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【レジュメ編】 行政法(その13〔1〕〔情報公開法〕)

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-34 ★★★
           【レジュメ編】 行政法(その13〔1〕〔情報公開法〕)

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■■■ 情報公開法 ■■■
■■■ 総則
■■■ 行政文書の開示

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■■■ 情報公開法 ■■■
■■■ 総則
■■ 目的
第一条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につ
き定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有
するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な
理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。
 
■ 目的規定の特色
(1)「行政文書の開示を請求する権利」が国民主権という憲法原理に基礎を置くもの
   であることが明記されている。
(2)行政運営の「公開性」の向上と政府の「説明責務」の確保が目的として明記され
   ている。
(3)外国に在住する外国人等にも開示請求権を認めている。
(4)請求の理由・目的を問わない制度であり、商業目的で利用することも可能。

■ 国民の「知る権利」
情報公開法は、国民の「知る権利」に関するものであるが、この「知る権利」は、憲法
上明文の規定がないことや、その内容が人によって多岐にわたることから、情報公開法
でも、明記されていない。しかしながら、憲法の理念を踏まえたものであることを「国
民主権の理念にのっとり」という表現で示している。なお、国民による政府に対する情
報公開請求権としての「知る権利」を認めた最高裁判例は、まだない。

●● 最高裁判例「博多駅テレビフィルム提出命令事件」(民集第23巻11号1490頁)
【裁判要旨】
報道の自由は、表現の自由を規定した憲法二一条の保障のもとにあり、報道のための取
材の自由も、同条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない。
【理由】
報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断
の資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものである。したがつて、思想の表明
の自由とならんで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法二一条の保障のも
とにあることはいうまでもない。

●● 最高裁判例「贈賄被疑事件について地方裁判所がした準抗告棄却決定に対する特
   別抗告」(民集第43巻1号19頁)
【裁判要旨】
報道機関の取材ビデオテープに対する捜査機関の本件差押処分は、右テープが重大な被
疑事件の解明にほとんど不可欠であり、報道機関による右テープの放映自体には支障を
きたさないなどの具体的事情の下においては、憲法二一条に違反しない。
【理由】
報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき重要な判断の
資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものであつて、表現の自由を保障した憲
法二一条の保障の下にあり、したがつて報道のための取材の自由もまた憲法二一条の趣
旨に照らし、十分尊重されるべきものであること、しかし他方、取材の自由も何らの制
約をも受けないものではなく、例えば公正な裁判の実現というような憲法上の要請があ
る場合には、ある程度の制約を受けることのあることも否定できないことは、いずれも
博多駅事件決定が判示するとおりである。

■■ 定義
第二条 この法律において「行政機関」とは、次に掲げる機関をいう。
一 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に
置かれる機関
二 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一
項及び第二項に規定する機関(これらの機関のうち第四号の政令で定める機関が置かれ
る機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
三 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関(第
五号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
四 内閣府設置法第三十九条及び第五十五条並びに宮内庁法(昭和二十二年法律第七十
号)第十六条第二項の機関並びに内閣府設置法第四十条及び第五十六条(宮内庁法第十
八条第一項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの
五 国家行政組織法第八条の二の施設等機関及び同法第八条の三の特別の機関で、政令
で定めるもの
六 会計検査院
2 この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得し
た文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識
することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該行政機関
の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただ
し、次に掲げるものを除く。
一 官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として
発行されるもの
二 政令で定める公文書館その他の機関において、政令で定めるところにより、歴史的
若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの

■ 行政機関
(1)2条1項1号:「法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)」
・内閣官房、内閣法制局、安全保障会議、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本
 部、郵政民営化推進本部、都市再生本部、知的財産戦略本部、構造改革特別区域推
 進本部、地球温暖化対策推進本部、地域再生本部が含まれる。
・内閣に置かれる機関であっても、法律の規定に基づかず、閣議決定により設置された
 行政改革推進本部、男女共同参画推進本部等は含まれない。
(2)同「内閣の所轄の下に置かれる機関」:人事
・内閣自体は行政機関に含まれていないが、閣議文書は内閣官房にあるので実質的には
 問題はない。閣議文書も本法の対象文書に含まれている。
(3)2条1項2号
・宮内庁は内閣府に置かれる機関であるが、内閣府とは独立の行政機関として、本法の
 開示請求処理の単位となる。
・内閣府設置法第四十九条第一項に規定する機関:内閣府の外局として置かれる委員会
 又は庁
→ 公正取引委員会、国家公安委員会、防衛庁、金融庁
・内閣府設置法第四十九条第二項に規定する機関:内閣府の外局のうち、法律で国務大
 臣をもってその長に充てることと定められているものに、とくに必要がある場合にお
 かれる委員会又は庁
→ 防衛庁に置かれる防衛施設庁
(4)2条1項3号:国家行政組織法第三条第二項に規定する機関
(5)2条1項5号:国家行政組織法第八条三の特別の機関で、政令で定めるもの:検
   察庁
(6)2条1項6号:会計検査院会計検査院の行った開示決定等に対して不服申立て
   がなされた場合、内閣府に置かれる情報公開・個人情報保護審査会ではなく、会
   計検査院に置かれる会計検査院情報公開・個人情報保護審査会に諮問することに
   なる。
(7)国会、裁判所は対象機関に含まれていない。

