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労務管理

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総務の森イチオシ記事が満載: 経営ノウハウの泉(人事労務~働き方対策まで)

法定労働時間内なら、残業代が通常より低くてもいいのですか?

著者 総務の星 さん

最終更新日:2006年10月04日 17:51

こんにちは、やっと仕事が終わって、
こころおきなく相談できます(^^)。
みなさんよろしくお願いします。

当社の第1生産ラインは9時から17時が所定労働時間ですが、
たいてい17時からラインを止めて清掃やら
次生産の備材チェックで18時近くまでかかってます。

ここで質問です。
生産ラインの仕事は少々キツイので賃金を高めに設定してますが、
実は17時から18時までの分は少し低い賃金計算になってます。
上長いわく「ライン作業に比べたら、半分休憩みたいなものだから」
問題ないそうです。本当に問題ないのか少々心配です。

やはり「通常の賃金」を支払う必要があるのではないでしょうか?
そうしたら、時間単価は8時間で割って計算した額を
支給すればいいのでしょうか?

同じような賃金設定されてる会社の方おられたら
ご意見くださいませんか?
また法律に詳しい方おられたら
教えてくださいませんでしょうか?

お願いいたします。

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Re: 法定労働時間内なら、残業代が通常より低くてもいいのですか?

著者アリクイさん

2006年10月05日 09:41

ご参考になるかわかりませんが、法定の事柄を記載したいと思います。私も昔、ちょっと気になって関連するようなことを調べたことがありましたので…。
かなりアバウトな回答になってしまいますが、まず御社の給与設定は企業任意のもので、キツイから高い設定、軽いから低い設定、というのは法律のしばりは原則的にありません(最低賃金の法律を除けば)。
また、法律では「半分休憩時間のようなものだから…」という曖昧な概念はありませんので、それが業務か否かということが、その労働の対価として給与を支払う判断基準となります。
貴殿の説明では就業時間が9~17時(所定労働時間)ということは、1日の労働時間が7時間ですので、普通に考えると17時には帰宅しても良いことになり、17時以降は残業ということになると考えがちです。しかしながら、法律では1日8時間、週40時間を「法定労働時間」と定め、これを超えて労働させた場合、時間外労働となり企業は割増賃金を支払う(いわゆる残業代)義務があります。
従いまして、御社のケースですとそもそもラインの後片付け的な仕事(たぶん業務となるでしょう…)は所定労働時間外ですが、法定労働時間となり残業代を支給する義務は企業にないものと考えます。しかし、御社の場合、若干低い設定ながらも会社は残業代を支払っている訳で、この法定労働時間内の業務にも残業代を払っているのは従業員にとって良いと考えるのか、どうせ払うならちゃんと払えとなるのかは、企業内の問題のような気がします。ご質問の趣旨ですと「この低く設定した給与ってOK?」ということだと思いますが、そもそもゼロでもOKなのだから『違法性はない』と考えます。
しかしながら、労使間で「会社の指揮命令下におかれ、時間的拘束を受けているのでちゃんと普通に設定しろ」という従業員の主張は、別に良いと思いますけど、企業側としたら折角支払う義務がないのに支払っている事情との結果なのではないでしょうか?。

回答の趣旨に沿っていたか判りませんが、参考になれば幸いです(何かことを起こすときは専門家へ相談してください)。

Re: 法定労働時間内なら、残業代が通常より低くてもいいのですか?

著者カワムラ社労士事務所さん (専門家)

2006年10月05日 11:08

実務に携わっておられる立場から、わかりやすい回答をアリクイ様が上記でなさってますので、当方ではこれを法律面から回答して補強しようと思います。

【回答】
法定内残業に対する賃金は、「継続性」「労働の密度」で適性か否かを判断します。

●御社のように、法定内残業に対する賃金を「別賃金」として、通常の賃金よりも低く設定することは、違法ではありません。

●なお、「通常の賃金」を使う場合は、「当該日の通常賃金÷7時間」で計算します。

所定労働時間内の労働と比較して、労働の密度が変わらず、かつ労働内容に継続性がある場合は、割増賃金計算の基となる「通常の賃金」を支払うことが望ましい。
9:00            17:00        18:00
△←―100%―――――→▲←100%――→▲←―125%――――→
△←―所定労働時間――→△←法定内残業→△←―時間外労働――→
△←―――――――法定労働時間――――→△

所定労働時間内の労働と比較して、労働の密度が異なり、かつ労働内容に継続性がない場合に、「別賃金」を設定することは違法ではありません。
9:00            17:00         18:00
△←―100%―――――→▲←【別賃金】――→▲←―125%―――→
△←―所定労働時間――→△←法定内残業―→△←―時間外労働―→
△←―――――――法定労働時間―――――→△

