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経営・
労務管理ビジネス用語の
あれっ! これ、どうだった?!
第55回
労働者が10人未満の事業所でも
就業規則を
作成した場合、届け出る必要があるか?
<第70号> 平成23年7月18日(月)
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こんにちは!
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。
1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。
厚生労働省の発表によると、2009年の「相対的貧困率」が
前回調査より0.3ポイント増の16.0%となり、
1985年以降で最も高くなったとしています。
また、65歳以上の高齢者のみで構成される世帯数は、
調査開始以来、初めて1000万世帯を突破しました。
さらに65歳以上同士の「老老介護」は45.9%にも
なっています。
そして、1世帯当たりの平均所得は549万円余であり、
生活意識については、「苦しい」と答えた世帯割合が59.4%と
前年より1.3ポイントの増加となっています。
いずれも、前途に不安が残る話題ですが、真夏の輝く
太陽のような希望ある施策が欲しいですね。
さて、本論ですが、ある事業所で
従業員が10人未満ですが
職場秩序を維持するために、職場のルールでもある
就業規則を
作成しようと考えているのですが、
就業規則を作成した場合は、行政官庁に届け出る必要が
あるのでしょうか、との問い合わせがありました。
今回は、この点について考えてみます。
◆◆
就業規則作成に係る4つの義務 ◆◆
○
労働基準法(以下「労基法」)では、
常時使用する労働者が
10人以上の場合には
就業規則を作成し、
所轄
労働基準監督署長に届け出なければなりません(第89条)。
この場合、
就業規則作成に関して、
使用者に4つの義務が
課せられています。
すなわち、
就業規則の「作成義務」「意見聴取義務」「届出義務」
「周知義務」の4項目です。順に説明します。
(1)
就業規則の作成義務;
●
使用者は、
常時雇用する労働者が10人以上であれば、
必ず
就業規則を作成しなければなりません。
この場合の
労働者には、正社員はもとよりパートタイマーや
アルバイト等の非正規
雇用者も含まれます。
従って、例えば正社員が1人でパートが9名でも合計10人
以上になるため、作成義務があります。
なお「10人以上」とは、常態として10人以上の意であり、
時として10人未満になることがあっても該当します。
逆に、常時8人であるが、繁忙期に2~3人雇い入れるという
場合は作成義務はないとされています。
●また、10人以上か否かを判断する単位は、企業単位(本支店
を含む)ではなく、あくまで
事業場単位としています。
例えば、ある企業の本店が30名、A支店が12名、B支店が
8名の場合に、本店、A支店、B支店はそれぞれが
独立の
事業場となり、
この場合は本店、A支店が
就業規則の作成義務がありますが、
B支店については作成義務がないことになります。
●作成の内容としては、労基法第89条に定める必要事項を
すべて含んだものを作成することを意味しており、
必要記載事項を欠いている場合には、
それが必ず定めなければならない
絶対的必要記載事項は
もちろんのこと、
事業所として定めた場合には、必ず
就業規則に
規定しなければならない
相対的必要記載事項である場合でも
「作成」の義務を果たしたとは言えず、やはり処罰の対象と
なるものと解されています(昭25.2.20基収第276号)。
(2)意見聴取義務;
●
就業規則を作成(又は変更)する場合には、
必ず、過半数
労働者で組織する
労働組合(組合がない場合には、
労働者の過半数を代表する者)の意見を聴かなければなりません。
この場合、同意を得るとか協議をするとか、ということまで
要求しているものではありません。
この点について解釈例規で次のように示しています。
「『
労働組合の意見を聴かなければならない』というのは、
労働組合との協議決定を要求するものではなく、
当該
就業規則についての
労働組合の意見を聴けば
労働基準法の
違反とはならないとの趣旨である」(昭25.3.15基収第525号)
としています。
●つまり、
使用者としてはその表明された意見を尊重すべきことは
大事な要素ではあるが、法律上は、その意見に拘束されることは
ないといえます。
この点についても解釈例規では「
就業規則に添付した意見書の
内容が、当該
就業規則に全面的に反対するものであると、
特定部分に関して反対するものであるとを問わず、
又その反対理由の如何を問わず、その効力発生についての
他の要件を具備する限り、
就業規則の効力には影響がない」(昭24.3.28基発第373号)と
解されています。
(3)届出義務;
●
使用者は、
就業規則を作成した場合は(2)の意見書を添付して
所轄
労働基準監督署長に届け出なければなりません(労基法
第89条、同第90条)。
なお、届出に添付すべき意見を記した書面は、
労働者を代表する
者の署名又は記名押印のあるものでなければなりません。
(同法施行規則第49条第2項)
●上記の「意見書」について、場合によっては、
労働者代表がその意見を表明することを故意に拒んだり、
あるいは意見を記した書面の提出を拒み、若しくはその書面に
署名ないし記名押印しないことがあった場合に、解釈例規では
次のように示しています。
「
労働組合又は
労働者の過半数を代表する者の意見書に
労働者代表の署名又は記名押印がないことを理由として
受理しない向もあるようであるが、
労働組合が故意に意見を表明しない場合、又は意見書に署名
又は記名押印しない場合でも、
意見を聴いたことが客観的に証明できる限り、これを
受理するよう取扱われたい」(昭23.5.11基発第735号、昭23.
