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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
石下雅樹法律・
特許事務所 第81号 2012-06-26
http://www.ishioroshi.com/
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弊所取扱分野紹介(
契約書作成・
契約書チェック・英文
契約)
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(弁護士
費用オンライン自動見積もあります)
弊所取扱分野紹介(英文
契約書翻訳・英語法律文書和訳)
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0 ご挨拶と不発行のお詫び
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
本マガジン読者の皆様におかれましては益々御清祥のこととお慶び
申し上げます。
さて、本マガジンは、執筆と監修担当の弊所代表石下の業務上の都
合により、本年3月8日発行の第80号を最後に発行できずに3ヶ月
以上経過してしまいました。この点、弊所の不手際に深くお詫び申
し上げます。
今後はできる限り定期発行に努めていく所存ですので、何卒よろし
くお願い申し上げます。
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1 今回の判例
残業手当込の
基本給と
労働基準法
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最高裁 平成24年3月8日判決
派遣
労働者A氏は、派遣会社B社との
雇用契約を締結し、就労して
いました。
雇用契約では、あらかじめ
基本給の額を定め、月間
総労働時間が1
80時間を超えた場合には超えた時間につき1時間あたり一定額の
残業手当を支払うが、月間
総労働時間が140時間に満たない場合
にはその満たない時間につき
基本給から1時間あたり一定額を差し引
いて支給する旨の定めがなされていました。つまり、
基本給にあら
かじめ
残業手当が含まれていたことになります。
しかし、A氏は、
労働基準法37条1項に定める
残業手当が適正に
支払われていなかったとして、B社に対し支払を求めました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 裁判所の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
裁判所は、以下のように判断しました。
(1)
基本給の一部が他の部分と区別されて時間外の
割増賃金とさ
れていたわけではなく、
時間外労働の時間は月によって大きく変化
するため、通常の
労働時間の
賃金に当たる部分と時間外の
割増賃金
に当たる部分とを判別することができない。このため、月間180
時間以内の
労働時間中の
時間外労働について
割増賃金が支払われた
とすることはできない。
(2)A氏は、
割増賃金の支払を受けなくてもよい旨の
意思表示は
していない。
(3)したがって、B社はA氏に対し、月間180時間以内の労働
時間中の
時間外労働についても,本件
雇用契約に基づく
基本給とは
別に、
労働基準法37条1項の規定する
割増賃金を支払う義務を負
う。
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3 解説
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(1)
残業手当の定額払い
労基法の定めの一つとして、
使用者は、
労働者が労基法に定める
法定労働時間を超えて労働をした場合、
労働者に対して超えた分の
労働時間に対する
割増賃金つまり
残業手当を支払わなければならな
いとされています(労基法37条1項)。
しかし、職種や業種によっては、残業・
深夜労働の時間数の
算定
が難しい等の理由で、実務上、その都度
残業手当を計算するのでは
なく、本件のように、あらかじめ
残業手当込みの金額を定額の基本
給として支払うケースがあります。
この方法は、残業時間に対応した
残業手当がきちんと支払われる
等一定の要件が満たされている限り、違法ではありませんし、会社
にとっては事務の簡便化やコスト削減につながるというメリットが
ある場合もあることと思います。
しかし、この
残業手当の定額払いは、裁判例に示された裁判所の
考え方を踏まえ慎重に制度設計しないと、いざ争われた場合に効力
が否定されてしまうことがあります。それで以下、裁判所の考え方
の概要をご説明します。
(2)
残業手当の定額払いの要件
裁判例の考え方をまとめると、
残業手当を定額として
基本給に含
めて支給する場合は、おおむね少なくとも以下の要件を満たす必要
があると考えられます。
● 労基法に基づいて計算した
残業手当以上の額が支給されて
いる
●
基本給のうち
残業手当にあたる部分が明確であり、金額的
内訳を明示する
● 実際の
時間外労働に対する
割増賃金が
固定残業手当の額を
下回っている場合は、その差額を支払う
(3)実務上の対応
以上を考えると、
残業手当の定額払いを実施している企業は、自
社の運用方法が、労基法を含む関係法規や裁判所の考え方に照らし
て適正なものか否か、検討する必要があるように思われます。
そして、必要に応じ、
雇用契約書・
就業規則・
賃金規程・給与明
細等の書面の内容も見直し、さらには場合により、弁護士などの法
律専門家に相談し、チェックしてもらうことが必要となるかもしれ
ません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4 お知らせ 弊所執筆記事の雑誌掲載について
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今般、弊所石下弁護士・江間布実子弁護士が執筆した「実務に役
立つ6つのポイント『中小企業のための知財
契約のコツ』」が「月
刊
総務」2012年5月号に掲載されました。
自社の貴重な財産である知的財産を守るために、特に中小企業で
比較的使用頻度の高い知財
契約を中心に、
契約締結上の重要点・注
意点を解説した実務的な記事となっています。
お知らせがやや遅きに失した感はありますが、詳細は以下をご覧
ください。
http://www.nana-cc.com/soumu/back/back_2012/2012_may.html
