海、領空内では日本の法令が適用されるが、外国の領
土、領海、領空内では公権力を行使することはできない。
・積極的属人主義:日本人、日本
法人等が日本国の領土、領海、領空外で行った行為に
も日本法が適用されることがある。(例:刑法3条、4条)
●● 最高裁判例「北海道海面漁業調整規則違反」(民集第25巻3号451頁)
【要旨】北海道海面漁業調整規則五五条は、わが国領海における同規則三六条違反の行
為のほか、公海およびこれらと連接して一体をなす外国の領海において日本国
民がした同規則三六条違反の行為(国外犯)をも処罰する旨を定めたものであ
る。
・消極的属人主義:自国民が被害を受けた場合において、加害行為が国外で行われた場
合も含めて、自国法を適用する立法政策。(例:刑法3条の2)
■ 地方公共団体
条例・規則も、区域内に滞在する者に属地的に適用されるのが原則(詳しくは地方自治
法の回に取り上げます。)
→ 条例で、他の地方公共団体の住民に属人的に義務を課すことは原則としてできない
が、権利を付与する例はある(情報公開条例に基づく
開示請求権の付与)。
■ 規制の特例
地域の特性に鑑み、特別の地域に限って特別の規制を行う例
全国一律の規制を特定地域に限って外す例(「特定非常災害の被害者の権利利益の保全
等を図るための特別措置に関する法律」による義務
履行の免責等)
■■■ 法律による行政の原理
■■ 法律による行政の原理の内容
■ 3つの原則
【1】法律の法規創造力の原則:憲法41条(国会が国の唯一の立法機関)
【2】法律の優位の原則:法律の規定と行政の活動が抵触する場合、法律が優位に立ち、
違法な行政活動は取り消されたり無効となったりする。(根拠:憲法41条)
【3】法律の留保の原則:ある種の行政活動を行う場合に、事前に法律でその根拠が規
定されていなければならない。(憲法41条の趣旨を具体化したもの)
(1)法律の留保の及ぶ範囲
・侵害留保説(通説):国民に義務を課したり、国民の権利を制限する侵害的な行政作
用については、法律の根拠が必要であるが、そうでないものは法律の根拠は要しない
とする説。
内閣法11条 政令には、法律の
委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定
を設けることができない。
地方自治法14条2項 普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法
令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。
→ 根拠軌範としての法律には、条例も含められる。
(2)法律の留保の規律密度
国民に予測可能性を与えることおよび国民代表議会の統制により国民の権利利益を保護す
るという目的を達するのに必要な詳細さ(規律密度)で規律することが求められる。
●● 平成18年03月28日最高裁判例「
損害賠償請求事件」
【要旨】旭川市介護保険条例が、介護保険の
第1号被保険者のうち生活保護法6条2項に
規定する要保護者で市町村民税が
非課税とされる者について、一律に保険料を賦
課しないものとする旨の規定又は保険料を全額免除する旨の規定を設けていない
ことは、憲法14条、25条に違反しない。
【理由】
介護保険制度が国民の共同連帯の理念に基づき設けられたものであること(介護
保険法1条)にかんがみると、本件条例が、介護保険の
第1号被保険者のうち、
生活保護法6条2項に規定する要保護者で
地方税法295条により市町村民税が
非課税とされる者について、一律に保険料を賦課しないものとする旨の規定又は
保険料を全額免除する旨の規定を設けていないとしても、それが著しく合理性を
欠くということはできないし、また、経済的弱者について合理的な理由のない差
別をしたものということはできない。
(3)義務
履行確保の段階における法律の留保
行政庁が国民に対して、違法は工作物の
除却を命ずるには、根拠規範が必要。
★ 義務の賦課と義務
履行確保のそれぞれについて、法律の留保が必要(相手方に義務を
課す権限は、当該義務の
履行を行政的に強制する権限を内包しておらず、行政上義務
の
履行を強制するためには、別途そのための根拠規範が必要。)。
(4)法律の留保の例外
(ア)部分社会論:一般市民社会とは異なる特殊な部分社会においては、その自立性を尊
重し、かつ部分社会内部の紛争については、それが一般市
民法秩序と直接に関係し
ない限り、その自律的解決に委ね、司法審査も及ばない。
●● 最高裁判例「身分確認請求」(民集28巻5号790頁)
【理由】大学は、国公立であると私立であるとを問わず、学生の教育と学術の研究を目
的とする公共的な施設であり、法律に格別の規定がない場合でも、その設置目
的を達成するために必要な事項を学則等により一方的に制定し、これによつて
