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【レジュメ編】 商法(その1〔2〕)

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-44 ★★★
           【レジュメ編】 商法(その1〔2〕)

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■■■ 最近の最高裁判例 ■■■
■■■ 高年齢者雇用安定法 ■■■
■■■ 今年の予想 ■■■
■■■ お願い ■■■
■■■ 編集後記 ■■■

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■■■ 最近の最高裁判例 ■■■
平成16年および17年の最高裁判例から、憲法と民法の復習を兼ねて、注目すべき判例を
取上げました。

【1】最高裁判例「アジア太平洋戦争韓国人犠牲者補償請求事件」(平成16年11月29
   日)
【裁判要旨】
日韓請求権協定の締結後、旧日本軍の軍人軍属等であったが日本国との平和条約により
日本国籍を喪失した大韓民国に在住する韓国人に対して何らかの措置を講ずることなく
戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2項、恩給法9条1項3号を存置したことは憲法14条1項
に違反しない。

〔憲法〕
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は
門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

〔関連判例〕
●● 最高裁判例「補償金請求」(民集第22巻12号2808頁)
【裁判要旨】
平和条約が締結された結果、同条約第一四条(a)項2(1)の規定により在外資産を喪失し
た者は、国に対しその喪失による損害について補償を請求することはできない。
【理由】
戦争中から戦後占領時代にかけての国の存亡にかかわる非常事態にあつては、国民のす
べてが、多かれ少なかれ、その生命・身体・財産の犠牲を堪え忍ぶべく余儀なくされて
いたのであつて、これらの犠牲は、いずれも、戦争犠牲または戦争損害として、国民の
ひとしく受忍しなければならなかつたところであり、右の在外資産の賠償への充当によ
る損害のごときも、一種の戦争損害として、これに対する補償は、憲法の全く予想しな
いところというべきである。
これを要するに、このような戦争損害は、他の種々の戦争損害と同様、多かれ少なか
れ、国民のひとしく堪え忍ばなければならないやむを得ない犠牲なのであつて、その補
償のごときは、さきに説示したように、憲法二九条三項の全く予想しないところで、同
条項の適用の余地のない問題といわなければならない。

〔憲法〕
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

【2】最高裁判例「損害賠償請求事件」(民集第59巻6号1569頁)
【裁判要旨】
公立図書館の職員である公務員が、閲覧に供されている図書の廃棄について、著作者又
は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをすることは、
当該図書の著作者の人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となる。
【理由】
公立図書館は、この目的を達成するために地方公共団体が設置した公の施設である。公
立図書館が、住民に図書館資料を提供するための公的な場であるということは、そこで
閲覧に供された図書の著作者にとって、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場で
もあるということができる。したがって、公立図書館の図書館職員が閲覧に供されてい
る図書を著作者の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄すること
は、当該著作者が著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損な
うものといわなければならない。そして、著作者の思想の自由、表現の自由が憲法によ
り保障された基本的人権であることにもかんがみると、公立図書館において、その著作
物が閲覧に供されている著作者が有する上記利益は、法的保護に値する人格的利益であ
ると解するのが相当である。

〔憲法〕
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

〔地方自治法〕
(公の施設)
第二百四十四条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に
供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2 普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同
じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならな
い。
3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱
いをしてはならない。

【3】最高裁判例「差押処分無効確認等請求事件」(平成17年04月26日)
【裁判要旨】
農業災害補償法(平成11年法律第69号による改正前のもの)が定める水稲等の耕作の業務
を営む者と農業共済組合との間で農作物共済の共済関係が当然に成立するという仕組み
(当然加入制)は憲法22条1項に違反しない。
【理由】
農業共済組合の区域内に住所を有する水稲等の耕作の業務を営む者で、その耕作面積が
一定の規模以上のものは、農業共済組合の組合員とされ、組合員たる資格の喪失、死亡
などの事由がない限り、任意に組合から脱退することができない(農業災害補償法)。
この資格を有する組合員と農業共済組合との間では、農作物共済の共済関係が当然に成
立し、組合員は、定額の共済掛金の支払義務を負担し、事務費を賦課される。
上記の当然加入制の採用は、公共の福祉に合致する目的のために必要かつ合理的な範囲
にとどまる措置ということができ、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するも
ので著しく不合理であることが明白であるとは認め難い。したがって、上記の当然加入
制を定める法の規定は、職業の自由を侵害するものとして憲法22条1項に違反すると
いうことはできない。

