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内定についての考察

平成20年12月15日 第63号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1.内定についての考察
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1.内定についての考察

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<1>はじめに

(1)はじめに

昨今の経済情勢を反映して内定の取り消しについて話題になっている。
今回は内定の法的な性質について取り上げたいと思う。

(2)内定とは

内定とは、一定期間後に就労することを約束する契約である。
学生の場合には、この一定期間が長い為に、内定後の経済環境の変動により、
内定の取り消しというリスクが内在している。

内定の法的性質を検討する意義は、この内定取り消しの場合について、どの様
に考えていくのかという問題にある。

<2>内定の法的性質

(1)期待権の侵害、債務履行としての内定取り消し

内定の取り消しについて、内定がどの様な法律的意味を持つのかを検討しなけ
ればならない。
最初に提唱されたのは、採用内定自体が、労働契約を締結する一連の流れとし
て考える締結課程説である。
この締結課程説では、内定の取り消しについては期待権の侵害または信頼利益
の侵害として損害賠償責任を生じさせるのみであった。
また、採用内定は、卒業等の一定の条件を満たすことにより労働契約を開始す
る、いわば労働契約の予約であり、内定取り消しはこの予約されていた労働契
約の履行が出来なくなったという債務履行の問題として損害賠償責任を生じ
させるという考え方もあった。
しかし、これでは内定者の保護に欠ける面があり、内定という事実に対し、何
らかの契約を発生させているという考え方をする必要性が生じた。

(2)始期付解約権留保付労働契約成立説の確立

この学説は内定を以下のように考える。
内定通知により通常の労働契約が成立し、卒業できない事等が解約の約定とな
っているだけで、内定取り消しには労働契約上の地位を求めることが出来ると
いうものである。
この学説によれば、採用内定の取り消しとはすでに締結された労働契約の取り
消しということになり、客観的合理的な理由が存在し、社会通念上相当として
是認されるような取り消しではない限り、内定取り消しは無効となり、内定者
は卒業等一定の条件を満たせば労働者としての地位を確認できることとなった。

(3)始期付解約権留保付労働契約成立説の判例の検討

大日本印刷事件(最二小昭54.7.20)では、「採用内定の法的性質を判
断するに当たっては、当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検
討する必要がある」としながらも、「会社からの採用内定通知は、募集への応
募に対する承諾であって、内定者の本件誓約書の提出と相まって、これにより、
会社と内定者の間に、内定者の就労の始期を昭和44年大学卒業直後とし、そ
れまでの間、誓約書記載の5項目の採用内定取り消し事由に基づく解約権を留
保した労働契約が成立した」としている。

また、電電公社近畿電通局事件(最二小昭55.5.30)では、「内定者が
公社からの社員公募に応募したのは、労働契約の申し込みであり、これに対す
る公社からの採用通知は、申し込みに対する承諾であって、これにより内定者
と公社の間に、いわゆる採用内定の一様態として、労働契約の効力発生の始期
採用通知に明示された昭和45年4月1日とする労働契約が成立したと解す
るのが相当である」としている。
この様に最高裁での判決を通じて、特別の事情がない限り採用内定により労働
契約が成立したとの立場が確立されたのである。

<3>内定取り消し

(1)内定者に就業規則の適用はあるか

内定の取り消しについては様々ある。
昨今の経済環境から経済状況の悪化による内定の取り消し等である。

内定の取り消しについて検討をしてみたい。

まず内定者に就業規則の適用はあるかという問題である。

この点については前掲の電電公社近畿電通局事件において、就業規則の適用は
ないと判断している。
よって病気休職等の理由により休職という概念は内定者に適用する必要がない
ということがある。

留年等により卒業できなかった事と同様に、傷病により就労が困難となった場
合には内定の取り消し事由になるということである。
内定時に取り交わす誓約書に記載が無くても、内定の取り消し事由になるとい
う考え方もあるが、しっかりと記載するようにすることが望ましい。