在学する学生を規律する包括的権能を有するものと解すべきである。
●● 最高裁判例「懲罰決議等取消請求」(民集14巻12号2633頁)
【要旨】地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰議決の適否は裁判権の外に
ある。
【理由】自律的な法規範をもつ社会ないしは団体に在つては、当該規範の実現を内部規
律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判に待つを適当としないもの
があるからである。
(イ)緊急措置
国民の生命、健康等を保護するために緊急に行政機関が規制を行う必要があるが、根拠
規範が存在せず、法律を制定(又は改正)して根拠規範を設けていては間に合わない場
合も、根拠規定がない以上、規制はできないと解すべきか。
●● 最高裁判例「
損害賠償」(民集45巻3号164頁)
【要旨】漁港管理者である町が当該漁港の区域内の水域に不法に設置されたヨット係留
杭を漁港管理規程が制定されていなかったため法規に基づかずに強制撤去する
費用を支出した場合において、右係留杭の不法設置により、その設置水域にお
いては、漁船等の航行可能な水路が狭められ、特に夜間、干潮時に航行する漁
船等にとって極めて危険な状況が生じていたのに、右係留杭の
除却命令権限を
有する県知事は直ちには撤去することができないとし、その設置者においても
右県知事の至急撤去の指示にもかかわらず、撤去しようとしなかったなど判示
の事実関係の下においては、右撤去
費用の支出は、緊急の事態に対処するため
のやむを得ない措置に係る支出として、違法とはいえない。
(ウ)行政裁量
「法律による行政の原理」が妥当する場合であっても、すべての行政活動を法律で拘束
することはできないことから、議会が、立法に際して、行政機関に判断の余地を与える
ことが多い。
■■■ 行政法の一般原則
■■ 信義則
民法1条2項 権利の行使及び義務の
履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
→ 行政上の法律関係にも適用される。
■ 法律による行政の原理との抵触が生ずる場合
いかなる要件の下に信義則を優先させるか。
●● 最高裁判例「物品税課税無効確認並びに納税金返還請求」(民集12巻4号
624頁)
【理由】物品税は物品税法が施行された当初(昭和四年四月一日)においては
消費税と
して出発したものであるが、その後次第に生活必需品その他いわゆる
資本的消
費財も課税品目中に加えられ、現在の物品税法(昭和一五年法律第四〇号)が
制定された当時、すでに、一部生活必需品や「撞球台」「乗用自動車」等の資
本財もしくは
資本財たり得べきものも課税品目として掲げられ、その後の改正
においてさらにこの種の品目が数多く追加されたこと、いわゆる消費的消費財
と生産的消費財との区別はもともと相対的なものであつて、パチンコ球遊器も
自家用消費財としての性格をまつたく持つていないとはいい得ないこと、その
他第一、二審判決の掲げるような理由にかんがみれば、社会観念上普通に遊戯
具とされているパチンコ球遊器が物品税法上の「遊戯具」のうちに含まれない
と解することは困難であり、原判決も、もとより、所論のように、単に立法論
としてパチンコ球遊器を課税品目に加えることの妥当性を論じたものではな
く、現行法の解釈として「遊戯具」中にパチンコ球遊器が含まれるとしたもの
であつて、右判断は、正当である。
●● 昭和58.10.20 東京高裁「
国民年金被保険者資格取消処分取消等請求
控訴事件」
【理由】
控訴人は、自己に
国民年金被保険者の資格があると信じ、将来被
控訴人が老齢
年金等の給付をするものと期待し信頼して、右期待・信頼を前提に保険料の支
払を続けたことが明らかであり、また、右経過からみて
控訴人がそのように信
じたことをあながち軽率であつたということはできない。右のような信頼関係
が生じた当事者間において、その信頼関係を覆すことが許されるかどうかは、
事柄の公益的性格に考慮をも含めた信義衡平の原則によつて規律されるべきも
のである。
★ 法律による行政の原理よりも、信頼関係を優先させて、信義則の適用を認めた。な
お、
控訴人は、
国籍の関係から、
国民年金被保険者資格の
国籍要件を欠いたが、荒
川区の担当者には、その旨を告げていたこと、保険料納付期間が満了していたこ
と、行政機関が長年
受給権者として扱ってきたことが背景にある。
■ 法律による行政の原理との抵触が生じない場合
●● 最高裁判例「
損害賠償」(民集35巻1号35頁)
【要旨】地方公共団体が定めた一定内容の継続的な施策が、特定の者に対して右施策に
適合する特定内容の活動をすることを促す個別的、具体的な勧告ないし勧誘を