〔憲法〕
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有
する。

〔関連判例〕
●● 最高裁判例「滞納処分無効確認請求」(民集第12巻2号190頁)
【判示事項】
一定の住民を国民健康保険強制加入させ、保険料を町民税の賦課等級に応じて納付さ
せることにした町条例の憲法適否。
【裁判要旨】
一定の住民を国民健康保険強制加入させ、保険料を町民税の賦課等級に応じて納付さ
せることにした町条例の憲法適否。
【理由】
本件のごとく、町民の代表者たる町議会が絶対過半数を以て決議し、県知事の認可を受
けて適法に制定された小城町国民健康保険条例五条が、し原則として住民全部を被保険
者として国民健康保険にいわゆる強制加入せしめることとし、また、同条例三一条が、
世帯主である被保険者は、町民税の賦課等級により保険料を納付しなければならないと
規定して、被保険者中保険料支払の能力ありと認められる世帯主だけを町民税の賦課等
級により保険料支払義務ある旨規定したからといつて、憲法一九条に何等かかわりない
のは勿論、その他の憲法上の自由権および同法二九条一項所定の財産権を故なく侵害す
るものということはできない。

〔憲法〕
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。

●● 最高裁判例「小売商業調整特別措置法違反」(刑集第26巻9号586頁)
【裁判要旨】
(ア)国が、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、社会経済全体
   の均衡のとれた調和的発展を図るため、その社会経済政策の実施の一手段とし
   て、立法により、個人の経済活動に対し、一定の規則措置を講ずることは、それ
   が右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、憲法の禁ずるとこ
   ろではない。
(イ)個人の経済活動に対する法的規制措置については、裁判所は、立法府がその裁量
   権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白な場合に限つ
   て、これを違憲とすることができる。
(ウ)小売商業調整特別措置法所定の小売市場の許可規制のために、国民の健康で文化
   的な最低限度の生活に具体的に特段の影響を及ぼしたという事実は、本件記録上
   もこれを認めることができないから、所論憲法二五条一項違反の主張は、その前
   提を欠き、上告適法の理由にあたらない。

〔憲法〕
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

【4】最高裁判例「選挙無効請求事件」(平成17年09月27日)
【裁判要旨】
衆議院議員選挙を無効とする判決を求める訴えは、衆議院の解散によって訴えの利益を
失う。

【5】最高裁判例「車両通行妨害等禁止請求事件」(平成17年03月29日)
【裁判要旨】
通行地役権者が承役地に車両を恒常的に駐車させている者に対し車両の通行を妨害する
ことの禁止を求めることができるとされた事例。
【理由】
本件通路土地が、宅地の分譲が行われた際に分譲業者が公道から各分譲地に至る通路と
して開設したものであること、本件地役権が、本件通路土地の幅員全部につき、上記分
譲業者と宅地の分譲を受けた者との間の合意に基づいて設定された通行地役権であるこ
とに加え、分譲完了後、本件通路土地の所有権が、同土地を利用する地域住民の自治会
に移転されたという経緯や、同土地の現況が舗装された位置指定道路であり、通路以外
の利用が考えられないこと等にもかんがみると、本件地役権の内容は、通行の目的の限
度において、本件通路土地全体を自由に使用できるというものであると解するのが相当
である。そうすると、本件車両を本件通路土地に恒常的に駐車させることによって同土
地の一部を独占的に使用することは、この部分を上告人が通行することを妨げ、本件地
役権を侵害するものというべきであって、上告人は、地役権に基づく妨害排除ないし妨
害予防請求権に基づき、被上告人に対し、このような行為の禁止を求めることができる
と解すべきである。
そして、通行地役権は、承役地を通行の目的の範囲内において使用することのできる権
利にすぎないから、通行地役権に基づき、通行妨害行為の禁止を超えて、承役地の目的
外使用一般の禁止を求めることはできない。

