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解雇の実務 ~主に問題社員の対処方法について~

平成20年9月15日 第60号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1. 解雇の実務 ~主に問題社員の対処方法について~

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ブログもよろしくお願い致します。
人事のブレーン社会保険労務士日記」です。
http://norifumi.cocolog-nifty.com/blog/
是非見てみて下さい!

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1.解雇の実務 ~主に問題社員の対処方法について~

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<1> はじめに

今回のメルマガは、友人の古川健太郎弁護士がパートナーを務める八王子ひま
わり法律事務所の論文集に寄稿したものをご紹介したい。
所長の西川忠良弁護士、真野文恵弁護士、狩集英昭弁護士そして古川健太郎弁
護士に加え、私が標記のテーマで寄稿したものである。

八王子ひまわり法律事務所は4名の弁護士が在籍し、この秋1名の弁護士を加
え多摩地域の独立系の法律事務所では大きい事務所である。

労働問題の対処にあたっては連携をして対応をさせて頂いており、その他の分
野においても連携を密にとりクライアントの問題解決に取り組ませて頂いている。

以下は寄稿文である。

<2>解雇とは何か

解雇とは使用者労働者に対して一方的に雇用関係の終了の意思表示をする行
為である。
そして、出勤不良や能力不足を理由とする普通解雇と非違行為に対して会社が
懲戒権の行使としてする懲戒解雇の2種類がある。業績不振等により行う整理
解雇は普通解雇の一類型である。
普通解雇は事後に解雇理由を付け加えることが出来るが、懲戒解雇は事後に付
け加えることが出来ない。この様な点から解雇理由について実務上は普通解雇
として構成するケースが多い。
法律では、労働基準法第20条に「30日前の予告」か「30日分の解雇予告
手当」を支払うことが義務づける手続き的な条文があるが、懲戒解雇であっても
労働基準監督署長の認定がなければこの手続きを踏む必要がある。解雇につい
て強行法規として使用者を拘束するのはこの規定だけである。平成16年1月
1日施行の改正労働基準法第18条の2で後述する最高裁で確立した解雇に関
する抽象的な一般原則である解雇権濫用法理をそのまま条文化したものが付け
加えられたが、法律上解雇に関して具体的なものは労働基準法第20条だけで
あり、解雇の合理性を考える場合、類似ケースの裁判例にあてはめて検討しな
ければならない。
解雇をする場合には色々なケースが考えられるが、経営者が悩む多くの場合に
は、能力や素行に問題のある社員を解雇する場合であろう。
本稿では、誌面の関係からこの問題ある社員の解雇について取り上げることとする。

<2>解雇権濫用法理とは何か

昭和50年4月25日に出た最高裁の判決で日本食塩事件という有名なものが
ある。
これは、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会
通念上相当として是認することが出来ない場合には、権利の濫用として無効で
ある」という内容である。
この判例が、解雇権濫用法理として確立したものになり、この抽象的な基準に
より解雇についての裁判例は出されているのである。
 また、有期雇用社員を雇用契約期間満了雇用関係を終了する場合にも、こ
解雇権濫用法理が準用され「雇止めの法理」というものが、東芝柳町工場事
件や日立メディコ事件により確立した。
 しかし、この「客観的に合理的な理由」とは何か、「社会通念上相当」とは
何かは明らかにされておらず、個々の判決の中でその都度判断されており体系
化されていない。これが解雇実務を難しくさせている。

<3>問題社員とは何か

 私が問題社員の対処方法や解雇について講演を依頼された場合、必ず「問題
社員とはどの様な社員のことですか」と質問する。
「協調性のない社員」「出勤不良の社員」「営業成績が悪い社員」「ミスの多
い社員」等々例をあげたらきりがない。結局「どこが悪い」と明確にすること
が出来ない。このように問題社員とは何であるのか誰も定義できないのである。
あえて定義するとしたら「辞めてもらいたい社員」ということになろう。
 問題社員を解雇する場合、当該労働者の問題とは何かをしっかりと整理する
必要がある。
日々注意をしていても「今日は仕事のミス」「今日は出勤不良」と違う理由で
あれば、裁判所は軽微な理由の積み重ねであり、解雇の理由にはならないと判
断されるケースがほとんどである。
しかし通常解雇に至る多くのケースでは、この様な軽微な理由の積み重ねであ
る。その軽微な理由も立証が難しく使用者に不利な判断をされるのが労働判例
の特徴である。
 そもそも「平成何年何月何日午後何時何分にAさんはこの様な仕事上のミス
をしました」と正確に記録をしている方が不自然であり、「言った言わない」
のやりとりの中で労働者側に有利な判決が出される事は使用者にとって非常に
理不尽なことである。

