平成19年1月25日時点の労働と
社会保険に関する
法改正・審議・社会動向を中心にレポートします。
★★★労働法の改正内容(法案)固まる★★★
反発強く エグゼンプション中止
政府は、以前から検討が進められてきた
労働時間適用除外制度(ホワイトカラーエグゼンプション)の導入見送りを決めました。「長時間労働を助長する」「
残業代が出なくなる」など
労働者団体が強く反発した為です。また、国民の多くからも理解が得られる状況とはなっていないとした事が最終決断に結びついたようです。
①
残業代不支給の概念が先行
厚生労働省では、導入見送りについて、「
残業代が出ないという点が独り歩きした」としています。
実際には、エグゼンプションという制度は、対象者が、①
労働時間によって成果が適切に評価できない②
使用者から業務遂行の手段や時間配分の決定の指示を受けない③年収が相当程度高い―などの四要件を満たした者のみとなっており、国内の
労働者の5%にも満たないと想定されています。
さらに、製造業などの現場で働く人、運送業の運転手、など肉体労働の
労働者はそもそも、対象ではありません。
しかし、報道による影響からか、「
残業代が出なくなる」という点にばかり注目が集まり、非常に反対ムードの高い世論がうずまきました。
政府は、7月の選挙戦を控え、1月25日からの通常国会への法案提出断念を提出したと報じられました。
②その他の改正内容の動き
労働契約法(新法)
採用から
退職までの
雇用ルールの明確化 ○国会へ法案提出
〝 解雇の金銭解決 ×導入断念
最低賃金法(改正) 生活保護支給金額より低い事を是正する為の引き上げ ○国会へ法案提出
パートタイム労働法(改正) 正社員とパートタイマーの均衡処遇 ○国会へ法案提出
雇用対策法(改正) 若者(フリーター)や地方の
雇用促進対策 ○国会へ法案提出
雇用保険法(改正)
国庫負担と企業と
労働者負担の
雇用保険料の引き下げ ○国会へ法案提出
労働基準法(改正) ホワイトカラーエグゼンプション ×導入断念
〝
残業代の
割増賃金率の引き上げ ○国会へ法案提出
被用者年金一元化法案(改正)
厚生年金と共済年金の保険料水準を揃える ○国会へ法案提出
社会保険庁改革法案(改正) 組織の抜本的改革、民間委託促進、
国税庁活用 ○国会へ法案提出
今国会は、労働国会といえるほど、労働
社会保険関連法の改正議論が多い事が特徴です。
エグゼンプション以外に大変話題となった解雇の金銭解決も中止です。金銭解決により、解雇の多発が助長されるという、やはり
労働者側の反発が大きかった為です。
新設される
労働契約法については、次に解説。
パートタイマー、フリーター対策として、各法によって、「再チャレンジ」「格差是正」対策を狙いとしています。
雇用保険の保険料引き下げは、4月からの施行が秒読み段階。まず、原案通りに可決されます。
本来、エグゼンプションとセットにして提出予定だった
割増賃金アップは、単独で審議される方向です。
そして、
社会保険関連では、年金一元化、社保庁改革が議論されます。
★★★
労働契約法の中身★★★
労働契約法は、
労働基準法に明記されていない、
労働者の
採用から
退職に至るまでの基本ルールを定める事が目的です。
労働基準法では、
採用時に
労働条件通知書を書面で交付する事が、うたわれているだけです。この
採用時の取扱いを抽出し、専門的に取り扱い、内容を
退職までの範囲に拡大したものが「
労働契約法」です。
労働基準法では、明記されていなかった為に、職場トラブルにつながる事もあった為、法制化し、明確化する必要性がありました。
それでは、
労働契約法の内容について、各場面ごとにポイント解説します。
「
採用時」
・
労働契約は
労働者と企業が対等な立場での合意に基づいて締結
・
就業規則による合理的な
労働条件は、
労働契約となる
「
契約変更」
・労使の合意の下に
労働契約の条件を変更
・5条件を満たす事により、
就業規則の変更で、
労働条件を変更できる
・
出向、
転籍のルールを明示
「
契約終了」
・有期
契約の場合、やむをえない事情が無ければ途中解約できない
