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副業している会社の勤務時間は通算される?







2017年6月27日号 (no. 992)
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---3分労働ぷちコラム---
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本日のテーマ【副業している会社の勤務時間は通算される?】
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2つ以上の会社で働いていると、勤務時間もそれぞれで分散するのですが、残業代の計算などでは、これらを合算して把握するのか、それとも別々にして把握するのか。ここが疑問になります。


例えば、会社Aと会社B,この2つの会社で働いている水戸さん(架空の人物です)という方がいるとしましょう。


水戸さんの1週間あたりの勤務時間は以下の通りです。

会社A:週38時間。
会社B:週17時間。

合計すると、週55時間です。



また、とある日に、朝から朝から夕方まで会社Aで勤務し、その後に会社Bに行って勤務したとします。

会社Aでは、9時から16時まで。休憩が1時間あったとして、6時間勤務。
会社Bでは、18時から22時まで。休憩は無しで、4時間勤務。

この日の勤務時間は合計で10時間です。



1週間あたりで55時間働き、1日あたりだと10時間働く日がある。これが水戸さんの勤務実態です。


では、この水戸さんに残業代は発生するのかどうか。ここでの残業代とは、法定労働時間を超えて働いた場合に出る割増賃金のことです。



まず、1週間あたりだと、週40時間を超えると残業代が出ますが、水戸さんの場合、2つの会社での労働時間を合算すると55時間ですから、15時間分の残業代が出そうに思えます。

しかし、会社別に把握すると、会社Aでは38時間ですので40時間を超えていません。また、会社Bでは17時間ですので、こちらも40時間を超えていません。となると、水戸さんへの残業代は無しと判断できます。


労働時間を合算して残業代を計算するのか。それとも、労働時間は会社別に把握し、残業代を計算するのか。この2つに判断が分かれるところです。



労働時間の計算に関するルールとして、労働基準法38条1項(以下、38条1項)に記載があります。


第38条 
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。



素直に読むと、「働く場所が違っていても、労働時間は通算する」と解釈できます。となると、上記の例では、水戸さんの労働時間を週55時間として把握しないといけないのでしょうか。


もし、労働時間を週55時間とした場合、40時間を超えた15時間分を残業であると扱い、割増賃金を支払うことになりますが、どこの会社が支払うのでしょう。会社Aでしょうか。それとも、会社Bでしょうか。


会社別に勤務時間を把握すると、会社Aでは38時間、会社Bでは17時間ですので、どちらの会社も割増賃金を支払うことはありません。もしどちらかの会社に対して、「15時間分の割増賃金を支払え」と言えば、「何を言っているんだ? キミは」と一蹴されるでしょう。



38条1項の「事業場を異にする場合」という部分の意味は2通りあります。


解釈1:事業場を異にするというのは、同一の使用者が運営する事業場だけでなく、使用者が異なる別会社も含む。
解釈2:事業場を異にするというのは、同一の使用者が運営する事業場だけであって、使用者が異なる別会社は含まない。

先ほどのように、会社AとBで労働時間を通算するとなると、解釈としては1を選択することになります。AとBでは、お互いに全く別の会社で、使用者も違うわけです。


しかし、お互いに何の関連もない会社同士で、どうやって勤務データを集めるのでしょうか。会社Aの勤務データは会社Aが持っている水戸さんの個人情報ですし、会社Bでも同様です。


お互いに勤務データを渡すこともなく、どうやって水戸さんの労働時間を通算できるのか。会社AからBに対して「水戸さんの勤怠データをください」などと言っても、会社Bは教えません。



となると、38条1項の「事業場を異にする場合」という部分は、解釈2を選択しないといけないわけです。


2つの会社が全くの別会社である場合は、38条1項を適用せず、それぞれの労働時間を通算しません。しかし、同じ会社内で、事業場が異なる場合には通算できます。


例えば、とある飲食チェーン店で、都内に6店舗を構える会社があったとして、その中に新宿店、六本木店、日本橋店があるとしましょう。

各店舗はそれぞれ違う場所で営業しており、異なる事業場ですが、使用者(元となる会社)は同じです。つまり、使用者が同一で、事業場が複数ある企業です。


この飲食チェーン店で、木村さん(これまた架空の人物です)という方が働いているとして、午前中に新宿店で働き、午後から夜にかけて六本木店で勤務したとします。

新宿店:朝の9時から13時まで。
六本木店:16時から21時まで。


休憩時間は省略して、新宿店では4時間、六本木店では5時間勤務しています。この場合、合計で9時間になります。


このケースこそ、まさに38条1項が想定する場面です。事業場を異にしている場合なので、労働時間を通算し、9時間労働で、残業が1時間とするわけです。


新宿店と六本木店は、事業場は違いますが、同一の企業が運営するお店なので、木村さんの勤務データは全て集められます。


38条1項の「事業場を異にする場合」という部分の意味は、先ほどの解釈2である「同一の使用者が運営する事業場だけであって、使用者が異なる別会社は含まない」と考えるのが妥当ということになります。