■ 行政文書
(1)情報それ自体ではなく、「文書、図画及び電磁的記録」という記録媒体を対象と
   している。
★ 開示請求権の対象は、行政文書であり、行政(に関する)情報ではない。また、必
  ずしも文書管理台帳に記載されていたり、収受印等があることまでは求められてい
  ない。
★ 「文書、図画」には、紙の文書のほか、図面、写真、これを写したマイクロフィル
  ム等も含まれる。
★ 「電磁的記録」とは、「人の知覚によっては認識することができない方式で作られ
  た記録」をいい、録音テープ、ビデオテープ、電子計算機のプログラム等も含まれ
  る。
→ 上記の記録媒体に記録されていない情報は対象外となる。
(2)開示請求時点において「当該行政機関が保有しているもの」を行政文書としてい
   る。
   (ア)請求時点において保有していない行政文書を開示請求に応ずるために作成
      する必要はないことを意味する。
   (イ)施行日前文書も対象とすることを意味する。
(3)すべての電磁的記録を対象としており、情報がいかなる記録媒体に保存されてい
   るかを問わずに情報公開法が適用される。
→ 電子情報、録画テープ、録音テープを含む。
(4)決裁、供覧という事案処理手続の終了を要件とせずに、行政機関の職員が組織的
   に用いるものであれば広く対象に含めている。
(5)行政機関の職員が組織的に用いるもの:作成または取得に関与した職員個人の段
   階にとどまるものではなく、当該行政機関の組織において業務上の必要性から利
   用・保存している状態にあるものを意味する。
★ 「組織的に用いる」とは、職員個人のものではなく、組織としての供用文書の実質
  を備えた状態(業務上必要なものとして利用、保存がされている状態)をいう。
(6)1条2項但書1号:市販されており、本法の対象とする必要がない。
(7)1条2項但書2号:貴重資料の保存、学術研究への寄与等の観点から、独自のア
   クセス制度が定められており、本法の対象とすることが適切とはいえない。
(8)2条2項2号:本法施行令3条1項により、要件が定められている。


■■■ 行政文書の開示
■■ 開示請求
第三条 何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長(前条第一項第四号及
び第五号の政令で定める機関にあっては、その機関ごとに政令で定める者をいう。以下
同じ。)に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる。

(1)開示請求権を有する者:「何人も」
→ 法人、外国に居住する外国人、法人でない社団または財団で管理人の定めのあるも
  の等も含まれる。
(2)開示請求は「行政機関の長」に対して行う。
→ 行政機関の長が何かを明確にする必要が生ずる。本法2条1項4号および5号の政
  令で定める機関の場合には、政令で明確にすることとされている。(例:最高検察
  庁の場合の検事総長)
(3)開示請求権は一身専属的なものである(行政事件訴訟法による訴訟が提起されて
   いる場合には、原告の死亡により訴訟は当然に終了する。)。
★ 開示請求権なので、行政機関の長は、部分開示(6条)および特別の開示(14条1
  項)の場合を除き、そのために新たに行政文書を作成したり、加工する必要はな
  い。

■■ 開示請求の手続
第四条 前条の規定による開示の請求(以下「開示請求」という。)は、次に掲げる事
項を記載した書面(以下「開示請求書」という。)を行政機関の長に提出してしなけれ
ばならない。
一 開示請求をする者の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人その他の団体にあっ
ては代表者の氏名
二 行政文書の名称その他の開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項
2 行政機関の長は、開示請求書に形式上の不備があると認めるときは、開示請求をし
た者(以下「開示請求者」という。)に対し、相当の期間を定めて、その補正を求める
ことができる。この場合において、行政機関の長は、開示請求者に対し、補正の参考と
なる情報を提供するよう努めなければならない。

■ 請求書の記載事項(書面主義)
(1)4条1項2号:開示請求対象文書を行政機関が検索・審査請求し開示決定等を行
   うに際して、請求対象文書を特定しうることが当然の前提になるため、義務づけ
   られている。
   行政文書の名称は、法令上の正式な名称である必要はない。
(2)本法の定める開示請求は、請求の理由・目的の如何を問わず、また、開示請求
   と開示請求対象文書との関係を問うことなく認められるものであるから、請求書
   の記載事項に開示請求の理由・目的は含まれていない。
(3)請求書は日本語で記載しなければならない。
★ 「行政文書開示請求書(標準様式)」については、以下のURLを参照のこと。
 http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/jyohokokai/kaijiseikyu.pdf

■ 請求書の提出
(1)開示請求については、口頭主義ではなく書面主義が採用されている。
(2)条文には明記されていないが、遠隔地に居住する者の便宜を考慮して、書面の提
   出は郵送によることも認められる。
(3)行政手続オンライン化法(「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する
   法律」)により、主務省令で定めるところにより、オンラインによる開示請求
   法制上可能になり、オンラインで開示請求があった場合にはオンラインで開示を
   実施することも政令で認められるに至った。