いずれも、
労働基準法では、詳細な点にまでは触れていませんでした。今回、
労働契約法に明記する事によって、取扱いを統一することにつながり、また、その事が強制されます。
そして、特徴的な点は、
就業規則の役割強化です。
現在は、
労働条件を変更する際、
労働者と
使用者との交渉が必要です。
労働契約法が施行されると、
就業規則で定めた変更内容が企業と
労働者が交わした
労働契約となる、とされています。
つまり、
就業規則に
労働契約としての法的効力を持たせることにつながり、
就業規則の変更でまとめて全
労働者の
労働契約を変えることができます。
経営の機動性が高まると経済界が期待しています。
しかし現在、、
労働基準法によって、
就業規則の変更は、適法ならば、
労働者側の意見聴取だけで可能となっており、
労働契約法により、その様な場合に5条件を課すとしています。
また、これまで
出向、
転籍について労働法では全く触れられていなかった為、そのルールが
労働契約法では、明記される事になっています。
★★★派遣
労働者の事前面接解禁か★★★
厚生労働省は、今後、
労働者派遣法の大幅な改正をする検討をしています。今月下旬から月1回以上の頻度で検討会を開き、方向性を示す方針です。
現在、派遣社員の定義は、「顧客からニーズがあった時に派遣会社が人選し派遣する
雇用形態」と位置づけられています。一時的に発生した仕事を片付けてもらう
臨時雇用という発想です。そのため、企業が
経費削減を目的に正社員の派遣社員化をしないよう、事前面接は禁止しています。
しかし、事前面接を撤廃し、受け入れ企業が人選できるようになることが変更点です。「職場の調和を重視する上でもどんな人が派遣されてくるのか事前に分からないのはおかしい」との声に応えるものです。また、
雇用形態の多様化が進み、派遣社員の待遇が改善され、正社員と区別が付きにくくなったことも背景にあります。
現実的には、非公式として「顔合わせ会」などが派遣の前に行なわれています。
また、事前面接が解禁されれば、派遣
労働者側も、職場環境や
雇用条件を具体的にチェックできる事につながります。
平成19年1月25日時点の労働と社会保険に関する
法改正・審議・社会動向を中心にレポートします。
★★★労働法の改正内容(法案)固まる★★★
反発強く エグゼンプション中止
政府は、以前から検討が進められてきた労働時間適用除外制度(ホワイトカラーエグゼンプション)の導入見送りを決めました。「長時間労働を助長する」「残業代が出なくなる」など労働者団体が強く反発した為です。また、国民の多くからも理解が得られる状況とはなっていないとした事が最終決断に結びついたようです。
①残業代不支給の概念が先行
厚生労働省では、導入見送りについて、「残業代が出ないという点が独り歩きした」としています。
実際には、エグゼンプションという制度は、対象者が、①労働時間によって成果が適切に評価できない②使用者から業務遂行の手段や時間配分の決定の指示を受けない③年収が相当程度高い―などの四要件を満たした者のみとなっており、国内の労働者の5%にも満たないと想定されています。
さらに、製造業などの現場で働く人、運送業の運転手、など肉体労働の労働者はそもそも、対象ではありません。
しかし、報道による影響からか、「残業代が出なくなる」という点にばかり注目が集まり、非常に反対ムードの高い世論がうずまきました。
政府は、7月の選挙戦を控え、1月25日からの通常国会への法案提出断念を提出したと報じられました。
②その他の改正内容の動き
労働契約法(新法) 採用から退職までの雇用ルールの明確化 ○国会へ法案提出
〝 解雇の金銭解決 ×導入断念
最低賃金法(改正) 生活保護支給金額より低い事を是正する為の引き上げ ○国会へ法案提出
パートタイム労働法(改正) 正社員とパートタイマーの均衡処遇 ○国会へ法案提出
雇用対策法(改正) 若者(フリーター)や地方の雇用促進対策 ○国会へ法案提出
雇用保険法(改正) 国庫負担と企業と労働者負担の雇用保険料の引き下げ ○国会へ法案提出
労働基準法(改正) ホワイトカラーエグゼンプション ×導入断念