10.30基発第1575号)という措置をとることとしています。
(4)
就業規則の周知義務;
●
就業規則の周知義務については労基法第106条に
定められていますが、
その周知方法の具体的な内容については同法施行規則
第52条の2に次のように示されています。
イ.常時作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
「作業場」とは、
事業場内において密接な関連の下に作業の
行われている個々の現場をいい、主として建物別等によって
判定すべきものとされています(昭23.4.5基発第535号)。
ロ.書面を
労働者に交付すること。
「書面」には、印刷物及び複写した書面も含まれるものと
しています(平11.1.29基発第45号)。
ハ.磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し
かつ、各作業場に
労働者が当該記録の内容を常時確認できる
機器を設置すること。
この方法は、パーソナルコンピュータ等の電子機器等を使用して、
フロッピーディスクや社内のホストコンピュータ等に
記録された
就業規則等を
労働者が随時確認できるように
することを規定したものです。
この点について解釈例規には「この方法によって周知を行う
場合には、法令等の内容を磁気テープ、磁気ディスクその他
これらに準ずる物に記録し、当該記録の内容を電子的データとして
取りだし常時確認できるよう、
各作業場にパーソナルコンピュータ等の機器を設置し、かつ、
労働者に当該機器の操作の権限を与えるとともに、
その操作の方法を
労働者に周知させることにより、
労働者が
必要なときに容易に当該記録を確認できるようにすること」
(前掲
通達)としています。
○ 周知の重要性については裁判例においても「
就業規則が
法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずる
ためには、
その内容を適用を受ける
事業場の
労働者に周知させる手続が
採られていることを要するものというべきである。」(「フジ興産
事件」平15.10.10最高裁第三小法廷判決)とあるように、
就業規則作成に関する4つの義務のうち、この
労働者への
周知義務が最も大事な義務であると言えます。
そのことは、
就業規則作成の趣旨・目的から考えて、
企業秩序維持と企業成績向上にとって最も大事な人的資源である
労働者に対する職場のルール、あるいは
労働条件の集大成が
就業規則であることからも当然のことと考えるものです。
★☆[今日のちょっといい話]★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
●言語社会学者、鈴木孝夫さんの言葉です。
「自分のものは誰でも大事にする。地球も自分のものだと思えば
大事にするし、節約も楽しんでできる。
できるできないではない。やるかやらないかなんです。」と。
ブルーにきらめく宇宙のオアシス、地球。
インターネット、そしてマッハの時代、地球にいる人類全体が
今や、運命共同体と言っても過言ではありません。
故に、福島第一原発の問題も日本だけの問題ではなく、
地球の人類全体に関わる問題ではないでしょうか。
従って、日本から恥ずべき発信だけはして欲しくないものです。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
◆◆
労働者が10人未満の場合の
就業規則作成の
法的捉え方 ◆◆
○
常時使用する労働者が10人未満の場合に、
就業規則作成に
関する法的な捉え方とはどのようになっているのでしょうか。
行政
通達(平20.1.23基発第0123004号)に次のようにあります。
「常時10人未満の
労働者を使用する
使用者は、
就業規則作成の
義務はないが、本条の趣旨にかんがみ、
就業規則を成文化
することは望ましいことであり、当該
使用者において
就業規則を
作成したときは、それも本法にいう『
就業規則』として、
第91条(
制裁規定の制限)、第92条(法令及び
労働協約との
関係)及び第93条(
労働契約との関係)の規定は
適用があると解すべきであり、
また、
労働契約法第7条、第9条、第10条、第12条及び
