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損害賠償と雇用契約

━━☆━━━━━━━━━━━━━損害賠償雇用契約━━━━━━━━━━━━━━━━━
         
┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏ C O N T E N T S┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏
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┏┏    ◇ 従業員に賠償を求める前に
┏┏    ◇ 業務上のミスと従業員の処分    
┏┏    ◇ 現実には総合的に判断する
┏┏    ◇ 全額を負担させるのは適当でない
┏┏    ◇ 裁判例 
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=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=                従業員に賠償を求める前に
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労働過程において通常発生することが予想されるミスによる損害について損害賠償従業員に求めることは、難しいと考えられます。
なぜなら、社会生活において利益を収める者(=会社)はその収益活動から生ずる損害につい
ては責任を負うのが公平ですし(報償責任)、また、会社としては任意保険をかけるなどして
その損害を分散できるからです。

さらに業務命令自体は会社が決定しているのですから、そこから発生すると予想されるミスに
ついては、そのリスクを会社が負担するのが公平だといえます。

会社があらゆる手だてを講じたにもかかわらずミスが起こったとしても、報償責任はなお会社
に残っていますので、損害の全額賠償を求めることはできないと解されています(ただし、求
償範囲は広くなる)。

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              業務上のミスと従業員の処分
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使用者従業員に対し損害賠償を請求すること自体は、民法415条または709条に基づき差し支
えありません。
損害賠償立証責任は、債務者側にあります。消滅時効は10年です(民法167条1項)

「故意又は過失によって会社に損害を及ぼした場合には、懲戒されることによって損害を免れ
ることはできない」と就業規則に定めている場合があります。
そもそも懲戒処分損害賠償は法的には別の次元の問題ですから、このような規定を設けるこ
ともできます。
故意に損害を発生させた場合や犯罪とみなされる場合には、賠償額が制限されることはありま
せん。

通常の労働過程において労働者がミスを犯し、会社に損害が生じた場合に、会社が労働者に取
り得る措置としては、以下のものが考えられます。
軽微なミスの場合、会社は始末書の提出等、就業規則に基づいて相応する処分をすることがで
きます。
 ・懲戒処分
 ・成績評価
 ・人事上の措置
 ・解雇
 ・損害賠償請求
軽微なミスの場合、会社は始末書の提出等、就業規則に基づいて相応する処分をすることがで
きます。
中程度のミスの場合は、懲戒処分をすると同時に、成績評価などに反映させることは可能でし
ょう。
さらにそのミスが労働能力や適格性の欠如によるものである場合には、普通解雇や雇止め(雇
契約の更新拒否)という措置も講ずることが可能です。

ただし、不利益が大きいため、そのミスが処分に相当するものかどうか、会社としても安全対
策や教育指導をしてきたのか、十分に考慮してから決定すべきだと考えられます。
普通解雇に相当するような理由がある場合にも、労働者に円満に退職してもらうよう退職勧奨
を行う等、話し合いの機会を持つことも検討すべきでしょう。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=                現実には総合的に判断する
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ただし、実際に従業員に賠償責任があるかどうかは、
 1.事業の性格
 2.規模
 3.施設の状況
 4.従業員の業務内容
 5.労働条件
 6.勤務態度
 7.加害行為の予防ないし損失の分散についての使用者の配慮
等によって、判断されることになります。

請求できる賠償額もおのずと限界があります。
労働者損害賠償を義務を負うか否かについては、以下のような尺度で判断されます。
(1)労働過程において通常求められる注意義務を尽くしている場合には、損害賠償は生じな
  い(損害賠償の基礎となる「過失」がないため)

(2)些細な不注意(軽過失)により損害が発生したとしても、そのような損害の発生が日常
  的に(一定確立で)発生するような性質のものである場合には、損害の発生はいわば労働
  過程に内在するものとして、損害賠償義務は発生しないと考えるべき

(3)労働者に重大な過失や故意がある場合には、損害賠償義務は免れない

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=              全額を負担させるのは適当でない
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学説では、‘従業員に賠償を求めることについては、否定・制限すべき’だというものが有力
です。
その背景には、
事故の危険性を内在する企業活動によって、企業は収益を上げているのだから、損失もある程
度企業が負担すべきである、
労働条件(過労など)や会社の設備の不備などが事故の原因になっている場合がある、
という考え方があります。

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     裁判例:「髪短くされ、売り上げ落ちた」 美容室に賠償命令(東京地裁)
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東京・歌舞伎町のキャバクラに勤める20代の女性が「長く美しい髪がアピールポイントだった
のに短くカットされ、売り上げ成績が落ちた」として、美容室側に600万円の損害賠償を求め
た訴訟の判決で、「担当者が女性の希望について十分に確認しなかった」として約25万円の支
払いを命じた。

判決によると、女性は昨年4月、東京・渋谷の美容室で、女性雑誌に載っていた髪形を参考に
カットなどを依頼。
だが、頭頂部の髪が短くなり、想定していた髪形にならなかったため、途中で店を出た。

勤務先は歩合制で、髪の毛を切る前の3か月間は月平均で約157万円の給料を受け取っていた
が、4月~7月の平均月収は約74万円に下がった。このため、新しい髪形が売り上げ低下を招い
たとしていた。

裁判官は、今年に入って収入が約200万円に達した月もあることなどから「カットによって明
確に収入が減ったとは言えない」と指摘。
一方で「付け毛の使用を余儀なくされ、接客に自信がもてなくなった時期があった」などとし
慰謝料の支払いを命じた。
(asahi.com 2005.11.16)


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名無し

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