民法
(地役権の内容)
第二百八十条 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の
便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序
に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。

【6】最高裁判例「建物明渡請求事件」(民集第59巻2号356頁)
【裁判要旨】
(ア)抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者であっても、
   抵当権設定登記後に占有権原の設定を受けたものであり、その設定に抵当権の実
   行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交
   換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような
   状態があるときは、抵当権者は、当該占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請
   求として、上記状態の排除を求めることができる。
(イ)抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵
   当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適
   切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、当該占有者に対
   し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。

〔関連判例〕
●● 最高裁判例「建物明渡請求事件」(民集第53巻8号1899頁)
【裁判要旨】
第三者が抵当不動産を不法占有することにより、競売手続の進行が害され適正な価額よ
りも売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵
当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、抵
当不動産の所有者に対して有する右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存する
よう求める請求権を保全するため、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位
行使することができる。

民法
抵当権の内容)
第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務担保に供
した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、
この章の規定を準用する。

【7】最高裁判例「土地明渡請求事件」(平成17年03月10日)
【裁判要旨】
土地の賃借人が、土地を無断で転貸し、転借人が同土地上に産業廃棄物を不法に投棄し
たという事実関係の下では、賃借人は、賃貸借契約の終了に基づく原状回復義務とし
て、上記産業廃棄物を撤去すべき義務を負う。
【理由】
不動産の賃借人は、賃貸借契約上の義務に違反する行為により生じた賃借目的物の毀損
について、賃貸借契約終了時に原状回復義務を負うことは明らかである。前記事実関係
によれば、賃借人であるBは、本件賃貸借契約上の義務に違反して、Cに対し本件土地
を無断で転貸し、Cが本件土地に産業廃棄物を不法に投棄したというのであるから、B
は、本件土地の原状回復義務として、上記産業廃棄物を撤去すべき義務を免れることは
できないというべきである。

民法
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃
借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃
貸人は、契約の解除をすることができる。

使用貸借の規定の準用)
第六百十六条 第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規
定は、賃貸借について準用する。

(借主による収去)
第五百九十八条 借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去すること
ができる。

〔関連判例〕
●● 最高裁判例「家屋明渡請求」(民集第5巻6号359頁)
【裁判要旨】
賃借権の譲渡または転貸を承諾しない家屋の賃貸人は、賃借契約を解除しなくても、譲
受人または転借人に対しその明渡を求めることができる。

●● 最高裁判例「建物収去土地明渡請求」(民集第7巻9号979頁)
【裁判要旨】
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合で
も、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段
の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはでき
ない。