第13条の『
就業規則』についても、
本条(注:法89条)により作成が義務付けられていない
就業規則も含まれるものである」としています。
つまり、作成義務のない10人未満の
労働者を使用する
使用者が
就業規則を作成した場合は、
作成義務のある
使用者の場合と同じく、
就業規則に関連する
法令の規制を受けることを示しています。
また、労基法のみならず、
労働契約法に定められている
上記の
通達に示された「
就業規則」に係る規定の適用も
受けることになります。
○ 次に意見聴取と届出については、作成義務のない
事業場が
就業規則を作成したとしても、これらの義務の
履行は
必要ないと考えられます。
つまり、
就業規則を作成(又は変更)して届出する義務があるのは
常時10人以上の
労働者を使用する
事業場(労基法第89条
第1項)であって、かつ、
行政官庁(所轄
労働基準監督署長)に届出する場合には、
労働者から意見聴取した「意見書」を添付しなければ
なりません(同法第90条第2項)。
従って、届出義務が課されていない
事業場については、
添付書類としての「意見書」も作成する必要がないことになります。
(故に、当然
労働者代表の選出も不要となります)
ただし、常時10人未満の
事業場で任意に
就業規則を作成した
場合であっても、法第106条の規定に基づき、
当該
事業場の
労働者に対して、その内容を周知して
いなければ、その
就業規則の効力が否定されることになるため
注意する必要があります。
◆◆
就業規則の重要性 ◆◆
○ 先にも触れましたが、
就業規則の意義は、
企業にとっては、考え方も性格等も異なる多くの
労働者を
雇用して、
経営方針、経営計画に基づいて企業活動を行うためには、
労働者の
労働条件を統一的、画一的に決めておく必要があります。
また、一定の
事業場内や職場の秩序を維持することも必要であり
それらをまとめた文書のことを
就業規則といいます。
そして、
就業規則は常に最新の法令に準拠したものに
改定しておく必要もあります。
その意味から、
就業規則は大変重要なものですが、
それは次のような職場生活あるいは
労働者自身の人生にとっても
大事な規定が定められているからです。
(1)自己自身の生活はもとより、妻や家族の生計維持のために
必要な
賃金体系があること。
(2)職階、職級制度により自己の社会的立場が決定されること。
例えば、名刺の肩書等。
(3)親兄弟の死去や結婚、子の誕生等に係る
慶弔休暇や
弔慰金、祝金等が規定されていること。
(4)業務上の
出張旅費や各種
経費の内容と使用方法等が
定められていること。
(5)業務上の負傷・疾病、業務外の疾病等の際の会社としての
保障等が規定されていること。
(6)転勤等や配転等で自分も家族も含めて、人生の転換点に
なる場合もあること。また、思いもかけず解雇や
整理解雇等で
人生が不本意な方向に向かうかも知れず、それらに関する
規定が置かれていること、等々。
○ 以上からお分かりのように、職場生活は、自己の
生活基盤であるとともに、
自己の人生の目的実現の基礎を提供するものであり、
事業場の
労働者が10人以上であると10人未満であるとを
問わず、重要な規則であると言えます。
また、
使用者として止むを得ず
懲戒処分や解雇を行う場合には、
その根拠となる規定が
就業規則になければなりません。
特に、
懲戒解雇処分の場合、
就業規則に該当する具体的な事由に
基づかなければ無効とされる判例が多くあります。
従って、常時10人未満の
労働者を使用する
事業場にあっても
明文の規定として
就業規則を作成すべきであると
考えるものです。(了)
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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。
今回もやはり、永田町醜話を書かなければなりません。
それは、被災地と被災者そっちのけで、権力闘争に明け暮れる
菅首相はじめ無能議員に怒りを禁じ得ないからです。
●海江田経産相が安全確認したとして九州電力玄海原発の
運転再開を地元に要請した直後に、
菅首相が定期検査中の原発の運転再開要件として、唐突に
「ストレステスト(安全検査)」を打ち出した。
