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労働者が10人未満の事業所でも就業規則を作成した場合、・・・

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 経営・労務管理ビジネス用語の
   あれっ! これ、どうだった?!

  第55回 労働者が10人未満の事業所でも就業規則
          作成した場合、届け出る必要があるか?
                        
<第70号>      平成23年7月18日(月)
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発行人のプロフィル⇒ http://www.ho-wiki06.com
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こんにちは! 
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。

1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。

厚生労働省の発表によると、2009年の「相対的貧困率」が
前回調査より0.3ポイント増の16.0%となり、
1985年以降で最も高くなったとしています。

また、65歳以上の高齢者のみで構成される世帯数は、
調査開始以来、初めて1000万世帯を突破しました。

さらに65歳以上同士の「老老介護」は45.9%にも
なっています。

そして、1世帯当たりの平均所得は549万円余であり、
生活意識については、「苦しい」と答えた世帯割合が59.4%と
前年より1.3ポイントの増加となっています。

いずれも、前途に不安が残る話題ですが、真夏の輝く
太陽のような希望ある施策が欲しいですね。

さて、本論ですが、ある事業所で従業員が10人未満ですが
職場秩序を維持するために、職場のルールでもある就業規則
作成しようと考えているのですが、

就業規則を作成した場合は、行政官庁に届け出る必要が
あるのでしょうか、との問い合わせがありました。

今回は、この点について考えてみます。

◆◆ 就業規則作成に係る4つの義務 ◆◆

○ 労働基準法(以下「労基法」)では、常時使用する労働者
10人以上の場合には就業規則を作成し、
所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません(第89条)。

この場合、就業規則作成に関して、使用者に4つの義務が
課せられています。

すなわち、就業規則の「作成義務」「意見聴取義務」「届出義務」
「周知義務」の4項目です。順に説明します。

(1)就業規則の作成義務;
使用者は、常時雇用する労働者が10人以上であれば、
必ず就業規則を作成しなければなりません。

この場合の労働者には、正社員はもとよりパートタイマーや
アルバイト等の非正規雇用者も含まれます。

従って、例えば正社員が1人でパートが9名でも合計10人
以上になるため、作成義務があります。

なお「10人以上」とは、常態として10人以上の意であり、
時として10人未満になることがあっても該当します。

逆に、常時8人であるが、繁忙期に2~3人雇い入れるという
場合は作成義務はないとされています。

●また、10人以上か否かを判断する単位は、企業単位(本支店
を含む)ではなく、あくまで事業場単位としています。

例えば、ある企業の本店が30名、A支店が12名、B支店が
8名の場合に、本店、A支店、B支店はそれぞれが
独立の事業場となり、

この場合は本店、A支店が就業規則の作成義務がありますが、
B支店については作成義務がないことになります。

●作成の内容としては、労基法第89条に定める必要事項を
すべて含んだものを作成することを意味しており、

必要記載事項を欠いている場合には、
それが必ず定めなければならない絶対的必要記載事項
もちろんのこと、

事業所として定めた場合には、必ず就業規則
規定しなければならない相対的必要記載事項である場合でも

「作成」の義務を果たしたとは言えず、やはり処罰の対象と
なるものと解されています(昭25.2.20基収第276号)。

(2)意見聴取義務;
就業規則を作成(又は変更)する場合には、
必ず、過半数労働者で組織する労働組合(組合がない場合には、
労働者の過半数を代表する者)の意見を聴かなければなりません。

この場合、同意を得るとか協議をするとか、ということまで
要求しているものではありません。

この点について解釈例規で次のように示しています。
「『労働組合の意見を聴かなければならない』というのは、

労働組合との協議決定を要求するものではなく、
当該就業規則についての労働組合の意見を聴けば労働基準法
違反とはならないとの趣旨である」(昭25.3.15基収第525号)
としています。

●つまり、使用者としてはその表明された意見を尊重すべきことは
大事な要素ではあるが、法律上は、その意見に拘束されることは
ないといえます。

この点についても解釈例規では「就業規則に添付した意見書の
内容が、当該就業規則に全面的に反対するものであると、

特定部分に関して反対するものであるとを問わず、
又その反対理由の如何を問わず、その効力発生についての
他の要件を具備する限り、

就業規則の効力には影響がない」(昭24.3.28基発第373号)と
解されています。

(3)届出義務;
使用者は、就業規則を作成した場合は(2)の意見書を添付して
所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません(労基法
第89条、同第90条)。

なお、届出に添付すべき意見を記した書面は、労働者を代表する
者の署名又は記名押印のあるものでなければなりません。
(同法施行規則第49条第2項)

