昨年11月に、
雇用ルール改革のひとつとして、
労働契約法が成立しました。
施行は今年の3月1日です。
様々な議論、紆余曲折を経て成立したこの新法、どんな中身なのでしょうか?
会社の
人事・
労務に与える影響は?
実務対応は?
働く人にとってはどんな意味を持つのか?
これら、重要なポイントを、シリーズで追っていきます。
今回は、
労働契約法がどんないきさつ、背景のもとに議論が始まったのかを見ていきましょう。
この中から、この新法の意味が見えてくるのではないかと思います。
◆
労働契約法の議論の背景は
今から4年前、2003年の国会で、
改正労働基準法が可決成立しました。
(施行は2004年)
この改正の主な内容は、有期
労働契約の見直し、解雇ルールの整備、
裁量労働制の見直しでした。
多様な働き方への対応、そして個別化する労使紛争の予防が、基本的なスタンスだったのですが、このような課題に対応するためには、既存の労働法の枠組みでは限界がありました。
そこで、次のような附帯決議がなされたのです。
「
労働条件の変更、
出向、
転籍など、
労働契約について包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進め、その結果に基づき、法令上の措置を含め必要な措置を講ずること」
◆研究会スタート
厚生労働省は2004年4月、学識経験者を集めて「今後の
労働契約法制の在り方に関する研究会」を立ち上げました。
そして、2005年4月の中間取りまとめを経て同年9月、報告書が完成しました。
この報告書をたたき台に、労働政策審議会で議論が戦わされ、2007年の通常国会で法案提出。
この国会では結局継続審議となり、臨時国会で可決成立したわけです。
http://www.hrm-solution.jp
2005年9月に出された研究会報告は、質・量ともに相当インパクトのあるもので、初めてこれを見たときは、「これが法制化されたら、
労働基準法と並ぶ一大労働法典ができる」と思ったものです。
これらの多くは、今回は日の目を見ませんでした。
では、これらを無視していいのか?
次の法改正の機会まで、何も考えなくていいのか?
そうとは言えません。
そのあたりの話は、次回以降するとして…
今回は、この研究会報告の項目を一通り上げておきましょう。
[総則]
(1)
労働契約は労使当事者が対等の立場で締結すべきことや、
労働契約においては、
雇用形態にかかわらず、就業の実態に応じた
均等待遇が図られるべきことを規定。
(2)
労働基準法の
労働者以外の者であっても、特定の発注者に対して個人として継続的に
役務を提供し、経済的に従属している場合は、
労働契約法の対象とすることを検討。
(3)常設的な労使
委員会制度を整備。これを
就業規則の変更の合理性の推定等に活用。
[具体的項目]
(1) 労働関係の成立
①
採用内定の留保解約権の行使はその事由が
採用内定者に書面で通知されている場合に限ることとし、
採用内定時に
使用者が知っていたか又は知ることができた事由による
採用内定取消を無効とする。
②
試用期間の上限を定める。
(2) 労働関係の展開
①
就業規則による
労働条件の変更が合理的なものであれば
労働者を拘束する等の判例法理を明らかにする。
②
労働契約の変更に関し、
労働者が
雇用を維持した上でその合理性を争うことを可能とする「
雇用継続型
契約変更制度」を導入する。
③
配置転換の際に
使用者が講ずべき措置について指針等で示す。
④
出向を命ずるには個別の合意、
就業規則又は
労働協約の根拠が必要であることを明らかにする。また、当事者間に別段の合意がない限り、
出向中の
賃金は
出向直前の
賃金水準をもって
出向元・
出向先が連帯して
出向労働者に支払う義務があるという任意規定を定める。
⑤
配置転換、
出向等に係る権利濫用法理を明らかにする。
⑥
転籍に当たっては、
転籍先の情報、
転籍先での
労働条件等を書面で
労働者に説明して同意を得なければならず、書面による説明がなかった場合や
転籍後に説明と事実が異なることが明らかとなった場合は、
転籍を無効とする。
⑦
懲戒解雇、停職、減給の