伴うものであり、かつ、その特定内容の活動が相当長期にわたる右施策の継続
を前提としてはじめてこれに投入する資、金又は労力に相応する効果を生じう
る性質のものである場合において、右勧告等に動機づけられて右活動又はその
準備活動に入つた者が右施策の変更により社会観念上看過することができない
程度の積極的損害を被ることとなるときは、これにつき補償等の措置を講ずる
ことなく右施策を変更した地方公共団体は、それがやむをえない客観的事情に
よるのでない限り、右の者に対する
不法行為責任を免れない。
★ 法律による行政の原理との抵触が生じない場合、最高裁は、比較的柔軟に信義則の
適用を認めている。
■■ 権利濫用禁止の原則
憲法第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつ
て、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつ
て、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
東京都情報公開条例4条 この条例の定めるところにより公文書の開示を請求しようと
するものは、この条例の目的に即し、適正な請求に努めるとともに、公文書の開示を受
けたときは、これによって得た情報を適正に使用しなければならない。
★★ 行政機関に対する大量な情報
開示請求が、行政事務に著しい支障を生じさせ、権
利濫用に当たるか否かについて、判例の立場は分かれている。
●● 昭和63. 4.20 東京高裁「損失補償金増額支払請求事件」
【要旨】国立公園又は国定公園の特別地域に指定された土地の使用
収益行為が社会通念
上右特別地域指定の趣旨に著しく反することが明らかな場合には、右使用
収益
行為につき自然公園法一七条三項所定の許可を得ることができないために受け
た損失については、同法三五条による補償を要しない。
★ 申請権濫用の法理により、不許可補償の請求を棄却した。
■■ 比例原則
不必要な規制、過剰な規制を禁止する法理
「より制限的でない代替手段(Less Restrictive Alternatives)」の法理(ある目的
を達成するために、規制効果は同じであって被規制利益に対する制限の程度がより少な
い代替手段が存在する場合には、当該規制を違憲とする法理)と同様の理念に基づく。
・「この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべ
きものであつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。」
(警察官職務執行法1条2項)
■■ 平等原則
■ 法律による行政の原理との抵触が生ずる場合
●● 昭和44. 9.30 大阪高裁「
関税賦課徴収分無効確認等請求事件」
【要旨】全国の税務官庁の大多数が、事実上、特定の期間、特定の課税物件について、
法定の課税標準ないし税率よりも軽減された課税標準ないし税率で
関税の賦
課、徴収処分をしていて、しかもその後、法定の課税標準ないし税率との差額
を実際に徴収したこともなく、また追徴する見込みもないような場合には、そ
の状態の継続する期間中に右の慣例に反してなされた
関税の賦課、徴収処分
は、租税平等主義に反し、違法である。
★ 租税平等主義が租税法律主義に優先する場合があることを明言した(ただし、反論
も多い。)。
■ 法律による行政の原理との抵触が生じない場合
●● 最高裁判例「
固定資産課税審査却下決定取消請求事件」(民集第57巻6号
723頁)
【要旨】
固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格が
同期日における当該土地の客観的な交換価値を上回る場合には、上記価格の決
定は違法となる。
★ 時価を上回る
固定資産税評価は違法になるが、時価よりも低く評価することは違法
ではない。
■■ 透明性と
アカウンタビリティの原則
行政手続法1条 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続に関し、共通する
事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定
について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第三十八条にお
いて同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
2 処分、行政指導及び届出に関する手続に関しこの法律に規定する事項について、
他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。