■ 補正
(1)請求者にとって、開示請求にかかる行政文書の特定は容易でないことが多いた
   め、4条2項は行政機関の長による補正の要求について定めている。
(2)補正を求める場合においては、行政機関の長は開示請求者に対し、補正の参考と
   なる情報を提供するよう努めなければならない。

★ 行政手続法
(申請に対する審査、応答)
第七条 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始
しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が
添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の
法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請を
した者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、
又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

★ 行政不服審査法
(補正)
第二十一条 審査請求が不適法であつて補正することができるものであるときは、審査
庁は、相当の期間を定めて、その補正を命じなければならない。

■■ 行政文書の開示義務
第五条 行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各
号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除
き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
一 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、
当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することが
できるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができること
となるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることによ
り、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
イ 法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情

ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認め
られる情報
ハ 当該個人が公務員等(国家公務員法 (昭和二十二年法律第百二十号)第二条第一
項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法 (平成十一年法律第百三号)第二条第
二項に規定する特定独立行政法人及び日本郵政公社の役員及び職員を除く。)、独立行
法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律 (平成十三年法律第百
四十号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第二条第一項 に規定する独立
行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員、地方公務員法 (昭和二十五年法律
第二百六十一号)第二条に規定する地方公務員並びに地方独立行政法人(地方独立行政
法人法 (平成十五年法律第百十八号)第二条第一項 に規定する地方独立行政法人をい
う。以下同じ。)の役員及び職員をいう。)である場合において、当該情報がその職務
の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行
の内容に係る部分
二 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除
く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情
報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するた
め、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な
利益を害するおそれがあるもの
ロ 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、
法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件
を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるも

三 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼
関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあ
ると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
四 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の
公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつ
き相当の理由がある情報
五 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間
における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見
の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を
生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあ
るもの
六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事
業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は
事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な
事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその
発見を困難にするおそれ
ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地
方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
ホ 国若しくは地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等又は地方独立行政法人
係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

■ 開示・不開示の枠組み
(1)行政文書は原則開示すべきであるが、不開示にすることが私人の権利利益の保護
   や公益の保護のために必要な場合があるため、開示することの利益と不開示にす
   ることの利益を調整し、不開示事項を定めている。
(2)本条の不開示情報の規定に該当するときは開示が禁止されるが、7条の公益上の
   裁量的開示により例外が認められることになる。
★ 行政文書にまったく不開示情報が記録されていない場合には、当然に開示義務が生
  じる。また、不開示情報が含まれている場合には、6条に基づき部分開示をするか
  どうかを判断することになる。

■ 不開示情報
【1】守秘義務との関係:本法により、開示を義務づけられている情報を開示すること
   は、国家公務員法100条1項等にいう漏洩行為にはあたらず、守秘義務違反に
   はならない。

〔国家公務員法〕
(秘密を守る義務)
第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた
後といえども同様とする。

●● 最高裁判例「国家公務員法違反」(民集第32巻3号457頁)
【裁判要旨】
国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項にいう秘密とは、非公知の事実であつて、
実質的にもそれを秘密として保護するに値するものをいい、その判定は、司法判断に服
する。

【2】個人に関する情報(個人情報
(ア)範囲:個人の思想、信条、身分、地位、健康状態、その他一切の個人に関する情
   報が含まれる。
(イ)公務員等の職務遂行にかかる公務員等の職・氏名、職務遂行の内容については、
   そもそも原則としてプライバシーが問題になる余地はなく「個人に関する情報」
   にあたらない。
★ ただし、個人情報保護法の「個人情報」とは定義が異なることに注意。

