2020年2月24日号 (no. 1157)
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本日のテーマ【新型コロナウィルスで出勤できなければ、給与はどうなる?】
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
■
使用者の責任なのか、
労働者の責任なのか。
病気や怪我で仕事を休むときは時々あるかと思いますが、
流行している感染症を理由に仕事が休みになったら、
給与は出るのか出ないのか。
使用者の都合で
従業員を休ませると、
仕事をしてもらっていなくても、
一定の給与を払わなければいけなくなります。
これが「
休業手当」(
労働基準法26条)です。
ならばコロナウィルスに関連して、仕事を休むような場面になった時、
それは
使用者の責任による休業になるのか。
それとも、
労働者本人の責任による
病欠になるのか。
どこまでが
使用者の責任で、どこからが
労働者の責任なのか。
この境目をはっきりさせておきたいところです。
■本人が病気を発症していれば、それは
使用者の責任ではない。
本人が疾患だから、その人を休ませて、それで
使用者の責任だ、
というのでは、受け入れ難いもの。
会社がウイルスを運んで来て、
従業員にふりかけているわけではありませんから、
病気で休ませたからといって、
直ちに
使用者の責任になるというのは行き過ぎです。
まだ発症していない人を休ませれば、それは
使用者の責任になりますが、
すでに発症していれば、それは風邪と同じ扱いになります。
風邪をひいて休めば、
休業手当が出るのかというと、出ません。
コロナウイルスだからといって、
特別に
休業手当が出るというのはおかしな話です。
ですから、コロナウィルスでも対応は同じです。
すでに病気を発症していれば、
使用者の責任ではありません。
ですが、まだ発症していない段階で、自宅待機なり、店を閉める、
となれば、これは
使用者の責任になります。
今後、もっと感染が広がりそうだから、お店をしばらく休業する。
これは
使用者の判断で行われているもので、
営業しようと思えばできる状態です。
となると、営業していなくても、給与を払う必要があるのです。
チェーン展開する企業ならば、他店舗に一時的に移転して、
そこで
従業員に働いてもらえば、休業を回避できます。
ちなみに、経済的理由で操業を止める場合は、
使用者の責任になります。
感染症が広がり、注文量が減って、売上が減ったと。
その結果、休業することになった場合、これは
使用者の責任になります。
2008年9月のリーマンショックの頃も同じような形で、
休業になった場合には、
使用者の都合によるものと判断され、
その期間の給与を一部支払う必要がありました。
経済的理由で操業を止めた場合は、
使用者の責任となるわけです。
厳しいですけれども。
コロナウィルスを理由に休業となった場合、
雇用調整助成金を利用できますが、
あの
助成金は支払った
休業手当の一部を
補助するものです。
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ
雇用調整助成金の特例対象を拡大します(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000602567.pdf
簡単に書くと、仮に、
休業手当を1日あたり1万円支払ったとすれば、
そのうちの80%(この数字は仮のものです)、
つまり8,000円を
助成金として支給する。
残りの2,000円は、会社が負担しなければいけないものです。
こういうイメージを持っていただければ良いかと思います。
なお、細かい数字は条件によって変わります。
休業手当の全額が
助成金として支給されるわけではない、
という点に注意が必要です。
特例で大盤振る舞いしている感じがしますが、
使えば使うほどキャッシュは減っていきます。
休業手当を支払い、
雇用を維持して、
半年なり1年でリカバリーできる商売でしたら、
助成金を利用するといいのでしょうが、回復する見込みが立たないならば、
会社を精算するというのも選択肢に入れないといけないでしょう。
助成金で支えてもらえるといっても、
キャッシュフローはマイナスになりますから、
休業して
助成金を受給していても、
じわじわと会社のお金は無くなっていきます。
そのため、どこかのタイミングで、休業を終了させて、
通常の営業状態に復帰させていかなければいけないのです。
■
健康保険料を支払っている人は
傷病手当金を利用できる。
健康保険には、
傷病手当金制度があり、一定の日数以上、
病気や怪我で休むと、給付がなされます。
休み始めてから3日間の待機期間がありますが、
4日目以降の期間から
傷病手当金の対象となります。
病気やケガで会社を休んだとき(
傷病手当金とは?)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/
給付される額は、普段の収入の2/3程度です。
厳密には、過去12ヶ月間の
標準報酬月額という数字を使って計算するので、
少し難しいのですが、実際に出勤した場合の60%ぐらいかな、
と考えていただければいいでしょう。
仮に、14日間休むとなれば、最初の3日間は
年次有給休暇を充当し、
4日目から14日目までは、後ほど
傷病手当金を申請します。
待機は3日連続で必要ですが、休んでいればいいものですから、
年次有給休暇を使って休むのも構いません。
ただし、4日目以降は
年次有給休暇を使うと、
傷病手当金が減額なり不支給になりますから、
年次有給休暇を使うのは待機期間だけにします。
傷病手当金の待機期間に
有給休暇を使えるか