■ 透明性の意義:行政処分または行政指導の名あて人の権利利益を擁護することプラ
ス国政を国民から信託された者が主権者たる国民に対して
アカウンタビリティを負
うこと
■
アカウンタビリティの原則:政府等の有する諸活動について国民に説明する責務
行政機関情報公開法1条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の
開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層
の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされ
るようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政
の推進に資することを目的とする。
政策評価法1条 この法律は、行政機関が行う政策の評価に関する基本的事項等を定
めることにより、政策の評価の客観的かつ厳格な実施を推進しその結果の政策への適
切な反映を図るとともに、政策の評価に関する情報を公表し、もって効果的かつ効率
的な行政の推進に資するとともに、政府の有するその諸活動について国民に説明する
責務が全うされるようにすることを目的とする。
■■ 必要性・有効性・効率性の原則
政策評価法3条1項 行政機関は、その所掌に係る政策について、適時に、その政策効
果(当該政策に基づき実施し、又は実施しようとしている行政上の一連の行為が国民生
活及び社会経済に及ぼし、又は及ぼすことが見込まれる影響をいう。以下同じ。)を把
握し、これを基礎として、必要性、効率性又は有効性の観点その他当該政策の特性に応
じて必要な観点から、自ら評価するとともに、その評価の結果を当該政策に適切に反映
させなければならない。
2 前項の規定に基づく評価(以下「政策評価」という。)は、その客観的かつ厳格
な実施の確保を図るため、次に掲げるところにより、行われなければならない。
一 政策効果は、政策の特性に応じた合理的な手法を用い、できる限り定量的に把握
すること。
二 政策の特性に応じて学識経験を有する者の知見の活用を図ること。
■ 必要性の観点
政策効果からみて、対象とする政策にかかる行政目的が国民や社会のニーズまたはより
上位の行政目的に照らして妥当性を有しているか、行政関与のあり方からみて当該政策
を行政が担う必要があるかという視点。
★★ 民間に委ねることが可能であり望ましい分野で行政が活動することは、官民の役
割分担の観点から妥当とはいえない(補完性の原則)。
■ 有効性の観点
得ようとする政策効果と当該政策に基づく活動により実際に得られている、また得られ
ると見込まれる政策効果との関係を明らかにする視点
■ 効率性の観点
政策効果と当該政策に基づく活動の
費用等の関係に関するもので、投入された資源量に
見合った効果が得られるか、又は実際に得られているか、必要な効果がより少ない資源
量で得られるものは他にないか、同一の資源量でより大きな効果が得られるものは他に
ないかを検討する視点
地方自治法2条14項 地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉
の増進に努めるとともに、最少の
経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。
地方財政法4条1項 地方公共団体の
経費は、その目的を達成するための必要且つ最少
の限度をこえて、これを支出してはならない。
■■ その他の一般原則
■ 公益適合原則
行政は公益に適合するように行われるべき
地方自治法232条の2 普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合において
は、寄附又は
補助をすることができる。
●● 最高裁判例「選挙無効請求」(民集30巻3号223頁)
【理由】行政処分の適否を争う訴訟についての一般法である行政事件訴訟法は、三一条
一項前段において、当該処分が違法であつても、これを取り消すことにより公
の利益に著しい障害を生ずる場合においては、諸般の事情に照らして右処分を
取り消すことが公共の福祉に適合しないと認められる限り、裁判所においてこ
れを取り消さないことができることを定めている。この規定は法政策的考慮に
基づいて定められたものではあるが、しかしそこには、行政処分の取消の場合
に限られない一般的な法の基本原則に基づくものとして理解すべき要素も含ま
れていると考えられるのである。
(中略)しかしながら、本件のように、選挙が憲法に違反する公選法に基づい
て行われたという一般性をもつ
瑕疵を帯び、その是正が法律の改正なくしては
不可能である場合については、単なる公選法違反の個別的
瑕疵を帯びるにすぎ
ず、かつ、直ちに再選挙を行うことが可能な場合についてされた前記の立法府