●● 最高裁判例「公文書非開示決定取消請求事件」(民集第57巻10号1600頁)
【裁判要旨】
(ア)富山県の職員の出勤簿に記録された職員の採用年月日及び退職年月日を示す情報
   並びにその職員が特定の日に出勤し,又は出張したことを示す情報及びその職員
   が特定の日に職務専念義務の免除を受け,厚生事業に参加し,又は欠勤したこと
   を示す情報で公務に従事しなかった個別的内容や具体的理由までが明らかになる
   ものではないものは,旧富山県情報公開条例(昭和61年富山県条例第51号。平成
   13年富山県条例第38号による全部改正前のもの)10条2号にいう「個人に関する情
   報」に当たらない。
(イ)富山県の職員の出勤簿に記録された職員が停職処分により特定の日に出勤しなか
   ったことを示す情報は,旧富山県情報公開条例(昭和61年富山県条例第51号。平成
   13年富山県条例第38号による全部改正前のもの)10条2号にいう「個人に関する情
   報」に当たる。
(ウ)当該情報は開示請求者のみならず、何人にも明らかにできないという趣旨であ
   る。
(エ)個人識別情報型:個人識別情報を原則不開示とし、個人の権利利益を侵害せず不
   開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益
   が優越するため開示すべきものを例外的開示事項として列挙する方法が採用され
   た。
(オ)個人情報保護法2条1項が、「他の情報と容易に照合することができ」と規定
   し、照合の容易性を要件としているのに対して、本条1号は、民間部門よりも行
   政機関が保護する個人情報の範囲を広げるために、照合の容易性を要件としてい
   ない。
(オ)死者に関する情報:「個人」に死者を含むかについての規定はないが、死者の名
   誉、プライバシーに関するわが国の国民感情や、死者の情報開示が遺族のプライ
   バシー侵害になりうること等から、本法の「個人」には死者を含むと解される。
(カ)公領域情報(本条1号イ):法の規定により公にされている情報
   → 登記簿に記載されている法人役員に関する情報、不動産の権利関係に関す
     る情報。
   ・慣行として公にされている情報
   → 叙勲者名簿、中央省庁の職員録等
(キ)公益上の義務的開示(本条1号ロ):不開示により保護される利益と開示により
   保護される利益の比較衡量を行い、後者が前者に優越すると認められるときに開
   示が義務づけられる。
(ク)公務員等情報(本条1号ハ):公務員
   → 国家公務員(国務大臣、国会議員、裁判官を含む。)、独立行政法人等の役
     職員、地方公務員(地方議会議員を含む。)、特定地方独立行政法人の役職
     員。
(ケ)公務員等の職務の遂行にかかる情報:行政庁もしくはその補助機関等として、又
   は独立行政法人等もしくは地方独立行政法人役員・職員として分任する職務の
   遂行にかかる情報。
(コ)本人開示:個人に関する情報については、本人開示を認めるべきという意見が強
   いが、本法では認められていない。
★ 実際には、行政機関個人情報保護法によって、医療情報・教育情報等についても開
  示請求権が認められたため、本法に基づいて本人開示を認める必要性はなくなっ
  た。

【3】法人に関する情報(法人情報)
(ア)法人その他の団体の意義
(イ)法人には、会社、学校法人宗教法人、社会福祉法人、特定非営利法人等が含ま
   れるが、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人は除かれてい
   る。
(ウ)公益上の義務的開示:法人等に関する情報であっても、人の生命、健康、生活ま
   たは財産を保護するため公にすることが必要であると認められる情報は、常に開
   示が義務づけられることになる。
(エ)非公開約束条項(本条2号ロ):法的に提出が義務づけられていない情報につい
   ては、それを他人に流通させるか否か、させるとした場合はいかなる条件の下で
   流通させるかについて、自らの判断で決定することが原則として認められるべき
   である。

●● 平成3年05月31日東京高等裁判所?「公文書公開拒否処分取消請求事件」
【裁判要旨】
(ア)神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例五条一項二号本文の「公開すること
   により、当該法人等又は当該個人に明らかに不利益を与えると認められるもの」
   という規定は、その制定の経緯及び文言に照らし、法人等に与える不利益の大小
   を問わないが、不利益を与えることが客観的かつ明白なものでなければならない
   ことを定めたものと解すべきである。
(イ)本件分譲マンションの建築確認申請書に添付された各階平面図、立面図及び断面
   図は著作物であって、設計者の意に反する公開は著作者人格権である公表権を侵
   害し、神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例五条一項二号本文の「公開す
   ることにより、当該法人等又は当該個人に明らかに不利益を与えると認められる
   もの」に該当するから、神奈川県知事がした右各図面の公開拒否処分は適法であ
   る。

【4】国の安全等に関する情報(国家安全情報公開)(本条3号)
(ア)国の安全とは、国家の構成要素である国土、国民及び統治体制が平和な状態に保
   たれていることである。
(イ)国の安全等に関する情報については、開示・不開示の判断に高度の政策的判断が
   伴い、国防、外交上の専門的、技術的判断を要するという特殊性が認められるた
   め、行政機関の長の判断の合理性の司法審査にとどめることとされた。
★ 「公にすること」とは、秘密にせず、何人にも知り得る状態にしておくことを意味
  している。国民の間で周知(公知)である必要はない。

【5】公共の安全等に関する情報(公共安全情報公開)(本条4号):司法警察等を念
   頭に置いている。

●● 最高裁判例「在留期間更新不許可処分取消」(民集第32巻7号1223頁)
【裁判要旨】
裁判所は、出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認める
に足りる相当の理由の有無の判断についてそれが違法となるかどうかを審査するにあた
つては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、
その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎
を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社
会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それ
が認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものとし
て違法であるとすることができる。
★ 法務大臣の裁量が広く認められている。

【6】審議・検討または協議に関する情報(審議検討等情報)(本条5号)
(ア)アカウンタビリティの観点から開示することによる利益と、開示により適正な意
   思決定等にもたらされる支障を比較衡量する必要があるため、開示することの利
   益を斟酌しても、なお開示のもたらす支障が重大な場合であり、不開示とするこ
   とに合理性が認められる場合に不開示とすることとされている。
(イ)本条5号の「行政機関」には内閣も含む。