https://www.growthwk.com/entry/2016/05/31/131415
インフルエンザで休むときも、
1週間ぐらい休むケースがあるでしょうから、
その場合も
健康保険の
傷病手当金の対象になります。
ただ、この
傷病手当金ですが、
自分自身で
社会保険に入っている人が対象になるもので、
被扶養者として
健康保険に入ってる人は、
傷病手当金の対象外になります。
毎月、給与から
社会保険料を控除されてる人。
この方は、
健康保険の
被保険者ですから、
傷病手当金を受給できます。
しかし、
被扶養者の方は、毎月の
健康保険料は負担していませんから、
被保険者ではありません。それゆえ、
傷病手当金の対象にはならないのです。
病気や怪我で休むことで、給与が出ない、収入が途絶えるので、
それを補填するために、
健康保険の
傷病手当金制度があるわけです。
健康保険というと、病院に
健康保険証を持って行って、
3割負担で治療を受ける。こういう使い方が主ですけれども、
休んだ時の所得補償をしてくれる制度(
傷病手当金)も用意されているのです。
■予防で休ませるのか。それとも既に発症しているから休ませるのか。
本人がまだ元気なんだけれども休ませちゃう。
流行してるからお店を閉めて、
従業員の人たちを休みにする。
家族が感染しているから、本人(症状は出ていない)も休ませる。
こういう場合は、
使用者側の都合で休ませてるということになりますから、
休業手当が必要なります。
お店を閉めて、全員を休ませるわけではなく、
なんかちょっと発熱してる人がいるとか、咳をしている人がいる。
そういう人達だけを休ませるのでしたら、それは
使用者の責任による休業にはなりません。
37.5度ぐらいの発熱がある
従業員を休ませるのも同様です。
風邪と同じような症状を呈しているなら、
それはもう予防で休ませているものではなく、
使用者の都合で休業させていることにはならないのです。
しかし、店なり営業所を全部閉めちゃって、
全く誰も出勤できないような状態にしてしまうと、
健康な人も、そうでない人も、全部ひっくるめて休みにしてしまっていますから、
これは
休業手当が必要になってしまうわけです。
ここで、
雇用調整助成金を利用して、
休業手当の
費用を補填して、
雇用を維持するのも1つの方法ではあります。
とはいえ、発症前に、予防的に休ませることが可能なのかどうかというと、
現実には、症状が出ていなければ、まず休ませないし、本人も休まないでしょう。
職場でコロナウイルスの検査なんて、時間と
費用を使ってまで、まずやらない。
仮に、感染した人が出てきたとしても、
「休んで良くなるまで休養してください。お大事に」
というぐらいの対応で済ませるのでは。
感染者が出たといって、事業所を閉鎖するとは考えにくいですし、
全員を自宅待機にするというのもなかなか難しいものです。
発症したら、休んでも、もう遅いのであって、すでにあちらこちらにばら撒いた後です。
■コロナウィルスに感染したら、労災の対象になるかどうか。
労災保険の対象となるためには、業務上の原因によって、
病気が引き起こされている、ということを証明しなければいけません。
ならば、新型コロナウイルスが、仕事によって引き起こされた、
と証明できるのか、というと、これはもう困難を極めるでしょう。
仕事をしてようが、しまいが、
目に見えないウイルスがあちらこちらに飛んでるわけで、
仕事中にウイルスを吸い込んだんだ、ということをどうやって証明するのか。
仕事をしていない時、私生活で、
どこからかウイルスをもらってきた可能性も常にあるわけですから。
ゆえに、コロナウイルスに感染して、
労災保険の対象になる可能性はまずないです。証明できませんので。
本人は健康だけれども、予防的に休ませたとなれば、
これは
使用者の責任になりますし、
休業手当も必要になります。
しかし、すでに病気を発症している、発熱しているとか、
咳をしている、など症状が見受けられる場合は、健康な状態になるまで休む。
これは
使用者の責任ではなく、
労働者本人の責任の範囲内ですから、
休業手当は不要です。
休ませようとしている本人が元気なのか、そうでないのか。
これが
休業手当が必要かどうかの判断基準となります。
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メールマガジン【本では読めない
労務管理のミソ】のご紹介
内容の一例・・・
『定額
残業代で
残業代は減らせるのか』
『15分未満の
勤務時間は切り捨て?』
『4週4日以外の
変形休日制度もある』
『長時間残業を減らす方法は2つある』
『管理職は週休3日が理想』
『日曜日=
法定休日と思い込んではいけない』
『
半日有給休暇と
半日欠勤の組み合わせはダメ?』
『寸志は
賃金or贈り物?』
『ケータイは仕事道具か遊び道具か』
など、その他盛りだくさんのテーマでお送りしています。
本に書いていそうなんだけど、書いていない。
そんな内容が満載。
【本では読めない
労務管理のミソ】
▽ ▽ <登録はこちら> ▽ ▽
https://www.growthwk.com/entry/2008/05/26/125405?utm_campaign=soumu_cm_common_20200224_1
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合格率0.07%を通り抜けた大学生。
今、私はこうやって
社労士という職業で仕事をしているわけですが、子供の頃からなりたかった職業というわけではなくて、大学生の頃に遭遇したきっかけが始まりです。
子供の頃になりたい職業というと、男の子ならば、警察官やスポーツ選手、パイロットというのが良くあるもの。女の子だと、スチュワーデス(今はキャビンアテンダント)、花屋さん、ケーキ屋さん、保育園の先生とか。そういう社会的に広く
