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パワー・ハラスメントはどこまで許されるか?

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 経営・労務管理ビジネス用語の
   あれっ! これ、どうだった?!

  第49回  パワー・ハラスメント
               どこまで許されるか?
 
<第64号>      平成23年6月6日(月)
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発行人のプロフィル⇒ http://www.ho-wiki06.com
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こんにちは! 
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。

1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。

ある日の労働相談で、女性の相談者が悲痛な声で
毎日のように女性上司からいじめにあっており、これは

パワー・ハラスメントでないのか、精神的にもおかしく
なりそうです、と訴えてきました。

今回は、この点について考えてみます。

★☆[今日のちょっといい話]★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
●99歳の詩人、柴田トヨさんが語っています。

「もらった思いやりは身にしみて、大事にしまっておく。
そうすると自分がいかに生かされてきたかがわかってくる。

つらいこと、悲しいこと、情けないこと、いろんなことが
あったからこそ、幸せが実感できるんです」

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

◆◆ パワー・ハラスメントパワハラ)とは ◆◆

○ セクシャル・ハラスメントセクハラ)については、
法律(男女雇用機会均等法第11条)にも規定され、

各企業等においても就業規則等でその防止その他に関して
定めていることが多いようです。

一方、パワー・ハラスメントパワハラ)に関しては、
従来、「上司の部下に対する指導」という名目で、

表面化することは極めてまれなことでしたが、最近では
クローズアップされ、問題となってきています。

○ パワー・ハラスメント(Power Harassment)という言葉は、
直訳すると、権力による嫌がらせとなりますが、

一般に、職場において仕事上の上下関係や権利関係を
不当に利用することによる嫌がらせ、いじめなどを指す
言葉とされています。

セクハラ(Sexual Harassment)は、国際的にも共通した
用語ですが、

パワハラという言葉は、株式会社クオレ・シー・キューブ代表の
岡田康子氏がその著書『許すな!パワー・ハラスメント』の中で

生み出された和製英語で、その中での定義は、
「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて

継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の
働く関係を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること。」と
なっています。

○ 今、大きな社会問題となっている家庭内暴力が
ドメスティック・バイオレンスとして犯罪であるのに対して、

社内暴力もオフィス・バイオレンスとして
犯罪と同視して対処すべきであるという方向にもあります。

しかもパワハラは、部下の能力や落ち度の問題だけではなく
上司のマネジメント能力やダイバーシティー(職場内多様性)の
無さの問題と考えられるようになってきています。

つまり、上司が信頼されていない会社で最もモチベーション
下がり、その能力の無さを暴力的な叱責で補おうとする
傾向にあり、

かえって、そのことが会社にとって致命的なミスに
つながることが明らかとなっています。

◆◆ パワハラと判断される可能性が高い事例 ◆◆

1.クビ(解雇)にするぞ!と脅す場合。
○ 労働者をクビ(解雇)にするには、
客観的にみて合理的理由があり、社会通念上相当であると

判断されるだけの根拠が必要とされています。
労働契約法第16条)

