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【レジュメ編】 地方自治法(その3)

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-39 ★★★
           【レジュメ編】 地方自治法(その3)

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■■■ 地方自治法 ■■■
■■■ 地方自治法6団体の意見提出権 ■■■ 
■■■ 情報公開条例 ■■■ 
■■■ お願い ■■■
■■■ 編集後記 ■■■

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■■■ 地方自治法 ■■■
■■ 地方税
■ 憲法上の課税権
・憲法は、地方税については、租税条例主義を採用している。
 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有
 し、法律の範囲内で条例を制定することができる(94条)。
→ 「行政を執行する権能」に課税権も含まれると解されること、租税法律主義の眼目
  は「代表なくして課税なし」という課税権に対する民主的統制にあるから、住民代
  表からなる議会が制定した条例を根拠とする課税は許容されることが理由。

■ 地方税法(3条)
・地方団体(都道府県又は市町村のこと)は、その地方税の税目、課税客体、課税標
 準、税率その他賦課徴収について定をするには、当該地方団体の条例によらなければ
 ならない(1項)。
・地方団体は、この法律の定めるところによって、地方税を賦課徴収することができる
 (2項)。
→ 地方税法は、課税権の根拠を与える法律ではなく、地方税の枠組みを定めた枠組法
  ないし準則法であり、地方公共団体が定める地方税条例により住民の納税義務が具
  体化すると解される。

■ 地方税の種類
・普通税:その収入の使途を特定せず、一般経費に充てるために課される税。普通税の
 うち、地方税法により税目が法定されているものを法定普通税といい、それ以外のも
 ので地方団体が一定の手続、要件に従い課するものを法定外普通税という。
・目的税:特定の費用に充てるために課される税。目的税のうち、地方税法により税目
 が法定されているものを法定目的税といい、それ以外のもので地方団体が一定の手
 続、要件に従い課するものを法定外目的税という。
★ 法定外普通税と法定外目的税については、総務省のつぎの資料をご覧ください。
http://www.soumu.go.jp/czaisei/h_gai.html

・都道府県税:都道府県民税、事業税、地方消費税、不動産取得税、都道府県たばこ
 税、ゴルフ場利用税、自動車税、鉱区税、狩猟者登録税等
・市町村税:市町村民税、固定資産税、軽自動車税、市町村たばこ税、鉱産税、特別土
 地保有税等
★ 法定外税については、 http://www.soumu.go.jp/czaisei/czais.html から「4.
  資料一覧(1)地方税の概要」→「法定外税の概要(ア)法定外税の状況、(ウ)
  法定外税の概要」をご覧ください。

■ 法定外普通税
地方税法第二百五十九条 都道府県は、道府県法定外普通税の新設又は変更(道府県法
定外普通税の税率の引下げ、廃止その他の政令で定める変更を除く。次項及び次条第二
項において同じ。)をしようとする場合においては、あらかじめ、総務大臣に協議し、
その同意を得なければならない。
2 都道府県は、当該道府県の道府県法定外普通税の一の納税義務者(納税義務者とな
るべき者を含む。以下本項において同じ。)であつて当該納税義務者に対して課すべき
当該道府県法定外普通税の課税標準の合計が当該道府県法定外普通税の課税標準の合計
の十分の一を継続的に超えると見込まれる者として総務省令で定めるもの(以下本項に
おいて「特定納税義務者」という。)であるものがある場合において、当該道府県法定
外普通税の新設又は変更をする旨の条例を制定しようとするときは、当該道府県の議会
において、当該特定納税義務者の意見を聴くものとする。

第二百六十条 総務大臣は、前条の規定による協議の申出を受けた場合においては、そ
の旨を財務大臣に通知しなければならない。
2 財務大臣は、前項の通知を受けた場合において、その協議の申出に係る道府県法定
外普通税の新設又は変更について異議があるときは、総務大臣に対してその旨を申し出
ることができる。

第二百六十条の二 総務大臣は、第二百五十九条第一項の同意については、地方財政審
議会の意見を聴かなければならない。

第二百六十一条 総務大臣は、第二百五十九条第一項の規定による協議の申出を受けた
場合には、当該協議の申出に係る道府県法定外普通税について次に掲げる事由のいずれ
かがあると認める場合を除き、これに同意しなければならない。
一 国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ、住民の負担が著しく過重となる
こと。
二 地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること。
三 前二号に掲げるものを除くほか、国の経済施策に照らして適当でないこと。

・法定外普通税の例:石油価格調整税(沖縄県)、核燃料税(福井県、福島県、愛媛県
 等)、臨時特例企業税(神奈川県)、別荘等所有税(静岡県熱海市)等

■ 法定外目的税
・地方分権一括法による地方税法改正により、法定外目的税が認められた(地方税法4
 条6項、5条7項、731条1項、735条2項)
・法定外目的税の新設のためには、総務大臣に協議し、その同意を得なければならない
 (同731条2項)。総務大臣は財務大臣に協議の申し出を受けたことを通知する義務
 を負うこと、財務大臣は総務大臣に対し異議を申し出ることができること、および総
 務大臣が同意を拒否できる理由は、法定外普通税の場合と共通である(同732条、733
 条)。
・法定外目的税の例:産業廃棄物税(三重県、青森県等)、宿泊税(東京都)、環境未
 来税(北九州市)等