また出た、閣内不一致。海江田経産相の面木丸つぶれ・・・
ここにも連携の悪さが露呈してしまった。
確かに、原発に関しては石橋を叩いて渡るほどの慎重さが必要だし
菅首相のいうストレステストも正論でしょう。
それなら、もっと早期に打ち出して置くべきであると言いたい。
さすがに、これには全国知事会も政府の対応を「場当たり的」と
史上初めて緊急提言に盛り込んだほどだ。
●混乱が冷めやらぬなかの13日に行った記者会見で
「脱・原発依存」を表明した。これも、閣僚は誰も知らず
突然、菅首相から発せられたものだ。
しかも、この内容が、戦後エネルギー政策の大展開というには
各種のメディアが報じたように、あまりにも具体性に欠け、
道筋のない空疎なものであった。
これも、国民の耳に優しい音調であり正論には違いないだろう。
しかし、深刻な電力不足が予想される中で「脱・原発」の
「看板」だけを掲げるのは責任ある立場として無責任すぎる。
専門家に言わせると、電力供給の30%を担ってきた原発を
減らせば、暮らしや経済活動に大きな影響が出るのは当然のことだ。
しかも、国民や企業の善意や協力にすがり、当面の電力不足は
回避できそうだから、として政策の大転換を宣言するのは、
到底、責任ある為政者の姿勢とは言えない。
●その一方で、自然エネルギーの普及を強調する菅首相。
これも大事なことであり、今後とも推進していくべきだが、
現時点でみると総電力のわずか1%にしかならず、発電量は
天候などで変動し、何よりもコストが高い。
いずれにしても、菅首相が表明することは重要な視点だが、
閣議にもかけず、独善で行うのは単なる独裁者の言だ。
しかも、原発は戦後66年間の間に、安全に配慮しつつ、
かつ、国民の暗黙の了解のもとに進めてきた国家プロジェクトだ。
それだけに、あらゆる角度から検討を重ね、熟慮のすえに
発表すべき命題でもあろう。
それだけに菅首相には、福島第一原発の事故に伴う国民の
不安に乗じて、脱原発を唱えることで、政権延命を図る思惑も
あったのではと観測されている。
一連の場当たり的言動が、多くの混乱を引き起こしてはいまいか。
まさに、天災から人災へ、そして、今や菅災に移りつつあると
思うのは、筆者一人だけであろうか。
では、また次号でお会いしましょう。
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★メールマガジン「経営・
労務管理ビジネス用語の
あれっ!これ、どうだった?!」
★発行責任者 小野寺 弘
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あれっ! これ、どうだった?!
第55回 労働者が10人未満の事業所でも就業規則を
作成した場合、届け出る必要があるか?
<第70号> 平成23年7月18日(月)
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こんにちは!
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。
1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。
厚生労働省の発表によると、2009年の「相対的貧困率」が
前回調査より0.3ポイント増の16.0%となり、
1985年以降で最も高くなったとしています。
また、65歳以上の高齢者のみで構成される世帯数は、
調査開始以来、初めて1000万世帯を突破しました。
さらに65歳以上同士の「老老介護」は45.9%にも
なっています。
そして、1世帯当たりの平均所得は549万円余であり、
生活意識については、「苦しい」と答えた世帯割合が59.4%と
前年より1.3ポイントの増加となっています。
いずれも、前途に不安が残る話題ですが、真夏の輝く
太陽のような希望ある施策が欲しいですね。
さて、本論ですが、ある事業所で従業員が10人未満ですが
職場秩序を維持するために、職場のルールでもある就業規則を
作成しようと考えているのですが、
就業規則を作成した場合は、行政官庁に届け出る必要が
あるのでしょうか、との問い合わせがありました。
今回は、この点について考えてみます。
◆◆ 就業規則作成に係る4つの義務 ◆◆