従って、解雇されるほどの理由がないにも関わらず、
「お前なんかいつでもクビに出来る」というような言動で、

半ば強制的に労働者を従わせようとする行為は
パワハラと判断される可能性が高いといえます。

○ また、解雇とまでは言わなくても、
「この仕事、君には向いていないんじゃない?」とか
「転職を考えた方がいいよ」

などのように、転職・退職を促すような発言も
パワハラになる可能性が高いと考えます。

2.必要以上にミスを追及する場合。
○ 些細なミスであるにも関わらず必要以上に
怒鳴りつけたり、公衆の面前で指摘を繰り返すことによって

労働者に対してストレスを与えるというのも、パワハラ
可能性が高い事例といえます。

酷い場合には暴力にまで及ぶこともあり、
これはパワハラというだけでなく、傷害罪などの刑事罰に
問われる可能性もあります。

3.残業を強要する場合。
○ 所定労働時間内ではとても終わりそうにないような
仕事を押し付けたり、

「まさか残業代なんか付けないよな?」というように
サービス残業を強制的に行わせることも
パワハラと判断される可能性が高いといえます。

4.無視する、仕事を与えない場合。
○ 仕事場から強制的に退去させられたり、仕事を一切
与えられない、話しかけても無視されるという場合、

労働者にとっては耐えられないストレスとなることも多く、
こういうケースもパワハラと判断される可能性が
高いといえます。

5.飲み会への参加、飲酒を強要する場合。
○ 就業時間以外の行動を束縛することも、飲酒を強要する
ことも、仕事上の権限を越えた不当な暴力行為となります。

従って、それらの誘いを断った際に不利益な扱いを
受けた場合も同様に、パワハラに該当する可能性が
高くなると思います。

◆◆ パワハラ裁判例から~日研化学事件~ ◆◆

1.事案の概要。
○ Y社は、医薬品の製造・販売等を業としており、
そこに勤務するXは医薬情報担当の職員であったが、

Xの所属する2係の営業成績はY社の下位にあったため、
その体質改善を図るためAを新たに2係長にした。

○ Aは単純で一途な性格であり、赴任当初よりXに対して
次のような厳しい言葉を浴びせていた。

(1)Xの存在が目障りだ。居るだけで皆が迷惑している。
お前のカミさんも気がしれん。お願いだから消えてくれ。

(2)車のガソリン代がもったいない。
(3)お前は会社を食いものにしている、給料泥棒。

(4)Xは誰かがやってくれるだろうと思っているから、
何にも堪えていないし、顔色ひとつ変わっていない。

(5)病院の廻り方がわからないのか。勘弁してよ。
そんなことまで言わなきゃいけないの。

(6)肩にフケがベターと付いている。お前病気と違うか、など。

○ Xはその後、徐々に元気がなくなり8か月経った頃から
身体に変調が表れるようになり、仕事上のミスも続き、

A係長に代わってから約1年後、Xは家族や上司等に宛てた
8通の遺書を残して自殺した。

Xの妻は、Xが勤務していたY社における業務に起因する
精神障害によるものであるとして、労基署長に対し

労災保険法に基づき遺族補償給付の支払を請求したが、
同労基署長が不支給処分をしたため、
妻が、その取消を求めて提訴した事件。

2.判決の主文(平19.10.15東京地裁判決)
○ Xの自殺に業務起因性が認められるとして、労基署長の
処分を取り消した。

3.判決の要旨。
○ Y社における2係の勤務形態として、XがA係長から受ける
厳しい言葉を、心理的負荷のはけ口なく受け止めなければ
ならなかった。

そしてXは上司であるA係長の言動により、
社会通念上、客観的にみて精神疾患を発症させる程度に過重な
心理的負荷を受けており、

Xは業務に内在ないし随伴する危険が現実化したものとして、
精神障害を発症したと認めるのが相当であるとして、
次のように判示しています。

「業務に起因して精神障害を発症したXは、当該精神障害に
罹患したまま、正常の認識及び行為選択能力が当該精神障害により

著しく阻害されている状態で自殺に及んだと推定され、
この評価を覆すに足りる特段の事情は見当たらないから、

Xの自殺は、故意の自殺ではないとして業務起因性
認めるのが相当である。」として、労基署長の遺族補償給付
不支給処分を取り消したものです。

○ このように本裁判例では、パワハラの存在を認めての
判決となりましたが、

実は、何がパワハラとなるか、まだ明確な基準や、
これを規律する法律はありません。

つまり、上司としては部下の実力養成のために厳しく
指導しているだけのつもりであったり、会社の雰囲気が
いわゆる体育会系のためであったりして、

パワハラであるとの認識が欠如していることも
多いと思われます。

従って、冒頭に挙げた具体例も、パワハラになる
可能性が高いという事例であり、

その一つひとつが直ちにパワハラと認定されるとは言えず、
実際には個々の事案に即して総合的に勘案して
判断されることになります。

ただ、一般論としては、次のいずれにも該当する場合に
パワハラと認定されるようです。

(1)上司の部下に対する言動(いじめ)が、業務指導の
範囲を超え、言葉自体が過度に厳しかったり、

嫌悪の態度を示すなどして、部下の人格・尊厳を
著しく傷つけるものであること。

(2)上司のいじめが、ある程度継続していること。

(3)上司のいじめにより、部下がストレス(人生の中で
まれに経験することもある強いストレス)を
感じるものであること。

◆◆ パワハラと労災認定 ◆◆

○ 近年、職場でのストレスが原因でうつ病などの