■ 標準税率・制限税率
・標準税率:地方公共団体が課税する場合に通常よるべき税率で、財政上の特別の必要
 があると認める場合には、これによることを要しない税率
→ 地方税の税率は固定制をとらず各地方公共団体が条例で上下できるよう標準税率制
  をとることが多いが、主要な地方税については、最高税率を法定することが少なく
  ない。この最高税率を制限税率という。
〔例〕固定資産税の標準税率は1.4%である(350条1項)。

■ 分担金、使用料、加入金、手数料
・地方自治法は、普通地方公共団体は、法律の定めるところにより、地方税を賦課徴収
 することができるとするほか(223条)、分担金(224条)、使用料(225条、226
 条)、加入金(226条)、手数料(227条)の徴収を認めている。

第二百二十三条 普通地方公共団体は、法律の定めるところにより、地方税を賦課徴収
することができる。

・分担金
第二百二十四条 普通地方公共団体は、政令で定める場合を除くほか、数人又は普通地
方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し、その必要な費用に充てるため、当該事
件により特に利益を受ける者から、その受益の限度において、分担金を徴収することが
できる。

・使用料
第二百二十五条 普通地方公共団体は、第二百三十八条の四第四項の規定による許可を
受けてする行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる。

・旧慣使用の使用料及び加入金
第二百二十六条 市町村は、第二百三十八条の六の規定による公有財産の使用につき使
用料を徴収することができるほか、同条第二項の規定により使用の許可を受けた者から
加入金を徴収することができる。

・手数料
第二百二十七条 普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体の事務で特定の者のため
にするものにつき、手数料を徴収することができる。

■■ 地方交付税
■ 意義
地方税とは異なり、地方公共団体固有の財源ではなく国が交付するものであるが、国
 庫補助負担金とは異なり使途が限定されていない財源(「税」という言葉がついてい
 るが、税金そのものではない。)。
・地方交付税法3条2項:国は、交付税の交付に当っては、地方自治の本旨を尊重し、
 条件をつけ、又はその使途を制限してはならない

★ 地方交付税制度の概要については http://www.soumu.go.jp/c-zaisei/gaiyo.html
  をご覧ください。

■ 目的(地方交付税法1条)
この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行す
る権能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定
を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資
するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。

■ 財源(6条1項)
所得税法人税及び酒税の収入額のそれぞれ百分の三十二、消費税の収入額の百分の二
十九・五並びにたばこ税の収入額の百分の二十五をもつて交付税とする。

■ 交付額(10条)
普通交付税は、毎年度、基準財政需要額が基準財政収入額をこえる地方団体に対して、
次項に定めるところにより交付する。
2  各地方団体に対して交付すべき普通交付税の額は、当該地方団体の基準財政需要
額が基準財政収入額をこえる額(以下本項中「財源不足額」という。)とする。ただ
し、各地方団体について算定した財源不足額の合算額が普通交付税の総額をこえる場合
においては、次の式により算定した額とする。
当該地方団体の財源不足額-当該地方団体の基準財政需要額×((財源不足額の合算額
-普通交付税の総額)÷基準財政需要額が基準財政収入額をこえる地方団体の基準財政
需要額の合算額)

・6条の3第2項:毎年度分として交付すべき普通交付税の総額が引き続き第十条第二
 項本文の規定によつて各地方団体について算定した額の合算額と著しく異なることと
 なつた場合においては、地方財政若しくは地方行政に係る制度の改正又は第六条第一
 項に定める率の変更を行うものとする。

■ 交付時期(16条)
(ア)地方交付税の交付時期は、地方交付税方で定められている(年6回)(1項)。
(イ)ただし、当該年度の国の予算の成立しないこと、国の予算の追加又は修正により
   交付税の総額に変更があつたこと、大規模な災害があつたこと等の事由により、
   前項の規定により難い場合における交付税の交付時期及び交付時期ごとに交付す
   べき額については、国の暫定予算の額及びその成立の状況、交付税の総額の変更
   の程度、前年度の交付税の額、大規模な災害による特別の財政需要の額等を参酌
   して、総務省令で定めるところにより、特例を設けることができる。
★ 平成18年7月豪雨に係る地方交付税(9月定例交付分)の繰上げ交付が行われて
  いる。詳しくは、総務省の報道資料
  http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060815_2.html をご覧ください。