(2)労働基準法等の適用は

解雇権乱用法理が内定者に適用されるとの観点から法令についても同様に準用
されるとの立場である。
よって、思想、信条により内定を取り消す場合には労働基準法3条が準用され、
労働組合活動を理由とした内定の取り消しには労働組合法7条が準用される。

よって思想信条や労働組合活動等を理由とした内定の取り消しは許されていな
い。

(3)内定時に判明していなかった事実による内定取り消し

これについては、まず前掲大日本印刷事件、森尾電機事件(東京地判昭54.
11.30)において「一般的には客観的で合理的な解約理由であるものも、
内定時にすでに明らかであり、使用者がこれを知った上で内定したときは解約
理由とはいえない」とされているが、これは判断を裁判所に求めるまでもなく
当然といえるであろう。

問題は事後に発覚した場合である。
これは経歴詐称や虚偽の事実を申告した場合には、その経歴や事実が採用にど
れだけ影響を与えたかを検討して結論を出す。
また、過去の非違行為についても、採用後に発覚した場合と同様である。

この他、経済環境の悪化による内定取り消しは整理解雇の4要素を検討するこ
ととなり、非違行為についてもその行為の重大性を検討することとなる。

解雇権乱用法理が準用されるわけであるから、内定取り消し事由についての考
え方は在職中と基本的な枠組みは変わらないと考えて間違いない。

<4>解雇予告

労働基準法第20条の解雇予告は内定者に準用されるか。
前で、労働基準法第3条や労働組合法第7条が内定者にも準用されると述べた。
しかし一方で準用されないと考えるケースもある。
東京大学労働法研究会編「注釈労働基準法」では、「内定の取り消しは既に成
立した労働契約使用者の一方的意志により解約する行為という意味では、解
雇の意思表示に他ならない」としながらも、「内定取り消しの場合は、現実の
就労を開始していないのであるから、労働者の離職という事態はあり得ない。
労基法にいう解雇の意義が、上記のように労働者を現実に離職させることを意
味する以上、採用内定の取り消しについては、労働基準法の解雇に関する規定
は適用されず、産前産後休業およびその後30日の解雇禁止(19条)や解雇
予告(20条)の規定の適用はないものである。」(上巻319頁より引用)
とされている。

また、試用期間中の労働者に対して14日未満であれば解雇予告は必要がない
としている以上、試用期間労働者とのバランスを考慮すると必要がないと判
断することが妥当であろう。

<5>内内定

(1)形式的な内内定

内内定とは何であろうか。
法律的には「内定を受けるであろうと思っても当然の行為を企業が行った場合」
といえる。
企業が休職活動を行っている労働者に対して「内内定」を通知したといっても、
それが一定の期限が到来したら、若しくは一定の条件を満たせば就労させると
いう約束をした場合には実質的には内定である。
就職協定という紳士協定により苦肉の策として「内内定」という言葉を使用し
ているにすぎない。
これは「10月1日に内定をする約束」であり、実質的に内定である。
よって内内定とは文言のみの問題である。

(2)実質的な内内定

しかし内内定という法的な状態は存在する。
これは「契約締結上の過失」といわれる状態である。
形式上にはまだ契約は成立していないが、契約締結課程上で一方の当事者に信
義則に反するような行為があり相手方が損害を蒙った場合、契約が締結されて
いなくても一種の契約責任を認める理論である。
例えば、住宅を購入するような言動を行い、その住宅会社が他の購入希望者を
断っていたが、購入をしなかったというようなケースである。
分かりやすくいうと、思わせぶりな態度をした結果、相手方に機会損失を与え
たという場合である。
この場合には賠償請求が出来る。
内内定とは、面接時に相手方が「ほぼ内定は間違いがない」と勘違いしてもや
むを得ない態度を面接者が行った場合にはこの契約締結上の過失により機会損
失の賠償請求が出来る。

<6>まとめ

内定という問題についてはあまり法的な検討が企業内部で行われていない。
一度内定についてしっかりと検討することが非常に重要であると考える。

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編集責任者 特定社会保険労務士 山本 法史
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