【7】事務または事業に関する情報(事務事業情報)(本条6号)
(ア)「国の機関」には、2条1項で定義されている「行政機関」のほか、内閣、国
   会、裁判所を含む。
(イ)本条6号イからホは、限定列挙ではなく例示列挙に過ぎない。また、列挙された
   事項についても、当該事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある
   かを慎重に判断する必要がある。
(ウ)本条6号ハの調査研究は、施設等機関としての研究所(科学警察研究所等)の調
   査を念頭においている。一般の行政機関の行う調査研究の過程についての情報
   は、一般には5号の適用の問題となる。

■■ 部分開示
第六条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されてい
る場合において、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができる
ときは、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。た
だし、当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは、こ
の限りでない。
2 開示請求に係る行政文書に前条第一号の情報(特定の個人を識別することができる
ものに限る。)が記録されている場合において、当該情報のうち、氏名、生年月日その
他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公
にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除
いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。

■ 一般的部分開示
(1)請求対象となった行政文書の一部にのみ不開示情報が含まれているが、他に開示
   しうる情報が存在する場合には、最大限の開示を実現するために、不開示情報と
   開示情報を区別し、後者を開示するようにしなければならない。
(2)不開示情報と開示情報を容易に区分しえない場合には、部分開示を行えなくても
   やむをえない。
(3)不開示情報を容易に区分して除くことが出来る場合であっても、不開示情報を除
   いた部分に「有意の情報が記録されていないと認められるとき」には部分開示の
   義務はない。
(4)不開示決定の部分については、行政手続法8条に基づき理由提示の義務が生ず
   る。
★ 開示対象である行政文書に不開示情報が含まれない場合であっても、特徴のある筆
  跡の文書であったり、特徴のある声の録音テープであるため、特定の個人を識別で
  きる場合は、「容易に区分して除くことができるとき」に含まれない。

■ 個人に関する情報の部分開示
(1)個人に関する情報は、氏名その他の個人識別性のある部分を除くことによって、
   公にしても個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、部分開
   示される。
★ 特定の個人を識別できる要素は、個人に関する情報の開示に関する例外規定(5条
  1号イ、ロ、ハ)に該当しない限り、部分開示の対象にはならない。

■■ 公益上の理由による裁量的開示
第七条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合
であっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政文書
を開示することができる。

(1)本条は、本法5条により開示が禁止される情報について、行政機関の長の高度な
   行政的判断により裁量的開示を行うことができることを明確にするための規定。
(2)本条の裁量的開示が適正に行われたかについては、行政不服審査法に基づく不服
   申立てが成された場合、情報公開・個人情報保護審査会が審査することが可能で
   あり、裁量権の逸脱濫用の有無につき司法審査も可能である。

■■ 行政文書の存否に関する情報
第八条 開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答える
だけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該行政文書の存
否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。

★ この拒否を「グローマー拒否」という。
(1)例外的に、行政文書の存否自体を明確にしないで拒否処分をなしうることを明確
   にしている。
(2)「当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情
   報を開示することとなる」情報には、特定の個人の病歴に関する情報、犯罪の内
   定捜査に関する情報、特定分野に限定した試験問題の出題予定に関する情報、特
   定企業を名指しした新商品の認可申請書、外国から文書の存在自体を明らかにし
   ないという条件で入手した文書等がある。
   例えば、個人に関する情報については、ある人を名指しして、国立がんセンター
   に入院していたときのカルテの請求があった場合、当該行政文書はあるが本法5
   条1項により不開示と回答したのでは、そのことのみで名指しされた人が当該病
   院に入院していた事実が明らかになり、プライバシー侵害となる。
(3)存否応答拒否も拒否処分とされるため、行政手続法8条1項により理由提示義務
   が生ずる。
(4)存否応答拒否は処分性を持つため、行政不服審査法による不服申立てが可能であ
   り、行政機関は、情報公開・個人情報保護審査会に対しては存否応答拒否をする
   ことはできない。

■■ 開示請求に対する措置
第九条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の全部又は一部を開示するときは、
その旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨及び開示の実施に関し政令で定める事項
を書面により通知しなければならない。
2 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の全部を開示しないとき(前条の規定に
より開示請求を拒否するとき及び開示請求に係る行政文書を保有していないときを含
む。)は、開示をしない旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知し
なければならない。

(1)1項は、全部開示決定と部分開示決定の場合に適用され、2項は全部不開示決定
   に適用される。
(2)請求が対象文書を特定しておらず不適法な場合、請求対象文書を保有しているが
   開示請求制度の適用対象外である場合、存否応答拒否の場合および文書不存在の
   場合も2項の適用を受ける。
(3)請求が不適法であることを理由とする不開示決定、存否応答拒否決定および文書
   不存在の決定のいずれも、行政手続法に基づく理由提示義務が存在するととも
   に、行政不服審査法や行政事件訴訟法に基づいて争うことも可能である。
(4)本条では、開示決定等の通知は書面で行うこととされているが、行政手続オンラ
   イン化法等により、オンラインで通知することが法制上可能となっている。
★ 「開示請求に係る行政文書の全部を開示しないとき」について、情報公開法に明文
  の規定はないが、たとえば、開示請求手数料が納付されていない場合、開示請求
  権利の濫用に当たる場合等も、当然に含まれる。
★ 行政不服審査法では、口頭でする処分の場合、書面での教示は必ずしも必要ない
  が、情報公開法では、不開示通知は書面で行わなければならないので、必ず書面に
  よる教示が必要になる。

