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【レジュメ編】 地方自治法(その4〔その1〕)

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-40 ★★★
           【レジュメ編】 地方自治法(その4〔その1〕)

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■■■ 地方自治法 ■■■
■■■ 地方公共団体の機関

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■■■ 地方自治法 ■■■
今回の地方自治法では、憲法や行政法(行政手続法行政不服審査法)と「横」比較を
行うことが理解につながります。それぞれの事項の異同をしっかり理解することで、確
実に高得点を狙うことが可能になります。どうか憲法、行政手続法行政不服審査法
復習を兼ねて「横」比較を徹底してください。

■■■ 地方公共団体の機関
■■ 議会と長
■ 憲法上の規定
93条1項 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を
設置する。

(ア)議事機関とは何かは明記されていないが、一般的には議決機関であると理解され
   ている。
(2)地方公共団体に長を設置するとは規定されていない。
(3)議会と長の機能分担についても、議会が議事機関である点を除き明確にされてい
   ない。
→ 憲法が明確に規定している部分は少ない。

■ 議会
【1】必置機関
第89条 普通地方公共団体に議会を置く。
第94条 町村は、条例で、第八十九条の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有
する者の総会を設けることができる。

【2】選挙
〔公職選挙法〕
・選挙権
9条2項 日本国民たる年齢満二十年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に
住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。
・被選挙権
同10条1項3号 都道府県の議会の議員についてはその選挙権を有する者で年齢満二十
五年以上のもの
5号 市町村の議会の議員についてはその選挙権を有する者で年齢満二十五年以上のも


(1)地方議会議員の選挙については公職選挙法が適用される。
(2)2001年、電磁記録投票法(地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的
   記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律)が成立し、電子投票
  が法制上可能になった。
→ 電磁記録投票法の概要については http://www.soumu.go.jp/senkyo/011207_1.html
  および http://www.soumu.go.jp/senkyo/pdf/seido_pamph.pdf を参照のこと。

(3)特例選挙区
公職選挙法271条2項 昭和四十一年一月一日現在において設けられている都道府県の
議会の議員の選挙区については、当該区域の人口が当該都道府県の人口を当該都道府県
の議会の議員の定数をもつて除して得た数の半数に達しなくなつた場合においても、当
分の間、第十五条第二項の規定にかかわらず、条例で当該区域をもつて一選挙区を設け
ることができる。
・当該都道府県の行政施策の遂行上、当該地域からの代表を確保する必要性の有無・程
 度、隣接都市との合区の困難性の有無・程度等を総合判断して、特例選挙区を設ける
 か否かが決定される。

●● 最高裁判例「選挙無効」(民集43巻12号2139頁)
【要旨】
(ア)都道府県議会において、当該都道府県の行政施策の遂行上当該地域からの代表確
   保の必要性の有無・程度、隣接の郡市との合区の困難性の有無・程度等を総合判
   断して、公職選挙法二七一条二項に基づくいわゆる特例選挙区設置の必要性を判
   断し、かつ、地域間の均衡を図るための諸般の要素を考慮した上で右設置を決定
   したときは、右設置は原則的には都道府県議会に与えられた裁量権の合理的な行
   使として是認されるが、当該区域の人口が議員一人当たりの人口の半数を著しく
   下回る場合には、右設置は認められない。(イ)千葉県議会議員の選挙区等に関
   する条例(昭和四九年千葉県条例第五五号)の議員定数配分規定は、昭和六二年四
   月一二日の千葉県議会議員選挙当時、公職選挙法一五条七項に違反していたもの
   とはいえない。

【3】権限
(1)議決権
(ア)必要的議決事項:議会の必要的議決事項は、重要事項に限定されている。
96条1項 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
一 条例を設け又は改廃すること。
二 予算を定めること。
三 決算を認定すること。
四 法律又はこれに基く政令に規定するものを除く外、地方税の賦課徴収又は分担金、
使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関すること。
五 その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結するこ
と。
六 条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段
として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること。
七 財産を信託すること。
八 前二号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従
い条例で定める財産の取得又は処分をすること。
九 負担附きの寄附又は贈与を受けること。
十 法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか、権利
を放棄すること。
十一 条例で定める重要な公の施設につき条例で定める長期かつ独占的な利用をさせる
こと。
十二 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起
(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第三条第二項に規定する
処分又は同条第三項に規定する裁決をいう。)に係る同法第十一条第一項(同法第三十
八条第一項 (同法第四十三条第二項 において準用する場合を含む。)又は同法第四十
三条第一項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とす
る訴訟に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る
普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、斡旋調停及び仲裁に関す
ること。
十三 法律上その義務に属する損害賠償の額を定めること。
十四 普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の綜合調整に関すること。
十五 その他法律又はこれに基づく政令(これらに基づく条例を含む。)により議会の
権限に属する事項