○ 労働基準法(以下「労基法」)では、常時使用する労働者が
10人以上の場合には就業規則を作成し、
所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません(第89条)。
この場合、就業規則作成に関して、使用者に4つの義務が
課せられています。
すなわち、就業規則の「作成義務」「意見聴取義務」「届出義務」
「周知義務」の4項目です。順に説明します。
(1)就業規則の作成義務;
●使用者は、常時雇用する労働者が10人以上であれば、
必ず就業規則を作成しなければなりません。
この場合の労働者には、正社員はもとよりパートタイマーや
アルバイト等の非正規雇用者も含まれます。
従って、例えば正社員が1人でパートが9名でも合計10人
以上になるため、作成義務があります。
なお「10人以上」とは、常態として10人以上の意であり、
時として10人未満になることがあっても該当します。
逆に、常時8人であるが、繁忙期に2~3人雇い入れるという
場合は作成義務はないとされています。
●また、10人以上か否かを判断する単位は、企業単位(本支店
を含む)ではなく、あくまで事業場単位としています。
例えば、ある企業の本店が30名、A支店が12名、B支店が
8名の場合に、本店、A支店、B支店はそれぞれが
独立の事業場となり、
この場合は本店、A支店が就業規則の作成義務がありますが、
B支店については作成義務がないことになります。
●作成の内容としては、労基法第89条に定める必要事項を
すべて含んだものを作成することを意味しており、
必要記載事項を欠いている場合には、
それが必ず定めなければならない絶対的必要記載事項は
もちろんのこと、
事業所として定めた場合には、必ず就業規則に
規定しなければならない相対的必要記載事項である場合でも
「作成」の義務を果たしたとは言えず、やはり処罰の対象と
なるものと解されています(昭25.2.20基収第276号)。
(2)意見聴取義務;
●就業規則を作成(又は変更)する場合には、
必ず、過半数労働者で組織する労働組合(組合がない場合には、
労働者の過半数を代表する者)の意見を聴かなければなりません。
この場合、同意を得るとか協議をするとか、ということまで
要求しているものではありません。
この点について解釈例規で次のように示しています。
「『労働組合の意見を聴かなければならない』というのは、
労働組合との協議決定を要求するものではなく、
当該就業規則についての労働組合の意見を聴けば労働基準法の
違反とはならないとの趣旨である」(昭25.3.15基収第525号)
としています。
●つまり、使用者としてはその表明された意見を尊重すべきことは
大事な要素ではあるが、法律上は、その意見に拘束されることは
ないといえます。
この点についても解釈例規では「就業規則に添付した意見書の
内容が、当該就業規則に全面的に反対するものであると、
特定部分に関して反対するものであるとを問わず、
又その反対理由の如何を問わず、その効力発生についての
他の要件を具備する限り、
就業規則の効力には影響がない」(昭24.3.28基発第373号)と
解されています。
(3)届出義務;
●使用者は、就業規則を作成した場合は(2)の意見書を添付して
所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません(労基法
第89条、同第90条)。
なお、届出に添付すべき意見を記した書面は、労働者を代表する
者の署名又は記名押印のあるものでなければなりません。
(同法施行規則第49条第2項)
●上記の「意見書」について、場合によっては、
労働者代表がその意見を表明することを故意に拒んだり、
あるいは意見を記した書面の提出を拒み、若しくはその書面に
署名ないし記名押印しないことがあった場合に、解釈例規では
次のように示しています。
「労働組合又は労働者の過半数を代表する者の意見書に
労働者代表の署名又は記名押印がないことを理由として
受理しない向もあるようであるが、
労働組合が故意に意見を表明しない場合、又は意見書に署名
又は記名押印しない場合でも、
意見を聴いたことが客観的に証明できる限り、これを
受理するよう取扱われたい」(昭23.5.11基発第735号、昭23.