■■ 開示決定等の期限
第十条 前条各項の決定(以下「開示決定等」という。)は、開示請求があった日から
三十日以内にしなければならない。ただし、第四条第二項の規定により補正を求めた場
合にあっては、当該補正に要した日数は、当該期間に算入しない。
2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、事務処理上の困難その他正当な理由が
あるときは、同項に規定する期間を三十日以内に限り延長することができる。この場合
において、行政機関の長は、開示請求者に対し、遅滞なく、延長後の期間及び延長の理
由を書面により通知しなければならない。

(1)本条は開示決定等の原則的期限と正当な理由があるときの延長期限および延長の
   方法を明確にしている。
(2)開示請求は、行政手続法上の申請に該当するから、開示請求が行政機関の事務所
   に到達したときに審査義務が生ずる(行政手続法7条)。
(3)補正に要した日数は期間に参入しない。
★ 期間の計算は、初日不算入で(民法140条)、期間の末日が日曜日、国民の祝日に
  関する法律に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣
  習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する(同142条)。
★ 行政手続法では、「行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状
  況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない」
  (9条)と規定されているが、情報公開法では、期限を延長する場合には、必ず書
  面で通知することが求められている。

■■ 開示決定等の期限の特例
第十一条 開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため、開示請求があった日から
六十日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障
が生ずるおそれがある場合には、前条の規定にかかわらず、行政機関の長は、開示請求
に係る行政文書のうちの相当の部分につき当該期間内に開示決定等をし、残りの行政文
書については相当の期間内に開示決定等をすれば足りる。この場合において、行政機関
の長は、同条第一項に規定する期間内に、開示請求者に対し、次に掲げる事項を書面に
より通知しなければならない。
一 本条を適用する旨及びその理由
二 残りの行政文書について開示決定等をする期限

(1)10条に規定するように、請求があってから60日以内に開示決定等を行うのが
   原則であるが、他の行政事務を全て停止して開示請求の処理に専念しなければな
   らない等、他の行政事務の遂行に著しい支障が生ずることになる場合に期限の特
   例を定めている。
(2)本条の適用の有無の判断は、開示請求があってから30日以内に行われなければ
   ならない。その際、本条を適用する理由のみならず、残りの行政文書について開
   示決定等をする期限も通知しなければならない。
(3)残りの行政文書について開示決定等をする期限については、上限は定められてい
   ない。

■■ 事案の移送
第十二条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書が他の行政機関により作成された
ものであるときその他他の行政機関の長において開示決定等をすることにつき正当な理
由があるときは、当該他の行政機関の長と協議の上、当該他の行政機関の長に対し、事
案を移送することができる。この場合においては、移送をした行政機関の長は、開示請
求者に対し、事案を移送した旨を書面により通知しなければならない。
2 前項の規定により事案が移送されたときは、移送を受けた行政機関の長において、
当該開示請求についての開示決定等をしなければならない。この場合において、移送を
した行政機関の長が移送前にした行為は、移送を受けた行政機関の長がしたものとみな
す。
3 前項の場合において、移送を受けた行政機関の長が第九条第一項の決定(以下「開
示決定」という。)をしたときは、当該行政機関の長は、開示の実施をしなければなら
ない。この場合において、移送をした行政機関の長は、当該開示の実施に必要な協力を
しなければならない。

(1)移送は、開示請求を受けた行政機関の長の判断で一方的に行うことはできず、移
   送先として予定されている行政機関の長と協議をし、協議が調った場合に移送が
   認められる。

■■ 独立行政法人等への事案の移送
第十二条の二 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書が独立行政法人等により作成
されたものであるときその他独立行政法人等において独立行政法人等情報公開法第十条
第一項 に規定する開示決定等をすることにつき正当な理由があるときは、当該独立行
法人等と協議の上、当該独立行政法人等に対し、事案を移送することができる。この
場合においては、移送をした行政機関の長は、開示請求者に対し、事案を移送した旨を
書面により通知しなければならない。
2 前項の規定により事案が移送されたときは、当該事案については、行政文書を移送
を受けた独立行政法人等が保有する独立行政法人等情報公開法第二条第二項 に規定す
法人文書と、開示請求を移送を受けた独立行政法人等に対する独立行政法人等情報公
開法第四条第一項 に規定する開示請求とみなして、独立行政法人等情報公開法 の規定
を適用する。この場合において、独立行政法人等情報公開法第十条第一項 中「第四条
第二項 」とあるのは「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律
第四十二号)第四条第二項」と、独立行政法人等情報公開法第十七条第一項 中「開示
請求をする者又は法人文書」とあるのは「法人文書」と、「により、それぞれ」とある
のは「により」と、「開示請求に係る手数料又は開示」とあるのは「開示」とする。
3 第一項の規定により事案が移送された場合において、移送を受けた独立行政法人
が開示の実施をするときは、移送をした行政機関の長は、当該開示の実施に必要な協力
をしなければならない。