・1号から3号までは国会と同じ。個別処分についての議決権も含まれていて、立法権
 の行使に限られていない。
・議決は本会議でなされることが必要であり、通常は出席議員の過半数の同意により可
 決されるが、特別多数決が要件とされているものもある。
・議員全員が集まり意見交換を行う事実上の会議である全員協議会が開かれることは多
 いが、全員協議会の議決をもって議会の議決に代替させることはできない。

●● 最高裁判例「約束手形金請求」(民集14巻9号1615頁)
【要旨】
村長の行為といえども、予算外の義務の負担となる行為については地方自治法九六条一
項八号に基き議会の議決を要すべきであり、右議決を欠くときは該行為は無権限の行為
として無効と解すべきであつて、その行為が手形行為だからといつて別異に解すべき理
由はない。

(イ)予算
97条2項 議会は、予算について、増額してこれを議決することを妨げない。但し、普
通地方公共団体の長の予算の提出の権限を侵すことはできない。
・普通地方公共団体の長の予算の提出権限を侵すような増額修正とは、予算全体の関
 連、当該地方公共団体の行財政に及ぼす影響等を総合的に勘案して、長が提案した予
 算の趣旨を損なうような修正を意味すると一般に解されている。
・減額修正については、当然に可能と解されている。

(ウ)その他の法令による議会の権限
96条1項15号(その他法律又はこれに基づく政令(これらに基づく条例を含む。)によ
り議会の権限に属する事項)の例
・議会の議長・副議長の選挙(同97条1項、103条1項)
・議会が行う選挙の投票の効力に関する異議についての決定(同118条1項)
・議員の被選挙権の有無についての決定(同127条1項)

(エ)条例による議決事項の追加
第96条2項 前項に定めるものを除くほか、普通地方公共団体は、条例で普通地方公共
団体に関する事件(法定受託事務に係るものを除く。)につき議会の議決すべきものを
定めることができる。

(オ)法的効果のない決議
96条の議決事件でないものについて、政治的効果を意図して議決することがあるが、法
的効果は生じない(例:特定の国会議員の辞職請求、核兵器廃絶請求等)。

(2)検査権・監査請求権
・1999年の地方分権一括法による地方自治法改正により、機関委任事務自体が廃止され
 たが、地方公共団体の長が国の機関としての地位から解放され住民代表としての地位
 に徹することができるようになったことは、他面において、主務大臣による監視に代
 わり、住民代表からなる地方議会による長の監視機能の重要性が高まることを意味す
 る。
・ただし、「自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令
 で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることそ
 の他の事由により議会の検査の対象とすることが適当でないものとして政令で定める
 もの(地方自治法98条1項括弧書)」を議会の検査権・監査請求権の対象から除いて
 いる。
→ 国家の安全・個人の秘密に係る事務については、自治事務となった部分は、議会の
  検査権・監査請求権の対象に加わることになった。

(3)調査権
100条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつて
労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託
事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により議会の調査の対
象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。次項において同じ。)
に関する調査を行い、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求す
ることができる。

・100条調査権は議会に付与されたものであり、委員会に付与されたものではない。
・検査権・監査請求権の対象とならない事務と同じ事務は、調査権の対象外である。

・参考人制度
109条5項 常任委員会は、当該普通地方公共団体の事務に関する調査又は審査のため
必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる。
→ 簡便に利害関係人や学識経験者の意見を聴取できるように設けた制度。

(4)不信任決議
178条1項 普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の
議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなけれ
ばならない。この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から
十日以内に議会を解散することができる。
同2項 議会において当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をした場合において、
前項の期間内に議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において
再び不信任の議決があり、議長から当該普通地方公共団体の長に対しその旨の通知があ
つたときは、普通地方公共団体の長は、同項の期間が経過した日又は議長から通知があ
つた日においてその職を失う。
同3項 前二項の規定による不信任の議決については、議員数の三分の二以上の者が出
席し、第一項の場合においてはその四分の三以上の者の、前項の場合においてはその過
半数の者の同意がなければならない。

【4】本会議
(1)定例会および臨時会
101条 普通地方公共団体の議会は、普通地方公共団体の長がこれを招集する。議員定
数の四分の一以上の者から会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集の請求があると
きは、当該普通地方公共団体の長は、これを招集しなければならない。
同2項 招集は、開会の日前、都道府県及び市にあつては七日、町村にあつては三日ま
でにこれを告示しなければならない。但し、急施を要する場合は、この限りでない。

〔憲法〕
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分
の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない(53条)。

