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労働契約法

平成20年1月15日 第51号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1.労働契約法

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1.労働契約法

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<1> はじめに

今回のテーマは労働契約法
厚生労働省の労働政策審議会の過程では非常に突っ込んだ議論がなされ、この
法律により硬直的な労使関係になりかねないということと、中小企業にとって
解雇の金銭解決が非常に大きなハードルになるという懸念があったが、今回の
法律ではこの様な内容が盛り込まれず、基本的には最高裁の判例で確立したも
のを規定化するというスタンスであり、この法律が出来たからといって今まで
の実務と大きな変化があるとはいえない。

労働契約法は大きく分けて3つの内容に分けられ、第1章総則、第2章労働条
件の変更等、第3章及び第4章の契約の更新及び終了に関することである。
他に雑則があるが、この3点を中心に述べたいと思う。

<2> 総則

(1)目的

まずこの法律の目的は、まず「労働者使用者が自主的な話し合いの下で、労
契約が合意により成立し、または変更されるという合意の原則」を明確にし、
「その他労働契約に関する基本事項を定める」こととし、それにより「合理的
労働条件の決定又は変更が円滑に行われる」ようになり、それを通じて「労
働者の保護をはかりつつ」「個別の労働関係の安定に資する」ことを目的とし
ている。

当初この目的には「労働契約就業規則の関係等」という文言があったが、就
業規則は労働者の意見聴取をもって使用者が一方的に定めることが出来る為に、
審議会において労働者代表労働契約就業規則は違うと主張していた。
そして昨年の参議院選挙において自民党の大惨敗において、その後の国会審議
の過程において「労働契約就業規則の関係等」を「その他労働契約に関する
基本事項を定める」に修正されたという経緯がある。

参議院選挙の結果、数カ所の修正がなされたが、前述したとおりこの法律は最
高裁で確立された法理の規定化を行ったというスタンスであり、表現は使用者
にとって厳しい表現に変わったが、それをもって使用者に厳しい法律になった
ということまでは言い切れない。

(2)使用者及び労働者の概念

この法律において用語の定義はほぼ労働基準法と同義である。
しかし使用者の定義については相違がある。

労働基準法では第10条において「この法律で使用者とは、事業主又は事業の
経営担当者その他事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為を
するすべての者をいう」となっている。
しかし労働契約法においては「使用者とは、その使用する労働者に対して賃金
を支払うものをいう」となっており、いわゆる管理監督者についても労働者
してこの法律を適用するのである。

この点のみ相違があるだけであり、その他はほぼ同義であると考えることが出
来る。

(3)労働契約の原則

ここが当初の原案と比べて参議院選挙後に大幅に修正された部分である。
しかしあくまで原則を述べているだけであり、労働契約を拘束するものではな
い。
まず第1項において「労働契約は、労使が対等な立場における合意に基づいて
締結し、変更すべきものとする」とされている。

そして、参議院選挙後以下の2点が加えられた。
第2項において「労働契約は労使が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ」
締結または変更すべきものとしている。
これは「均衡」を考慮すべきということであり、「均等待遇」を求めているも
のではない。しかしながら改正パートタイム労働法において「均等待遇の原則」
がうたわれており、実態として均等待遇に配慮していかなければならないとい
う点は注意すべきである。
均等待遇については、パートタイム労働法においても直ちに厳格な運用を求め
るという内容ではないが、今後厳格な運用を求められるような法改正を想定し
ておく必要があり、今から準備しておかなければならない。

第3項は「仕事と生活の調和にも配慮しつつ」締結または変更すべきものとしている。
この点は分科会の最終報告のどれに該当するのか疑問であるが、労働者が安心
して働けるように配慮するということであろう。

そして4項と5項は労働契約を遵守し、信義に従い誠実に権利を行使し、義務
履行するとともに、権利の濫用はしてはならないという一般的な規定である。

(4)労働契約内容の理解促進

労働契約内容の理解促進については、契約締結時だけではなく、労働条件変更
時においても労働者の理解を酢かめるように務めることとされ、できうる限り
書面での明示をすることとされている。

しかしこの規定が無くても、労働基準法15条において書面での明示と改正パ
ートタイム労働法における短時間労働者への「昇給」「賞与」「退職金」の有
無を明示することとされている訳であり、採用時の労働条件についてはある程
度詳細に明示をしなければならない。