10.30基発第1575号)という措置をとることとしています。
(4)就業規則の周知義務;
●就業規則の周知義務については労基法第106条に
定められていますが、
その周知方法の具体的な内容については同法施行規則
第52条の2に次のように示されています。
イ.常時作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
「作業場」とは、事業場内において密接な関連の下に作業の
行われている個々の現場をいい、主として建物別等によって
判定すべきものとされています(昭23.4.5基発第535号)。
ロ.書面を労働者に交付すること。
「書面」には、印刷物及び複写した書面も含まれるものと
しています(平11.1.29基発第45号)。
ハ.磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し
かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる
機器を設置すること。
この方法は、パーソナルコンピュータ等の電子機器等を使用して、
フロッピーディスクや社内のホストコンピュータ等に
記録された就業規則等を労働者が随時確認できるように
することを規定したものです。
この点について解釈例規には「この方法によって周知を行う
場合には、法令等の内容を磁気テープ、磁気ディスクその他
これらに準ずる物に記録し、当該記録の内容を電子的データとして
取りだし常時確認できるよう、
各作業場にパーソナルコンピュータ等の機器を設置し、かつ、
労働者に当該機器の操作の権限を与えるとともに、
その操作の方法を労働者に周知させることにより、労働者が
必要なときに容易に当該記録を確認できるようにすること」
(前掲通達)としています。
○ 周知の重要性については裁判例においても「就業規則が
法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずる
ためには、
その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が
採られていることを要するものというべきである。」(「フジ興産
事件」平15.10.10最高裁第三小法廷判決)とあるように、
就業規則作成に関する4つの義務のうち、この労働者への
周知義務が最も大事な義務であると言えます。
そのことは、就業規則作成の趣旨・目的から考えて、
企業秩序維持と企業成績向上にとって最も大事な人的資源である
労働者に対する職場のルール、あるいは労働条件の集大成が
就業規則であることからも当然のことと考えるものです。
★☆[今日のちょっといい話]★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
●言語社会学者、鈴木孝夫さんの言葉です。
「自分のものは誰でも大事にする。地球も自分のものだと思えば
大事にするし、節約も楽しんでできる。
できるできないではない。やるかやらないかなんです。」と。
ブルーにきらめく宇宙のオアシス、地球。
インターネット、そしてマッハの時代、地球にいる人類全体が
今や、運命共同体と言っても過言ではありません。
故に、福島第一原発の問題も日本だけの問題ではなく、
地球の人類全体に関わる問題ではないでしょうか。
従って、日本から恥ずべき発信だけはして欲しくないものです。
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◆◆ 労働者が10人未満の場合の就業規則作成の
法的捉え方 ◆◆
○ 常時使用する労働者が10人未満の場合に、就業規則作成に
関する法的な捉え方とはどのようになっているのでしょうか。
行政通達(平20.1.23基発第0123004号)に次のようにあります。
「常時10人未満の労働者を使用する使用者は、就業規則作成の
義務はないが、本条の趣旨にかんがみ、就業規則を成文化
することは望ましいことであり、当該使用者において就業規則を
作成したときは、それも本法にいう『就業規則』として、
第91条(制裁規定の制限)、第92条(法令及び労働協約との
関係)及び第93条(労働契約との関係)の規定は
適用があると解すべきであり、
また、労働契約法第7条、第9条、第10条、第12条及び
第13条の『就業規則』についても、
本条(注:法89条)により作成が義務付けられていない
就業規則も含まれるものである」としています。
つまり、作成義務のない10人未満の労働者を使用する
使用者が就業規則を作成した場合は、
作成義務のある使用者の場合と同じく、就業規則に関連する
法令の規制を受けることを示しています。
また、労基法のみならず、労働契約法に定められている
上記の通達に示された「就業規則」に係る規定の適用も
受けることになります。
○ 次に意見聴取と届出については、作成義務のない事業場が
就業規則を作成したとしても、これらの義務の履行は
必要ないと考えられます。
つまり、就業規則を作成(又は変更)して届出する義務があるのは
常時10人以上の労働者を使用する事業場(労基法第89条
第1項)であって、かつ、
行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届出する場合には、
労働者から意見聴取した「意見書」を添付しなければ
なりません(同法第90条第2項)。
従って、届出義務が課されていない事業場については、