副業している会社の勤務時間は通算されるかどうかの疑問に対しては、「通算されない」と答えることになります。


この労働時間の通算については、社会保険でも似たような問題があります。他の会社での勤務時間や収入を合算して社会保険に加入したり社会保険料が決まったりするのかどうか。これも問題になりますが、38条1項の解釈を踏まえると、使用者が異なり、お互いに全く関連しない別会社の場合は、労働時間も収入も通算しないのが実務的に正しいと言えます。


ちなみに、日本年金機構のウェブサイトを見ると、厚生年金に関連する記述で参考になる部分があります。

(-- 引用開始 --)
厚生年金保険への加入は会社単位ではなく、事業所単位(本社、支社、支店又は工場など)で行い、被保険者となるための手続きは事業主が行います。
(-- 引用終了 --)

http://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/kounenseido/hihokensha/20120830.html
Q. 会社に勤めたときは、必ず厚生年金保険に加入するのですか。

引用した文章を読むと、「会社単位」と「事業所単位」で区別しているのが分かります。つまり、事業所という言葉には、会社は含まれていないと解釈できます。ということは、「事業場を異にする」という部分は、別の会社という意味は含まれていないと解するのが妥当ということになります。

労働時間の通算に関する話は、社会保険での取り扱いにも通じる部分がありますので、下記の内容も合わせて読んでみて下さい。



http://www.growthwk.com/entry/2016/01/21/140400
2つの会社で社会保険に加入すると、社会保険料も会社ごとに按分するの?

http://www.growthwk.com/entry/2017/03/18/155000
book884(パートタイムでダブルワークしているときの社会保険はどうなる?)

http://www.growthwk.com/entry/2017/04/11/195623
book888(掛け持ちで2つ以上の仕事をするときの注意点)



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合格率0.07%を通り抜けた大学生。


今、私はこうやって社労士という職業で仕事をしているわけですが、子供の頃からなりたかった職業というわけではなくて、大学生の頃に遭遇したきっかけが始まりです。

子供の頃になりたい職業というと、男の子ならば、警察官やスポーツ選手、パイロットというのが良くあるもの。女の子だと、スチュワーデス(今はキャビンアテンダント)、花屋さん、ケーキ屋さん、保育園の先生とか。そういう社会的に広く認知されたものが選ばれるので、小学生や中学生が社労士になりたいなんてことはゼロではないのでしょうが、極めて稀でしょう。

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。だって、簡単そうなイメージがするでしょ、社労士なんて。チョチョッと勉強すれば、スルッと合格できるだろう。そう思っている人も少なくないはず。

「よく知られている資格 = 難しい」、「あまり知られていない資格 = 難しくない」。こういう判断基準があって、社労士は後者に該当するため、難しくないだろうと思われてしまうわけです。

私もそうやってナメていたクチですから、不合格になったんです。

実際は、想像しているよりも難易度は高くて、大学生の頃に約1年ほど時間を投じて、やっとこさ合格したのが本当のところ。


どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

とはいえ、学生の人が社労士に興味を持つというのはやはりレアで、何らかのきっかけが無ければ出会えないでしょうね。ただ、珍しいといっても、毎年、1割弱ほどは学生の受験者がいるので、受験者の総数を5万人と仮定すると、その1割弱なら3,000人から4,000人ぐらいは学生がいます。

そういう方の役に立つならば、私の経験も使っていただきたいですね。


http://www.growthwk.com/entry/2017/02/28/121910?utm_source=soumu&utm_medium=cm&utm_campaign=soumu_cm_common_20170627_2
大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡




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残業で悩んでいませんか?

「長時間の残業が続いている」
残業代の支払いが多い」
「残業が減らない」

こういう悩み、よくありますよね。

ニュースでも未払い残業代の話題がチラホラと出てくるぐらい、残業に対する関心は高くなっています。

法律では、1日に8時間まで、1週間では40時間までしか仕事ができません。その水準を超えてしまうと、残業となり、割増賃金が必要になります。

とはいえ、1日で8時間と固定されていると不便だと感じませんか? 1週間で40時間と固定されていると不便だと感じませんか?


毎日8時間の時間制限があると、柔軟に勤務時間を配分できませんよね。

例えば、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。

でも、実は、「月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務なので、残業は無し」こんなことができる仕組みがあるんです。

「えっ!? そんな仕組みがあるの?」と思った方は、ぜひ『残業管理のアメと罠』を読んでみてください。


『残業管理のアメと罠』
http://www.growthwk.com/entry/2012/05/22/162343?utm_source=soumu&utm_medium=cm&utm_campaign=soumu_cm_common_20170627_3





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決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。


一例として、

Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
Q:残業しないほど、残業代が増える?
Q:喫煙時間は休憩なの?
Q:代休振替休日はいつまでに取ればいいの?


このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

▽    ▽   『仕事のハテナ 17のギモン』    ▽    ▽
http://www.growthwk.com/entry/2017/05/23/132023?utm_source=soumu&utm_medium=cm&utm_campaign=soumu_cm_clockperiod_common_20170627_4



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