●上記の「意見書」について、場合によっては、
労働者代表がその意見を表明することを故意に拒んだり、

あるいは意見を記した書面の提出を拒み、若しくはその書面に
署名ないし記名押印しないことがあった場合に、解釈例規では
次のように示しています。

労働組合又は労働者の過半数を代表する者の意見書に
労働者代表の署名又は記名押印がないことを理由として
受理しない向もあるようであるが、

労働組合が故意に意見を表明しない場合、又は意見書に署名
又は記名押印しない場合でも、

意見を聴いたことが客観的に証明できる限り、これを
受理するよう取扱われたい」(昭23.5.11基発第735号、昭23.
10.30基発第1575号)という措置をとることとしています。

(4)就業規則の周知義務;
就業規則の周知義務については労基法第106条に
定められていますが、

その周知方法の具体的な内容については同法施行規則
第52条の2に次のように示されています。

イ.常時作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。

「作業場」とは、事業場内において密接な関連の下に作業の
行われている個々の現場をいい、主として建物別等によって
判定すべきものとされています(昭23.4.5基発第535号)。

ロ.書面を労働者に交付すること。

「書面」には、印刷物及び複写した書面も含まれるものと
しています(平11.1.29基発第45号)。

ハ.磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し
かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる
機器を設置すること。

この方法は、パーソナルコンピュータ等の電子機器等を使用して、
フロッピーディスクや社内のホストコンピュータ等に

記録された就業規則等を労働者が随時確認できるように
することを規定したものです。

この点について解釈例規には「この方法によって周知を行う
場合には、法令等の内容を磁気テープ、磁気ディスクその他

これらに準ずる物に記録し、当該記録の内容を電子的データとして
取りだし常時確認できるよう、

各作業場にパーソナルコンピュータ等の機器を設置し、かつ、
労働者に当該機器の操作の権限を与えるとともに、

その操作の方法を労働者に周知させることにより、労働者
必要なときに容易に当該記録を確認できるようにすること」
(前掲通達)としています。

○ 周知の重要性については裁判例においても「就業規則
法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずる
ためには、

その内容を適用を受ける事業場労働者に周知させる手続が
採られていることを要するものというべきである。」(「フジ興産
事件」平15.10.10最高裁第三小法廷判決)とあるように、

就業規則作成に関する4つの義務のうち、この労働者への
周知義務が最も大事な義務であると言えます。

そのことは、就業規則作成の趣旨・目的から考えて、
企業秩序維持と企業成績向上にとって最も大事な人的資源である

労働者に対する職場のルール、あるいは労働条件の集大成が
就業規則であることからも当然のことと考えるものです。

★☆[今日のちょっといい話]★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
●言語社会学者、鈴木孝夫さんの言葉です。

「自分のものは誰でも大事にする。地球も自分のものだと思えば
大事にするし、節約も楽しんでできる。

できるできないではない。やるかやらないかなんです。」と。

ブルーにきらめく宇宙のオアシス、地球。
インターネット、そしてマッハの時代、地球にいる人類全体が
今や、運命共同体と言っても過言ではありません。

故に、福島第一原発の問題も日本だけの問題ではなく、
地球の人類全体に関わる問題ではないでしょうか。
従って、日本から恥ずべき発信だけはして欲しくないものです。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

◆◆ 労働者が10人未満の場合の就業規則作成の
法的捉え方 ◆◆

○ 常時使用する労働者が10人未満の場合に、就業規則作成に
関する法的な捉え方とはどのようになっているのでしょうか。

行政通達(平20.1.23基発第0123004号)に次のようにあります。
「常時10人未満の労働者を使用する使用者は、就業規則作成の

義務はないが、本条の趣旨にかんがみ、就業規則を成文化
することは望ましいことであり、当該使用者において就業規則
作成したときは、それも本法にいう『就業規則』として、

第91条(制裁規定の制限)、第92条(法令及び労働協約との
関係)及び第93条(労働契約との関係)の規定は
適用があると解すべきであり、

また、労働契約法第7条、第9条、第10条、第12条及び
第13条の『就業規則』についても、

本条(注:法89条)により作成が義務付けられていない
就業規則も含まれるものである」としています。

つまり、作成義務のない10人未満の労働者を使用する
使用者就業規則を作成した場合は、

作成義務のある使用者の場合と同じく、就業規則に関連する
法令の規制を受けることを示しています。

また、労基法のみならず、労働契約法に定められている
上記の通達に示された「就業規則」に係る規定の適用も
受けることになります。

○ 次に意見聴取と届出については、作成義務のない事業場
就業規則を作成したとしても、これらの義務の履行
必要ないと考えられます。

つまり、就業規則を作成(又は変更)して届出する義務があるのは
常時10人以上の労働者を使用する事業場(労基法第89条
第1項)であって、かつ、

行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届出する場合には、
労働者から意見聴取した「意見書」を添付しなければ
なりません(同法第90条第2項)。

従って、届出義務が課されていない事業場については、
添付書類としての「意見書」も作成する必要がないことになります。
(故に、当然労働者代表の選出も不要となります)