102条 普通地方公共団体の議会は、定例会及び臨時会とする。
同2項  定例会は、毎年、条例で定める回数これを招集しなければならない。
同3項  臨時会は、必要がある場合において、その事件に限りこれを招集する。
同4項  臨時会に付議すべき事件は、普通地方公共団体の長が予めこれを告示しなけ
ればならない。
同5項  臨時会の開会中に急施を要する事件があるときは、前二項の規定にかかわら
ず、直ちにこれを会議に付議することができる。
同6項  普通地方公共団体の議会の会期及びその延長並びにその開閉に関する事項
は、議会がこれを定める。

113条 普通地方公共団体の議会は、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、
会議を開くことができない。但し、第百十七条の規定による除斥のため半数に達しない
とき、同一の事件につき再度招集してもなお半数に達しないとき、又は招集に応じても
出席議員が定数を欠き議長において出席を催告してもなお半数に達しないとき若しくは
半数に達してもその後半数に達しなくなつたときは、この限りでない。

〔憲法〕
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決すること
ができない。(56条1項)

115条 普通地方公共団体の議会の会議は、これを公開する。但し、議長又は議員三人
以上の発議により、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くこ
とができる。

〔憲法〕
両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したとき
は、秘密会を開くことができる。(57条)

116条 この法律に特別の定がある場合を除く外、普通地方公共団体の議会の議事は、
出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

〔憲法〕
両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれ
を決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。(56条2項)

(2)議長および副議長
103条  普通地方公共団体の議会は、議員の中から議長及び副議長一人を選挙しなけれ
ばならない。
2項  議長及び副議長の任期は、議員の任期による。
議長、副議長の不信任決議制度はないので、たとえ不信任決議がなされても法的拘束
 力はない。

108条 普通地方公共団体の議会の議長及び副議長は、議会の許可を得て辞職すること
ができる。但し、副議長は、議会の閉会中においては、議長の許可を得て辞職すること
ができる。

【5】委員会
・普通地方公共団体の議会には、条例で常任委員会(109条1項)、議会運営委員会(10
 9条の2第1項)、特別委員会(110条1項)を置くことができる。
・議会運営委員会は、議会の運営に関する事項、議会の会議規則・委員会に関する条例
 に関する事項、議長の諮問に関する事項に関する調査を行い、議案・陳情等を調査す
 る(109条の2第3項)。
・地方自治法は、委員会を必置機関としていない。
・議員はそれぞれ1個の常任委員となる。常任委員・議会運営委員会委員は会期の初め
 に議会において選任し、条例に特別の定めのある場合を除くほか、議員の任期中在任
 する(109条2項、109条の2第2項)。
・特別委員は、議会において選任し、委員会に付議された事件が議会において審議され
 ている間在任する(110条2項)。

【6】議員の議案提出権・修正動議提出権
112条 普通地方公共団体の議会の議員は、議会の議決すべき事件につき、議会に議案
を提出することができる。但し、予算については、この限りでない。
2項 前項の規定により議案を提出するに当たつては、議員の定数の十二分の一以上の
者の賛成がなければならない。

〔国会法〕
議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員
十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては
議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。(56条1項)

同115条の2 普通地方公共団体の議会が議案に対する修正の動議を議題とするに当た
つては、議員の定数の十二分の一以上の者の発議によらなければならない。
・出席議員ではなく、議員の定数の12分の1である点に留意。
・議員定数が12名以下の場合には、1人でも議員の議案提出権、修正動議提出権がある
 ことになる。

〔国会法〕
議案につき議院の会議で修正の動議を議題とするには、衆議院においては議員二十人以
上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、法律案に対する修正の動議
で、予算の増額を伴うもの又は予算を伴うこととなるものについては、衆議院において
は議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。(57条)

【7】議会の解散
(1)長による解散
178条 普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決
をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければな
らない。この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から十日
以内に議会を解散することができる。

・非常の災害による応急もしくは復旧の施設のために必要な経費または感染症予防のた
 めに必要な経費を、議会の議決が削除しまたは減額した場合、長はこれを再議に付
 し、議会がなお当該経費を削除しまたは減額したときは、不信任の議決とみなすこと
 ができる(同177条1項・2項2号・4項)。

(2)議会の自主解散
〔地方公共団体の議会の解散に関する特例法〕
第一条 この法律は、地方公共団体の議会の解散の請求に関する世論の動向にかんが
み、当該議会が自らすすんでその解散による選挙によつてあらたに当該地方公共団体の
住民の意思をきく方途を講ずるため、地方公共団体の議会の解散について、地方自治法
の特例を定めるものとする。

第二条 地方公共団体の議会は、当該議会の解散の議決をすることができる。
2 前項の規定による解散の議決については、議員数の四分の三以上の者が出席し、そ
の五分の四以上の者の同意がなければならない。
3 第一項の議決があつたときは、当該地方公共団体の議会は、その時において解散す
るものとする。

