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就業規則の『勘所』8 残業問題 ・ 遅い人ほど、よく残る。

こんにちは。特定社会保険労務士の田中です。

就業規則の規定ひとつで、会社が損害を受けることもあります。
この「就業規則の勘所」では、良く見られる「就業規則の落とし穴」をご紹介します。
ぜひ、自社の就業規則をご確認ください。

【 トラブル発生! 】
 アメリカからの雑貨・古着を輸入・卸売するA社では、営業担当が5人いる。
そのうちの1人であるXは中途入社3年の30代後半で、年齢からいえば中堅社員であるが、
仕事上での細かな事務ミスが多く、また、顧客とのやり取りも手際の悪さから必要以上に
時間がかかったり、仕事の二度手間などが発生している。
 そのため、残業時間も月に40~50時間あり、他の営業担当者の2倍以上になっている。
A社では、残業手当は全額支払っているので、その結果として、Xは、他の営業担当者より
基本給が低いにもかかわらず、残業手当を含めた給与総額が高くなっている。

 そのことを勘付いた他の営業から、Xの仕事の進め方、特に残業代の多さについて、
A社の総務担当にクレームとしてあがってきた。


【 ポイント 】
「仕事が遅い人ほど残業が多くなり、残業代をたくさんもらっている。」
「仕事にミスが多い人ほど、自分の仕事のやり直しで残業代をたくさんもらっている。」
という悩みは、どの会社にもあります。

 現在の労働基準法は、賃金は「仕事量」つまり、「労働時間」に対して支払うという
前提になっています。もちろん、裁量労働やみなし労働などの制度はありますので、
これらの制度を導入することで、ある程度の解決はできます。
しかし、それらの制度が適用できない職種の場合は、「残業問題」は解決しません。

 経営者から「労働基準法が時代に合わない事が問題だ。」という声をよく聞きます。
言いたいことは分かります。しかし、どのような法律でも現実に存在している以上、
経営活動においては、それを遵守することが大前提となります。

 本ケースの場合でも、単純に営業Xの残業時間に上限を設けたり、
形式的に「課長」などの役職をつけて管理職にするなどの対処方法では何の解決にもなりません。

 まずは、Xの仕事の進め方を精査する必要があるでしょう。
営業担当なので、外出も含め、仕事の進め方は本人に相当部分が任されていることと推察できます。
 一度、Xの仕事が効率的に行われているか、一定期間(1ヶ月ほど)、1日の労働時間
どのように使っているか、毎日細かく書き出させた上、会社も一緒に、時間の使い方を分析して、
仕事の進め方を見直すことが有効だと考えます。

 また、残業は「労働時間」つまり「会社が業務の指示を出した時間」に支払われるのが原則です。
Xには残業に入る前に会社に「残業許可申請書」として、次の事項などを記入の上、
提出させてください。

・どのような仕事をするのか 
・残業対応をしなければいけない理由 
・何時間程度の残業時間が必要なのか 

 この内容を会社が承認できるならば、申請書に押印をするなどして、
「許可書」として本人に交付してください。
 逆に言えば、会社の許可が無い場合は、終業時刻以降に会社に残っていても仕事ではないので、
 残業手当の支払いは無い、という考え方になります。


 また、「残業許可申請書」を作成する過程では、
本人も「本当にこの仕事は残業をする必要はあるのか?」
「本当に2時間かかるのか?もっと早く処理する方法は無いのか」
「そもそも自分の仕事の進め方のどこに問題があるのか?」
などと、自分の仕事の進め方を考えるきっかけにもなります。

 なお、「会社の指示があれば残業時間」という原則ですが、
「指示」には「明示」と「黙示」があります。
「残業を承認の上、指示する。」という場合は明示の指示になりますが、
従業員が残業をしている場合に、黙認してそのままにしていると、
「黙示の指示」があったとして残業時間と認定されかねません。
 「黙示の指示」とならないように、会社としては、終業時刻になったら、
「退勤を促す」などの方法が必要になります。

 ここで、もう一つの問題があります。営業Xの残業時間は、40~50時間ということですが、
36協定で締結できる時間外労働の上限は、「1年360時間(つまり1ヶ月30時間)」
「1ヶ月45時間」ですので、ここにも抵触してしまいます。
 
 その観点からも「本当にXの時間外労働は必要なのか?」ということを本人にも良く考えさせて
残業時間の削減に取り組むべきでしょう。

【 アクション 】
1 就業規則に、「会社から仕事をする指示のあった時間だけが労働時間である。」
  という旨を明記する。
  より確実を期すためには、「時間外労働を行う必要がある場合は、会社に残業許可申請をした上
  で、承認され業務の指示を受けた時間帯に限って時間外労働を行うこと。」などと明記する。

2 残業をする従業員には、「残業許可申請書」を出させて、会社が承認して仕事の指示をした時間
  だけを残業時間とする。また、この手順を面倒だからと言って、現場レベルで省略するなど、
  形骸化させない。

3 「黙示の指示」とならないように、終業時刻になったら、従業員に退勤の指示を出すか、
  終業時刻で「終礼」などを行い、時間的なけじめをつけ、それ以降に残る場合は許可が必要、
  というルールを運用する。

4 定期的に残業時間と仕事内容を会社と社員で分析して、効率的な働き方ができるように努める。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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☆☆ 着眼大局着手小局 ☆☆
 会社を発展させるには、大きな改革が必要です。
しかし、まずは目の前の問題を地道に一つずつ片付けていくことも大切です。

貴社の就業規則のリスク診断をします!
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社会保険労務士 田中事務所  田中理文
自らが、従業員雇用する創業経営者だから出来るアドバイスをしています。
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☆☆☆☆☆ 『就業規則の勘所』シリーズ ☆☆☆☆☆
その1 『パートタイマーや契約社員用の就業規則も作りましょう』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-153786/

その2 『身元保証には期限が有ります。必要に応じて更新しましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-154137/

その3 『試用期間について、免除・短縮・延長の規定を検討しましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-154342/

その4 『柔軟な人員配置ができるように、配置転換を規定しましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-154622/

その5 『服務規律は、時流に合わせて、常に見直しましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-154902/

その6 『勤務時間中のネット閲覧・私用メールの対策をたてましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-155352

その7 『有給休暇の起算日を見直しましょう』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-162747

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