(1)行政機関の長から、独立行政法人等への移送を認める規定。
(2)独立行政法人等への移送を行うための要件は、他の行政機関の長への移送の場合
   (12条)に準じたものとなっている。

■■ 第三者に対する意見書提出の機会の付与等
第十三条 開示請求に係る行政文書に国、独立行政法人等、地方公共団体、地方独立行
法人及び開示請求者以外の者(以下この条、第十九条及び第二十条において「第三
者」という。)に関する情報が記録されているときは、行政機関の長は、開示決定等を
するに当たって、当該情報に係る第三者に対し、開示請求に係る行政文書の表示その他
政令で定める事項を通知して、意見書を提出する機会を与えることができる。
2 行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当するときは、開示決定に先立ち、当該
第三者に対し、開示請求に係る行政文書の表示その他政令で定める事項を書面により通
知して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、当該第三者の所在が
判明しない場合は、この限りでない。
一 第三者に関する情報が記録されている行政文書を開示しようとする場合であって、
当該情報が第五条第一号ロ又は同条第二号ただし書に規定する情報に該当すると認めら
れるとき。
二 第三者に関する情報が記録されている行政文書を第七条の規定により開示しようと
するとき。
3 行政機関の長は、前二項の規定により意見書の提出の機会を与えられた第三者が当
該行政文書の開示に反対の意思を表示した意見書を提出した場合において、開示決定を
するときは、開示決定の日と開示を実施する日との間に少なくとも二週間を置かなけれ
ばならない。この場合において、行政機関の長は、開示決定後直ちに、当該意見書(第
十八条及び第十九条において「反対意見書」という。)を提出した第三者に対し、開示
決定をした旨及びその理由並びに開示を実施する日を書面により通知しなければならな
い。

■ 趣旨
開示請求に係る行政文書に第三者に関する情報が記録されているときに、当該第三者の
権利利益を保護するとともに開示の是非の判断の適正を期するために開示決定等の前に
第三者に対して意見書提出の機会を付与すること、および開示決定を行う場合に、当該
第三者が開示の実施前に開示決定を争う機会を保障するための措置について定めてい
る。
★ 意見書提出の機会の付与は、行政機関の長の判断による。なお、行政機関は、任意
に資料収集や意見聴取等を行うこともできる。ただし、13条1項の規定に基づく場合に
は、必ず3項の規定の適用がある。
★ 「開示決定をするとき」なので、行政文書の全部または一部の開示の場合をいう
が、不開示とする場合は含まれない(2週間を置く必要はない。)。

■ 任意的意見聴取
(1)任意的意見聴取は、任意調査としての行政調査であり、明文の規定がなくても可
   能であるため、本条1項は確認的意味をもつにとどまる。
(2)国、独立行政法人等、地方公共団体、地方独立行政法人は本条の「第三者」から
   除かれており、本条は適用されないが、事前の意見聴取の必要性自体を否定して
   いるわけではない。
(3)任意的意見聴取の場合は、行政機関の長から第三者への通知の方法も任意であ
   り、口頭で通知しても違法ではない。

■ 必要的意見聴取
(1)開示請求にかかる行政文書につき、公益上の義務的開示を行う場合および公益上
   とくに必要がある場合に裁量的開示をする場合には、第三者の利益と公益との比
   較衡量により開示を行うこととなるため、自らの権利利益を侵害される第三者か
   ら事前に意見聴取することはデュー・プロセスの理念に照らして必要となる。
(2)必要的意見聴取の場合は、意見書提出の機会の付与の通知は書面でなければなら
   ない。また、本法13条2項1号、2号の適用の区分および当該規定を適用する
   理由も通知しなければならない、
(3)1項、2項を通じて、第三者から反対意見書を提出されても、行政機関の長はそ
   れに拘束されるものではなく、反対意見書は参考意見としての性格をもつ。

■ 争訟の機会の保障
(1)第三者が反対意見書を提出したときにおいても、行政機関の長が開示決定を行う
   場合、開示決定をして直ちに開示を実施すれば、当該第三者は開示の実施前に開
   示決定の取り消しを求めることが不可能になるため、第三者に争訟の機会を保障
   するためには、開示決定を当該第三者に直ちに通知するとともに、開示決定と開
   示の実施の間に相当の期間を設けることが不可欠となる。
(2)開示決定後、当該第三者に通知される事項は、「開示決定をした旨およびその理
   由並びに開示を実施する日」である。当該第三者にも開示決定理由が通知される
   点は、行政手続法上にはない規定である。