■ 執行機関
【1】執行機関の概念
・議決機関としての議会に対して、地方公共団体の行政的事務を管理執行する機関であ
 って、みずから地方公共団体の意思を決定し外部に表示する権限を有するもの。

138条の4 普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の外、法律
の定めるところにより、委員会又は委員を置く。

同138条の2 普通地方公共団体の執行機関は、当該普通地方公共団体の条例、予算そ
の他の議会の議決に基づく事務及び法令、規則その他の規程に基づく当該普通地方公共
団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う。

同138条の3 普通地方公共団体の執行機関の組織は、普通地方公共団体の長の所轄の
下に、それぞれ明確な範囲の所掌事務と権限を有する執行機関によつて、系統的にこれ
を構成しなければならない。
2項 普通地方公共団体の執行機関は、普通地方公共団体の長の所轄の下に、執行機関
相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならな
い。
3項 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の執行機関相互の間にその権限
につき疑義が生じたときは、これを調整するように努めなければならない。

【2】長
(1)選挙権と被選挙権(公職選挙法)
・選挙権は議員の場合と同じ
 日本国民たる年齢満二十年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有
 する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する(9条2
 項)。
・被選挙権は、都道府県知事については年齢満30年以上の者(10条1項4号)、市町村
 長については年齢満25年以上の者(同6号)であれば足りる。
・議員と異なり、当該地方公共団体の住民であることは要件ではない。

(2)地位
139条  都道府県に知事を置く。
2項 市町村に市町村長を置く。

141条  普通地方公共団体の長は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができな
い。
2項 普通地方公共団体の長は、地方公共団体の議会の議員並びに常勤の職員及び短時
間勤務職員と兼ねることができない。

142条 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその
支配人又は主として同一の行為をする法人(当該普通地方公共団体が出資している法人
で政令で定めるものを除く。)の無限責任社員、取締役執行役若しくは監査役若しく
はこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。

・1999年の地方自治法改正により、地方公共団体が2分の1以上を出資している財団法
 人や第三セクターの役員との兼業が可能になった。

・長は、地方公務員法3条1項にいう特別職の公務員であり、同法の懲戒に関する規定
 (29条)は適用されない。
★ 長の意に反してその地位を奪う制度は、失職(143条)、議会の不信任決議、住民
  の解職請求に限られる。
・長の給料は条例で定めるが(地方自治法204条3項)、議会には長に対する懲戒権
 与えられておらず、懲戒目的で長の給料を減額する条例を制定することは違法であ
 る。
・憲法上も地方自治法上も、長の多選を制限する規定はない。

(3)権限
(ア)包括的事務処理権限
147条 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体を統轄し、これを代表す
る。

148条 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを
執行する。

149条 普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
一 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
二 予算を調製し、及びこれを執行すること。
三 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科
すること。
四 決算を普通地方公共団体の議会の認定に付すること。
五 会計を監督すること。
六 財産を取得し、管理し、及び処分すること。
七 公の施設を設置し、管理し、及び廃止すること。
八 証書及び公文書類を保管すること。
九 前各号に定めるものを除く外、当該普通地方公共団体の事務を執行すること。

→ 149条は例示に過ぎず、長は包括的な事務処理権限を有している。

(イ)議案提出権
149条1号、96条1項1号により、長には、条例案の提出権が認められている。実
際に、条例案の大半は、長が提出している。

(ウ)事務の委任
153条2項 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部をその管理に属
する行政庁に委任することができる。

(エ)公共的団体の監督
157条  普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の区域内の公共的団体等
の活動の綜合調整を図るため、これを指揮監督することができる。
・公共的団体等とは、農協・漁協・生協・青年団・PTA等、公共的活動を行う団体をす
 べて含み、法人格の有無を問わない。

(4)首長部局
・2003年の地方自治法改正で都道府県の局部総数の法定が廃止されたことにより、普通
 地方公共団体の長は、その権限に属する事務を分掌させるため、総数の限定なしに必
 要な内部組織を設けることができることとなった。この場合、当該普通地方公共団体
 の長の直近下位の内部組織の設置及びその分掌する事務については、条例で定めなけ
 ればならない(158条1項)。
・普通地方公共団体の長は、前項の内部組織の編成に当たつては、当該普通地方公共団
 体の事務及び事業の運営が簡素かつ効率的なものとなるよう十分配慮しなければなら
 ない(同2項)。
・普通地方公共団体の長は、第一項の条例を制定し又は改廃したときは、遅滞なく、そ
 の要旨その他の総務省令で定める事項について、都道府県にあつては総務大臣、市町
 村にあつては都道府県知事に届け出なければならない(同3項)。

(5)補助機関
162条 副知事及び助役は、普通地方公共団体の長が議会の同意を得てこれを選任す
る。

163条 副知事及び助役の任期は、四年とする。但し、普通地方公共団体の長は、任
期中においてもこれを解職することができる。

168条 都道府県に出納長を置く。
2項  市町村に収入役一人を置く。ただし、政令で定める市及び町村は、条例で収入
役を置かず市町村長又は助役をしてその事務を兼掌させることができる。

