相談の広場
はじめまして。
会社の就業規則が改定されることになり、改定案が開示されました。
その中で、以下文言が追加されていることが分かりました。
「退職願を提出した従業員は、退職日までの間に必要な業務の引継ぎを完了しなければならず、退職日からさかのぼる2週間は現実に就労しなければならない。ただし、業務の引継ぎが完了して会社が認めた場合はこの限りではない。これに反して引継ぎが完了せず、業務に支障をきたした場合、懲戒処分を行うことがある。」
1点質問ですが、2週間の現実労働の規定は、就業規則に記載することで効力を発するものでしょうか。
退職者が有休を申請した場合、会社は時期変更権を行使することが出来ますが、退職日以降には時期変更権を行使できないので、例えば、1ヶ月前に退職願を提出しようとしているとき、年休が30日あった場合に同時に両者を提出した場合には、時期変更権の行使は出来ないと思いますので、上記規定を設けたとしてもこの規定は無効なような気がします。
諸先輩方のアドバイスをいただきたく、よろしくお願いいたします。
スポンサーリンク
SHKWさん
むずかしいお話ですね。結局のところ、裁判所でなければ終局的な判断ができるとは思えないところです。
たしかに、時季変更権の観点からすれば、退職日を超えて時季変更することはできないとされています。
しかし、この規定がそれだけをもって無効と考えられません。この規定は、有給休暇をとることがどうかではなく、業務の引き継ぎが完了できなければ懲戒処分をすると言っています。
その部分が妥当かどうかを考えないで無効と断ずることはできないと考えますし、私はこちらの方が重要だと思います。
そこで、3つの観点を考えてみました。
①労働契約における信義則と債務不履行
会社が労働基準法による手続きと周知を徹底し、規定の内容が合理的であれば、その就業規則は会社と貴方との労働契約上の労働条件になります(労働契約法第10条)。
また、民法の第1条第2項や労働契約法第3条第4項にある信義誠実の原則(信義則)の視点で労働条件は解釈することが求められるでしょう。
そのような中で、「退職願を提出した従業員は、退職日までの間に必要な業務の引継ぎを完了しなければなら」ないと要請されているのに、それに応えないというのであれば義務の履行がなされていないので債務不履行であるし、信義則上問題があると考えます。
その意味で、「これに反して引継ぎが完了せず、業務に支障をきたした場合、懲戒処分を行うことがある」というくだりも意味があると考えます。
会社が秩序維持や継続的な業務運営を図るために何らかの処分を下そうとするのは合理性があると考えるからです。
ただし、その懲戒処分というのが具体的にどの程度のものなのか、どのように処分を下すのかによっては、後述の②、③の論点に抵触するおそれがあります。
②年次有給休暇を取得した労働者に対する不利益取り扱い
労働基準法附則第136条には「有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならない」旨を定めています。
しかし、この解釈については、「(1)年休取得に対する不利益な取扱いは、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年休取得に対する事実上の抑止力の強弱などを考慮して、年休権の行使を抑制し、労基法が労働者に年休を保障した趣旨を実質的に失わせる場合には違法となる。(2)年休取得を抑制し、年休権保障を実質的に失わせるかは、取扱いの程度による」ものとされています。
※労働政策研究・研修機構 個別労働関係紛争判例集 4.労働条件(32)【年次有給休暇】年休の取得と不利益な取扱い
http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/032.htm
よって、懲戒処分の内容・程度がどんなものかが重要になるのではないでしょうか。
なお、もともとの年次有給休暇の趣旨を考えると、退職直前にまとめてとることが好ましいとは思えません。その意味で、退職直前に有給休暇をとることだけに制限がかかることが不利益な取扱いといえるのかは、他の方の意見をお聞きしたいです。
③労働契約法での懲戒ができる場合
会社は「懲戒処分」するというのであれば、労働契約法第15条の適用も考えられるでしょう。
条文としては「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」というものですが、客観的に合理的な理由のハードルは超えられても、社会通念上相当であると認められるかどうかは懲戒処分の内容・程度が大きく関係するでしょう。
冒頭にいったように裁判所でなければ終局的な判断ができるとは思えないところですが、労働者の立場に立てば、②や③の観点から防御していくことになると考えます。
こんにちは
横から失礼します
別の方がおっしゃっているように、これだけで、この規定が
無効とはいえないのではないでしょうか?