■ 地方分権一括法による改正
・地方交付税の額の算定方法に関し、地方公共団体による総務大臣に対する意見申出制
 度が創設された(地方交付税法第17条の4第1項)。
総務大臣は、意見の申出を受けたときは、誠実に処理するとともに、その処理の結果
 を地方財政審議会に、地方交付税に関する事項を諮問する際に報告しなければならな
 い。

■ 地方交付税の功罪
・財政力の乏しい地方公共団体にも、一定の行政水準を維持することを可能にした。
・他方、何を基準財政需要額に算入するかについて、実際には国の政策的判断の余地が
 かなりあり、法律に従った施策の実施のために地方公共団体が行う課税免除、不均一
 課税措置による減収額の基準財政収入額からの控除、地方債の元利償還金の基準財政
 需要額への算入措置等により事実上補助金化し、国による地方公共団体の政策誘導の
 手段として用いられてきており、地方公共団体の自主性を損なってきた面がある。

・地方交付税法20条の2第1項:関係行政機関は、その所管に関係がある地方行政につ
 き、地方団体が法律又はこれに基く政令により義務づけられた規模と内容とを備える
 ことを怠つているために、その地方行政の水準を低下させていると認める場合におい
 ては、当該地方団体に対し、これを備えるべき旨の勧告をすることができる。
2  関係行政機関は、前項の勧告をしようとする場合においては、あらかじめ総務
臣に通知しなければならない。

■■ 地方譲与税
・地方公共団体の特別の行政需要を満たすために、国税として徴収した租税を地方公共
 団体に譲与するもの(こうした名目の地方税が課される訳ではない。)。
〔例〕地方道路譲与税、自動車重量譲与税、石油ガス譲与税等
★ このために、所得譲与税法、自動車重量譲与税法、航空機燃料譲与税法、石油ガス
  譲与税法等が定められている。

■■ 国庫補助負担金
国庫負担金と国庫補助金は、地方財政法上は明確に区別されているが、その交付手続
 については、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」において、「補助
 金等」として同一の手続規範に服している。
・国庫支出金=国庫負担金+国庫補助金+国庫委託金

■ 国庫負担
・国と地方公共団体の双方が利害関係を有する事務について、国が共同責任者として経
 費を分担するもの。例:義務教育職員の給与、生活保護等の普通国庫負担金、災害救
 助事業当の災害事業負担金等

国庫負担金の経費の種目、算定基準及び負担割合は、法律又は政令で定めなければな
 らない(地方財政法第11条)。
・もっぱら国の利害に関係ある事務を行うために要する経費(国会議員の選挙、外国人
 登録等)については、地方公共団体は負担する義務を負わない(同10条の4)。
→ この場合は、国庫委託金が支払われる。

・地方自治法232条2項:法律又はこれに基づく政令により普通地方公共団体に対し事務
 の処理を義務付ける場合においては、国は、そのために要する経費の財源につき必要
 な措置を講じなければならない。
・地方財政法第13条1項:地方公共団体又はその経費を地方公共団体が負担する国の機
 関が法律又は政令に基づいて新たな事務を行う義務を負う場合においては、国は、そ
 のために要する財源について必要な措置を講じなければならない。
→ これらの規定における「必要な措置」とは、国庫負担金に限られず、地方税財源の
  拡充、起債への同意、地方交付税の基準財政需要額への算入(地方財政法11条の
  2)等による措置も含まれると解される。

■ 国庫補助
・特定の施策を奨励するために交付される。:奨励的補助金(政策的補助金ともい
 う。)
・地方公共団体の財政上特別の必要があると認めるときに交付される。:財政補助

■地方公共団体の歳入構造
地方税収入は、平均すると、地方公共団体の全収入の約3分の1に留まる。
・財政支出の比率では国が約3分の1、地方公共団体が約3分の2であるにも関わら
 ず、地方公共団体の自主財源が乏しく、地方交付税や国庫補助負担金に依存しなけれ
 ば財政が成り立たない状態が一般化している。

■ 三位一体の改革
・平成15年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革する基本方針2003(いわゆ
 る骨太の方針第3弾)」において、地方が決定すべきことは地方が自ら決定するとい
 う地方自治の本来の姿の実現に向け、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含む
 税源配分の見直しに関する一体的な改革の方針が示された。
・具体的には
(1)国庫補助負担金については、平成18年度までに概ね4兆円程度を目途に廃止・縮減
   等の改革
(2)地方交付税については、その財源保障機能の全般を見直し、交付税総額を抑制
(3)廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で引き続き地方が主体となって実施する
   ものについては、国から地方に基幹税の充実を基本として税源移譲などを内容と
   している。

■ 財政支出に関する規律
・地方公共団体の財政支出についても、憲法89条(公金その他の公の財産は、宗教上の
 組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、
 教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない)
 の制約は当然に及ぶ。
・地方財政法4条1項:地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最
 小の限度をこえて、これを支出してはならない。
・地方自治法232条の2:法律又はこれに基づく政令により普通地方公共団体に対し事
 務の処理を義務付ける場合においては、国は、そのために要する経費の財源につき必
 要な措置を講じなければならない。