(6)議会との関係
(ア)一般的拒否権
176条 普通地方公共団体の議会における条例の制定若しくは改廃又は予算に関する
議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特別の定が
あるものを除く外、その送付を受けた日から十日以内に理由を示してこれを再議に付す
ることができる。
2項 前項の規定による議会の議決が再議に付された議決と同じ議決であるときは、そ
の議決は、確定する。
3項 前項の規定による議決については、出席議員の三分の二以上の者の同意がなけれ
ばならない。

・「条例の制定若しくは改廃」と「予算」に関する議決についてのみ可能。
・出席議員の3分の2以上の者の同意が得られない場合には、その議案は廃案となる。
 ただし、再議に付された議決と異なる内容の議決が出席議員の過半数の同意を得てさ
 れたときは、新たな議決があったものとみなされる。長は、この議決に異議があると
 きは、改めて再議に付すことができる。

(イ)特別拒否権
176条4項 普通地方公共団体の議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは
会議規則に違反すると認めるときは、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれ
を再議に付し又は再選挙を行わせなければならない。
5項 前項の規定による議会の議決又は選挙がなおその権限を超え又は法令若しくは会
議規則に違反すると認めるときは、都道府県知事にあつては総務大臣、市町村長にあつ
ては都道府県知事に対し、当該議決又は選挙があつた日から二十一日以内に、審査を申
し立てることができる。
6項 前項の規定による申立てがあつた場合において、総務大臣又は都道府県知事は、
審査の結果、議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反す
ると認めるときは、当該議決又は選挙を取り消す旨の裁定をすることができる。
7項 前項の裁定に不服があるときは、普通地方公共団体の議会又は長は、裁定のあつ
た日から六十日以内に、裁判所に出訴することができる。
★ 行政事件訴訟法上の機関訴訟(6条)に該当する。

177条 普通地方公共団体の議会の議決が、収入又は支出に関し執行することができな
いものがあると認めるときは、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議
に付さなければならない。
2項 議会において左に掲げる経費を削除し又は減額する議決をしたときは、その経費
及びこれに伴う収入についても、また、前項と同様とする。
一 法令により負担する経費、法律の規定に基き当該行政庁の職権により命ずる経費
の他の普通地方公共団体の義務に属する経費
二 非常の災害による応急若しくは復旧の施設のために必要な経費又は感染症予防のた
めに必要な経費
3項  前項第一号の場合において、議会の議決がなお同号に掲げる経費を削除し又は
減額したときは、当該普通地方公共団体の長は、その経費及びこれに伴う収入を予算に
計上してその経費を支出することができる。
4項 第二項第二号の場合において、議会の議決がなお同号に掲げる経費を削除し又は
減額したときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決を不信任の議決とみなすこと
ができる。

(ウ)議会に出席する義務
121条 普通地方公共団体の長、教育委員会の委員長、選挙管理委員会の委員長、人事
委員会の委員長又は公平委員会の委員長、公安委員会の委員長、労働委員会の委員、農
委員会の会長及び監査委員その他法律に基づく委員会の代表者又は委員並びにその委
任又は嘱託を受けた者は、説明のため議長から出席を求められたときは、議場に出席し
なければならない。

・ 長は議長からの求めなしに議会に出席することはできない。

〔憲法〕
63条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにか
かはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁
又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

(エ)専決処分
・法律の規定による専決処分
179条  普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第百十三条但書の場合におい
てなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会を招集する
暇がないと認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普
通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。
3項  前二項の規定による処置については、普通地方公共団体の長は、次の会議にお
いてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。

・議会の委任による専決処分
180条  普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特
に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができ
る。
2項  前項の規定により専決処分をしたときは、普通地方公共団体の長は、これを議
会に報告しなければならない。

■■ 委員会および委員
■ 意義
・政治的中立性が強く要求される分野であって長から職権行使の独立性を保障された機
 関を設けることに意味がある場合(選挙管理委員会人事委員会、公安委員会等)、
 専門的技術的知識が必要とされるため外部の学識経験者の判断に委ねることが適当な
 場合(収用委員会等)、利害関係人の直接参加の要請が大きい場合(農業委員会等)
 に、長から独立した執行機関が委員会または委員として設けられる。
・監査委員のみが独任制の執行機関である(ただし、一定の場合には合議しなければな
 らない。)。

