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税制改正法成立(一部) 平成23年度

 札幌市豊平区の 税理士 溝江諭(みぞえさとし) です。
 
 今日はこの6月22日に成立した平成23年度税法改正に関する法律についてです。
 
 
 平成23年度の税制改正の推移を注意深く見守っている方がたくさんおられることでしょう。なぜならば、平成23年度税制大綱に謳われていた改正項目の先行きがこれまでなかなか見えて来なかったためです。かく言う私もその一人ですが、これまでの政府の動きを見ているとその殆どの項目についてはここしばらく成立する見込みはないようです。
 
 しかし、そのような状況下において、政府は平成23年度の税制大綱のうち優先すべきごく一部の項目については従来の法律案から分離し、「所得税法等の一部を改正する法律案」(正式名称:「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」(注1))として、6月10日国会に提出しました。この法律がこの6月22日に参議院でも可決され、成立に至りました。
 
 さて、この法律の目的は次のように記されています。
 
 「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図る観点から、雇用促進税制及び環境関連投資促進税制の創設、寄附税制の拡充、金融・証券税制の改正、租税特別措置の見直し等所要の措置を講ずることとし、次により所得税法等の一部を改正することとする。」
 
 この法律の主な内容は以下のようになっています。
 
 
1 所得税関係
 
 ① 年金所得者の申告不要制度の導入。(所得税法第121条、第203条の3、第203条の5関係)
  公的年金等の収入金額が400万円以下であるものが、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であるときは、所得税確定申告を不要とする。
 
 ② 贈与、相続又は遺贈により利子所得配当所得等の基因となる資産を取得した場合においてその資産に係る利子所得の金額、配当所得の金額等の計算については、その者が引き続きその資産を所有していたものとみなして、所得税法の規定を適用する。(所得税法第67条の4関係)
 
 ③ 故意の申告書不提出によるほ脱犯の創設
  確定申告書等をその提出期限までに提出しないことにより所得税を免れた者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(所得税法第238条関係)
 
 
2 法人税関係
 
 ① 完全支配関係がある法人の間の取引に係る税制等について、次の見直し。
 
  複数の完全支配関係がある大法人資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上の法人又は相互会社等をいう。)に発行済株式等の全部を保有されている法人については、中小企業者等の軽減税率を適用しないとともに、特定同族会社の特別税率の適用対象とする。
  その他にも株式等の評価損の計上不要、中小企業等の貸倒引当金の法定繰入の不適用、中小企業者の交際費等の損金不算入制度における年600万円の定額控除の不適用、欠損金の繰戻しによる還付の不適用などがあります。(法人税法第66条、第67条、第143条関係、租税特別措置法第57条の10、第61条の4、第66条の13、第68条の59、第68条の66、第68条の98関係)
 
 ② 仮決算による中間申告書を提出できないこととする措置。(法人税法第72条、第81条の20関係)
  
 仮決算による中間申告書に記載すべき法人税の額が、前事業年度の確定法人税額を前事業年度の月数で除し、これに6を乗じて計算した金額を超える場合
 
 ③ 取引先等に対する調査の対象について、帳簿書類以外の物件を追加することとする。(法人税法第154条関係)
 
 ③ 故意の申告書不提出によるほ脱犯の創設
  
 確定申告書等をその提出期限までに提出しないことにより法人税を免れた者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(法人税法第159条関係)
 
 
3 相続税関係
 
 ① 故意の申告書不提出によるほ脱犯の創設
 
  相続税又は贈与税の申告書をその提出期限までに提出しないことにより相続税又は贈与税を免れた者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとする。(相続税法第68条関係)
 
 
4 消費税関係
 
 ① 事業者免税点制度における免税事業者の要件についの見直し。(消費税法第9条の2関係)

  (1) 個人事業者のその年又は法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合において、その個人事業者又は法人(課税事業者を選択しているものを除く。)のうち、その個人事業者のその年又は法人のその事業年度に係る次に掲げる期間(以下「特定期間」という。)における課税売上高が1,000万円を超えるときは、その個人事業者のその年又は法人のその事業年度については、事業者免税点制度を適用しない。
  個人事業者のその年の前年1月1日から6月30日までの期間
  その事業年度の前事業年度(7月以下であるものその他一定のもの(において「短期事業年度」という。)を除く。)がある法人のその前事業年度開始の日以後6月の期間
  その事業年度の前事業年度が短期事業年度である法人のその事業年度の前々事業年度(その事業年度の基準期間に含まれるものその他一定のものを除く。)開始の日以後6月の期間(その前々事業年度が6月以下の場合には、その前々事業年度開始の日からその終了の日までの期間)
 
  (2) (1)を適用する場合においては、個人事業者又は法人が特定期間中に支払った所得税法に規定する支払明細書に記載すべき給与等の金額に相当するものの合計額をもって、(1)の特定期間における課税売上高とすることができる。
 