■■ 選挙権
日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する
普通地方公共団体の選挙に参与する権利を有する(11条)。

・憲法:公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である(15条1
 項)。

●● 最高裁判例「選挙人名簿不登録処分に対する異議の申出却下決定取消」(民集第
   49巻2号639頁)
【裁判要旨】
日本国民たる住民に限り地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有するものとした
地方自治法一一条、一八条、公職選挙法九条二項は、憲法一五条一項、九三条二項に違
反しない。
【理由】
我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体
と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に
密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもっ
て、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずること
は、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。しかしながら、右の
ような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような
措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。
★ 憲法の「国民」とは日本国民を指す。

■■ 直接請求
■ 条例の制定又は改廃の請求
日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する
普通地方公共団体の条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に
関するものを除く。)の制定又は改廃を請求する権利を有する(12条1項)。

(ア)普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者は、その総数の50分の
   1以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し、条
   例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除
   く。)の制定又は改廃の請求をすることができる。
(イ)請求があつたときは、当該普通地方公共団体の長は、直ちに請求の要旨を公表し
   なければならない。
(ウ)普通地方公共団体の長は、請求を受理した日から20日以内に議会を招集し、意見
   を附けてこれを議会に付議し、その結果を代表者に通知するとともに、これを公
   表しなければならない。なお、議会は、付議された事件の審議を行うに当たって
   は、代表者に意見を述べる機会を与えなければならない。
(エ)ただし、当該地方公共団体の区域内で衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体
   の議会の議員若しくは長の選挙が行なわれることとなるときは、政令で定める期
   間、当該選挙が行なわれる区域内においては請求のための署名を求めることがで
   きない(74条1項~6項)。

■ 事務監査請求
日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する
普通地方公共団体の事務の監査を請求する権利を有する(12条2項)。

(ア)選挙権を有する者は、その総数の50分の1以上の者の連署をもつて、その代表者
   から、普通地方公共団体の監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務の執行
   に関し、監査の請求をすることができる。
(イ)請求があつたときは、監査委員は、直ちに請求の要旨を公表しなければならな
   い。
(ウ)監査委員は、請求に係る事項につき監査し、監査の結果に関する報告を決定し、
   これを代表者に送付し、かつ、公表するとともに、当該普通地方公共団体の議会
   及び長並びに関係のある教育委員会、選挙管理委員会人事委員会若しくは公平
   委員会、公安委員会労働委員会、農業委員会その他法律に基づく委員会又は委
   員に提出しなければならない。この監査の結果に関する報告の決定は、監査委員
   の合議による。
(エ)ただし、当該地方公共団体の区域内で衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体
   の議会の議員若しくは長の選挙が行なわれることとなるときは、政令で定める期
   間、当該選挙が行なわれる区域内においては請求のための署名を求めることがで
   きない(75条1項~5項)。

■ 議会の解散請求
日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する
普通地方公共団体の議会の解散を請求する権利を有する(13条1項)。

(ア)選挙権を有する者は、その総数の三分の一(その総数が40万を超える場合には、
   その超える数に六分の一を乗じて得た数と40万に三分の一を乗じて得た数とを合
   算して得た数)以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体の
   選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の議会の解散の請求をすることが
   できる。
(イ)請求があつたときは、委員会は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない。
(ウ)請求があつたとき、委員会は、これを選挙人の投票に付さなければならない。
(エ)ただし、当該地方公共団体の区域内で衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体
   の議会の議員若しくは長の選挙が行なわれることとなるときは、政令で定める期
   間、当該選挙が行なわれる区域内においては請求のための署名を求めることがで
   きない(76条1項~4項)。
(オ)選挙管理委員会は、解散の投票の結果を、直ちに代表者及び当該普通地方公共団
   体の議会の議長に通知し、かつ、これを公表するとともに、都道府県知事または
   市町村長に報告しなければならない(77条)。
(カ)普通地方公共団体の議会は、解散の投票で過半数の同意があつたときは、解散す
   るものとする(78条)。
(キ)普通地方公共団体の議会の解散の請求は、その議会の議員の一般選挙のあつた日
   から1年間及び解散の投票のあつた日から1年間はできない(79条)。

■ 解職請求
日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する
普通地方公共団体の議会の議員、長、副知事若しくは助役、出納長若しくは収入役、選
挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請求する権利を有する(13
条2項)。