認知されたものが選ばれるので、小学生や中学生が
社労士になりたいなんてことはゼロではないのでしょうが、極めて稀でしょう。
私が
社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが
社労士試験ごときにオチたのか」って。だって、簡単そうなイメージがするでしょ、
社労士なんて。チョチョッと勉強すれば、スルッと合格できるだろう。そう思っている人も少なくないはず。
「よく知られている資格 = 難しい」、「あまり知られていない資格 = 難しくない」。こういう判断基準があって、
社労士は後者に該当するため、難しくないだろうと思われてしまうわけです。
私もそうやってナメていたクチですから、不合格になったんです。
実際は、想像しているよりも難易度は高くて、大学生の頃に約1年ほど時間を投じて、やっとこさ合格したのが本当のところ。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって
社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
とはいえ、学生の人が
社労士に興味を持つというのはやはりレアで、何らかのきっかけが無ければ出会えないでしょうね。ただ、珍しいといっても、毎年、1割弱ほどは学生の受験者がいるので、受験者の総数を5万人と仮定すると、その1割弱なら3,000人から4,000人ぐらいは学生がいます。
そういう方の役に立つならば、私の経験も使っていただきたいですね。
https://www.growthwk.com/entry/2017/02/28/121910?utm_campaign=soumu_cm_common_20200224_2
大学生が独学で
社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡
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【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の
従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で
労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の
従業員と同じ。
週3日出勤で
契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には
有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない
労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような
労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの
労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
https://www.growthwk.com/entry/2019/11/08/214715?utm_campaign=soumu_cm_common_20200224_3
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残業で悩んでいませんか?
「長時間の残業が続いている」
「
残業代の支払いが多い」
「残業が減らない」
こういう悩み、よくありますよね。
ニュースでも未払い
残業代の話題がチラホラと出てくるぐらい、残業に対する関心は高くなっています。
法律では、1日に8時間まで、1週間では40時間までしか仕事ができません。その水準を超えてしまうと、残業となり、
割増賃金が必要になります。
とはいえ、1日で8時間と固定されていると不便だと感じませんか? 1週間で40時間と固定されていると不便だと感じませんか?
毎日8時間の時間制限があると、柔軟に
勤務時間を配分できませんよね。
例えば、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
仕事に合わせて、ある日は
勤務時間を短く、ある日は
勤務時間を長くできれば、便利ですよね。
でも、実は、「月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務なので、残業は無し」こんなことができる仕組みがあるんです。
「えっ!? そんな仕組みがあるの?」と思った方は、ぜひ『残業管理のアメと罠』を読んでみてください。
『残業管理のアメと罠』
https://www.growthwk.com/entry/2012/05/22/162343?utm_campaign=soumu_cm_common_20200224_4
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決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、
雇用保険や
社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、
休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。
有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が
労務管理では起こります。
一例として、
Q:会社を休んだら、
社会保険料は安くなる?
Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
Q:
休憩時間を分けて取ってもいいの?
Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
Q:残業しないほど、
残業代が増える?
Q:喫煙時間は
休憩なの?
Q:
代休や
振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
▽ ▽ 『仕事のハテナ 17のギモン』 ▽ ▽
https://www.growthwk.com/entry/2017/05/23/132023?utm_campaign=soumu_cm_common_20200224_5
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本日のテーマ【新型コロナウィルスで出勤できなければ、給与はどうなる?】
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■使用者の責任なのか、労働者の責任なのか。
病気や怪我で仕事を休むときは時々あるかと思いますが、
流行している感染症を理由に仕事が休みになったら、
給与は出るのか出ないのか。
使用者の都合で従業員を休ませると、
仕事をしてもらっていなくても、
一定の給与を払わなければいけなくなります。
これが「休業手当」(労働基準法26条)です。
ならばコロナウィルスに関連して、仕事を休むような場面になった時、
それは使用者の責任による休業になるのか。
それとも、労働者本人の責任による病欠になるのか。
どこまでが使用者の責任で、どこからが労働者の責任なのか。
この境目をはっきりさせておきたいところです。
■本人が病気を発症していれば、それは使用者の責任ではない。
本人が疾患だから、その人を休ませて、それで使用者の責任だ、
というのでは、受け入れ難いもの。
会社がウイルスを運んで来て、
従業員にふりかけているわけではありませんから、
病気で休ませたからといって、
直ちに使用者の責任になるというのは行き過ぎです。
まだ発症していない人を休ませれば、それは使用者の責任になりますが、
すでに発症していれば、それは風邪と同じ扱いになります。
風邪をひいて休めば、休業手当が出るのかというと、出ません。
コロナウイルスだからといって、
特別に休業手当が出るというのはおかしな話です。
ですから、コロナウィルスでも対応は同じです。
すでに病気を発症していれば、使用者の責任ではありません。
ですが、まだ発症していない段階で、自宅待機なり、店を閉める、
となれば、これは使用者の責任になります。
今後、もっと感染が広がりそうだから、お店をしばらく休業する。
これは使用者の判断で行われているもので、
営業しようと思えばできる状態です。
となると、営業していなくても、給与を払う必要があるのです。
チェーン展開する企業ならば、他店舗に一時的に移転して、
そこで従業員に働いてもらえば、休業を回避できます。
ちなみに、経済的理由で操業を止める場合は、
使用者の責任になります。
感染症が広がり、注文量が減って、売上が減ったと。
その結果、休業することになった場合、これは使用者の責任になります。
2008年9月のリーマンショックの頃も同じような形で、
休業になった場合には、使用者の都合によるものと判断され、
その期間の給与を一部支払う必要がありました。
経済的理由で操業を止めた場合は、使用者の責任となるわけです。
厳しいですけれども。
コロナウィルスを理由に休業となった場合、
雇用調整助成金を利用できますが、
あの助成金は支払った休業手当の一部を補助するものです。
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ雇用調整助成金の特例対象を拡大します(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000602567.pdf
簡単に書くと、仮に、休業手当を1日あたり1万円支払ったとすれば、
そのうちの80%(この数字は仮のものです)、
つまり8,000円を助成金として支給する。
残りの2,000円は、会社が負担しなければいけないものです。
こういうイメージを持っていただければ良いかと思います。
なお、細かい数字は条件によって変わります。
休業手当の全額が助成金として支給されるわけではない、
という点に注意が必要です。
特例で大盤振る舞いしている感じがしますが、
使えば使うほどキャッシュは減っていきます。
休業手当を支払い、雇用を維持して、
半年なり1年でリカバリーできる商売でしたら、
助成金を利用するといいのでしょうが、回復する見込みが立たないならば、
会社を精算するというのも選択肢に入れないといけないでしょう。
助成金で支えてもらえるといっても、
キャッシュフローはマイナスになりますから、
休業して助成金を受給していても、
じわじわと会社のお金は無くなっていきます。
そのため、どこかのタイミングで、休業を終了させて、
通常の営業状態に復帰させていかなければいけないのです。
■健康保険料を支払っている人は傷病手当金を利用できる。
健康保険には、傷病手当金制度があり、一定の日数以上、
病気や怪我で休むと、給付がなされます。
休み始めてから3日間の待機期間がありますが、
4日目以降の期間から傷病手当金の対象となります。
病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金とは?)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/