の判断は、必ずしも拘束力を有するものとすべきではなく、前記行政事件訴訟
法の規定に含まれる法の基本原則の適用により、選挙を無効とすることによる
不当な結果を回避する裁判をする余地もありうるものと解するのが、相当であ
る。
★ 事情判決制度が法の一般原則として学界において
認知されている訳ではない。
■■■ 行政法と民事法
■■ 公法司法二元論の否定
実定法を公法体系と私法体系に二分し、ある法律規定が公法規定か私法規定かによって
結論を演繹する解釈方法は、既に過去のものとなっている。
●● 最高裁判例「
債権取立」(民集第23巻1号11頁)
【理由】普通地方公共団体の議会の議員の
報酬請求権は、公法上の権利であるが、公法
上の権利であつても、それが法律上特定の者に専属する性質のものとされてい
るのではなく、単なる経済的価値として移転性が予定されている場合には、そ
の譲渡性を否定する理由はない。
地方自治法、地方
公務員法には地方議会の議員の
報酬請求権について譲渡・差
押を禁止する規定はない。また、地方議会の議員は、特定公職との兼職を禁止
され(地方自治法九二条)、当該普通地方公共団体と密接な関係のある私企業
から隔離される(同法九二条の二)ほかは、一般職
公務員に課せられているよ
うな法律的拘束からは解放されているのであつて、議員の
報酬は一般職
公務員
の「職務上ノ収入」とは異なり、公務の円滑な遂行を確保するために民訴法
六一八条一項五号の趣旨を類推して議員の生活を保護すべき必要性はない。
★ したがって、地方議会の議員の
報酬請求権の差押はできる。
■
民法177条
民法177条 不動産に関する
物権の得喪及び変更は、不動産
登記法その他の
登記に関
する法律の定めるところに従いその
登記をしなければ、第三者に対抗することができな
い。
●● 最高裁判例「行政行為取消請求」(民集7巻2号157頁)
【要旨】自作農創設特別措置法による農地買収処分については、
民法第一七七条は適用
がない。
【理由】自作農創設特別措置法による買収計画に対して、真実の所有者が同法に規定せ
られた異議を述べるときは、この計画の実施者たる農地
委員会は、その異議者
が真実の所有者なりや否やの事実を審査して、その真実の
所有権の所在に従つ
て、買収計画を是正すべきものであつて、同
委員会は、
民法一七七条の規定に
依拠して、異議者がその
所有権の取得についての
登記を欠くの故を以て、その
異議を排斥し去ることは許されないものと解すべきである。
★ 自作農創設制度は、不在地主の所有地を対象とすべきであることから、
登記簿上の
所有者ではなく、真の所有者(である不在地主)から買収すべきであることによる。
●● 最高裁判例「公売処分無効確認並びに
所有権取得
登記の抹消
登記手続請求」
(民集14巻4号663頁)
【要旨】
登記簿上不動産の所有名義人となつている
国税滞納者に対する滞納処分として
右不動産を公売処分に付した国が、
登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を
有する第三者にあたらないとされる場合には、公売処分は、目的不動産の所有
権を競落人に取得させる効果を生じないとする意味において、無効と解すべき
である。
★★ 農地買収処分について
民法177条の適用を否定したのは、農地買収処分は、真の
所有者(即ち、不在地主)を相手方とするためである。一方、租税滞納処分につ
いて
民法177条の適用を肯定したのは、租税滞納処分は
登記を有する者を相手方
とするためであり、
登記された公示による取引の安全を図るためである。
■■ 一般法としての民事法と特別法としての行政法
国や地方公共団体が当事者となる場合には、私人間の
契約の場合とは異なった配慮が必
要となる。(例:物品購入等の場合には最少の
費用で最大の効果を上げる
契約を締結す
る、国有財産を売却する場合は最高の価格で売却して歳入を極大化する等)
→ 国の場合は
会計法、地方公共団体の場合には地方自治法において、
契約の締結につ
いて一般
競争入札を原則とする等の規制をしている。
●● 最高裁判例「建物明渡等」(民集38巻12号1411頁)
【要旨】公営住宅の入居者が公営住宅法二二条一項所定の明渡請求事由に該当する行為
をした場合であつても、賃貸人である事業主体との間の信頼関係を破壊すると
は認め難い特段の事情があるときは、事業主体の長がした明渡請求は効力を生
じない。
【理由】公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法と
して
民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない
限り、原則として一般法である
民法及び借家法の適用があり、その