(1)議会の議員の解職
(ア)選挙権を有する者は、所属の選挙区におけるその総数の三分の一(その総数が40
   万を超える場合には、その超える数に六分の一を乗じて得た数と40万に三分の一
   を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつて、その代表者か
   ら、普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し、当該選挙区に属する普通地方公
   共団体の議会の議員の解職の請求をすることができる。なお、選挙区がないとき
   は、選挙権を有する者の総数の三分の一(その総数が40万を超える場合には、そ
   の超える数に六分の一を乗じて得た数と40万に三分の一を乗じて得た数とを合算
   して得た数)以上の者の連署をもつて、議員の解職の請求をすることができる。
(イ)請求があつたときは、委員会は、直ちに請求の要旨を関係区域内に公表しなけれ
   ばならない。
(ウ)請求があつたときは、委員会は、これを当該選挙区の選挙人の投票に付さなけれ
   ばならない。なお、選挙区がないときは、すべての選挙人の投票に付さなければ
   ならない。
(エ)ただし、当該地方公共団体の区域内で衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体
   の議会の議員若しくは長の選挙が行なわれることとなるときは、政令で定める期
   間、当該選挙が行なわれる区域内においては請求のための署名を求めることがで
   きない(80条1項~4項)。
(オ)普通地方公共団体の議会の議員の解職の請求は、その就職の日から1年間及び解
   職の投票の日から1年間はできない(84条)。
(カ)解職の投票で、過半数の同意があつたときは、その職を失う(83条)。

(2)長の解職請求
(ア)選挙権を有する者は、その総数の三分の一(その総数が40万を超える場合には、
   その超える数に六分の一を乗じて得た数と40万に三分の一を乗じて得た数とを合
   算して得た数)以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体の
   選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の長の解職の請求をすることがで
   きる。
(イ)請求があつたときは、委員会は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない。
(ウ)請求があつたとき、委員会は、これを選挙人の投票に付さなければならない。
(エ)ただし、当該地方公共団体の区域内で衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体
   の議会の議員若しくは長の選挙が行なわれることとなるときは、政令で定める期
   間、当該選挙が行なわれる区域内においては請求のための署名を求めることがで
   きない(81条1項、2項)。
(オ)普通地方公共団体の長の解職の請求は、その就職の日から1年間及び解職の投票
   の日から1年間はできない(84条)。
(カ)解職の投票で、過半数の同意があつたときは、その職を失う(83条)。

(3)副知事若しくは助役、出納長若しくは収入役、選挙管理委員若しくは監査委員又
   は公安委員会の委員の解職請求
(ア)選挙権を有する者は、その総数の三分の一(その総数が40万を超える場合には、
   その超える数に六分の一を乗じて得た数と40万に三分の一を乗じて得た数とを合
   算して得た数)以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体の
   長に対し、副知事若しくは助役、出納長若しくは収入役、選挙管理委員若しくは
   監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができる。
(イ)請求があつたときは、当該普通地方公共団体の長は、直ちに請求の要旨を公表し
   なければならない。
(ウ)請求があつたときは、当該普通地方公共団体の長は、これを議会に付議し、その
   結果を同項の代表者及び関係者に通知し、かつ、公表しなければならない。
(エ)ただし、当該地方公共団体の区域内で衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体
   の議会の議員若しくは長の選挙が行なわれることとなるときは、政令で定める期
   間、当該選挙が行なわれる区域内においては請求のための署名を求めることがで
   きない(86条1項~4項)。
(オ)副知事、助役、出納長、収入役の解職の請求は、その就職の日から1年間及び議
   会の議決の日から1年間はできない。選挙管理委員、監査委員、公安委員会の委
   員の解職の請求は、その就職の日から6箇月間及び議会の議決の日から6箇月間
   はできない(88条)。
(カ)当該普通地方公共団体の議会の議員の三分の二以上の者が出席し、その四分の三
   以上の者の同意があつたときは、その職を失う(87条1項)。

■ 住民監査請求(242条)
(ア)普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは
   委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支
   出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その
   他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測さ
   れる場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは
   徴収若しくは財産の管理を怠る事実があると認めるときは、これらを証する書面
   を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若
   しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によって当該普通地
   方公共団体の被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求する
   ことができる。
★ 住民監査請求は、「選挙権を有する者」ではなく、「住民」であればできる(国
  籍、自然人法人か、未成年者かどうか等を問わない。)。
★ 違法な場合のみならず、不当な場合の対象になる(住民訴訟は「違法」な場合の
  み)。

●● 最高裁判例「違法支出金補填」(民集第44巻4号719頁)
【裁判要旨】
住民監査請求は、その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を他の事項から区別
し、特定して認識できるように個別的、具体的に摘示し、また、右行為等が複数である
場合には、右行為等の性質目的等に照らしこれらを一体とみてその違法又は不当性を判
断するのを相当とする場合を除き、各行為等を他の行為等と区別し、特定して認識でき
るように個別的、具体的に摘示してしなければならない。

(イ)請求は、当該行為のあつた日又は終わった日から1年を経過したときは、これを
   することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