給付される額は、普段の収入の2/3程度です。
厳密には、過去12ヶ月間の標準報酬月額という数字を使って計算するので、
少し難しいのですが、実際に出勤した場合の60%ぐらいかな、
と考えていただければいいでしょう。
仮に、14日間休むとなれば、最初の3日間は年次有給休暇を充当し、
4日目から14日目までは、後ほど傷病手当金を申請します。
待機は3日連続で必要ですが、休んでいればいいものですから、
年次有給休暇を使って休むのも構いません。
ただし、4日目以降は年次有給休暇を使うと、
傷病手当金が減額なり不支給になりますから、
年次有給休暇を使うのは待機期間だけにします。
傷病手当金の待機期間に有給休暇を使えるか
https://www.growthwk.com/entry/2016/05/31/131415
インフルエンザで休むときも、
1週間ぐらい休むケースがあるでしょうから、
その場合も健康保険の傷病手当金の対象になります。
ただ、この傷病手当金ですが、
自分自身で社会保険に入っている人が対象になるもので、
被扶養者として健康保険に入ってる人は、傷病手当金の対象外になります。
毎月、給与から社会保険料を控除されてる人。
この方は、健康保険の被保険者ですから、傷病手当金を受給できます。
しかし、被扶養者の方は、毎月の健康保険料は負担していませんから、
被保険者ではありません。それゆえ、傷病手当金の対象にはならないのです。
病気や怪我で休むことで、給与が出ない、収入が途絶えるので、
それを補填するために、健康保険の傷病手当金制度があるわけです。
健康保険というと、病院に健康保険証を持って行って、
3割負担で治療を受ける。こういう使い方が主ですけれども、
休んだ時の所得補償をしてくれる制度(傷病手当金)も用意されているのです。
■予防で休ませるのか。それとも既に発症しているから休ませるのか。
本人がまだ元気なんだけれども休ませちゃう。
流行してるからお店を閉めて、従業員の人たちを休みにする。
家族が感染しているから、本人(症状は出ていない)も休ませる。
こういう場合は、使用者側の都合で休ませてるということになりますから、
休業手当が必要なります。
お店を閉めて、全員を休ませるわけではなく、
なんかちょっと発熱してる人がいるとか、咳をしている人がいる。
そういう人達だけを休ませるのでしたら、それは使用者の責任による休業にはなりません。
37.5度ぐらいの発熱がある従業員を休ませるのも同様です。
風邪と同じような症状を呈しているなら、
それはもう予防で休ませているものではなく、
使用者の都合で休業させていることにはならないのです。
しかし、店なり営業所を全部閉めちゃって、
全く誰も出勤できないような状態にしてしまうと、
健康な人も、そうでない人も、全部ひっくるめて休みにしてしまっていますから、
これは休業手当が必要になってしまうわけです。
ここで、雇用調整助成金を利用して、休業手当の費用を補填して、
雇用を維持するのも1つの方法ではあります。
とはいえ、発症前に、予防的に休ませることが可能なのかどうかというと、
現実には、症状が出ていなければ、まず休ませないし、本人も休まないでしょう。
職場でコロナウイルスの検査なんて、時間と費用を使ってまで、まずやらない。
仮に、感染した人が出てきたとしても、
「休んで良くなるまで休養してください。お大事に」
というぐらいの対応で済ませるのでは。
感染者が出たといって、事業所を閉鎖するとは考えにくいですし、
全員を自宅待機にするというのもなかなか難しいものです。
発症したら、休んでも、もう遅いのであって、すでにあちらこちらにばら撒いた後です。
■コロナウィルスに感染したら、労災の対象になるかどうか。
労災保険の対象となるためには、業務上の原因によって、
病気が引き起こされている、ということを証明しなければいけません。
ならば、新型コロナウイルスが、仕事によって引き起こされた、
と証明できるのか、というと、これはもう困難を極めるでしょう。
仕事をしてようが、しまいが、
目に見えないウイルスがあちらこちらに飛んでるわけで、
仕事中にウイルスを吸い込んだんだ、ということをどうやって証明するのか。
仕事をしていない時、私生活で、
どこからかウイルスをもらってきた可能性も常にあるわけですから。
ゆえに、コロナウイルスに感染して、
労災保険の対象になる可能性はまずないです。証明できませんので。
本人は健康だけれども、予防的に休ませたとなれば、
これは使用者の責任になりますし、休業手当も必要になります。
しかし、すでに病気を発症している、発熱しているとか、
咳をしている、など症状が見受けられる場合は、健康な状態になるまで休む。
これは使用者の責任ではなく、労働者本人の責任の範囲内ですから、休業手当は不要です。
休ませようとしている本人が元気なのか、そうでないのか。
これが休業手当が必要かどうかの判断基準となります。
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メールマガジン【本では読めない労務管理のミソ】のご紹介
内容の一例・・・
『定額残業代で残業代は減らせるのか』
『15分未満の勤務時間は切り捨て?』
『4週4日以外の変形休日制度もある』
『長時間残業を減らす方法は2つある』
『管理職は週休3日が理想』
『日曜日=法定休日と思い込んではいけない』
『半日有給休暇と半日欠勤の組み合わせはダメ?』
『寸志は賃金or贈り物?』
『ケータイは仕事道具か遊び道具か』
など、その他盛りだくさんのテーマでお送りしています。
