2010年4月19日号 (no. 562)
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---3分労働ぷちコラム---
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本日のテーマ【「36協定の45時間」と「60時間超の時間外労働」】
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■45時間までなのに、60時間ルールは必要なの?
平成22年4月1日から改正された労働基準法が施行されていますが、この改正内容の中に、「1ヶ月60時間を超える時間外労働について、割増賃金率を50%以上に引き上げる」というルールがあります。
通常だと、時間外労働に対して25%以上の割増賃金を用意するところですが、時間外労働の時間が月に60時間を超えたときは、その超えた部分に対して50%以上の割増賃金が必要というわけです。ご存知とは思いますが、上記の60時間の中には通常の勤務時間は含まれません。ここでの通常の勤務時間とは、1日8時間以内の勤務時間、1週40時間(例外44時間)以内の勤務時間です(変形労働時間制における変形内の勤務時間も含まれますね)。
ただ、月に60時間を超えれば50%以上の割増という点は分かるとしても、36協定との整合性を保つという点で疑問が生まれることがあります。
36協定では、時間外勤務の限度時間(例えば、月40時間や月45時間という設定。この設定は企業ごとに違う)が予め設定されていて、この設定ラインを超えて時間外労働はさせない(しない)と労使間で決めています。
しかし、もし、月に60時間を超えて法定時間外の勤務が発生する可能性があるとすれば、36協定との調整をどうするかが問題になります。
この場合、36協定に特別条項を付ける方法がありますが、特別条項は臨時的な必要の場合に限って利用できるに留まるものですから、36協定の有効期間である1年間にわたって、ずっと特別条項を利用し続けることはできません。
もちろん、滅多なことでは月60時間を超える時間外労働が発生することはないならば、特別条項で対応することができます。
しかし、「常態的に60時間を超える時間外勤務が発生していたらどうするのか」という点。
また、「うちの会社の36協定では、月45時間が時間外勤務の限度時間なのに、60時間を超えて時間外勤務してもいいの?」という点。
上記2点が問題となります。
■36協定の内容と60時間超の時間外規制を一致させる必要はない。
まず、常態的に時間外労働が月60時間を越えている場合。
この場合、60時間を超えた部分は割増賃金が50%以上になる点は良いとして、36協定の限度時間は超えているはずです。これがダメかというと、完全にダメとまでは言いにくいところなのです。
時間外の割増賃金を支払っていなければ違法ですが、限度時間を超えて違法とは判断しにくいのです。
なぜならば、限度時間は「法律」ではなく、厚生労働大臣が定めた「基準」(労働基準法36条を参照)ですから、法律違反というよりも"基準違反"と表現するほうが正しいように思います。それゆえ、限度時間をを超えたからといって、それを「違法」とは表現しにくいわけです(違法っぽい感じはしますが)。もちろん、この場合でも、労働基準法違反と同じように労働基準監督署から「限度時間を超えないように努めてください」と指導はされます。
では、なぜ限度時間を超えると分かっているのに、「60時間超の時間外勤務で50%以上の割増賃金」というルールを設けたのか。
「限度時間までしか時間外勤務できないのに、60時間を超えた時間外労働はもともと無理なことなのでは? にもかかわらず、なぜ50%割増のルールを設定したの? 意味ないんじゃないの?」と思う人も少なからずいらっしゃるかもしれません。
この指摘はごもっともで、「ルール的に利用できないものを作っても仕方がない」と思えるのは無理のないこと。
にもかかわらず50%割増ルールを採用したのは、「たとえ限度時間を超えることがあったとしても、時間外労働を減らしたい」という考えがあったのではないかと思います。
時間外労働の取り扱いでのキモは、「時間外の割増賃金がきちんと支払われているかどうか」という点にあります。そのため、きちんと割増賃金が支払われているならば、時間外勤務の時間が少々長くなっても許容しているのでしょうね。
「限度時間を超えたらどうなりますか?」と労働局の方に伺ったことがありますが、「その場合は指導します」というだけでしたので、「もし、限度時間を超えることがあっても、それを違法化させることまではない」という判断なのかもしれません。だからといって、限度時間を超えてもいいのだ、とまで考えてしまうのは行き過ぎでしょうね。絶対に、絶対に、36協定の限度時間を超えてはいけないのではなく、なるべく超えないように労使間で努力する義務はあります(労働基準法の改正内容に含まれている)。
改正された労働基準法でも、限度時間の範囲で時間外勤務をする努力義務がありますので、安易に限度時間を超えて良いとまでは考えていないのでしょう。ただ、一方で、絶対に限度時間を超えてはいけないと考えるのもまた行き過ぎで、たとえ限度時間を超えてもキチンと時間外の割増賃金を支払っていればOKと判断されることもあるわけです。
結局、限度時間は、なるべく超えないようにするべきだが、絶対に超えてはいけないものとまで考えられているわけではないものなのですね。
60時間超のルールとの調整もあって、あえて限度時間のルールはファジーに運用されているのではないかと思います。
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