●● 最高裁判例「損害賠償代位請求事件」(民集第56巻6号1049頁)
【裁判要旨】
実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象としてされた住民監査請求において,監査委
員が当該怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等に
ついて検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であ
るか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,当該監査請求に地方自治
法242条2項の規定は適用されない。
【理由】
監査の対象事項のうち怠る事実についてはこのような期間制限は規定されておらず,住
民は怠る事実が現に存する限りいつでも監査請求をすることができるものと解される。
これは,本件規定が,継続的行為について,それが存続する限りは監査請求期間を制限
しないこととしているのと同様に,怠る事実が存在する限りはこれを制限しないことと
するものと解される。
★ 「怠る事実」(本条1項)に対する住民監査請求については、1年間の期間の制限
  は適用されない。

(ウ)請求があつた場合で、当該行為が違法であると思料するに足りる相当な理由があ
   り、当該行為により当該普通地方公共団体に生ずる回復の困難な損害を避けるた
   め緊急の必要があり、かつ、当該行為を停止することによって人の生命又は身体
   に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがな
   いと認めるときは、監査委員は、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関又
   は職員に対し、理由を付して手続が終了するまでの間当該行為を停止すべきこと
   を勧告することができる。この場合、監査委員は、当該勧告の内容を請求人に通
   知し、かつ、これを公表しなければならない。
(エ)請求があつた場合、監査委員は、監査を行い、請求に理由がないと認めるとき
   は、理由を付してその旨を書面により請求人に通知するとともに、これを公表
   し、請求に理由があると認めるときは、当該普通地方公共団体の議会、長その他
   の執行機関又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告すると
   ともに、当該勧告の内容を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならな
   い。この監査委員の監査及び勧告は、監査委員の合議により、請求があつた日か
   ら60日以内に行なわなければならない。
(オ)監査委員の勧告があつたときは、当該勧告を受けた議会、長その他の執行機関又
   は職員は、当該勧告に示された期間内に必要な措置を講ずるとともに、その旨を
   監査委員に通知しなければならない。この場合、監査委員は、当該通知に係る事
   項を請求人に通知し、かつ、公表しなければならない。

■ 住民訴訟
【1】住民訴訟(242条の2)
(ア)普通地方公共団体の住民は、住民監査請求をした場合で、監査委員の監査の結果
   若しくは勧告若しくは普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職
   員の措置に不服があるとき、又は監査委員が監査若しくは勧告を所定の期間内に
   行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が所定の規定に
   よる措置を講じないときは、裁判所に対し、監査請求に係る違法な行為又は怠る
   事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
(a)当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
(b)行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
(c)当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
(d)当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得
   還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める
   請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が賠償の命
   令の対象となる者である場合には、当該賠償の命令をすることを求める請求
★ 住民訴訟は民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)に属する。
★ 住民監査請求を経て行われるものであることから、住民訴訟の対象も財務会計行為
  に限られる。
★ 違法性は争えるが、不当性については、住民監査請求の場合と異なり、争うことが
  できない。これは、「住民監査請求をした場合」(1項)に限って住民訴訟が認め
  られるためである(住民監査請求前置主義による。)。

●● 最高裁判例「愛知県に代位して行う損害賠償」(民集第32巻2号485頁)
【理由】
地方自治法二四二条の二の定める住民訴訟は、普通地方公共団体の執行機関又は職員に
よる同法二四二条一項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実が究極的には当該地
方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであるところから、これを防止
するため、地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として、住民に対しその予防又は是
正を裁判所に請求する権能を与え、もつて地方財務行政の適正な運営を確保することを
目的としたものであつて、執行機関又は職員の右財務会計上の行為又は怠る事実の適否
ないしその是正の要否について地方公共団体の判断と住民の判断とが相反し対立する場
合に、住民が自らの手により違法の防止又は是正をはかることができる点に、制度の本
来の意義がある。

●● 最高裁判例「織田が浜埋立工事差止訴訟」(民集第47巻7号4755頁)
【裁判要旨】
地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく差止請求において、複数の行為を包括的に
とらえて差止請求の対象とする場合、その一つ一つの行為を個別、具体的に摘示するこ
とまでが常に必要とされるものではなく、当該行為の適否の判断のほか、当該行為が行
われることが相当の確実さをもって予測されるか否かの点及び当該行為により当該普通
地方公共団体に回復の困難な損害を生ずるおそれがあるか否かの点について判断するこ
とが可能な程度に、対象行為の範囲が特定されていることが必要であり、かつ、これを
もって足りる。

(イ)訴訟は、次の期間内に提起しなければならない。
(a)監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合は、当該監査の結果又は当該勧
   告の内容の通知があつた日から30日以内
(b)監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員の措置に不服がある
   場合は、当該措置に係る監査委員の通知があつた日から30日以内
(c)監査委員が請求をした日から60日を経過しても監査又は勧告を行なわない場合
   は、当該60日を経過した日から30日以内
(d)監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員が措置を講じない場
   合は、当該勧告に示された期間を経過した日から30日以内
★ この期間は不変期間であるため、裁判所は職権でこの期間を伸縮できない。