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本マガジンの無断複製、転載はご遠慮ください。
ただし、本マガジンの内容を社内研修用資料等に使用したいといっ
たお申出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原
則として無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアド
レス宛、メールでお申出ください。
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【編集発行】石下雅樹法律・
特許事務所
〒220-0011 神奈川県横浜市西区高島2-10-13
横浜東口ビル4階
mailto:
info@ishioroshi.com
弊所取扱分野紹介(リーガルリサーチ・法律調査)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_legalresearchb.html
顧問弁護士
契約(
顧問料)についての詳細
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_feeb.html
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本マガジンに対するご意見、ご感想は
mailto:
info@ishioroshi.com まで
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1 今回の判例 残業手当込の基本給と労働基準法
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最高裁 平成24年3月8日判決
派遣労働者A氏は、派遣会社B社との雇用契約を締結し、就労して
いました。
雇用契約では、あらかじめ基本給の額を定め、月間総労働時間が1
80時間を超えた場合には超えた時間につき1時間あたり一定額の
残業手当を支払うが、月間総労働時間が140時間に満たない場合
にはその満たない時間につき基本給から1時間あたり一定額を差し引
いて支給する旨の定めがなされていました。つまり、基本給にあら
かじめ残業手当が含まれていたことになります。
しかし、A氏は、労働基準法37条1項に定める残業手当が適正に
支払われていなかったとして、B社に対し支払を求めました。
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2 裁判所の判断
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裁判所は、以下のように判断しました。
(1)基本給の一部が他の部分と区別されて時間外の割増賃金とさ
れていたわけではなく、時間外労働の時間は月によって大きく変化
するため、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外の割増賃金
に当たる部分とを判別することができない。このため、月間180
時間以内の労働時間中の時間外労働について割増賃金が支払われた
とすることはできない。
(2)A氏は、割増賃金の支払を受けなくてもよい旨の意思表示は
していない。
(3)したがって、B社はA氏に対し、月間180時間以内の労働
時間中の時間外労働についても,本件雇用契約に基づく基本給とは
別に、労働基準法37条1項の規定する割増賃金を支払う義務を負
う。
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3 解説
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(1) 残業手当の定額払い
労基法の定めの一つとして、使用者は、労働者が労基法に定める
法定労働時間を超えて労働をした場合、労働者に対して超えた分の
労働時間に対する割増賃金つまり残業手当を支払わなければならな
いとされています(労基法37条1項)。
しかし、職種や業種によっては、残業・深夜労働の時間数の算定
が難しい等の理由で、実務上、その都度残業手当を計算するのでは
なく、本件のように、あらかじめ残業手当込みの金額を定額の基本
給として支払うケースがあります。
この方法は、残業時間に対応した残業手当がきちんと支払われる
等一定の要件が満たされている限り、違法ではありませんし、会社
にとっては事務の簡便化やコスト削減につながるというメリットが
ある場合もあることと思います。
しかし、この残業手当の定額払いは、裁判例に示された裁判所の
考え方を踏まえ慎重に制度設計しないと、いざ争われた場合に効力
が否定されてしまうことがあります。それで以下、裁判所の考え方
の概要をご説明します。
(2) 残業手当の定額払いの要件
裁判例の考え方をまとめると、残業手当を定額として基本給に含
めて支給する場合は、おおむね少なくとも以下の要件を満たす必要
があると考えられます。
● 労基法に基づいて計算した残業手当以上の額が支給されて
いる
● 基本給のうち残業手当にあたる部分が明確であり、金額的
内訳を明示する
● 実際の時間外労働に対する割増賃金が固定残業手当の額を
下回っている場合は、その差額を支払う
(3)実務上の対応
以上を考えると、残業手当の定額払いを実施している企業は、自
社の運用方法が、労基法を含む関係法規や裁判所の考え方に照らし
て適正なものか否か、検討する必要があるように思われます。
そして、必要に応じ、雇用契約書・就業規則・賃金規程・給与明
細等の書面の内容も見直し、さらには場合により、弁護士などの法
律専門家に相談し、チェックしてもらうことが必要となるかもしれ
ません。
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4 お知らせ 弊所執筆記事の雑誌掲載について
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今般、弊所石下弁護士・江間布実子弁護士が執筆した「実務に役
立つ6つのポイント『中小企業のための知財契約のコツ』」が「月
刊総務」2012年5月号に掲載されました。
自社の貴重な財産である知的財産を守るために、特に中小企業で
比較的使用頻度の高い知財契約を中心に、契約締結上の重要点・注
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お知らせがやや遅きに失した感はありますが、詳細は以下をご覧
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