契約関係を
規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。
■■ 行政法規違反の行為の民事上の効力
■ 行政的規制と民事紛争の予防
民事紛争の予防:行政法の大きな存在意義のひとつ
■ 取締法規と強行法規
★ 仮にAが、実際には
宅地建物取引主任者を事務所に置かずに、無断で宅地建物取引
主任者の氏名を記載し申請し免許を不正に得るという行政法規違反を行っている場
合に、Aから媒介を受けて不動産を購入したBは、Aが違法に免許を受けていることを
理由として、
媒介契約は無効であり
報酬を支払う義務はないと主張することが出来
るか。
→ 行政法規を取締法規と強行法規に二分し、前者の違反は民事上の効力には当然には
影響せず、後者の違反は民事上の
契約も無効にするという立場が有力。
●● 最高裁判例「売掛代金請求」(民集14巻4号483頁)
【要旨】食品衛生法第二一条による食肉販売の営業許可を受けない者のした食肉の買入
契約は無効ではない。
【理由】本件
売買契約が食品衛生法による取締の対象に含まれるかどうかはともかくと
して同法は単なる取締法規にすぎないものと解するのが相当であるから、
上告
人が食肉販売業の許可を受けていないとしても、右法律により本件取引の効力
が否定される理由はない。
★ 取締(警察)法規である行政法規に違反する場合には、原則として
契約の効力は否
定されない。
●● 最高裁判例「売掛代金請求」(民集9巻10号1498頁)
【要旨】臨時物資需給調整法に基く加工水産物配給規則第二条によつて指定された物資
については、法定の除外事由その他特段の事情の存しない限り、同規則第三条
以下所定の集荷機関、荷受機関、登録小売店舗等の機構を通ずる取引のみが有
効であつて、右以外の無資格者による取引は無効と解すべきである。
★ 強行法規である行政法規に違反する場合には、原則として民事上の
契約の効力は無
効とされる。
■ 経済的公序論
違反が問題になっているのが強行法規でない場合には、
民法90条の公序良俗違反の問
題として多様な要素を総合的に考慮して民事上の効力を判断する方法
●● 最高裁判例「
為替手形金請求」(民集18巻1号37頁)
【要旨】アラレ菓子の製造販売業者が硼砂の有毒性物質であることを知り、これを混入
して製造したアラレ菓子の販売を食品衛生法が禁止していることを知りなが
ら、あえてこれを製造のうえ、その販売業者に継続的に売り渡す
契約は、
民法
第九〇条により無効である。
【理由】思うに、有毒性物質である硼砂の混入したアラレを販売すれば、食品衛生法四
条二号に抵触し、処罰を免れないことは多弁を要しないところであるが、その
理由だけで、右アラレの販売は
民法九〇条に反し無効のものとなるものではな
い。
しかしながら、前示のように、アラレの製造販売を業とする者が硼砂の有毒性
物質であり、これを混入したアラレを販売することが食品衛生法の禁止してい
るものであることを知りながら、敢えてこれを製造の上、同じ販売業者である
者の要請に応じて売り渡し、その取引を継続したという場合には、一般大衆の
購買のルートに乗せたものと認められ、その結果公衆衛生を害するに至るであ
ろうことはみやすき道理であるから、そのような取引は
民法九〇条に抵触し無
効のものと解するを相当とする。
■
契約直律効
消費者保護や
労働者保護という目的のために法律自身が直接に
契約内容に規制を加え、
一定の場合、
契約を無効とすること
消費者契約法8条:
事業者の
損害賠償の責任を免除する条項の無効
同9条:消費者が支払う
損害賠償の額を予定する条項等の無効
同10条:消費者の利益を一方的に害する条項の無効
労働基準法13条 この法律で定める基準に達しない
労働条件を定める
労働契約は、そ
の部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定
める基準による。
→ 無効となった部分について法律で定める基準を適用する
契約直律効を定めている。
■■ 民事紛争の行政的処理
民事紛争を私人間の民事訴訟による処理に委ねるのではなく、行政的紛争処理の仕組を
設ける例がある(例:「公害健康被害の補償等に関する法律」に基づき都道府県知事が
行う給付、独立行政
法人である医薬品医療機器総合機構による薬害被害者の救済、労働
組合法に基づき
労働委員会が行うあっせん・
調停・
仲裁等)
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マガジンタイトル:新・
行政書士試験 一発合格!
発行者:
行政書士 太田誠 東京都
行政書士会所属(府中支部)
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