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メンタルヘルス不調者の休職と復職の要件

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第174号 2016-06-14

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法律相談ご案内
http://www.ishioroshi.com/btob/soudan_firstb.html

顧問弁護士契約顧問料)についての詳細
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_feeb.html
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前書き
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 本稿を執筆しております弁護士の石下(いしおろし)です。いつ
もご愛読ありがとうございます。

 プロ野球の話題で恐縮ですが、今真っ最中のセパ交流戦は不思議
なものです。交流戦が終わると、これまでのリーグ戦での勢力図が
一変することが頻繁に起こってきました。何を隠そう筆者は35年
以上広島カープファンですが、悲しいかなカープは交流戦を特に苦
手とするチームの一つです。

 裁判においては、途中で勢力図が一変するようなことは多くはあ
りませんが、重要な証拠が発見されたり、ときには裁判官の異動で
勢力図が変わることはあります。特許訴訟において決定的な無効資
料が発見されるというのはその例かもしれません。

 どんなときも油断せず、また他方であきらめずにやり抜きたいと
自戒する毎日です。
 
 なお、本稿末尾にある顧問弁護士資料請求に関するご案内も、関
心のある方はぜひご覧ください。

 では、本文にまいります。




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1 今回の判例 メンタルヘルス不調者の休職復職の要件
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東京地裁平成27年7月29日判決

 A社に総合職として雇用されたB氏は、約5年7か月予算管理業
務に従事した後、平成22年4月に統合失調症の疑いと診断され、
平成24年2月29日まで休職を命じる旨の休職命令に従い休職
ていました(なおその後、B氏はアスペルガー症候群と診断されま
した)。

 そして、A社はB氏に対し、前記年月日をもって休職期間満了
よる自然退職となる旨を告知したところ、B氏は、休職期間満了
において就労が可能であったと主張し、休職期間満了後の賃金等を
請求しました。

 本件での大きな争点は、復職要件たる「休職の事由が消滅した」
の意義をどう捉えるかという点と、B氏について「休職の事由が消
滅した」といえるかという点でした。




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2 裁判所の判断
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 裁判所は概略以下のように判断し、B氏の請求を認めませんでし
た。

● 「休職の事由が消滅した」とは、原則として、従前の職務を通
常程度に行える健康状態、若しくは当初軽易作業に就かせればほど
なく従前の職務を通常程度に行える健康状態になった場合をいう。

● また、職種・業務を特定せず締結した労働契約の場合、現業務
について労務提供が十全にはできないとしても、現実的可能性があ
る他の業務について労務提供ができ、かつ、その提供を申し出てい
るならば、休職事由の消滅といえる。

● B氏については、上司とのコミュニケーションが成立せず、不
穏な行動で周囲に不安を与えている状態である以上、予算管理業務
で就労可能とは認めがたい。

● またB氏は職場復帰面談の際にソフトウェア開発業務の技術職
への異動を申し出ているが、同業務であっても対人交渉は不可欠で
あり、B氏の精神状態では労務提供が不可能である。




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3 解説
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(1)私傷病休職制度とは

 労働者の最大の義務は、労働契約に定めた労務の提供です。それ
で、従業員が私傷病(業務以外の理由で生じた病気や怪我)により
労務の提供ができなくなれれば、本来は、会社が解雇してもやむを
えません。

 しかし、休職制度は、そのような場合でも、回復が見込まれるな
らば、ただちに解雇せず、会社に在籍させたまま一定期間勤務を免
除する制度です。言い換えれば休職制度は、一定期間解雇を猶予す
る制度といえます。


(2)私傷病休職制度の内容・運用

 休職制度は法律で定められている制度ではありません。ですので
会社が休職制度採用するか否かは会社の裁量によります。

 もっとも、私傷病で勤務できなくなったという従業員に対してい
きなり解雇することは無効とされるリスクが無視できないことを考
えると、休職制度によって回復の機会を与えるというのは穏当な制
度かと思います。

 また、休職の内容、すなわち休職事由、休職期間賃金支給の有
無、休職期間の長さ、復職の要件、判断の手順などは、通常は就業
規則において、会社の裁量で決めることができます。もっとも賃金
については、「ノーワーク・ノーペイ」の原則に従い、休職期間
無給とする会社が多いと思われます。

 ただし、賃金は無支給であっても、休職期間中の社会保険料は、
会社負担分・本人負担分それぞれ負担義務が生じます。

 また休職期間満了時に復職の要件が満たされない場合、会社はあ
えて「解雇」する必要はなく、労働契約は当然に終了(自然退職
することとなります。


(3)復職判断の困難性とプロセス

 私傷病休職における自然退職がどのような場合に有効となるかに
ついては、本件で紹介した裁判所の考え方は裁判実務に沿ったもの
と考えられ、参考になると思われます。

 そのほかの点として、本件では、A社がB氏に対し、産業医も交
えた複数回の職場復帰面談を行ったり、また試験出社を実施したり
と、さまざまな措置を取っていることが指摘されています。そして
裁判所は、面談や当該出社の際のB氏の状態も重要な要素として、
復職要件たる就労可能性を判断しています。

 それで、休職期間満了時の休職事由の消滅の判断にあたっても、
会社が即断せず、従業員復職可能性に配慮した慎重なプロセスを
経ることや、そのプロセスをしっかり立証できる手段を確保するこ
とは、意外と重要なものではないかと思われます。




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4 弊所顧問弁護士契約~詳細な資料を用意しました
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 弊所では、顧問弁護士に関心があるものの、「顧問弁護士は結局
何をしてくれるの分からない」とお考えの方に、顧問弁護士につい
ての詳しい資料を準備しました。

 実は顧問弁護士の「使い道」は、経営・会社運営・ビジネス全般
に及び、きわめて多岐にわたります。

「裁判でもしない限り弁護士には縁がない」と考えている方にぜひ
ご覧いただきたいと思います。

 会社名や個人情報を入力する必要もありません。どうぞご覧くだ
さい。

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ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
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【編集発行】
弁護士・弁理士 石下雅樹(いしおろし まさき)

東京事務所
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