懲戒処分に当たっては、
懲戒処分の内容、非違行為、
懲戒事由等を書面で
労働者に通知することとする。また、非違行為と
懲戒の内容との均衡が必要であることを明らかにする。
⑧
労働者の兼業を制限する
就業規則の規定等は、やむを得ない事由がある場合を除き無効とする。
⑨
退職後の競業避止義務や秘密保持義務を
労働者に負わせる個別の合意等は、
労働者の当該義務違反によって
使用者の正当な利益が侵害されること等を要
件とする。
⑩
安全配慮義務や
労働者の
個人情報保護義務を明らかにする。
⑪ 留学・研修
費用の返還の免除条件としての勤務期間の上限を5 年とする。
(3) 労働関係の終了
① 解雇は、
労働者側に原因がある理由、企業の経営上の必要性又はユニオン・ショップ協定等の
労働協約の定めによるものでなければならないこととし、また、解雇に当たり
使用者が講ずべき措置を指針等により示す。
② 解雇が無効とされた場合でも、職場における信頼関係の喪失等によって職場復帰が困難な場合があることから、解雇の金銭解決制度の導入について検討する。この場合、解雇についての紛争の一回的解決を図るとともに、安易な解雇を防止する仕組みとする。
③
労働者が
使用者の働きかけに応じて
退職の
意思表示を行った場合、一定期間これを撤回することができることとする。
(4) 有期
労働契約
① 有期
労働契約締結時に
契約期間が書面で明示されなかった場合には、
期間の定めのない契約とみなす。
② 「有期
労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」で定める手続を必要とし、更新があり得る旨が明示されていた場合には、差別的な雇止めや
労働者が正当な権利を行使したことを理由とする雇止めはできないこととする。
③ 有期
労働契約が試用の目的を有する場合にはその旨及び本
採用の判断基準を明示させ、試用目的の有期
労働契約の法律上の位置付けを明確にする。
昨年11月に、雇用ルール改革のひとつとして、労働契約法が成立しました。
施行は今年の3月1日です。
様々な議論、紆余曲折を経て成立したこの新法、どんな中身なのでしょうか?
会社の人事・労務に与える影響は?
実務対応は?
働く人にとってはどんな意味を持つのか?
これら、重要なポイントを、シリーズで追っていきます。
今回は、労働契約法がどんないきさつ、背景のもとに議論が始まったのかを見ていきましょう。
この中から、この新法の意味が見えてくるのではないかと思います。
◆労働契約法の議論の背景は
今から4年前、2003年の国会で、改正労働基準法が可決成立しました。
(施行は2004年)
この改正の主な内容は、有期労働契約の見直し、解雇ルールの整備、裁量労働制の見直しでした。
多様な働き方への対応、そして個別化する労使紛争の予防が、基本的なスタンスだったのですが、このような課題に対応するためには、既存の労働法の枠組みでは限界がありました。
そこで、次のような附帯決議がなされたのです。
「労働条件の変更、出向、転籍など、労働契約について包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進め、その結果に基づき、法令上の措置を含め必要な措置を講ずること」
◆研究会スタート
厚生労働省は2004年4月、学識経験者を集めて「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」を立ち上げました。
そして、2005年4月の中間取りまとめを経て同年9月、報告書が完成しました。
この報告書をたたき台に、労働政策審議会で議論が戦わされ、2007年の通常国会で法案提出。
この国会では結局継続審議となり、臨時国会で可決成立したわけです。
http://www.hrm-solution.jp
2005年9月に出された研究会報告は、質・量ともに相当インパクトのあるもので、初めてこれを見たときは、「これが法制化されたら、労働基準法と並ぶ一大労働法典ができる」と思ったものです。
これらの多くは、今回は日の目を見ませんでした。
では、これらを無視していいのか?