ただし、常時10人未満の事業場で任意に就業規則を作成した
場合であっても、法第106条の規定に基づき、

当該事業場労働者に対して、その内容を周知して
いなければ、その就業規則の効力が否定されることになるため
注意する必要があります。

◆◆ 就業規則の重要性 ◆◆

○ 先にも触れましたが、就業規則の意義は、
企業にとっては、考え方も性格等も異なる多くの労働者
雇用して、

経営方針、経営計画に基づいて企業活動を行うためには、
労働者労働条件を統一的、画一的に決めておく必要があります。

また、一定の事業場内や職場の秩序を維持することも必要であり
それらをまとめた文書のことを就業規則といいます。

そして、就業規則は常に最新の法令に準拠したものに
改定しておく必要もあります。

その意味から、就業規則は大変重要なものですが、
それは次のような職場生活あるいは労働者自身の人生にとっても
大事な規定が定められているからです。

(1)自己自身の生活はもとより、妻や家族の生計維持のために
必要な賃金体系があること。

(2)職階、職級制度により自己の社会的立場が決定されること。
例えば、名刺の肩書等。

(3)親兄弟の死去や結婚、子の誕生等に係る慶弔休暇
弔慰金、祝金等が規定されていること。

(4)業務上の出張旅費や各種経費の内容と使用方法等が
定められていること。

(5)業務上の負傷・疾病、業務外の疾病等の際の会社としての
保障等が規定されていること。

(6)転勤等や配転等で自分も家族も含めて、人生の転換点に
なる場合もあること。また、思いもかけず解雇や整理解雇等で

人生が不本意な方向に向かうかも知れず、それらに関する
規定が置かれていること、等々。

○ 以上からお分かりのように、職場生活は、自己の
生活基盤であるとともに、

自己の人生の目的実現の基礎を提供するものであり、
事業場労働者が10人以上であると10人未満であるとを
問わず、重要な規則であると言えます。

また、使用者として止むを得ず懲戒処分や解雇を行う場合には、
その根拠となる規定が就業規則になければなりません。

特に、懲戒解雇処分の場合、就業規則に該当する具体的な事由に
基づかなければ無効とされる判例が多くあります。

従って、常時10人未満の労働者を使用する事業場にあっても
明文の規定として就業規則を作成すべきであると
考えるものです。(了)

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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。

今回もやはり、永田町醜話を書かなければなりません。
それは、被災地と被災者そっちのけで、権力闘争に明け暮れる
菅首相はじめ無能議員に怒りを禁じ得ないからです。

●海江田経産相が安全確認したとして九州電力玄海原発の
運転再開を地元に要請した直後に、

菅首相が定期検査中の原発の運転再開要件として、唐突に
「ストレステスト(安全検査)」を打ち出した。

また出た、閣内不一致。海江田経産相の面木丸つぶれ・・・
ここにも連携の悪さが露呈してしまった。

確かに、原発に関しては石橋を叩いて渡るほどの慎重さが必要だし
菅首相のいうストレステストも正論でしょう。
それなら、もっと早期に打ち出して置くべきであると言いたい。

さすがに、これには全国知事会も政府の対応を「場当たり的」と
史上初めて緊急提言に盛り込んだほどだ。

●混乱が冷めやらぬなかの13日に行った記者会見で
「脱・原発依存」を表明した。これも、閣僚は誰も知らず
突然、菅首相から発せられたものだ。

しかも、この内容が、戦後エネルギー政策の大展開というには
各種のメディアが報じたように、あまりにも具体性に欠け、
道筋のない空疎なものであった。

これも、国民の耳に優しい音調であり正論には違いないだろう。
しかし、深刻な電力不足が予想される中で「脱・原発」の
「看板」だけを掲げるのは責任ある立場として無責任すぎる。

専門家に言わせると、電力供給の30%を担ってきた原発を
減らせば、暮らしや経済活動に大きな影響が出るのは当然のことだ。

しかも、国民や企業の善意や協力にすがり、当面の電力不足は
回避できそうだから、として政策の大転換を宣言するのは、
到底、責任ある為政者の姿勢とは言えない。

●その一方で、自然エネルギーの普及を強調する菅首相。
これも大事なことであり、今後とも推進していくべきだが、

現時点でみると総電力のわずか1%にしかならず、発電量は
天候などで変動し、何よりもコストが高い。

いずれにしても、菅首相が表明することは重要な視点だが、
閣議にもかけず、独善で行うのは単なる独裁者の言だ。

しかも、原発は戦後66年間の間に、安全に配慮しつつ、
かつ、国民の暗黙の了解のもとに進めてきた国家プロジェクトだ。

それだけに、あらゆる角度から検討を重ね、熟慮のすえに
発表すべき命題でもあろう。

それだけに菅首相には、福島第一原発の事故に伴う国民の
不安に乗じて、脱原発を唱えることで、政権延命を図る思惑も
あったのではと観測されている。

一連の場当たり的言動が、多くの混乱を引き起こしてはいまいか。
まさに、天災から人災へ、そして、今や菅災に移りつつあると
思うのは、筆者一人だけであろうか。

では、また次号でお会いしましょう。
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