〝 残業代の割増賃金率の引き上げ ○国会へ法案提出
被用者年金一元化法案(改正) 厚生年金と共済年金の保険料水準を揃える ○国会へ法案提出
社会保険庁改革法案(改正) 組織の抜本的改革、民間委託促進、国税庁活用 ○国会へ法案提出
今国会は、労働国会といえるほど、労働社会保険関連法の改正議論が多い事が特徴です。
エグゼンプション以外に大変話題となった解雇の金銭解決も中止です。金銭解決により、解雇の多発が助長されるという、やはり労働者側の反発が大きかった為です。
新設される労働契約法については、次に解説。
パートタイマー、フリーター対策として、各法によって、「再チャレンジ」「格差是正」対策を狙いとしています。
雇用保険の保険料引き下げは、4月からの施行が秒読み段階。まず、原案通りに可決されます。
本来、エグゼンプションとセットにして提出予定だった割増賃金アップは、単独で審議される方向です。
そして、社会保険関連では、年金一元化、社保庁改革が議論されます。
★★★労働契約法の中身★★★
労働契約法は、労働基準法に明記されていない、労働者の採用から退職に至るまでの基本ルールを定める事が目的です。
労働基準法では、採用時に労働条件通知書を書面で交付する事が、うたわれているだけです。この採用時の取扱いを抽出し、専門的に取り扱い、内容を退職までの範囲に拡大したものが「労働契約法」です。労働基準法では、明記されていなかった為に、職場トラブルにつながる事もあった為、法制化し、明確化する必要性がありました。
それでは、労働契約法の内容について、各場面ごとにポイント解説します。
「採用時」
・労働契約は労働者と企業が対等な立場での合意に基づいて締結
・就業規則による合理的な労働条件は、労働契約となる
「契約変更」
・労使の合意の下に労働契約の条件を変更
・5条件を満たす事により、就業規則の変更で、労働条件を変更できる
・出向、転籍のルールを明示
「契約終了」
・有期契約の場合、やむをえない事情が無ければ途中解約できない
いずれも、労働基準法では、詳細な点にまでは触れていませんでした。今回、労働契約法に明記する事によって、取扱いを統一することにつながり、また、その事が強制されます。
そして、特徴的な点は、就業規則の役割強化です。
現在は、労働条件を変更する際、労働者と使用者との交渉が必要です。労働契約法が施行されると、就業規則で定めた変更内容が企業と労働者が交わした労働契約となる、とされています。
つまり、就業規則に労働契約としての法的効力を持たせることにつながり、就業規則の変更でまとめて全労働者の労働契約を変えることができます。
経営の機動性が高まると経済界が期待しています。
しかし現在、、労働基準法によって、就業規則の変更は、適法ならば、労働者側の意見聴取だけで可能となっており、労働契約法により、その様な場合に5条件を課すとしています。
また、これまで出向、転籍について労働法では全く触れられていなかった為、そのルールが労働契約法では、明記される事になっています。
★★★派遣労働者の事前面接解禁か★★★
厚生労働省は、今後、労働者派遣法の大幅な改正をする検討をしています。今月下旬から月1回以上の頻度で検討会を開き、方向性を示す方針です。
現在、派遣社員の定義は、「顧客からニーズがあった時に派遣会社が人選し派遣する雇用形態」と位置づけられています。一時的に発生した仕事を片付けてもらう臨時雇用という発想です。そのため、企業が経費削減を目的に正社員の派遣社員化をしないよう、事前面接は禁止しています。
しかし、事前面接を撤廃し、受け入れ企業が人選できるようになることが変更点です。「職場の調和を重視する上でもどんな人が派遣されてくるのか事前に分からないのはおかしい」との声に応えるものです。また、雇用形態の多様化が進み、派遣社員の待遇が改善され、正社員と区別が付きにくくなったことも背景にあります。
現実的には、非公式として「顔合わせ会」などが派遣の前に行なわれています。
また、事前面接が解禁されれば、派遣労働者側も、職場環境や雇用条件を具体的にチェックできる事につながります。