【8】最高裁判例「損害賠償請求事件」(民集第59巻9号2428頁)
【裁判要旨】
(ア)人はみだりに自己の容ぼう、姿態を撮影されないということについて法律上保護
   されるべき人格的利益を有し、ある者の容ぼう、姿態をその承諾なく撮影するこ
   とが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被
   撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総
   合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超
   えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。
(イ)写真週刊誌のカメラマンが、刑事事件被疑者の動静を報道する目的で、勾留
   由開示手続が行われた法廷において同人の容ぼう、姿態をその承諾なく撮影した
   行為は、手錠をされ、腰縄を付けられた状態の同人の容ぼう、姿態を、裁判所の
   許可を受けることなく隠し撮りしたものであることなど判示の事情の下において
   は、不法行為法上違法である。
(ウ)人は自己の容ぼう、姿態を描写したイラスト画についてみだりに公表されない人
   格的利益を有するが、上記イラスト画を公表する行為が社会生活上受忍の限度を
   超えて不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては、イラスト画は
   その描写に作者の主観や技術を反映するものであり、公表された場合も、これを
   前提とした受け取り方をされるという特質が参酌されなければならない。
(エ)刑事事件被告人について、法廷において訴訟関係人から資料を見せられている
   状態及び手振りを交えて話しているような状態の容ぼう、姿態を描いたイラスト
   画を写真週刊誌に掲載して公表した行為は、不法行為法上違法であるとはいえな
   い。 
(オ)刑事事件被告人について、法廷において手錠、腰縄により身体の拘束を受けて
   いる状態の容ぼう、姿態を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して公表した行
   為は、不法行為法上違法である。
【理由】
本件イラスト画のうち下段のイラスト画2点は、法廷において、被上告人が訴訟関係人
から資料を見せられている状態及び手振りを交えて話しているような状態が描かれたも
のである。現在の我が国において、一般に、法廷内における被告人の動静を報道するた
めにその容ぼう等をイラスト画により描写し、これを新聞、雑誌等に掲載することは社
会的に是認された行為であると解するのが相当であり、上記のような表現内容のイラス
ト画を公表する行為は、社会生活上受忍すべき限度を超えて被上告人の人格的利益を侵
害するものとはいえないというべきである。したがって、上記イラスト画2点を本件第
2記事に組み込み、本件写真週刊誌に掲載して公表した行為については、不法行為法上
違法であると評価することはできない。しかしながら、本件イラスト画のうち上段のも
のは、前記のとおり、被上告人が手錠、腰縄により身体の拘束を受けている状態が描か
れたものであり、そのような表現内容のイラスト画を公表する行為は、被上告人を侮辱
し、被上告人の名誉感情を侵害するものというべきであり、同イラスト画を、本件第2
記事に組み込み、本件写真週刊誌に掲載して公表した行為は、社会生活上受忍すべき限
度を超えて、被上告人の人格的利益を侵害するものであり、不法行為法上違法と評価す
べきである。

〔憲法〕
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国
民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊
重を必要とする。

民法
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害し
た場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産
以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

【9】最高裁判例「損害賠償請求事件」(民集第58巻8号2225頁)
【判示事項】
分譲住宅の譲渡契約の譲受人が同契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり価格
の適否を検討する上で重要な事実につき譲渡人において説明をしなかったことが慰謝料
請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価すべきものとされた事例
【裁判要旨】
甲らは、乙(住宅・都市整備公団)との間で、その設営に係る団地内の住宅につき賃貸借
契約を締結していたところ、乙による団地の建て替え事業の実施に当たって、上記賃貸
契約を合意解約し、上記住宅を明け渡すなどした上、建て替え後の団地内の分譲住宅
につき譲渡契約を締結したこと、上記建て替え事業の実施に当たり甲らと乙が交わした
覚書には、乙において甲らに対し分譲住宅をあっせんした後未分譲住宅の一般公募を直
ちにすること及び一般公募における譲渡価格と甲らに対する譲渡価格が少なくとも同等
であることを意味する条項があり、甲らは、上記譲渡契約締結の時点において、上記条
項の意味するとおりの認識を有していたこと、乙は、上記時点において、甲らに対する
譲渡価格が高額に過ぎることなどから、上記一般公募を直ちにする意思を有しておら
ず、かつ、甲らにおいて上記認識を有していたことを少なくとも容易に知り得たにもか
かわらず、甲らに対し、上記一般公募を直ちにする意思がないことを説明しなかったこ
と、これにより甲らは乙の設定に係る分譲住宅の価格の適否について十分に検討した上
で上記譲渡契約を締結するか否かの意思決定をする機会を奪われたことなど判示の事情
の下においては、乙が甲らに対し上記一般公募を直ちにする意思がないことを説明しな
かったことは、慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価すべきである。