添付書類としての「意見書」も作成する必要がないことになります。
(故に、当然労働者代表の選出も不要となります)
ただし、常時10人未満の事業場で任意に就業規則を作成した
場合であっても、法第106条の規定に基づき、
当該事業場の労働者に対して、その内容を周知して
いなければ、その就業規則の効力が否定されることになるため
注意する必要があります。
◆◆ 就業規則の重要性 ◆◆
○ 先にも触れましたが、就業規則の意義は、
企業にとっては、考え方も性格等も異なる多くの労働者を
雇用して、
経営方針、経営計画に基づいて企業活動を行うためには、
労働者の労働条件を統一的、画一的に決めておく必要があります。
また、一定の事業場内や職場の秩序を維持することも必要であり
それらをまとめた文書のことを就業規則といいます。
そして、就業規則は常に最新の法令に準拠したものに
改定しておく必要もあります。
その意味から、就業規則は大変重要なものですが、
それは次のような職場生活あるいは労働者自身の人生にとっても
大事な規定が定められているからです。
(1)自己自身の生活はもとより、妻や家族の生計維持のために
必要な賃金体系があること。
(2)職階、職級制度により自己の社会的立場が決定されること。
例えば、名刺の肩書等。
(3)親兄弟の死去や結婚、子の誕生等に係る慶弔休暇や
弔慰金、祝金等が規定されていること。
(4)業務上の出張旅費や各種経費の内容と使用方法等が
定められていること。
(5)業務上の負傷・疾病、業務外の疾病等の際の会社としての
保障等が規定されていること。
(6)転勤等や配転等で自分も家族も含めて、人生の転換点に
なる場合もあること。また、思いもかけず解雇や整理解雇等で
人生が不本意な方向に向かうかも知れず、それらに関する
規定が置かれていること、等々。
○ 以上からお分かりのように、職場生活は、自己の
生活基盤であるとともに、
自己の人生の目的実現の基礎を提供するものであり、
事業場の労働者が10人以上であると10人未満であるとを
問わず、重要な規則であると言えます。
また、使用者として止むを得ず懲戒処分や解雇を行う場合には、
その根拠となる規定が就業規則になければなりません。
特に、懲戒解雇処分の場合、就業規則に該当する具体的な事由に
基づかなければ無効とされる判例が多くあります。
従って、常時10人未満の労働者を使用する事業場にあっても
明文の規定として就業規則を作成すべきであると
考えるものです。(了)
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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。
今回もやはり、永田町醜話を書かなければなりません。
それは、被災地と被災者そっちのけで、権力闘争に明け暮れる
菅首相はじめ無能議員に怒りを禁じ得ないからです。
●海江田経産相が安全確認したとして九州電力玄海原発の
運転再開を地元に要請した直後に、
菅首相が定期検査中の原発の運転再開要件として、唐突に
「ストレステスト(安全検査)」を打ち出した。
また出た、閣内不一致。海江田経産相の面木丸つぶれ・・・
ここにも連携の悪さが露呈してしまった。
確かに、原発に関しては石橋を叩いて渡るほどの慎重さが必要だし
菅首相のいうストレステストも正論でしょう。
それなら、もっと早期に打ち出して置くべきであると言いたい。
さすがに、これには全国知事会も政府の対応を「場当たり的」と
史上初めて緊急提言に盛り込んだほどだ。
●混乱が冷めやらぬなかの13日に行った記者会見で
「脱・原発依存」を表明した。これも、閣僚は誰も知らず
突然、菅首相から発せられたものだ。
しかも、この内容が、戦後エネルギー政策の大展開というには
各種のメディアが報じたように、あまりにも具体性に欠け、
道筋のない空疎なものであった。
これも、国民の耳に優しい音調であり正論には違いないだろう。
しかし、深刻な電力不足が予想される中で「脱・原発」の
「看板」だけを掲げるのは責任ある立場として無責任すぎる。
専門家に言わせると、電力供給の30%を担ってきた原発を
減らせば、暮らしや経済活動に大きな影響が出るのは当然のことだ。
しかも、国民や企業の善意や協力にすがり、当面の電力不足は
回避できそうだから、として政策の大転換を宣言するのは、
到底、責任ある為政者の姿勢とは言えない。
●その一方で、自然エネルギーの普及を強調する菅首相。
これも大事なことであり、今後とも推進していくべきだが、
現時点でみると総電力のわずか1%にしかならず、発電量は
天候などで変動し、何よりもコストが高い。
いずれにしても、菅首相が表明することは重要な視点だが、
閣議にもかけず、独善で行うのは単なる独裁者の言だ。
しかも、原発は戦後66年間の間に、安全に配慮しつつ、
かつ、国民の暗黙の了解のもとに進めてきた国家プロジェクトだ。
それだけに、あらゆる角度から検討を重ね、熟慮のすえに
発表すべき命題でもあろう。
それだけに菅首相には、福島第一原発の事故に伴う国民の
不安に乗じて、脱原発を唱えることで、政権延命を図る思惑も
あったのではと観測されている。
一連の場当たり的言動が、多くの混乱を引き起こしてはいまいか。
まさに、天災から人災へ、そして、今や菅災に移りつつあると
思うのは、筆者一人だけであろうか。
では、また次号でお会いしましょう。
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