こんな、規定を作っても、法律的には無駄なことだというこ
とがおっしゃりたいのか、これは、会社の職権濫用だという
ことをおっしゃりたいのか・・・・
懲戒処分の内容が分からないので、妥当か同化については
いえませんが、この文面からは、無効に該当するような
文面とはいえないと思います。
極端な懲戒処分であれば、それは、労働基準監督署において
認められないことになるでしょう。
退職をする前に、業務の引継ぎを行ってから退職するのは、
会社としての暗黙のルールではないかと思います。
おそらく、退職届を出してから、2週間あれば退職すること
ができるということを言いたいのでしょうが、それは、被雇
用者側の一方的な言い分のような気がします。
やはり、しっかりと業務引継ぎをするためのルールは必要
だと思いますし、それに伴う、懲戒処分の度合いをどの程度
にするのかが問題だと思います。
それができなければ、何でもかんでも、労働者保護という
状況になってしまい、経営側は、雇用すらできないような
状況に陥りかねません。
いずれにしても、労使がしっかりと話し合う問題ではないで
しょうか。
> SHKWさん
>
> むずかしいお話ですね。結局のところ、裁判所でなければ終局的な判断ができるとは思えないところです。
>
> たしかに、時季変更権の観点からすれば、退職日を超えて時季変更することはできないとされています。
> しかし、この規定がそれだけをもって無効と考えられません。この規定は、有給休暇をとることがどうかではなく、業務の引き継ぎが完了できなければ懲戒処分をすると言っています。
> その部分が妥当かどうかを考えないで無効と断ずることはできないと考えますし、私はこちらの方が重要だと思います。
>
> そこで、3つの観点を考えてみました。
>
> ①労働契約における信義則と債務不履行
> 会社が労働基準法による手続きと周知を徹底し、規定の内容が合理的であれば、その就業規則は会社と貴方との労働契約上の労働条件になります(労働契約法第10条)。
>
> また、民法の第1条第2項や労働契約法第3条第4項にある信義誠実の原則(信義則)の視点で労働条件は解釈することが求められるでしょう。
>
> そのような中で、「退職願を提出した従業員は、退職日までの間に必要な業務の引継ぎを完了しなければなら」ないと要請されているのに、それに応えないというのであれば義務の履行がなされていないので債務不履行であるし、信義則上問題があると考えます。
>
> その意味で、「これに反して引継ぎが完了せず、業務に支障をきたした場合、懲戒処分を行うことがある」というくだりも意味があると考えます。
> 会社が秩序維持や継続的な業務運営を図るために何らかの処分を下そうとするのは合理性があると考えるからです。
>
> ただし、その懲戒処分というのが具体的にどの程度のものなのか、どのように処分を下すのかによっては、後述の②、③の論点に抵触するおそれがあります。
>
>
> ②年次有給休暇を取得した労働者に対する不利益取り扱い
> 労働基準法附則第136条には「有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならない」旨を定めています。
>
> しかし、この解釈については、「(1)年休取得に対する不利益な取扱いは、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年休取得に対する事実上の抑止力の強弱などを考慮して、年休権の行使を抑制し、労基法が労働者に年休を保障した趣旨を実質的に失わせる場合には違法となる。(2)年休取得を抑制し、年休権保障を実質的に失わせるかは、取扱いの程度による」ものとされています。
> ※労働政策研究・研修機構 個別労働関係紛争判例集 4.労働条件(32)【年次有給休暇】年休の取得と不利益な取扱い
> http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/032.htm
>
> よって、懲戒処分の内容・程度がどんなものかが重要になるのではないでしょうか。
>
> なお、もともとの年次有給休暇の趣旨を考えると、退職直前にまとめてとることが好ましいとは思えません。その意味で、退職直前に有給休暇をとることだけに制限がかかることが不利益な取扱いといえるのかは、他の方の意見をお聞きしたいです。
>
>
> ③労働契約法での懲戒ができる場合
> 会社は「懲戒処分」するというのであれば、労働契約法第15条の適用も考えられるでしょう。
> 条文としては「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」というものですが、客観的に合理的な理由のハードルは超えられても、社会通念上相当であると認められるかどうかは懲戒処分の内容・程度が大きく関係するでしょう。
>
>
> 冒頭にいったように裁判所でなければ終局的な判断ができるとは思えないところですが、労働者の立場に立てば、②や③の観点から防御していくことになると考えます。
どのカテゴリーに投稿しますか?
選択してください
1~3
(3件中)
お知らせ
2024.4.22
2023.11.1
2023.9.1
スポンサーリンク
スポンサーリンク
[2022.7.24]
[2019.11.12]
[2018.10.10]