●● 最高裁判例「損害賠償」(民集第52巻9号2039頁)
【裁判要旨】
監査委員が適法な住民監査請求を不適法であるとして却下した場合、住民訴訟の出訴期
間は、地方自治法二四二条の二第二項一号〔上記(イ)(a)の場合〕に準じ、却下の
通知があった日から三〇日以内と解するのが相当である。
【理由】
監査委員が適法な住民監査請求を不適法であるとして却下した場合、当該請求をした住
民は、適法な住民監査請求を経たものとして直ちに住民訴訟を提起することができるの
みならず、当該請求の対象とされた財務会計上の行為又は怠る事実と同一の財務会計
の行為又は怠る事実を対象として再度の住民監査請求をすることも許されるものと解す
べきである。

(ウ)(ア)(a)の差止めは、当該行為を差し止めることによって人の生命又は身体
   に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあ
   るときは、できない。
(エ)(ア)(d)の訴訟が提起された場合には、当該職員又は当該行為若しくは怠る
   事実の相手方に対して、当該普通地方公共団体の執行機関又は職員は、遅滞な
   く、その訴訟の告知をしなければならない。
(オ)住民訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合で、弁護士又は弁護
   士法人報酬を支払うべきときは、当該普通地方公共団体に対し、その報酬額の
   範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる。

●● 最高裁判例「行政処分取消等請求」(民集第18巻6号1133頁)
【裁判要旨】
(ア)地方公共団体(芦屋市)が記念行事等に際し関係議員に記念品等を贈呈すること
   は、それが社会通念上礼儀の範囲にとどまるかぎり、地方自治法第二〇四条の二
  に違反しないと解するのが相当である。
(イ)市が昭和三三年七月に競輪事業開始十周年を記念するため市議会議員全員に対し
   一人あたり現金一万円ずつを支給したことは、前項にいう儀礼の範囲をこえ、違
   法と認めるべきである。

●● 最高裁判例「徳島県議会野球大会旅費,日当,宿泊料等返還請求事件」(民集第
   57巻1号1頁)
【裁判要旨】
全国都道府県議会議員軟式野球大会に県議会議員が参加することは,同大会の内容が単
に議員が野球の対抗試合を行って優勝を競うものにすぎず,他の都道府県議会議員との
意見交換や相互交流等の機会は設けられておらず,競技施設の視察等の公式行事も予定
されていなかったなど原判示の事実関係の下においては,議員としての職務であるとは
いえず,同大会に参加した議員は,県に対し,支給を受けた旅費相当額の不当利得返還
義務を負う。
★ いずれも住民訴訟で、違法とされた事例である。

【2】訴訟の提起(242条の3)
(ア)上記【1】(ア)(d)の訴訟で、損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判
   決が確定した場合には、普通地方公共団体の長は、当該判決が確定した日から60
   日以内の日を期限として、当該請求に係る損害賠償金又は不当利得の返還金の支
   払を請求しなければならない。
(イ)当該判決が確定した日から60日以内に当該請求に係る損害賠償金又は不当利得
   よる返還金が支払われないときは、当該普通地方公共団体は、当該損害賠償又は
   不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起しなければならない。なお、この訴
   訟の提起については、当該普通地方公共団体の議会の議決を要しない。

■ 公の施設の利用権
住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひと
しく受ける権利を有し、その負担を分任する義務を負う(10条2項)。

(ア)普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するため
   の施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
(イ)普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを
   拒んではならない。
(ウ)普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取
   扱いをしてはならない(244条1項~3項)。

●● 最高裁判例「給水条例無効確認等請求事件」(平成18年07月14日判決)
【裁判要旨】
(ア)地方公共団体の住民ではないがその区域内に家屋敷を有する者など住民に準ずる
   地位にある者による公の施設の利用につき、合理的な理由なく差別的取扱いをす
   ることは,地方自治法244条3項に違反する。
(イ)地方公共団体が営む水道事業において別荘に係る給水契約者の基本料金を他の給
   水契約者の基本料金に比して大幅に増額改定した条例の規定が地方自治法244
   条3項に違反するものとして無効とされた事例
【理由】
水道事業においては,様々な要因により水道使用量が変動し得る中で最大使用量に耐え
得る水源と施設を確保する必要があるのであるから,夏季等の一時期に水道使用が集中
する別荘給水契約者に対し年間を通じて平均して相応な水道料金を負担させるために,
別荘給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金よりも高額に設定するこ
と自体は,水道事業者の裁量として許されないものではない。
(中略)本件改正条例による水道料金の改定においては,ホテル等の大規模施設に係る
給水契約者を含む別荘以外の給水契約者の1件当たりの年間水道料金の平均額と別荘給
契約者の1件当たりの年間水道料金の負担額がほぼ同一水準になるようにするとの考
え方に基づいて別荘給水契約者の基本料金が定められたというのである。公営企業とし
て営まれる水道事業において水道使用の対価である水道料金は原則として当該給水に要
する個別原価に基づいて設定されるべきものであり,このような原則に照らせば,上告
人の主張に係る本件改正条例における水道料金の設定方法は,本件別表における別荘給
契約者と別荘以外の給水契約者との間の基本料金の大きな格差を正当化するに足りる
合理性を有するものではない。