 この改正は、平成25年1月1日以後に開始する個人事業者のその年又は法人のその事業年度について適用する。(附則第22条関係)
 
 ② 課税売上割合が95%以上の場合に課税仕入れ等の税額の全額を仕入税額控除する制度については、その課税期間の課税売上高が5億円(その課税期間が1年に満たない場合には年換算)を超える事業者には適用しないこととする。(消費税法第30条関係)
 この改正は、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用する。(附則第22条関係)
 
 ③ 故意の申告書不提出によるほ脱犯の創設
  
  確定申告書をその提出期限までに提出しないことにより消費税を免れた者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとする。(消費税法第64条関係)

 
5 寄付金制度の拡充
 
 認定非営利活動法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除の創設。(租税特別措置法第41条の18の2、第41条の18の3関係)
  
 ① 個人が認定特定非営利活動法人に対して支出したその認定特定非営利活動法人が行う特定非営利活動に係る事業に関連する寄附に係る支出金については、その年中に支出したその特定非営利活動に関する寄附金の額の合計額(その合計額が、その個人のその年分の総所得金額等の100分の40に相当する金額を超える場合には、その100分の40に相当する金額)が2,000円を超える場合には、その年分の所得税の額から、その超える金額の100分の40に相当する金額を控除する。この場合において、その控除する金額が、その個人のその年分の所得税の額の100分の25に相当する金額を超えるときは、その控除する金額は、その100分の25に相当する金額を限度とする。
 
 ② 個人が支出した特定寄附金のうち、次に掲げる法人(その運営組織及び事業活動が適正であること並びに市民から支援を受けていることにつき一定の要件を満たすものに限る。)に対するもの(以下「税額控除対象寄附金」という。)については、その年中に支出した税額控除対象寄附金の額の合計額(その合計額が、その個人のその年分の総所得金額等の100分の40に相当する金額を超える場合には、その100分の40に相当する金額)が2,000円を超える場合には、その年分の所得税の額から、その超える金額の100分の40に相当する金額を控除する。この場合において、その控除する金額が、その個人のその年分の所得税の額の100分の25に相当する金額を超えるときは、その控除する金額は、その100分の25に相当する金額を限度とする。
  イ 公益社団法人及び公益財団法人
  ロ 学校法人
  ハ 社会福祉法人
  ニ 更生保護法人
 
 
6 雇用促進税制等の拡充
 
 雇用者の数が増加した場合の特別税額控除制度の創設
 
 青色申告書を提出する事業者で当期及び前期において離職者がいないことにつき証明がされたものが、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度のうち、基準雇用者数が5人以上(中小企業者等については、2人以上)及び基準雇用者割合が100分の10以上であることにつき証明がされ、かつ、給与等支給額が比較給与等支給額以上である事業年度において一定の事業を行っている場合には、20万円に基準雇用者数を乗じて計算した金額の特別税額控除ができることとする。ただし、当期の税額の100分の10(中小企業者等については、100分の20)相当額を限度とする。(租税特別措置法第10条の6、第42条の12、第68条の15の2関係)
 
 
7 環境関連投資促進税制の創設
 
 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は特別税額控除制度の創設
 
 青色申告書を提出する事業者が、公布の日から平成26年3月31日までの間に、エネルギー環境負荷低減推進設備等の取得等をして、その取得等の日から1年以内に事業の用に供した場合には、そのエネルギー環境負荷低減推進設備等の取得価額の100分の30相当額の特別償却(中小企業者等については、100分の7相当額の特別税額控除との選択適用)ができることとする。ただし、特別税額控除額については当期の税額の100分の20相当額を限度とし、控除限度超過額については1年間の繰越しができることとする。(租税特別措置法第10条の2の3、第42条の5の2、第68条の10の2関係)
 
 
8 その他
  
 期限切れ租税特別措置の延長等(つなぎ法案により6月末日まで延長されたもの)。
 主な項目は以下の通りです。
 
 ① 中小企業に対する法人税の軽減税率の特例(所得金額が年800万円以下の部分の税率を22%から18%に軽減)
 
 ② 登録免許税における、住宅用家屋の所有権の保存登記・移転登記の税率の軽減、住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記の税率の軽減
 
 ③ 印紙税における、不動産の譲渡に関する契約書・一定の建設工事の請負に関する契約書のうち記載金額が1,000万円超の契約書印紙税額の軽減
 
 
 
 以上のうち、実務的に注意を要するのは消費税の改正でしょう。「免税事業者の判定要件」の変更と課税売上高5億円超の事業者の「課税売上割合95%以上の場合の仕入税額控除の特例」廃止でしょう。納税者として事前に十分に理解しておくことが必要です。
  
 また、節税に積極的に利用したいものに、寄付金制度の拡充と雇用促進税制等の拡充があります。震災復旧やNPOへの支援、人材の確保手段として、活用しましょう。
 
 
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