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みなし労働における休日労働時間の算定方法の考察

平成21年11月15日 第74号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1.みなし労働における休日労働時間算定方法の考察
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1.みなし労働における休日労働時間算定方法の考察

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<1> はじめに

事業場外のみなし労働時間制や裁量労働時間制では、いわゆる1日の労働時
間についてのみなしであり、1日の実労働時間算定が困難であるが為に、一
定の時間を労働したとしてみなす制度である。
 であるから、労働日については使用者が指定しなければならず、よって休日
に対しては所定の割増率による賃金を支払わなければならない。
では休日労働をさせた場合には、どの様に労働時間算定しなければならない
であろうか。

<2> 事業場外のみなし労働時間制における休日労働について

(1)休日所定労働時間
 
 所定労働日には、所定労働時間の定めがある。
しかし休日については本来労働義務がない日であり、所定労働時間という概念
がない。
そもそも休日労働に対してみなし労働時間制は適用されるのであろうか。

(2)休日のみなし時間についての判例
 
 日本インシュアランスサービス事件(東京地裁平21.2.16判 労判9
83号51頁)で裁判所は以下の通り判断している。
 直行直帰を常態として生命保険の給付や新規契約について各種調査する労働
者について、事業場外のみなし労働制を適用しており、休日労働手当が未払い
であり、その時間の算定について争った事件である。
 休日のみなし労働時間についてどの様に考えていくのかが争点であった。
原告は「みなし労働時間制であっても、休日労働については実労働時間に応じ
割増賃金を支払うべしというのが労働基準法の要請である」と主張したが、
これに対し裁判所は休日におけるみなし時間の適用を認め、みなし時間の算定
方法について「本質的に使用者に制定する権限があり」とし、「恣意にわたる
ような定め方や、時間外手当請求権を実質的に無意味としかねないような裁量
権の逸脱が存するか否かの点に限って審査すべきである」とした。

 この結論に至る前提としては以下の通りである。
 「本件の業務職員の業務執行の態様は、その労働のほとんど全部が使用者
管理下になく、労働者の裁量の下にその自宅等で行われているため」「この様
な業務執行の態様の下では、休日労働のあり方も、平日のそれと本質的に差異
はないのであるから、休日労働算定も、平日同様、みなし労働時間制による
ことが、その業務執行の態様に本質的に適っているということもできる。
しかしながら、休日は本来労働することを予定していない日であるため、「所
労働時間」や「通常所定労働時間」(労働基準法第38条の2第1項)とい
ったものが存在しないので、みなすべき労働時間が存在せず、これによること
ができないというにすぎない。平日の労働にみなし労働時間制採用されてい
る場合でも、休日労働は実労働時間によらなければならないという格別の要請
が労基法上存在するとは解されない。かえって、休日労働のみは実労働時間
よらねばならないということになれば、経験則上、休日労働の方が作業効率が
低下するのが通常であるのに、使用者はその労働に対して、高い割増賃金を支
払わなければならず、経済原則にも相反することになりかねない。」とある。

ポイントは、「平日の労働にみなし労働時間制採用されている場合でも、休
日労働は実労働時間によらなければならないという格別の要請が労基法上存在
するとは解されない。」という点であり、休日労働について事業場外のみなし
労働時間制を適用することに問題はないと示したことである。

(3)結論

 結論として、休日労働に対して実労働時間によって割増賃金を算出しようと
も、事業場外のみなし労働制により割増賃金を算出しようともその選択権は、
「恣意にわたるような定め方や、時間外手当請求権を実質的に無意味としかね
ないような裁量権の逸脱が存」しない限り、経営者がその裁量を下に行うこと
が出来ると解釈できる。

<3>裁量労働時間
 
 裁量労働時間制についても、事業場外のみなし労働時間制と同様に、労働時
間についてのみなしのみである。
 よって、休日については別途賃金を支払う必要がある。
裁量労働制では、労使協定休日労働の場合のみなし労働時間の規定があれば
その時間を労働したものとしてみなすことは可能であるが、協定に休日出勤
取り扱いが規定されていなければ、実労働時間をもって休日出勤に対する賃金
額を決定しなければならない。

<4>まとめ

 休日労働における労働時間算定については以上である。
休日労働について、実労働時間をもって賃金額を算出するのか、みなし時間を
もって賃金額を算出するのか、また、休日について平日とは違った労働時間
みなし時間とするのかを明確にしなければならない。
 前述の判例では、これらの設定は経営者の裁量によるとされているが、「恣
意にわたるような定め方や、時間外手当請求権を実質的に無意味としかねない
ような裁量権の逸脱が存」しない限り、経営者がその裁量を下に行うことが出
来るということを忘れずに、実態にあった時間の設定をしなければならない。


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