民法
不法行為による損害賠償
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者
は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

【10】最高裁判例「遺産分割及び寄与分を定める処分審判に対する抗告審の変更決定に
   対する許可抗告事件」(民集第58巻7号1979頁)
【裁判要旨】
相続人を保険契約者及び被保険者とし、共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取
人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求
権は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが、保険金の
額、この額の遺産の総額に対する比率、保険金受取人である相続人及び他の共同相続
と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して、保険金受取
人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照ら
し到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存す
る場合には、同条の類推適用により、特別受益に準じて持戻しの対象となる。

【理由】
死亡保険金請求権は、被保険者が死亡した時に初めて発生するものであり、保険契約
の払い込んだ保険料と等価関係に立つものではなく、被保険者の稼働能力に代わる給付
でもないのであるから、実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみ
ることはできない。
本件についてみるに、前記の死亡保険金については、その保険金の額、本件で遺産分割
の対象となった本件各土地の評価額、前記の経緯からうかがわれるBの遺産の総額、抗
告人ら及び相手方と被相続人らとの関係並びに本件に現れた抗告人ら及び相手方の生活
実態等に照らすと、上記特段の事情があるとまではいえない。したがって、前記の死亡
保険金は、特別受益に準じて持戻しの対象とすべきものということはできない。

民法
特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組
のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の
時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三
条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもっ
てその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者
又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留
分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

〔関連判例〕
●● 最高裁判例「保険金請求」(民集第19巻1号1頁)
【裁判要旨】
(ア)養老保険契約において被保険者死亡の場合の保険金受取人が単に「被保険者死亡
   の場合はその相続人」と指定されたときは、特段の事情のないかぎり、右契約
   は、被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として特に指定したい
   わゆる「他人のための保険契約」と解するのが相当である。
(イ)前項の場合には、当該保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に、右相続
   たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺産より離脱しているものと解すべき
   である。
★ この場合、当該死亡保険金請求権は相続財産には属さない。

【7】最高裁判例「預託金返還請求事件」(民集第59巻7号1931頁)
【判示事項】
共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権の帰属と後にされた遺産分割の効力
【裁判要旨】
相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債
権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰
属は、後にされた遺産分割の影響を受けない。
【理由】
相続開始から本件遺産分割決定が確定するまでの間に本件各不動産から生じた賃料債権
は、被上告人及び上告人らがその相続分に応じて分割単独債権として取得したものであ
り、本件口座(注:相続開始後、不動産賃料を管理していた銀行預金口座)の残金は、
これを前提として清算されるべきである。

民法
(共同相続の効力)
第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
第八百九十九条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継す
る。

(遺産の分割の効力)
第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、
第三者の権利を害することはできない。

【11】最高裁判例「遺産分割審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件」
   (民集第59巻8号2243頁)
【裁判要旨】
相続が開始して遺産分割未了の間に相続人が死亡した場合において、第2次被相続人が
取得した第1次被相続人の遺産についての相続分に応じた共有持分権は、実体上の権利
であって第2次被相続人の遺産として遺産分割の対象となり、第2次被相続人から特別
受益を受けた者があるときは、その持戻しをして具体的相続分を算定しなければならな
い。
【理由】
本件におけるA及びBの各相続の経緯は、Aが死亡してその相続が開始し、次いで、A
の遺産の分割が未了の間にAの相続人でもあるBが死亡してその相続が開始したという
ものである。そうすると、Bは、Aの相続の開始と同時に、Aの遺産について相続分に
応じた共有持分権を取得しており、これはBの遺産を構成するものであるから、これを
Bの共同相続人である抗告人及び相手方らに分属させるには、遺産分割手続を経る必要
があり、共同相続人の中にBから特別受益に当たる贈与を受けた者があるときは、その
持戻しをして各共同相続人の具体的相続分を算定しなければならない。

民法
特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組
のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の
時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三
条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもっ
てその者の相続分とする。