次の法改正の機会まで、何も考えなくていいのか?
そうとは言えません。
そのあたりの話は、次回以降するとして…
今回は、この研究会報告の項目を一通り上げておきましょう。
[総則]
(1)労働契約は労使当事者が対等の立場で締結すべきことや、労働契約においては、雇用形態にかかわらず、就業の実態に応じた均等待遇が図られるべきことを規定。
(2)労働基準法の労働者以外の者であっても、特定の発注者に対して個人として継続的に役務を提供し、経済的に従属している場合は、労働契約法の対象とすることを検討。
(3)常設的な労使委員会制度を整備。これを就業規則の変更の合理性の推定等に活用。
[具体的項目]
(1) 労働関係の成立
① 採用内定の留保解約権の行使はその事由が採用内定者に書面で通知されている場合に限ることとし、採用内定時に使用者が知っていたか又は知ることができた事由による採用内定取消を無効とする。
② 試用期間の上限を定める。
(2) 労働関係の展開
① 就業規則による労働条件の変更が合理的なものであれば労働者を拘束する等の判例法理を明らかにする。
② 労働契約の変更に関し、労働者が雇用を維持した上でその合理性を争うことを可能とする「雇用継続型契約変更制度」を導入する。
③ 配置転換の際に使用者が講ずべき措置について指針等で示す。
④ 出向を命ずるには個別の合意、就業規則又は労働協約の根拠が必要であることを明らかにする。また、当事者間に別段の合意がない限り、出向中の賃金は出向直前の賃金水準をもって出向元・出向先が連帯して出向労働者に支払う義務があるという任意規定を定める。
⑤ 配置転換、出向等に係る権利濫用法理を明らかにする。
⑥ 転籍に当たっては、転籍先の情報、転籍先での労働条件等を書面で労働者に説明して同意を得なければならず、書面による説明がなかった場合や転籍後に説明と事実が異なることが明らかとなった場合は、転籍を無効とする。
⑦ 懲戒解雇、停職、減給の懲戒処分に当たっては、懲戒処分の内容、非違行為、懲戒事由等を書面で労働者に通知することとする。また、非違行為と懲戒の内容との均衡が必要であることを明らかにする。
⑧ 労働者の兼業を制限する就業規則の規定等は、やむを得ない事由がある場合を除き無効とする。
⑨ 退職後の競業避止義務や秘密保持義務を労働者に負わせる個別の合意等は、
労働者の当該義務違反によって使用者の正当な利益が侵害されること等を要
件とする。
⑩ 安全配慮義務や労働者の個人情報保護義務を明らかにする。
⑪ 留学・研修費用の返還の免除条件としての勤務期間の上限を5 年とする。
(3) 労働関係の終了
① 解雇は、労働者側に原因がある理由、企業の経営上の必要性又はユニオン・ショップ協定等の労働協約の定めによるものでなければならないこととし、また、解雇に当たり使用者が講ずべき措置を指針等により示す。
② 解雇が無効とされた場合でも、職場における信頼関係の喪失等によって職場復帰が困難な場合があることから、解雇の金銭解決制度の導入について検討する。この場合、解雇についての紛争の一回的解決を図るとともに、安易な解雇を防止する仕組みとする。
③ 労働者が使用者の働きかけに応じて退職の意思表示を行った場合、一定期間これを撤回することができることとする。
(4) 有期労働契約
① 有期労働契約締結時に契約期間が書面で明示されなかった場合には、期間の定めのない契約とみなす。
② 「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」で定める手続を必要とし、更新があり得る旨が明示されていた場合には、差別的な雇止めや労働者が正当な権利を行使したことを理由とする雇止めはできないこととする。
③ 有期労働契約が試用の目的を有する場合にはその旨及び本採用の判断基準を明示させ、試用目的の有期労働契約の法律上の位置付けを明確にする。