■ 必置機関
180条の5 執行機関として法律の定めるところにより普通地方公共団体に置かなけれ
ばならない委員会及び委員は、左の通りである。
一 教育委員会
二 選挙管理委員会
三 人事委員会又は人事委員会を置かない普通地方公共団体にあつては公平委員会
四 監査委員
2項 前項に掲げるもののほか、執行機関として法律の定めるところにより都道府県に
置かなければならない委員会は、次のとおりである。
一 公安委員会
二 労働委員会
三 収用委員会
四 海区漁業調整委員会
五 内水面漁場管理委員会
3項 第一項に掲げるものの外、執行機関として法律の定めるところにより市町村に置
かなければならない委員会は、左の通りである。
一 農業委員会
二 固定資産評価審査委員会

★ 「法律の定めるところにより」設置される。条例で設置することはできない。

■ 長との関係
180条の6 普通地方公共団体の委員会又は委員は、左に掲げる権限を有しない。但
し、法律に特別の定があるものは、この限りでない。
一  普通地方公共団体の予算を調製し、及びこれを執行すること。
二  普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
三  地方税を賦課徴収し、分担金若しくは加入金を徴収し、又は過料を科すること。
四  普通地方公共団体の決算を議会の認定に付すること。
→ これらの事務については、委員会または委員の所掌事務に関するものであっても、
  長が担任する(149条1~4号)。

180条の2  普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部を、当該普通地方
公共団体の委員会又は委員と協議して、普通地方公共団体の委員会委員会の委員長、
委員若しくはこれらの執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理
に属する機関の職員に委任し、又はこれらの執行機関の事務を補助する職員若しくはこ
れらの執行機関の管理に属する機関の職員をして補助執行させることができる。但し、
政令で定める普通地方公共団体の委員会又は委員については、この限りでない。

180条の3  普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の委員会又は委員と協議
して、吏員その他の職員を、当該執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行
機関の管理に属する機関の職員と兼ねさせ、若しくは当該執行機関の事務を補助する職
員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員に充て、又は当該執行機関の事
務に従事させることができる。

第百八十条の四 普通地方公共団体の長は、各執行機関を通じて組織及び運営の合理化
を図り、その相互の間に権衡を保持するため、必要があると認めるときは、当該普通地
方公共団体の委員会若しくは委員の事務局又は委員会若しくは委員の管理に属する事務
を掌る機関(以下本条中「事務局等」という。)の組織、事務局等に属する職員の定数
又はこれらの職員の身分取扱について、委員会又は委員に必要な措置を講ずべきことを
勧告することができる。
2項 普通地方公共団体の委員会又は委員は、事務局等の組織、事務局等に属する職員
の定数又はこれらの職員の身分取扱で当該委員会又は委員の権限に属する事項の中政令
で定めるものについて、当該委員会又は委員の規則その他の規程を定め、又は変更しよ
うとする場合においては、予め当該普通地方公共団体の長に協議しなければならない。

■ 監査委員
・監査委員は、普通地方公共団体の財務に関する事務の執行および普通地方公共団体の
 経営する事業の管理についての監査(財務監査)を行うが(199条1項)、監査委員の
 職務権限が行政監査にも拡大され(同2項)、これに対応して、監査委員の要件とし
 て、「財務管理、事業の経営管理」に加えて、「行政運営に関し優れた識見を有する
 者」が加えられた(196条1項)。
・従前、監査委員は独任制の機関として構成されていたが、監査の慎重を期するため、
 監査結果の報告、監査意見の提出について、委員定数が2人以上の場合には、合議に
 よることとされた(75条4項、199条11項、242条8項、243条の2第9項)。
・議会・長・委員会等が、監査結果に関する報告に基づいて措置を講じたときは、監査
 委員にその旨を通知し、監査委員は、当該通知にかかる事項を公表することが義務付
 けられた(199条12項)。
→ 監査委員の定数は、都道府県及び政令で定める市では四人とし、その他の市にあつ
  ては条例の定めるところにより三人又は二人とし、町村にあつては二人とする
  (195条2項)。

■ 外部監査
【1】導入の背景
・情報公開条例を用いて市民オンブズマン等が行った食料費等にかかる公文書の開示請
 求によって不適正な支出が多くの地方公共団体で明るみに出たことにより、監査委員
 による監査が充分に機能していなかったのではないかという批判を強めることになっ
 た。
・1997年の第25次地方制度調査答申を受けて、外部監査制度が導入された。
・外部監査制度とは、地方公共団体の組織に属さず、地方公共団体の職員としての身分
 も有しない外部の専門家による監査を意味する。