■■■ 高年齢者雇用安定法 ■■■
急速な高齢化の進行等に対応し、高年齢者の安定した雇用の確保等を図るため、平成16
年6月5日に高年齢者雇用安定法が改正され、このうち雇用の確保に関する部分につい
ては平成18年4月1日から施行された。この結果、事業主は、(ア)定年の引上げ、
(イ)継続雇用制度の導入、(ウ)定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じなければ
ならないこととされた。

■ 背景
年金支給開始年齢の65歳への段階的な引上げが始まっており、男性については、定額部
分は2001(平成13)年から2013(平成25)年にかけて、報酬比例部分は2013(平成25)
年から2025(平成37)年にかけて段階的に引き上げられる(女性については5年遅れの
スケジュールとなっている。)。

また、2015(平成27)年までに、労働力人口は全体としては約110万人の減少が見込ま
れている。その中で、15~29歳は220万人減少する一方、60歳以上の者は170万人の増加
が見込まれており、高い就労意欲を有する高齢者が社会の支え手として活躍し続ける社
会が求められている。

このため、高年齢者が少なくとも年金支給開始年齢(男性の年金支給開始年齢に合わせ
男女同一の年齢)までは働き続けることができるよう、平成18年4月1日から、事業主
は(ア)定年の引上げ、(イ)継続雇用制度の導入、(ウ)定年の定めの廃止のいずれ
かの措置を講じなければならないこととなった。

■ 法の規定
(1)定年を定める場合の年齢
第八条 事業主がその雇用する労働者定年(以下単に「定年」という。)の定めをす
る場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用
する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生
労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りでない。
★ 「高年齢者」とは55歳以上の者をいう(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施
  行規則1条)。

(2)高年齢者雇用確保措置
第九条 定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをして
いる事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、
次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じな
ければならない。
一 当該定年の引上げ
二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその
定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三 当該定年の定めの廃止
2 事業主は、当該事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合において
はその労働組合労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過
半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係
る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、前項第二号に掲げる措置を講
じたものとみなす。
★ 今年3月までは、高年齢者に就業機会を与えるとする努力義務であった。
★ 改正高年齢者雇用安定法は、事業主に定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の制度
  導入を義務付けているものであり、個別の労働者の65歳までの「雇用義務」を課す
  ものではない。ただし、適切な継続雇用制度の導入等がなされていない事実を把握
  した場合には、改正高年齢者雇用安定法違反となるので、公共職業安定所を通じた
  実態調査が行われ、必要に応じて、助言、指導、勧告が行われることになる。
★ 高年齢者雇用確保措置の実施義務化の対象年齢は、以下のとおり、年金(定額部
  分)の支給開始年齢の引上げスケジュールにあわせ、平成25年4月1日までに段階
  的に引き上げられる(同法附則4条)。
平成18年4月1日~平成19年3月31日
:62歳
平成19年4月1日~平成22年3月31日
:63歳
平成22年4月1日~平成25年3月31日
:64歳
平成25年4月1日以降:65歳

(3)指導、助言及び勧告
第十条 厚生労働大臣は、前条第一項の規定に違反している事業主に対し、必要な指導
及び助言をすることができる。
2 厚生労働大臣は、前項の規定による指導又は助言をした場合において、その事業主
がなお前条第一項の規定に違反していると認めるときは、当該事業主に対し、高年齢者
雇用確保措置を講ずべきことを勧告することができる。
★ 高年齢者雇用安定法では、指導、助言や勧告に違反しても、制裁的な公表措置は規
  定されていない。ただし、情報公開法に基づく情報公開請求があった場合は、その
  具体的内容により、資料が存在する場合には、企業名が公開されることがあり得
  る。

