こんにちは、
産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
産業医として化学工場、営業事務所、IT企業で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
http://hatarakikatakaikaku.com/
今回は、働き方改革関連法案が無事に成立したことから、「働き方改革関連法案通過による高度プロフェッショナル制度と健康管理」についてコラムを作成しました。
労働衛生の取組を行うことで、
従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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働き方改革関連法案通過による高度プロフェッショナル制度と健康管理
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第196回国会で、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」が可決しました。
その中の目玉法案として、高度プロフェッショナル制度(※)の創設等が
労働基準法第41条の2に盛り込まれましたが、健康管理の視点で見てみたいと思います。
なお、以下URLに、「
安全配慮義務と
忠実義務について」示しています。併せてご覧下さい。
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-173253/
※ 高度プロフェッショナル制度は、正式名称を特定高度専門業務・成果型労働制といいます。この制度は高い能力を持った人を対象にして、成果型
報酬労働時間を
採用する制度です。つまり、高い専門的な能力を持った人には、仕事に携わった時間に対して
賃金を支払うのではなく、成果に対して
賃金を支払うという制度になります。
○「この章で定める規定を適応しない」について
労働基準法第41条の2の後段に、「この章で定める
労働時間、
休憩、
休日及び深夜の
割増賃金に関する規定は、対象
労働者については適応しない。」とあり、この章とは、「第4章
労働時間、
休憩及び
年次有給休暇」になります。
つまり、「第2章
労働契約」「第5章 安全及び衛生」「第8章 災害補償」等は引き続き適応されるということになります。
高度プロフェッショナル制度を利用される
事業者の方は、
安全配慮義務に基づく健康管理体制を適切に構築していただくことが重要です。
○
事業者の健康管理に不備があると高度プロフェッショナル制度が自動的に適応されなくなる。
労働基準法第41条の2のただし書きに、「ただし、第3号から第5号までに規定する措置のいずれかを
使用者が講じていない場合は、この限りではない。」とあり、それぞれ以下のことが定められており、一つでも不備がある場合は、高度プロフェッショナル制度が自動的に適応されなくなり、場合によっては過去の勤務評価に影響することもあります。。
・第3号は、
労働者の健康管理時間を把握する措置を講じること
・第4号は、一定の
休日について与えること
・第5号は、健康管理時間や
健康診断等について一定の措置を講じること
また、平成30年5月11日の厚生
労働委員会で加藤勝信厚生労働大臣が、「要件を満たさなければ除外はされないので、通常の
雇用関係とみなされて、それに適用する法律がきちんとなされていなければ。高度プロフェッショナル制度だったら除外はされているかもしれないけれども、通常だったら除外されていないわけですから、それを前提に法律が適用される。そして、その中で、基本的に、さかのぼっていくわけですから、そこできちんと
賃金等が支払われていなければ、これは当然、それとして
罰則等が適用される。」と発言し、
罰則等の適用まで言及しています。
○高度プロフェッショナル制度を利用する
労働者への医師面接
労働安全衛生法第66条の8の4に、「
事業者は
労働基準法第41条の2第1項の規定により労働する
労働者であって、その健康管理時間が当該
労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。」とあり、高度プロフェッショナル制度を利用する
従業員が一定の時間を超えて勤務した場合は、医師の面接を受けさせる義務が定められています。
○高度プロフェッショナル制度と健康管理
今回、法令の改正がありましたが、
労働安全衛生法に基づき適切な健康管理の取組がされていれば、法令の改正を原因として健康問題が増加するとは考えにくいです。
高度プロフェッショナル制度を利用される
事業者の方は、
労働安全衛生法に基づいた衛生管理体制の構築、健康障害を防止するための措置、快適な職場環境形成のための措置等を一層講じていただくことが重要です。
健康管理は1つの取組を行ったからといって、全ての健康障害を予防できるということはないです。複数の科学的エビデンスのある取組を重ね合わせ、健康障害の発生確率を下げるという視点が重要です。着実な健康管理体制の向上に努めてください。
こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
産業医として化学工場、営業事務所、IT企業で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
http://hatarakikatakaikaku.com/
今回は、働き方改革関連法案が無事に成立したことから、「働き方改革関連法案通過による高度プロフェッショナル制度と健康管理」についてコラムを作成しました。
労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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働き方改革関連法案通過による高度プロフェッショナル制度と健康管理
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第196回国会で、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」が可決しました。
その中の目玉法案として、高度プロフェッショナル制度(※)の創設等が労働基準法第41条の2に盛り込まれましたが、健康管理の視点で見てみたいと思います。
なお、以下URLに、「安全配慮義務と忠実義務について」示しています。併せてご覧下さい。
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-173253/
※ 高度プロフェッショナル制度は、正式名称を特定高度専門業務・成果型労働制といいます。この制度は高い能力を持った人を対象にして、成果型報酬労働時間を採用する制度です。つまり、高い専門的な能力を持った人には、仕事に携わった時間に対して賃金を支払うのではなく、成果に対して賃金を支払うという制度になります。
○「この章で定める規定を適応しない」について
労働基準法第41条の2の後段に、「この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適応しない。」とあり、この章とは、「第4章 労働時間、休憩及び年次有給休暇」になります。
つまり、「第2章 労働契約」「第5章 安全及び衛生」「第8章 災害補償」等は引き続き適応されるということになります。
高度プロフェッショナル制度を利用される事業者の方は、安全配慮義務に基づく健康管理体制を適切に構築していただくことが重要です。
○事業者の健康管理に不備があると高度プロフェッショナル制度が自動的に適応されなくなる。
労働基準法第41条の2のただし書きに、「ただし、第3号から第5号までに規定する措置のいずれかを使用者が講じていない場合は、この限りではない。」とあり、それぞれ以下のことが定められており、一つでも不備がある場合は、高度プロフェッショナル制度が自動的に適応されなくなり、場合によっては過去の勤務評価に影響することもあります。。
・第3号は、労働者の健康管理時間を把握する措置を講じること
・第4号は、一定の休日について与えること
・第5号は、健康管理時間や健康診断等について一定の措置を講じること
また、平成30年5月11日の厚生労働委員会で加藤勝信厚生労働大臣が、「要件を満たさなければ除外はされないので、通常の雇用関係とみなされて、それに適用する法律がきちんとなされていなければ。高度プロフェッショナル制度だったら除外はされているかもしれないけれども、通常だったら除外されていないわけですから、それを前提に法律が適用される。そして、その中で、基本的に、さかのぼっていくわけですから、そこできちんと賃金等が支払われていなければ、これは当然、それとして罰則等が適用される。」と発言し、罰則等の適用まで言及しています。
○高度プロフェッショナル制度を利用する労働者への医師面接
労働安全衛生法第66条の8の4に、「事業者は労働基準法第41条の2第1項の規定により労働する労働者であって、その健康管理時間が当該労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。」とあり、高度プロフェッショナル制度を利用する従業員が一定の時間を超えて勤務した場合は、医師の面接を受けさせる義務が定められています。
○高度プロフェッショナル制度と健康管理
今回、法令の改正がありましたが、労働安全衛生法に基づき適切な健康管理の取組がされていれば、法令の改正を原因として健康問題が増加するとは考えにくいです。
高度プロフェッショナル制度を利用される事業者の方は、労働安全衛生法に基づいた衛生管理体制の構築、健康障害を防止するための措置、快適な職場環境形成のための措置等を一層講じていただくことが重要です。
健康管理は1つの取組を行ったからといって、全ての健康障害を予防できるということはないです。複数の科学的エビデンスのある取組を重ね合わせ、健康障害の発生確率を下げるという視点が重要です。着実な健康管理体制の向上に努めてください。