■■ 開示の実施
第十四条 行政文書の開示は、文書又は図画については閲覧又は写しの交付により、電
磁的記録についてはその種別、情報化の進展状況等を勘案して政令で定める方法により
行う。ただし、閲覧の方法による行政文書の開示にあっては、行政機関の長は、当該行
政文書の保存に支障を生ずるおそれがあると認めるときその他正当な理由があるときは
、その写しにより、これを行うことができる。
2 開示決定に基づき行政文書の開示を受ける者は、政令で定めるところにより、当該
開示決定をした行政機関の長に対し、その求める開示の実施の方法その他の政令で定め
る事項を申し出なければならない。
3 前項の規定による申出は、第九条第一項に規定する通知があった日から三十日以内
にしなければならない。ただし、当該期間内に当該申出をすることができないことにつ
き正当な理由があるときは、この限りでない。
4 開示決定に基づき行政文書の開示を受けた者は、最初に開示を受けた日から三十日
以内に限り、行政機関の長に対し、更に開示を受ける旨を申し出ることができる。この
場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

■ 開示の実施方法
(1)開示の方法は、文書又は図画については閲覧または写しの交付による。
(2)電磁的記録の開示方法は政令に委ねられている。

■ 開示の実施方法の申出
(1)開示を受ける者が、希望する開示の実施方法を申し出る(2項)。
(2)開示の実施方法についての申出期間は、開示決定の通知があった日から30日以
   内である(3項)。
(3)4項は、再開示制度について定めた規定である。まず閲覧をした上で写しの交付
   を希望するか決めたい場合や、一部に付き写しの交付を受け、それを検討した後
   他の部分についても写しの交付を受けるかを判断する場合等が想定されている。

■■ 他の法令による開示の実施との調整
第十五条 行政機関の長は、他の法令の規定により、何人にも開示請求に係る行政文書
が前条第一項本文に規定する方法と同一の方法で開示することとされている場合(開示
の期間が定められている場合にあっては、当該期間内に限る。)には、同項本文の規定
にかかわらず、当該行政文書については、当該同一の方法による開示を行わない。ただ
し、当該他の法令の規定に一定の場合には開示をしない旨の定めがあるときは、この限
りでない。
2 他の法令の規定に定める開示の方法が縦覧であるときは、当該縦覧を前条第一項本
文の閲覧とみなして、前項の規定を適用する。

(1)個別の法律による行政文書へのアクセスが、情報公開法と同一の条件で確保され
   ている場合には、情報公開法が同時には適用されないことを明確にした。情報公
   開法と異なる開示制度を採用した法令については、情報公開法とは趣旨、目的、
   手続等が異なるので、基本的には両者が同時に適用される。
(2)調整の対象になるのは、「何人にも」開示することとされている行政文書であ
   る。
→ 行政手続法18条1項に定められた文書閲覧は、請求権者が「当事者等」に限定され
  ているので、情報公開法が同時に適用され、不開示情報(5条)に該当するかどう
  かを判断のうえ、開示するかどうかが決定される。

(3)他の法令の開示方法が縦覧の場合には、この縦覧を情報公開法15条1項の閲覧と
   みなして、1項の規定が適用される。

〔都市計画法〕
(都市計画の案の縦覧等)
第十七条 都道府県又は市町村は、都市計画を決定しようとするときは、あらかじめ、
国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、当該都市計画の案を、当該都市
計画を決定しようとする理由を記載した書面を添えて、当該公告の日から二週間公衆の
縦覧に供しなければならない。

→ 公告の日から2週間は、都市計画法に基づき、都市計画案は公衆の縦覧に供され
  る。その後は、都市計画法に基づく公衆縦覧は行われないので、情報公開法が適用
  されることになる。

■■ 手数料
第十六条 開示請求をする者又は行政文書の開示を受ける者は、政令で定めるところに
より、それぞれ、実費の範囲内において政令で定める額の開示請求に係る手数料又は開
示の実施に係る手数料を納めなければならない。
2 前項の手数料の額を定めるに当たっては、できる限り利用しやすい額とするよう配
慮しなければならない。
3 行政機関の長は、経済的困難その他特別の理由があると認めるときは、政令で定め
るところにより、第一項の手数料を減額し、又は免除することができる。

■ 手数料
開示請求に係る手数料(開示請求手数料)」は、開示請求者から開示請求の段階で徴
収するが(申請手数料に相当)、「開示の実施に係る手数料(開示実施手数料)」は、
行政文書の開示を受ける者から開示の段階で徴収する。
→ 「開示の実施に係る手数料」は開示が行われる場合のみ徴収される(不開示決定の
  場合には、徴収されない。)。

■■ 権限又は事務の委任
第十七条 行政機関の長は、政令(内閣の所轄の下に置かれる機関及び会計検査院にあ
っては、当該機関の命令)で定めるところにより、この章に定める権限又は事務を当該
行政機関の職員に委任することができる。

(1)委任の法形式は、政令(人事院と会計検査院の場合には、命令)による(これ
   を委任命令という。)。
(2)委任の相手方は、当該行政機関の職員である。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
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