本に書いていそうなんだけど、書いていない。
そんな内容が満載。
【本では読めない労務管理のミソ】
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https://www.growthwk.com/entry/2008/05/26/125405?utm_campaign=soumu_cm_common_20200224_1
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合格率0.07%を通り抜けた大学生。
今、私はこうやって社労士という職業で仕事をしているわけですが、子供の頃からなりたかった職業というわけではなくて、大学生の頃に遭遇したきっかけが始まりです。
子供の頃になりたい職業というと、男の子ならば、警察官やスポーツ選手、パイロットというのが良くあるもの。女の子だと、スチュワーデス(今はキャビンアテンダント)、花屋さん、ケーキ屋さん、保育園の先生とか。そういう社会的に広く認知されたものが選ばれるので、小学生や中学生が社労士になりたいなんてことはゼロではないのでしょうが、極めて稀でしょう。
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。だって、簡単そうなイメージがするでしょ、社労士なんて。チョチョッと勉強すれば、スルッと合格できるだろう。そう思っている人も少なくないはず。
「よく知られている資格 = 難しい」、「あまり知られていない資格 = 難しくない」。こういう判断基準があって、社労士は後者に該当するため、難しくないだろうと思われてしまうわけです。
私もそうやってナメていたクチですから、不合格になったんです。
実際は、想像しているよりも難易度は高くて、大学生の頃に約1年ほど時間を投じて、やっとこさ合格したのが本当のところ。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
とはいえ、学生の人が社労士に興味を持つというのはやはりレアで、何らかのきっかけが無ければ出会えないでしょうね。ただ、珍しいといっても、毎年、1割弱ほどは学生の受験者がいるので、受験者の総数を5万人と仮定すると、その1割弱なら3,000人から4,000人ぐらいは学生がいます。
そういう方の役に立つならば、私の経験も使っていただきたいですね。
https://www.growthwk.com/entry/2017/02/28/121910?utm_campaign=soumu_cm_common_20200224_2
大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡
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【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
https://www.growthwk.com/entry/2019/11/08/214715?utm_campaign=soumu_cm_common_20200224_3
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残業で悩んでいませんか?
「長時間の残業が続いている」
「残業代の支払いが多い」
「残業が減らない」
こういう悩み、よくありますよね。
ニュースでも未払い残業代の話題がチラホラと出てくるぐらい、残業に対する関心は高くなっています。
法律では、1日に8時間まで、1週間では40時間までしか仕事ができません。その水準を超えてしまうと、残業となり、割増賃金が必要になります。
とはいえ、1日で8時間と固定されていると不便だと感じませんか? 1週間で40時間と固定されていると不便だと感じませんか?
毎日8時間の時間制限があると、柔軟に勤務時間を配分できませんよね。
例えば、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。
でも、実は、「月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務なので、残業は無し」こんなことができる仕組みがあるんです。
「えっ!? そんな仕組みがあるの?」と思った方は、ぜひ『残業管理のアメと罠』を読んでみてください。
『残業管理のアメと罠』
https://www.growthwk.com/entry/2012/05/22/162343?utm_campaign=soumu_cm_common_20200224_4
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決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
一例として、
Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
Q:残業しないほど、残業代が増える?
Q:喫煙時間は休憩なの?
Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
▽ ▽ 『仕事のハテナ 17のギモン』 ▽ ▽
https://www.growthwk.com/entry/2017/05/23/132023?utm_campaign=soumu_cm_common_20200224_5
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