相談の広場
弊社では基本的に通常時間外勤務、深夜勤務、休日出勤は事前に届出の書面を要求しています。通常時間外勤務は仕事の勢いということもあり、実際には全く提出されていません。このことは、目をつぶっています。しかし、深夜勤務は労基法通り管理職にもしっかりタイムカードによる記録で1分でも相当すれば支払いを行っています。それなのに、深夜勤務、休日出勤を事前届出をせず、勝手にやる者がいます。
届けを事前に出せと規程で明示しているにも拘わらず、行われた深夜勤務や休日出勤に対する支払いは拒否しても法には触れないでしょうか。
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労働基準法により賃金支払いの義務があるのは、労働時間に対してです。
そして、「労働時間とは、会社の指揮命令下にある時間、又は会社の明示・黙示の指示により業務に従事する時間である」とされていますから、
それに当てはまらない時間については、労働時間として取り扱う必要はありません。
したがって、帰宅命令を無視して残業しているような場合や、休日出勤を禁止しているのに勝手に休日出勤しているような場合は、
時間外手当の支払い義務はないと言えます。
(つまり、支払いを拒否しても法には触れません)
しかしながら、残業を行わなくては終わらないような量の仕事を与えていた場合や残業を行うことを黙認していたようなケースは、
上記でいう「黙示の指示」に当たると見なされ、時間外手当を支払わなければなりません。
これについては以下のような通達があります。
【参考】
「使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、使用者は労働基準法第37条に規定する割増賃金を支払わなければならない」(S25.9.14基収第2983号)
ご質問のようなケースでは、
「黙示の指示」に当たるかどうかが争点になります。
実際のところ、残業代の支払いについて争われた過去の判例でも、
支払いの義務があると見なされたケースと支払いの義務はないと見なされたケースがあり、
「黙示の指示には当たらず、残業代の支払い義務はない」とされたある判例では、
役職者から繰り返し残業禁止が命じられ、残務があるときは役職者に引き継ぐという具体的な対応まで命じ、徹底していたことが決め手となっています。
御社のように「時間外勤務、深夜勤務、休日出勤をする際は届出を行う」と規定があるというだけでは、
「黙示の指示に当たらない」と主張するには少々無理があるでしょう。
(規定があっても実際には機能していないと見なされる可能性大です)
深夜勤務や休日出勤に対する支払いを拒否するのであれば、
●届出のない深夜勤務や休日出勤を禁止する旨を周知徹底させる
●業務命令としてその都度上司から帰宅指示をさせる
●帰宅命令に反した場合は業務命令違反として処分する旨を周知させる
(業務命令違反に対する処分規定がないのであれば、就業規則等にそれも盛り込む)
などの対処が最低限必要になると思います。
また、残業については目をつぶっているとのことですが、
同じように届出を行うものと規定しているにもかかわらず残業は黙認というのでは、
結局深夜勤務や休日出勤についてもなし崩しになってしまいやすいでしょうから、
残業についても同様にきっちりした対応をされたほうが望ましいのではないかと思います。
大変詳しく解説を頂戴しありがとうございました。深夜労働、休日労働についてアドバイスを元に対策を講じて生きたいと考えています。
ところで、通常の残業についての管理について下記追記させていただきます。弊社ではタイムカードを導入していて記録している他、フレックスタイム制度も採用しています。所定の始業時間を9時とし、終業は5時半の7.5時間/日の労働時間ですが、フレックスタイムでコアタイムを9時半から3時までとしています。そして、1ヶ月の所定労働時間をオーバーした分を残業としています。午前・午後の半休も採用しており、半休の場合は有給休暇から半日削る代わり、1回当たり3時間45分の労働時間をその月の総労働時間に組み入れるように計算しています。このような状況であるため、人により、また日により、通常残業がその日はいったい何時からになるかは特定できません。アドバイスにあった、通常残業についても管理をすることの必要性は理解しながらも実際の運用では頭がいたいところです。
何か、ヒントになることがありましたら、アドバイスお願いいたします。
フレックスタイム制の場合、
時間外労働であるかどうかの判断は、1日単位ではなく、精算単位期間で判断しますから、
“その日の残業時間”という概念自体がないんですよ。
たとえば、精算期間が1ヶ月で所定労働時間が160時間の場合、
たとえ9時間労働した日があったとしても、労働時間の合計が160時間を超えていなければ、それは時間外労働には当たりません。
(つまり、御社のように1ヶ月の所定労働時間をオーバーした分を残業とするのは正しい処理です)
したがって、御社で時間外労働の届出を行う規定があったとしても、
フレックスタイム制の方については、毎日の届出は必要なく、160時間を超えた場合に届出の必要がある、
ということになるかと思います。
ただ、それだと月の前半で160時間を超えてしまった、というような状況もありえますよね。
だからといって、じゃあその後は休みというわけにもいかず、実質的に時間外労働が野放しということになってしまいます。
それを改善する方法の1つとしては、フレキシブルタイムを定めることです。
フレキシブルタイムとは、出社できる時間、退社できる時間として、コアタイムの前後に設けることができるものです。
御社の規定ではコアタイムが9時半から15時とのことですので、
たとえば、フレキシブルタイムを8時半から9時半、15時から18時半というような設定にすると、
該当者は8時半から9時半の好きな時間に出社し、
15時から18時半の好きな時間に退社できることになります。
逆を言えば、それ以外の時間の出社や退社はできないわけですね。
(フレキシブルタイムの設定は、コアタイムの設定と同様、労使協定でその開始及び終了時刻を定めることが必要です)
こうしたうえで、フレキシブルタイムおよびコアタイム以外の時間の勤務を原則禁止し、
18時半以降も勤務する場合は届出を行うこと、というような規定を設けて管理するわけです。
もちろん、このような場合でも、8時半に出社して18時半まで労働したりすれば、御社の所定労働時間である7.5時間は超えることになりますが、
フレキシブルタイムを設けることによって、帰宅命令を出す明確な基準(上記の例で言うと18時半)ができることになりますから、
無駄な残業時間を減らし、適正な労働時間管理を行うという点では有効かと思います。
また、届出があった場合の承認については、ほんとうにそれが必要なものなのかどうか、
承認する上司がしっかり確認することも必要です。
届出さえあれば承認するというような適当な処理では、せっかく上記のような規定を設けても無意味なものになってしまいますので。
そういう意味では、上司側の意識改革の徹底も重要事項と言えますね。
【参考】厚生労働省ホームページ内
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/flextime/
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