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タイムカードと実労働時間についての考察

平成23年1月15日 第88号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1. タイムカードと実労働時間についての考察

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1. タイムカードと実労働時間についての考察

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1.タイムカードと実労働時間についての考察

(1)一律切り捨ては違法か

労働時間の集計に当たり、15分単位や30分単位で集計しているケースがあ
る。
労働基準法では、日々の労働時間の集計に当たっては1分単位で集計をする必
要がある。
一律に15分未満は切り捨てるという集計方法は違法である。

労働組合によっては例えば15分単位で集計する場合、7分未満は切り捨て、
8分以上は15分に切り上げという取り扱いをすることについて積極的に提案
することがある。
この点については後述するが、この方法は、即違法とは言えない。

(2)法的に認められる端数処理

通達(昭和63.3.14基発150号)では、割増賃金の端数処理について
以下の方法は良いとされている。
・1ヶ月における時間外労働休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1
時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1
時間に繰り上げること。
・1時間あたりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭
未満の端数切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
・1ヶ月における時間外労働休日労働及び深夜業の各々の割増賃金の総額に
1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数切り捨て、それ以上を1円
に切り上げること。
就業規則で定めることを前提に、1ヶ月の賃金支払額(賃金の一部を控除し
て支払う場合には控除した額。以下同じ)に100円未満の端数が生じた場
合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払う
こと。
就業規則で定めることを前提に、1ヶ月の賃金支払額に生じた1000円未
満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。

これ以外の端数処理は認められていない。

(3)遅刻の場合の端数処理

遅刻した場合の取り扱いについて考えてみる。
8分遅刻した場合、15分の賃金をカットすることは違法かどうか。
これは、減俸の制裁として行うのであれば可能である。
就業規則に遅刻した場合の賃金カットについて、上記のように取り扱う旨を減
俸の制裁として行う旨明記し、労働基準法第91条の制限内で行うのであれば
違法ではない。

第91条とは、「減給が一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一
賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない。」という規定
である。

2.労働時間の概念

(1)拘束時間と実労働時間は違う

タイムカードの打刻時間が、そのまま労働時間であろうか。
答えは否である。
タイムカードは、拘束時間を表しているにすぎない。
労働時間の始まりと終わりの概念については、労働基準法は「使用者の直接の
指揮監督の下にある時間」である。
事実上、使用者の直接の指揮監督下に入った時刻が始業時刻であり、離脱した
時間、時刻が休憩時間及び終業時刻である。
労働時間を集計するのであり、拘束時間がそのまま実労働時間になるわけで
はない。
よってタイムカードの時刻がそのまま労働時間となることは絶対ではない。
もっとも一律15分未満のカットやサービス残業を強いていれば違法であり、
15分未満のカットが、実質的に使用者の指揮監督下からの離脱をしていれば
これは労働時間ではない。

前述した15分単位の労働時間の集計について、7分切り捨て8分以上を15
分に切り上げという処理を労働組合側から提案する場合にもこの様な考え方が
背景にあっての提案である。
この場合においても、7分間現実に使用者の指揮監督下に入っていれば支払わ
なければならない。
労働基準法24条及び37条が強行法規である以上労使間の合意があっても認
められない。
しかしながら、実務上終業して直ちにタイムカードを打刻することができる環
境は極めて少なく、数分程度のロスタイムがあるケースが多く、前述の組合の
提案はそれを踏まえてのことであろう。

(2)タイムカードと労働時間

日野自動車事件(昭和57.7.1東京高裁判決、昭和59.10.18最高
裁一小判決)では、「一般に労働基準法第32条の労働時間とは、労働者が使
用者の指揮、命令の下に拘束されている時間をいうものと解されている。
ところで、労働者が現実に労働力を供給する始業時刻の前段階である入門後職
場到着までの歩行に要する時間や作業服、作業靴への着替えお所要時間をも労
働時間に含めるべきか否かは、就業規則や職場慣行等によってこれを決するの
が相当であると考えられる。」と示し、石川島播磨事件(昭和52.8.10
東京地裁判決)等においても「更衣時間については業務の必要性、義務性に加
えて使用者の直接的な指揮命令下に行うという拘束性のある場合を除いては労
働時間として取り扱わなくても差し障りない」との判例がある。

よってタイムカードの打刻時間が始業時刻や終業時刻であるかどうかは、実態
を判断しなければならず、勤怠管理のチェックを日常業務として行わなければ
ならない。
私の事務所でも取り扱っているが、ASPによる勤怠集計システムが比較的低
価格で導入できるようになり、遠隔地の拠点の勤怠状況を本社でタイムリーに
チャック出来る事も容易になった。
この様なシステムを入れて管理することもおすすめしたい。

(3)時間外労働に関する推定力

弁護士の安西愈先生は著書(新しい労使関係のための労働時間休日・休暇の
法律実務「全訂7版」p110-p111)で「」とし、「タイムカードの打
刻時刻と終業時刻との間隔が短時間の場合には、タイムカードの目的から定時
刻に労働が終了したという事実上の推定が働くので、通常は、定時終業として
取り扱われる。また、例えその間に労働をした事実があっても、使用者の指示
によったものでない場合には、僅少な時間は企業社会通念上定時刻に終業した
ものとして取り扱っても違法ではなく、通常月給制の社員の場合には30分程
度は退勤猶予時間とされる。」と述べている。
しかし昨今の状況を鑑みると、いくら安西先生が述べておられても、クライア
ントにこれを提案する勇気は私にはない。

一方で、「労働時間算定義務」は労働者にあり、労働時間労働者に申告させ
てもその立証義務は使用者にあるとし、終業時刻とタイムカードの打刻時刻が
長時間の間隔である場合には、使用者が構内にはいたが労働していなかった旨
を立証しない限り、タイムカード打刻時刻近くまで働いていたと労働者から請
求された場合にはタイムカード打刻時間までを労働時間として取り扱わなけれ
ばならないという推定が事実上働く(平成9.3.13東京地裁判決、三晃印
刷事件)とされている。

(4)労災における労働時間労働基準法における労働時間の違い

混同されている方々も多いと思うが、前回のメルマガで述べたとおり休憩時間
中でも使用者の管理下にあった場合には労災の対象となる場合がある。
労災の対象となっても、労働基準法上の賃金請求権はその時間について発生す
るものではない。
業務遂行性を広義に捉えて労働者保護を図っているということである。

3.まとめ

1分単位で労働時間を計算するのかというご相談が多い。
労働時間についてはそうである。
問題はタイムカードの記録時間と実労働時間の関係である。
業務終了後直ちにタイムカードを打刻させるという実務は難しい。
勤怠を毎日チェックするということもハードルが高い。
筆者が問題提起したかったことは、タイムカードの記録時間と実労働時間の相
違ということである。
そして、その立証責任使用者にある。
ASPシステム等を上手く使い、管理職の勤怠管理に対する意識を高めていく
ことが重要である。

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