回答は以上です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
回答は以上ですが、ご質問の内容は、『労使間のトラブルにもなりかねない問題』ですので、上記回答の根拠を以下に詳しくご説明します。少々専門的な内容ですので、時間の有る時にお読み下さい。

法定内残業とは

1日8時間を過ぎた労働は法定時間外の労働であるため、労基法37条によって割増賃金の支払いが使用者に義務付けられています。これが「時間外労働」です。労基法上の「時間外労働」とは、この労働を指します。

しかし一般の感覚では、会社の定めた終業時刻を超えた時間を、たとえ法定労働時間の枠内であっても「時間外労働」と言うことがあります。そのため、一般的にいう「残業」の中には、法定内残業の部分と、時間外労働の部分があることを明確に区分する必要があります。

●「法定内残業」とは、「所定労働時間を超える残業であるけれど、時間外労働に該当しない残業のこと」をいいます。

なお割増賃金に関しては、法定内残業は労基法37条の対象となりませんから、割増賃金は不要です(企業によっては支払っているところもあります)。また、残業が法定内だけであれば、三六協定の締結は不要ですが、たとえ法定内であっても残業を命じるためには,労働契約上の根拠が必要です。

法定内残業賃金に関する行政の判断】

厚生労働省労働基準局の行政通達から抜粋

法定労働時間に至るまでの時間については、割増賃金の対象とならない

割増賃金計算の基礎となる時間数は,規則第19条により当該事業場において定められた労働時間(所定7時間)である。なお,8時間目においては,週法定労働時間を超えない限り割増賃金を支払うか否かは自由である。」(昭22.12.15基発501号,昭63.3.14基発150号,平11.3.31基発168号)

②その時間帯の賃金については、一般の賃金として、最低賃金を下回らない限度で、任意に定めることができる

「(法定内超勤の時間については)原則として通常の労働時間賃金を支払わなければならない。ただし,労働協約就業規則等によって,その時間に対して別に定められた賃金額がある場合には,その別に定められた賃金額で差し支えない。」(昭23.11.4基発1592合,昭63.3.14基発150号)

③このような賃金を法定内超勤の有無にかかわらず定額で定めた場合には、当該賃金割増賃金算定の基礎となる賃金に含めなくても差し支えない。

所定労働時間が1日7時間である事業場において,所定労働時間を超え,法定労働時間にいたるまでの所定時間外労働〔注:法定内残業のこと〕に対する賃金として,本給の外に一定月額の手当を定めている場合,その手当は法37条にいう通常の労働時間賃金とは認められないから,同条(37条)の規定による割増賃金の基礎に算入しなくても差し支えない。」(昭29.7.8基収第3264号,昭63.3.14基発第150号)

行政通達②のただし書きについては、違和感を覚えられるかもしれません。

●一般に、「賃金労働時間に比例して支払われるべきもの」だと考えてしまいがちですが、これは「時給制の労働者」の発想です。なるほど時給であれば、労働時間における労働の対価として賃金が支払われますから、労働時間が延長されれば、その時間については、通常の賃金を払う必要があります。

しかし、いわゆる「正社員」の場合に、時給制を採用することはほとんどありません。
「労働密度によって、労働の対価が変わることは、必ずしも不合理なこととは言えない」のです。

※文字数オーバーのため、次ページへ

Re: 法定労働時間内なら、残業代が通常より低くてもいいのですか?

著者カワムラ社労士事務所さん (専門家)

2006年10月05日 11:13

【労働密度で賃金が変わることは決して不合理ではない】

●最近(平17年9月)の判例において、この「労働の密度」に関する判断がなされています。
判決文抜粋
「・・・なるほど、賃金は、通常、労働の対価としての性質を備えているというべきであるから、労基法上の労働時間であると認められたときは、通常は,労働契約上定められた賃金を請求することができると解するのが相当である。しかし、労基法の労働時間に当たるとされたものの一部について賃金を支払わないとか、労働時間の長さに比例した賃金を支払わないとする旨の労働契約を締結したり、就業規則を定めたりすることが全く許されない理由もない。」(賃金支払請求控訴、同附帯控訴事件H17.9.21東京高裁)

この裁判では、仮眠時間中の賃金が争われました。この事件における使用者(市)は、仮眠時間中は労働時間であると認めた上で、泊まり勤務の者については、定額の手当(3,000円)を支給し、実際に目を覚まし労働に従事した時間について割増賃金を支払っていました。これに対し労働者側は仮眠時間帯のすべてについて125%の割増賃金の支払いを求めました。

これに対し東京地裁は、「しかし、控訴人も援用する昭和23年11月4日基発1592号の解釈例規〔注:上記の行政通達②のこと〕によれば、『労働協約就業規則等によって、その一時間に対し別に定められた賃金額がある場合にはその別に定められた賃金額で差し支えない。』とされている。本件では、上記のとおり、まさに別に定められた賃金額があるということができるのであるから、控訴人の上記主張は認められない。」として訴えを退けました。