【2】外部監査契約を締結できる者
252条の28 普通地方公共団体が外部監査契約を締結できる者は、普通地方公共団体の
財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者であつて、次の
各号のいずれかに該当するものとする。
一  弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む。)
二  公認会計士公認会計士となる資格を有する者を含む。)
三  国の行政機関において会計検査に関する行政事務に従事した者又は地方公共団体
において監査若しくは財務に関する行政事務に従事した者であつて、監査に関する実務
に精通しているものとして政令で定めるもの
2項  普通地方公共団体は、外部監査契約を円滑に締結し又はその適正な履行を確保
するため必要と認めるときは、前項の規定にかかわらず、同項の識見を有する者であつ
税理士税理士となる資格を有する者を含む。)であるものと外部監査契約を締結す
ることができる。
・ただし、当該普通地方公共団体の議会の議員、職員等の欠格事由が定められている
 (同3項)。
・実際には、外部監査契約を締結している者のほとんどは公認会計士である。

【3】 外部監査人の義務
252条の31 外部監査人は、外部監査契約の本旨に従い、善良な管理者の注意をもつ
て、誠実に監査を行う義務を負う。
2項  外部監査人は、外部監査契約履行に当たつては、常に公正不偏の態度を保持
し、自らの判断と責任において監査をしなければならない。
3項 外部監査人は、監査の実施に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。外部監
査人でなくなつた後であつても、同様とする。
4項 前項の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
5項  外部監査人は、監査の事務に関しては、刑法 (明治四十年法律第四十五号)そ
の他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

・外部監査人の守秘義務違反に対する罰則は、地方公務員法上の罰則よりも加重されて
 いる。
・外部監査人はみなし公務員とされているので、収賄罪の規定が適用され、また、その
 職務への妨害は公務執行妨害罪に問われることになる。

【4】外部監査人と監査委員の関係
・外部監査人と監査委員の関係は、基本的に独立対等の関係にある。
・両者が独立に監査を行う結果、両者が同時に同一の記録を入手して調査をしようとす
 る事態が生じうるため、両者間の調整規定が設けられている。

(ア)252条の30 外部監査人(包括外部監査人及び個別外部監査人をいう。以下本章
において同じ。)は、監査を実施するに当たつては、監査委員にその旨を通知する等相
互の連絡を図るとともに、監査委員の監査の実施に支障を来さないよう配慮しなければ
ならない。
2項  監査委員は、監査を実施するに当たつては、外部監査人の監査の実施に支障を
来さないよう配慮しなければならない。

(イ)外部監査人の監査への協力
252条の33 普通地方公共団体が外部監査人の監査を受けるに当たつては、当該普通地
方公共団体の議会、長その他の執行機関又は職員は、外部監査人の監査の適正かつ円滑
な遂行に協力するよう努めなければならない。
2項 代表監査委員は、外部監査人の求めに応じ、監査委員の監査の事務に支障のない
範囲内において、監査委員の事務局長、書記その他の職員又は第百八十条の三の規定に
よる職員を外部監査人の監査の事務に協力させることができる。

(ウ)議会による説明の要求又は意見の陳述
252条の34 普通地方公共団体の議会は、外部監査人の監査に関し必要があると認める
ときは、外部監査人又は外部監査人であつた者の説明を求めることができる。
2項 普通地方公共団体の議会は、外部監査人の監査に関し必要があると認めるとき
は、外部監査人に対し意見を述べることができる。

【5】外部監査契約
・外部監査契約は、包括外部監査契約と個別外部監査契約からなる(252条の27第1
 項)。
(1)包括外部監査契約
(ア)定義:第二百五十二条の三十六第一項各号に掲げる普通地方公共団体が、第二条
第十四項及び第十五項の規定の趣旨を達成するため、この法律の定めるところにより、
次条第一項又は第二項に規定する者の監査を受けるとともに監査の結果に関する報告の
提出を受けることを内容とする契約であつて、この法律の定めるところにより、毎会計
年度、当該監査を行う者と締結するものをいう(252条の27第2項)。

(イ)包括外部監査契約の締結
・包括外部監査契約には、期間の始期、支払うべき監査に要する費用の額の算定方法、
 その他必要な事項として政令で定めるものについて定めなければならない(252条の
 36第4項)。包括外部監査契約対象団体の長は、包括外部監査契約を締結したとき
 は、上記の事項を直ちに告示しなければならない(同条5項)。
・包括外部監査契約対象団体は、都道府県、政令で定める市(指定都市、中核市)、そ
 れ以外の市、特別区または町村であって契約に基づく監査を受けることを条例により
 定めたもの(252条の36第1項、283条1項)である。
・一部事務組合または広域連合は、包括外部監査契約に基づく監査の規定の適用につい
 ては、政令で定める市以外の市または町村とみなされるから(252条の45)、条例で
 定めれば包括外部監査契約を締結できる。
・包括外部監査対象団体の長は、毎会計年度、当該会計年度に係る包括外部監査契約
 を、速やかに、一の者と締結しなければならない。この場合においては、あらかじめ
 監査委員の意見を聴くとともに、議会の議決を経なければならない。
・包括外部監査契約を締結する場合において、包括外部監査対象団体は、連続して四
 回、同一の者と包括外部監査契約を締結してはならない。