また誤解による労使間のトラブルが多いことを鑑み、労働契約はむしろ使用者
の側から積極的に明示すべきと考える。

(5)安全衛生

これは使用者が安全衛生について配慮せよという条文である。
この配慮については、労働安全衛生法上の義務はもちろんのこと、労働契約
付随して使用者が負っているとされている「安全配慮義務」を含むと考えられ
る。

<3> 労働条件の変更等

(1)労働契約の成立

これについては労働基準法9条と同義であると考えられる。
労働者は、「使用者に使用されて労働すること」、使用者は「これに対して賃
金を支払うこと」について労使間で合意がなされて成立するという事である。
ここでも合意の原則が明記されている。

(2)労働契約の内容と就業規則の関係

労使が労働契約を締結する際に、使用者が合理的な労働条件を定められている
就業規則を周知させた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労
働条件によるものとするとされた。

要は労働契約を締結する際に、その事業場に合理的な内容の就業規則があれば、
労働契約の内容となりますよということである。

あくまで締結時のことであり、締結後の労働条件の変更についてはどの様に考
えるのか。
これについては以下に述べることとする。

(3) 労働契約内容の変更と就業規則の変更

まず労働契約については「労使は、その合意により、労働契約の内容である労
働条件を変更することができる」としており、あくまで合意の原則が基本であ
る。
しかし、合意がなければすべての労働契約の変更ができないとなると企業の運
営に支障が生じることもあり、少数のものだけが合意せず、多数のものの合意
が有効に履行できないという自体も想定できる。
この様なことから、最高裁は秋北バス事件(最大判昭43.12.25)によ
り、「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者
不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないと解すべき
であるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前と
する就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、
ここの労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否
することは許されないと解すべきであり、これに対する不服は、団体交渉等の
正当な手続きによる改善にまつほかはない。」とした。
労働契約法においても、この判例をふまえ就業規則不利益変更労働者の合
意が必要である(第9条)という合意原則を基本とし、第10条において前述
秋北バス事件における内容を規定している。
具体的な規定は、「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条
件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の
状況その他就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときには、
労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによ
るものとする」となっている。

(4)その他

第11条就業規則変更に関する手続き、第12条就業規則違反の労働契約、第
13条法令及び労働協約就業規則の関係については従前通りの解釈である。

また就業規則の変更については、労働契約において就業規則の変更があっても
当該規定は変更しない旨の規定がある場合は第10条によっても変更しないと
ある。
労働契約書に就業規則の変更があった場合の個別の契約内容をどうするのか定
めておくことも実務上は重要である。

<4> 契約の更新及び終了

(1)出向懲戒・解雇

これらの内容については、基本的に権利濫用と認められるものについては無効
としている。
また、解雇については労働基準法第18条の2を移行させたものである。

(2)期間の定めのある労働契約

第17条1項において、労働契約の中途では「やむを得ない事由」がなければ
その契約満了までの期間当該労働者を解雇することはできないと規定されてい
るが、これは従前の解釈をそのまま規定化したものである。

同条第2項においては、労働契約により労働者を使用する目的に照らし、必要
以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することの
ないように配慮しなければならないとされている。
これは実務上の対応として、期間を定める契約である必要性と契約期間の根拠
について説明できるようにしておく必要がある。

<5>まとめ

労働契約法は以上の通り、既存の判例の中で判例法理として確立したものを
中心として規定化したに過ぎない。
しかし実務上は労使間のトラブルが瓦解により生ずることやこの労働契約法
都合良く解釈されることを考え、労働条件の明示に努めることは重要である。

また労働条件の引き下げに関しても特に重要な事項である賃金の引き下げ等に
ついては、実務上合意を取り付ける作業を行っていることを鑑みれば、この法
律により使用者に具体的な義務が生じたというよりは、訓辞規定として使用者
として注意すべき点をしっかりと抑えることが必要である。

年内に総選挙が予想されているが、その結果によりこの法律が使用者側に厳し
く改正されることも想定される。

法律は施行されるが、今後の議論の動向を注視したい。


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編集責任者 特定社会保険労務士 山本 法史
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