●つまり、就業規則等で定められた宿直手当が支払われる一方、実作業時間に対して時間外勤務手当および深夜勤務手当が支払われている夜間勤務については、これら以外の賃金の支払義務はないと判断したのです。

●この判決のポイントは、「労働の密度」に関する判断がなされた点です。「仮眠時間帯中に実際に作業に従事した割合は、『全仮眠時間の5.24%』に過ぎない」として、この時間帯が「通常の労働時間と比較して労働密度が疎なもの」と認定したのです。

労働密度によってその対価が変わることは決して不合理なことではないのです。

例えば、所定労働時間7時間半の事業場法定労働時間に達するまでの法定内残業の実態が、残務整理や後片付けが中心となっているようであれば、その時間帯の賃金は別に定めるべきでしょう。終業時刻をもって労働時間のカウントを打ち切るといった運用は許されませんが、それ以降にダラダラ過ごすような時間が存在する場合、それについて通常の賃金100%を保障する理由は必ずしもないということです。

割増賃金の基礎となる賃金とは】

割増賃金の基礎となる賃金

割増賃金の基礎となる賃金単価は、時給制であっても月給制であっても所定労働時間単位で計算することとされています(労基則19条)。つまり所定労働時間帯内の1時間当たりの「通常の労働時間賃金」、すなわち時給換算した賃金を用います。

●労基則19条 「通常の労働時間又は通常の労働日の賃金の計算額は、次の各号の金額に法定の労働時間を超えた労働時間数を乗じた金額とする。
1.時間によって定められた賃金については、その金額
2.日によって定められた賃金については、その金額を1日の所定労働時間数で除した金額
3.週によって定められた賃金については、その金額を週における所定労働時間数で除した金額
4.月によって定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1月平均所定労働時間数)で除した金額
5.~略~
6.出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間)において,出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間で除した金額」

時間外労働に対して支払われるべき割増賃金単価は、この労基法則19条や上記行政通達①にある通り、所定労働時間単位で計算するとされています。

●つまり、1時間当たりの通常賃金は、「当該日の通常賃金÷8時間」ではなく、
『当該日の通常賃金÷7時間』 ということになります。

このように、日給者も月給者も、行政の運用上は、時給者とみなして判断されています。この行政の運用が、「賃金労働時間に比例して支払われるべきもの」という錯覚をよんでいるのです。


【労基法37条(割増賃金)の目的とは】

労基法37条は本来、使用者割増賃金を支払わせることによって本来違法である時間外労働を抑制させることを意図しています。

法定内残業は、上記例のように密度の低い労働で占められる場合もありますが、時間外労働では、そのようなことはあってはなりません。そもそも「ダラダラ残業」などを、法律は想定していないのです。法定外に労働させるわけですから、その要件等を労使間で検討し、三六協定を締結しなければなりません。使用者もこれを踏まえて、業務の必要性がある場合にのみ、業務命令として時間外を命じなければならないのです。

参考になる資料等
労働基準法解釈総覧(第12版)」厚生労働省労働基準局 編
「トップ・ミドルのための採用から退職までの法律知識(11訂)」弁護士 安西愈 著
「法令・通達等にみる割増賃金の考え方(ビジネスガイド06・9)」社会保険労務士 森紀男/岩崎仁弥
「東京高等裁判所第20民事部 平成17年9月21日判決言渡
平成16年(ネ)第3902号,第5789号 賃金支払請求控訴,同附帯控訴事件
(原審・東京地方裁判所八王子支部平成14年(ワ)第2047号)」判決文

※以上、長くなりましたが(書き始めた時はここまで長くなるハズではなかったのですが・・・スミマセン)、参考にして頂ければ幸いです。

Re: 法定労働時間内なら、残業代が通常より低くてもいいのですか?

著者総務の星さん

2006年10月07日 09:15

おはようございます。回答ありがとうございます。

アリクイ様、アドバイスありがとうございます。給与設定は弊社内部の問題だということがよく理解できました。

カワムラ社労士事務所様、法的な根拠を解説いただきありがとうございます。これで人にも理路整然と説明できます。「労働の密度」については、考えさえられました。

弊社の給与設定は法的には問題ないとわかりましたが、所定労働時間外になってからの次生産準備が恒常化しているのは、問題な気がします。

改善すべき点があれば提案していこうと思います。またアドバイス頂ければうれしいです。

なにぶん転職して間がないもので、社内体制を完全には把握できてません。前任者が退社されてしまい、特に過去の経緯がわからず「なんで、こんなことしてるの??」と思うことが多々あるんですが、自分の考えはひとまず置いといて、まずは業務の全容把握に取り組んでます。

みなさま、これからもよろしくお願いします。

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