(ウ)包括外部監査人の監査
・いかなるテーマを何件選択するかの判断は、基本的に包括外部監査人に委ねられてい
 る。

252条の37 包括外部監査人は、包括外部監査対象団体の財務に関する事務の執行及び
包括外部監査対象団体の経営に係る事業の管理のうち、第二条第十四項及び第十五項の
規定の趣旨を達成するため必要と認める特定の事件について監査するものとする。
2項  包括外部監査人は、前項の規定による監査をするに当たつては、当該包括外部
監査対象団体の財務に関する事務の執行及び当該包括外部監査対象団体の経営に係る事
業の管理が第二条第十四項及び第十五項の規定の趣旨にのつとつてなされているかどう
かに、特に、意を用いなければならない。

・財政的援助団体に対する外部監査を認めるか否かは、当該地方公共団体が条例で定め
 る(他方、監査委員は、自らが必要と認める場合は、財政的援助団体に対する監査を
 することができる(199条7項)。)。

252条の38 包括外部監査人は、監査のため必要があると認めるときは、監査委員と協
議して、関係人の出頭を求め、若しくは関係人について調査し、若しくは関係人の帳
簿、書類その他の記録の提出を求め、又は学識経験を有する者等から意見を聴くことが
できる。
・他方、監査委員が同様のことをする場合には、外部監査人と協議する必要はない(199
 条8項)。

252条の37第5項 包括外部監査人は、包括外部監査契約で定める包括外部監査契約
期間内に、監査の結果に関する報告を決定し、これを包括外部監査対象団体の議会、長
及び監査委員並びに関係のある教育委員会、選挙管理委員会人事委員会若しくは公平
委員会、公安委員会労働委員会、農業委員会その他法律に基づく委員会又は委員に提
出しなければならない包括外部監査人は、包括外部監査契約で定める包括外部監査契約
の期間内に、監査の結果に関する報告を決定し、これを包括外部監査対象団体の議会、
長及び監査委員並びに関係のある教育委員会、選挙管理委員会人事委員会若しくは公
委員会、公安委員会労働委員会、農業委員会その他法律に基づく委員会又は委員に
提出しなければならない。

・監査の結果に基づいて必要があると認めるときは、監査の結果に関する報告に添えて
 その意見を提出することができる(252条の38第2項)。

252条の38第6項 包括外部監査人による監査の結果に関する報告の提出があつた場合
において、当該監査の結果に関する報告の提出を受けた包括外部監査対象団体の議会、
長、教育委員会、選挙管理委員会人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働
委員会、農業委員会その他法律に基づく委員会又は委員は、当該監査の結果に基づき、
又は当該監査の結果を参考として措置を講じたときは、その旨を監査委員に通知するも
のとする。この場合においては、監査委員は、当該通知に係る事項を公表しなければな
らない。

(2)個別外部監査契約
・監査委員以外の者による要求や請求に基づき、監査委員が監査を行うこととされてい
 る場合において、監査の要求や請求をする者が理由を示して、当該事項に係る外部監
 査を求めたときに行われるもの(252条の27台3項)。
・次の5つの場合に、個別外部監査が認められている。
(ア)選挙権を有する者がその総数の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者か
   ら普通地方公共団体の監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務の執行に関
   して行う監査請求(75条1項)について、監査委員の監査に代えて契約に基づく
   監査によることができることを条例により定めている場合(252条の39第1項)。
(イ)議会からの監査請求(98条2項)について、監査委員の監査に代えて契約に基づ
   く監査によることができることを条例により定めている場合(252条の40第1
   項)。
(ウ)長からの監査の要求(199条6項)について、監査委員の監査に代えて契約に基づ
   く監査によることができることを条例により定めている場合(252条の41第1
   項)。
(エ)長からの財政的援助団体等の監査の要求(199条7項)について、監査委員の監
   査に代えて契約に基づく監査によることができることを条例により定めている場
   合(252条の42第1項)。
(オ)住民監査請求(242条1項)について、監査委員の監査に代えて契約に基づく監査
   によることができることを条例により定めている場合(252条の43第1項)。
→ 個別外部監査の要求や請求があっただけでは、自動的に外部監査が開始されるわけ
  ではない。

・議会の請求以外の場合にも、個別外部監査によることが適当であるかについて議会が
 議決することが必要である(252条の39第5項、252条の41第4項、252条の42第4
 項)。ただし、住民監査請求の場合には、監査委員が判断する(252条の43第2項)。
・具体の個別外部監査契約についても、議会の議決を経ることが原則とされている
 (252条の39第6項、252条の40第4項、252条の41第4項、252条の42第4項、252条の43
 第3項)。
・実際の個別外部監査の例は僅少である。
も引き続き地方自治法です。その後に商法を予定しています。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
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