精神障害となり労災認定を受ける労働者が増加しています。

また、自殺の場合も業務起因性が認められれば
労災認定を受けることができます。

ただし、労災保険法では、労働者の「故意」による
死亡については保険給付を行わないと規定しているため
(法第12条の2の2第1項)、

自殺時に正常な判断能力を有していると認められる場合
(例えば遺書を残している場合など)には、

「故意」の自殺として業務起因性が否定される傾向に
ありました。

その意味で、上記の裁判例の場合、被害者が数ケ月前から
遺書を準備するなど、正常な判断能力を有していたという
事情があったにも関わらず、

事実認定の中で、特に深刻なパワハラの事実を重く
みたからでしょうか、自殺にまで業務起因性を認めた点で
注目に値するとされています。

◆◆ パワハラに対する実務対応例 ◆◆

○ 一般に、使用者従業員との関係において、
社会通念上伴う義務として、

従業員労務に服する過程で生命及び健康を害しないよう
職場環境等につき配慮すべき注意義務を負っていますが、

そのほかにも、労務遂行に関連して従業員の人格的尊厳を侵し
その労務提供に重大な支障をきたす事由が発生することを防ぎ、

又はこれに適切に対処して、職場が従業員にとって
働きやすい環境を保つように配慮する義務、いわゆる
職場環境配慮義務を負っています。

従って、パワハラ行為が職場内に発生している場合には、
これを是正する義務があり、この義務に違反すると
使用者責任を問われることになります。

○ その意味から、パワハラが発生しないように事前の
対応策が必要であり、それでも発生してしまった場合の事後の
対応策も必要となります。

1.事前の対応策。
(1)就業規則等においてパワハラを禁止する旨を規定として
明記すること。

(2)パワハラが違法であることを啓発するポスターを掲示したり
リーフレットを作成・配布すること。

(3)管理職及び従業員に対し、パワハラを防止するための
研修・講習を実施すること。

(4)社内にパワハラに関する相談窓口を設け、専門の担当者による
相談の受付、苦情処理等が出来るようにすること。

(5)社内におけるパワハラの実態を把握するためのアンケート
調査を実施し、必要に応じてその結果を公表すること。

2.事後の対応策。
(1)専門の担当者が当事者、関係者から事情を詳しく聴取すること。

(2)調査結果を踏まえて、被害者と加害者との関係を
改善するための助言等の適切な援助を行い、必要に応じて
配置転換休職命令等の人事権を行使すること。

(3)上司のパワハラが意図的な場合には、懲戒処分
検討すること。

などの措置を講じる必要があります。

その際、当事者や関係者のプライバシーに配慮し、相談等の事実を
不利益に取り扱わないことが大事なポイントとなります。(了)

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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。

6月2日の衆議院本会議で菅内閣不信任案が否決され、
菅総理が引き続き政権を担うことになりました。

国民の声でも、被災者が大変な状態にあるのに国会議員は
何を考えているのか等、非難の声が多いようです。
そして、これは正論です。

しかし「菅内閣は、誤った『政治主導』で官僚を使いこなせず、
被災者支援が後手に回った。特別立法の作業も遅れている。

原発事故の対応でも、誤った情報が何度も発表されたり、
閣内の意見が対立するなど、迷走が続く」(6/2読売社説)
状態を変えて、速やかな復興体制を築く為に必要としたものだ。

前日までは、小沢グループ、鳩山グループが賛成に回り
可決する可能性もあったが、

採決当日の昼、管総理が原発のメドがついたら退陣する、
との話に、逆に反対に回り、否決されたものでした。

内閣不信任案否決後の社説では「政府・与党が一丸となった
機動的な震災対応ができないことの一義的な責任は無論、

菅首相にある。猛省を求めたい」「首相退陣を引き延ばすことに
一体何の意味があるのか。結局、管政権の抱える問題を
先送りしただけである」(6/3読売)と。

間もなく、震災発生後3カ月を迎えるが、いまだ約10万人が
不自由な避難所生活を強いられている。原発も収束の時期が
まったく不透明だ。

さらに、原発の賠償問題で、東電の純資産は約2・5兆円であり
10兆円とも言われる賠償金の支払い能力がないため、

その差額は、結局は電気料金の値上げとなって国民が払わされる
ことになるのは間違いないと専門家は言う。

しかも、東電社員は年収の2割カットですませ、高額と言われる
企業年金カットも計画に盛り込まれていないのだ。

まるで、破綻したJALと同じで、社会的な問題ともなったことは
記憶に新しいところだ。

あの阪神淡路大震災の時も、震災発生後1か月で多くの法律が
施行され、仮設住宅がかなり出来ており、すでに街には
復興のつち音が希望とともに高鳴っていたのだ。

菅首相は常に「こうする」「検討する」とよく言うが、「いつまでに
やる」「いつからやる」という言葉はほとんど聞いたことがない。

私は、これら諸々の対応をみてきて、管首相には真に必要とされる
リーダーシップがないと、どうしても言わざるを得ません。

皆さんは、どのようにお考えでしょうか。

では、また次号でお会いしましょう。
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