(1)公の施設の設置、管理及び廃止(244条の2第1項、第2項)
(ア)普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除く
   ほか、条例で公の施設の設置及びその管理に関する事項を定めなければならな
   い。
(イ)普通地方公共団体は、条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要
   なものを廃止し、又は条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするとき
   は、議会において出席議員の三分の二以上の者の同意を得なければならない。

(2)指定管理者(244条の2第3項、第6項、第8項)
(ア)普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要がある
   と認めるときは、条例で、法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指
   定する指定管理者に、当該公の施設の管理を行わせることができる。
(イ)普通地方公共団体は、指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ、当
   該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
(ウ)普通地方公共団体は、適当と認めるときは、指定管理者にその管理する公の施設
   の利用に係る「利用料金を当該指定管理者の収入として収受させることができ
   る。利用料金は、公益上必要があると認める場合を除くほか、条例の定めるとこ
   ろにより、指定管理者が定める。この場合、指定管理者は、あらかじめ当該利用
   料金について当該普通地方公共団体の承認を受けなければならない。

(3)不服申立て(244条の4)
(ア)普通地方公共団体の長がした公の施設を利用する権利に関する処分に不服がある
   者は、都道府県知事がした処分については総務大臣、市町村長がした処分につい
   ては都道府県知事に審査請求をすることができる。この場合においては、異議申
   立てをすることもできる。
(イ)普通地方公共団体の長等(指定管理者を含む。)がした公の施設を利用する権利
   に関する処分についての審査請求は、普通地方公共団体の長が処分庁の直近上級
   行政庁でない場合においても、当該普通地方公共団体の長に対してする。
(ウ)普通地方公共団体の長は、公の施設を利用する権利に関する処分についての異議
   申立て又は審査請求があつたときは、議会に諮問してこれを決定しなければなら
   ない。
(エ)公の施設を利用する権利に関する処分についての審査請求に対する裁決に不服が
   ある者は、都道府県知事がした裁決については総務大臣、市町村長がした裁決に
   ついては都道府県知事に再審査請求をすることができる。


■■■ 地方自治法6団体の意見提出権 ■■■ 
知事会、都道府県議長会、市長会、市議会議長会、町村長会、町村議長会は、地方自治
に影響を及ぼす法律又は政令その他の事項に関し、総務大臣を経由して内閣に対し意見
を申し出、又は国会に意見書を提出することができます(263条の3第2項)。

これに基づき、今年6月に、地方分権の推進に関する意見書『『豊かな自治と新しい国
のかたちを求めて―地方財政自立のための7つの提言―』が提出されています。なお。
この意見は、「第一次分権改革」の端緒となった平成6年(1994年)9月の「地方
分権の推進に関する意見書」以来、12年ぶりに地方自治法に基づく意見提出権を行使
するものです。詳しくは、http://www.nga.gr.jp/upload/pdf/2006_6_x07.PDF をご覧
ください。


■■■ 情報公開条例 ■■■ 
情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)は、地方公共団体には直接
には適用されません。しかしながら、「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、
その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなけ
ればならない。」(26条)と規定されています。

これを受けて、情報公開条例が定められています。その制定状況が、先日、総務省から
公表されました。

これによると、すべての都道府県が条例を制定しています。また、すべての都道府県議
会も情報公開の対象になっています。一方、市町村の制定率は98.9%となっています
(市:99.9%、区:100%、町:98.6%、村:95.9%)。また、相当数の市町村議会が
情報公開の対象になっています。

詳しくは、総務省の報道資料 http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060816_1.html
ご覧ください。


■■■ お願い ■■■ 
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。

質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。


■■■ 編集後記 ■■■
暑い夏は、まだ暫らく続きそうですが、いかがお過ごしでしょうか。8月も下旬になる
と、行政書士試験の受験勉強も、そろそろ第3コーナーを曲がり切る頃になります。

この頃になると、初期の頃に勉強したはずの憲法や民法が必ずしも十分に頭に残ってい
ないという恐怖感が芽生えてきます。しかしながら、今この時期をそのため(復習や新
たなテキストを読み始めること等)に使うことは決して得策ではありません。

特に多忙な社会人の場合には、9月下旬から10月中旬にかけて仕上げを開始し、10月下
旬から11月上旬に最高レベルに至るようにすれば足ります(時間的な制約から、そうす
べきであるとさえいえます。)。むしろ、夏休み明け頃にいったんピークを作ってしま
うと、その後の維持が極めて困難になります。また、一度落としてしまったピークを再
度同じ水準にまで復活させることは、それ以上に困難です。

今、無理して急ぐ必要はありません。しかも、時間はまだ十分にあります。当面は、し
っかり残された地方自治法や会社法等、および弱点の集中強化に取組んでください。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
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