■ 継続雇用制度の内容
・「継続雇用制度」とは、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者
 をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。
継続雇用制度には、定年年齢が設定されたまま、その定年年齢に到達した者を退職
 せることなく引き続き雇用する「勤務延長制度」と、定年年齢に達した者をいったん
 退職させた後、再び雇用する「再雇用制度」の2つの制度がある。
★ 継続雇用制度を導入する場合には、原則として希望者全員を対象とすることが求め
  られる。
★ 雇用条件については、高年齢者の安定した雇用の確保が図られたものであれば、必
  ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用を求めるものではない。
★ 労使で十分に協議の上、定められたものであっても、事業主が恣意的に特定の対象
  者の継続雇用を排除しようとするなど高年齢者雇用安定法の改正の趣旨や他の労働
  関連法規に反する又は公序良俗に反するものは認められない。
★ 継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る望ましい基準の策定にあたっては、意
  欲、能力等を具体的に測るものであること(具体性)および必要とされる能力等が
  客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること(客観
  性)が求められている。
★ 男女別の定年を定めることや、継続雇用制度の対象を男性のみとするなど、労働者
  が女性であることを理由として男性と異なる取扱いをすることは、男女雇用機会均
  等法で禁止されている。

☆ 仄聞(そくぶん)するところ、上場企業では、定年の引上げが5%以下、継続雇用
  制度の導入が95%以上、そして、定年の定めの廃止が1%以下の導入状況になって
  いるそうです。


■■■ 今年の予想 ■■■
今年の行政書士試験がどのような出題になるかについては、いろいろな予想があるよう
です。私見では、問題の全般的なレベルは、これまでの3年間の問題と大きな違いはな
いのではないかと思います。もし、そうであるならば、商法会社法)が全面的に出題
されない今年こそ、合格の狙い目の年ではないかと思われます。

無論、試験制度(出題範囲、問題数、試験時間等)が変わった最初の年であって、新し
い記述式問題も出題されることからすれば、かなり大変であることは間違いありませ
ん。しかし、それであっても、来年以降のことを考えれば(残念ながら、これ以上問題
がやさしくなることは、到底考えられない状況です。)、なお合格するチャンスの大き
い年であると思います。

まだ、時間は十分にあります。この1ヵ月半の使い方次第ではないでしょうか。まだま
だ前向きに攻めるスタンスが大事です(この時期の安易なまとめは、結果として小さく
まとまってしまうので、絶対に禁物です。)。弱点、補強箇所、確実な得点源とすべき
ポイント等を、時間を掛けて丁寧にフォローしてください。

なお、私の場合には(平成15年に受験しました。)、9月に入っても、地方自治法、戸
籍法や住民基本台帳法が終わらず、答練等では、こうした問題を空白のまま解答した記
憶があります。ですから、繰り返しになりますが、まだまだ前向きの攻めを心掛けてく
ださい。


■■■ お願い ■■■ 
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。

質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。


■■■ 編集後記 ■■■
今回と次回は、商法です。「今年の予想」にも述べたところですが、今年に限っては、
商法については、会社法により実質的な改正が行われた部分については、原則出題され
ないことから、商法の勉強の仕方が合否に影響しそうです。

私見では、商法については、決して深入りせず、場合によっては、答練や公開模試の問
題を中心に、勉強する範囲をぎりぎりに絞り込み、商法全体で50%の得点を確実に狙う
ことが合格に直結するのではないかと思います。場合によっては、出題範囲が特別な年
であるため、全滅しても仕方ないと考えて差し支えないと思います。

少なくとも(旧)商法会社法の比較をして、「実質的な改正が行われた部分」に該当
するかどうかを確認する手間は省くべきではないでしょうか。会社法については、行政
書士試験後に、実務を見据えて、(場合によっては初歩から)新会社法を勉強する方が
効率的です。

何度か申し上げましたが、大事なことは、行政書士試験合格後の実務を見据えて、効率
的な勉強によって、手堅く合格することです。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
 発行者Web:http://www.ohta-shoshi.com
 発行者メールアドレス:e-mail@ohta-shoshi.com
 発行協力「まぐまぐ」:http://www.mag2.com/
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