<4>1年間に79回も遅刻した労働者を解雇したら無効との判決

 この話をすると「1年間に79回も遅刻したのに解雇できないなんて労働判
例はけしからん」とお叱りを受ける。
 しかし、この結論に至った判決文を精査すると労働法が労働者に一方的に有
利であるという事も言い切れない。
 この判決では、使用者は勤怠にうるさくなく、当該労働者が遅刻しても全く
注意をしておらず、ある日突然以前からの勤怠も含めて当該労働者を解雇して
も、それはあまりに労働者にとって理不尽である。そもそも出勤不良で解雇を
するのであれば、最初から厳格な勤怠管理の下で懲戒権の行使をしていなさい
という内容である。
 遅刻を78回までは見逃し、ほとんど注意らしい注意をせずに79回目でい
きなり解雇をするというのでは、会社は今までどんな管理をしてきたのかと問
われたわけである。

<5>恣意性の排除

 解雇においてもっとも注意すべき点は恣意性の排除である。
ある労働者を解雇する為に恣意的にルールを変更することや、労働条件を引き
下げることは使用者にとって有利になることはない。
前述の例でいうと、今までルーズな勤怠管理をしてきて、さすがに解雇しなけ
ればならないと考え、いきなり厳格な勤怠管理を行い解雇するなということで
ある。
 問題社員の対処方法で最も重要なことは、この恣意性の排除の為に組織の中
にどの様なミスが発生し、問題が生じているのかしっかりと把握し、注意すべ
き点はその都度注意する事である。

<6>解雇は法律的に考えるべきか

 解雇について講演や執筆すると「結局労働者は解雇できない」という結論に
なってしまう。
 しかしそれは間違いである。
解雇の実務とは説得であり、退職について労使間でどの様な条件で合意するか
が重要なのである。
ほとんどのケースでは、訴訟に至れば労働者に有利なケースである。それを踏
まえた上で、退職を前提とした金銭的解決を目指して交渉するのである。
ここで注意すべき点は未払い賃金の有無である。

<7>命取りになる未払い賃金

業務上横領した労働者を解雇するケースは、使用者が有利に交渉を進めること
が出来る。しかし、その労働者に対し未払い賃金があった場合、事態は使用者
有利には進まない。横領した金銭と未払い賃金相殺できないばかりか、横領
した金額が100万円で未払い賃金は200万円である場合、横領した労働者
に対しても200万円を支払わなければならない。これが当該労働者だけであ
れば200万円で済むが、他の労働者も同様であれば、労働基準監督署告発
される前に横領事件を含めて示談しなければならない。
 未払い賃金があった場合、横領した労働者に対しても追銭を払って全体の未
払い賃金告発を防ぐケースも少なくない。
 また同様の事情から、社会保険に関しても本来もらえるべき雇用保険の基本
手当の額や傷病手当金の額を和解金額に上乗せされるケースもある。

<8>解雇に関する実務的な考え方

解雇事件に数多く立ち会って導き出した結論は、解雇は「感情的対立をベース
とした法的権利紛争」である。
 そもそも感情的対立があり、その対立が表面化したときに法的権利を主張す
る。それによって人間関係の破綻をきたした結果、解雇という問題が生じる。
 人間とは「認められたい」「評価されたい」等々の欲求があり、それが満た
されなかったり、自分に対する対応が理不尽に感じられたときに感情的になる。
 もともと感情的になる原因行為があり、それが表面的な行為として反抗的な
態度等の問題行為として表面化し、法的な権利の主張という表面的な主張に現
れてくるわけである。

<9>原因行為の解決こそ解雇の実務

 労働判例は労働者が有利という現実は変えようがない。
解雇について金銭的解決を図ることを目指していくわけであるが、この解決金
をいかに使用者に有利な金額まで引き下げていくのかということが実務である。
表面的主張である法的権利の主張をどのように解決していくのかという過程に
おいて、原因行為である感情的な対立をどのように解決していくかも併せて考
えていかなければならない。この感情的な対立を解決することにより和解金額
使用者有利にまとまる可能性が出てくるのである。

<10>まとめ

 この様に解雇とは社内ルールをしっかりと一貫性を持って運用し、恣意的な
運用を避け、労働者とのコミュニケーションを図ることによりリスクの軽減は
図れる。
 これは鬱病をはじめとする精神疾患に罹患した労働者に対しても同様である。
 しかし不幸にも解雇せざるを得ない状況になった場合には、そもそもの原因
行為を考え、その原因を解決しながら金銭的な解決を目指していくことが重要
である。
「解雇とは説得である」ということをご理解いただき、本稿のまとめとしたい。

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編集責任者 特定社会保険労務士 山本 法史
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